処女壊体-the making of a saint-

柘榴

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第7章 耽溺の刑

第45話 覆らない運命

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「なんで……なんで……こんな……」

 全身を巡る痛覚と不快感に喘ぎ、床を這いながら葵は僕を睨み付ける。
 何故、平凡な女学生だったはずの自分が監禁され、身体中を穴だらけにされ血を抜かれ、挙げ句の果てには覚醒剤に侵され、薬物中毒に陥っているのか。   
  平凡に生活していた筈なのに、どこから歯車が狂ったのか。それを僕に目で訴えかける。

「君が茜の実妹だからさ。茜に近い皮膚、血、骨格、脳を持つ君の身体であらゆる実験をする事に意味がある、それだけの事さ」
 それに対し、僕は冷酷に答える。それが、それだけが葵の存在理由なのだから。
 葵を茜に見立て、その肉体を用いてあらゆる可能性を模索する。その肉体が塵になるまで模索し、研究をする。そして、それらを茜の進化へと還元する……進化に犠牲は必要なのだ。
 それは葵の運命であり、葵の義務でもある。
「君が覚醒剤の禁断症状に悩まされ、悍ましい幻覚と幻聴に苛まれ、肉体的・精神的の両面で疲弊し、死を望んだとしても……君の身体と生命を身勝手に破棄する事は僕が許さない。絶対に」
 茜と同じ様に、葵が勝手に死ぬ事は僕が許さない。僕の宿願が成就するその日まで……それが十年後、二十年後になろうとしてもその日まで付き合ってもらう。
 
 茜の妹として、実験動物として。

「でも、高城さん……お姉ちゃんと約束してた……もう、私には手を出さないって……っ」
 葵は泣き叫ぶ子供の様に僕に抗議する。約束を破った僕が悪いと言わんばかりに。
 だが、それは間違いだ。そもそも僕は約束を破ってなどいないのだから。
「ああ、確かに茜と約束した。だから、僕からは何もしていない。君を無理矢理に拘束したり、理不尽に暴行した訳でも無い。そうだろう?」
 僕の反論に、葵は言葉に詰まる。僕の言葉に、偽りは確かに無かったからだ。僕が葵を言葉で脅した訳でも、暴力で支配した訳でも無いという事は事実であり、真実である。
「でも……変な薬を、打って……私を、こんな……身体に、した……おかしく、した……ぁ……っ」
「それは元を辿れば君と君のお姉さんが望んだ事だろう? 君の血と膿だらけの身体中から苦痛を取り除いてくれ、と。僕はそれに従ったまでさ。僕なりの治療法で……ね。治療法にまで口を挟まれた覚えは無いんだが、それは僕の勘違いだったかな?」
 葵は再び言葉を詰まらせ、代わりに僕を睨み付ける。僕が確かに彼女の苦痛を一瞬だが取り除き、快楽を与えた事も確かな事実であったからだ。

 ただ、その僕なりの治療法というものが……覚醒剤の快楽で苦痛を強引に塗り潰すというものだった、というだけの事だ。
「僕は確かに君に快楽を与え、苦痛を取り除いた。君の要望に従い、僕なりのやり方で実行した。それに何の問題がある?」
「ふ、ざけ……ないで……っ、こんな……こんな身体に、しておいて……ぇ」
 葵は唇を噛み締めながら涙を流す。残酷な現実を思い知ると共に、僕への憎悪を抱きながら。

 僕の言い分は単なる詭弁であり、屁理屈。それに対し、葵が納得などできる筈が無かった。
 ただ、それで構わない。最初から葵の理解や同意を得ようとなど考えていない。相互理解など最初から求めていない。実験動物の同意など最初から必要無い。
 
 茜も葵も、僕の筋書き通り僕との世界の中で生き続ける事しかできない。そして、この運命が覆る事など未来永劫、無い。

「……出て……出てッ、部屋からも……私に、近付かないで……ッ、薬も、いらない……っ」
 半狂乱状態の葵は、僕にそう怒鳴りつけ、注射器と覚醒剤の粉末を床に叩きつける。
 部屋から出て行け、薬も必要無い。葵は僕に対し、泣き叫びながら命じた。
 
 茜との約束が有効である以上、僕は葵の命令に背いてまで何かを強要したり、強引に手出しする事はできない。

 僕は葵の口の中へと布の塊を押し込んで口を塞ぎ、舌を噛み切る事による自殺の防止だけを施すと、部屋を出る。
 茜の様に全ての歯を抜歯してあげれば良いのだが、葵に拒否されればそれも出来ない。

「分かった。少し経ったらまた様子を見に来るから、何かあればその時にでも遠慮無く言ってくれ。君の命令なら、僕は従うしか無いからね」
 
 返答は無かった。僕はそれだけを言い残し、監禁部屋を去った。
 
 だが、既に分かっていた。すぐに葵は僕に助けを求める。それを知っていたから、僕は素直に葵の命令に従った。従う振りをしていた。

 何故なら、強要では無く、葵の本心からの本物の言葉を聞きたかったのだ。憎き僕に対して必死に、無様に助けを求め、醜く媚びながらも縋ろうとするその言葉を……。
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