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第9章『失楽園のツクり方/冒険者サエジマ・ワタルの章』
第317話 エンジン≠車体
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「かはっ……」
スカレットは口から血反吐を吐き、その場に倒れる。
雪ん子とファイント、そしてスカレットの戦いは、スカレットの敗北に終わっていた。
スカレットの能力、それは確かに強力無比な代物であり、【無限の距離】という超強力な防御スキルを持つ彼女----恐らく、普通に戦えば、雪ん子とファイントの敗北も十分にあり得た。
スカレットが敗北した理由は、たった1つ。
----彼女の身体が、あまりに弱かった事。
スカレットは、世界を救った元勇者である赤坂帆波の、【街】における姿。
世界を救った元勇者である彼女は、レベルにして見ればⅩ以上……いくら強くなったとはいえども、雪ん子とファイントでは2人がかかりであったとしても、勝利するのは難しかった。
しかし、そんな赤坂帆波は、この世界に帰って来た空海大地が起こした時空震----時空の歪み----に巻き込まれ、ルトナウムという代物になってしまう。
今のスカレットは魂こそレベルⅩ相当の元勇者としての実力はあれども、身体自体はレベルⅤの召喚獣であるファントム。
いくら魂自体はレベルⅩ相当であろうとも、身体はレベルⅤ----まるでそれは、エンジンこそ立派ながら、それを扱う車体があっていないのと同じ。
いかに強力な力を持つスカレットであろうとも、それでは十分に自分のスペックを発揮できずに、結果としてスカレットの敗北となったのであった。
「いやはや、言い訳するつもりは毛頭ないが、私の身体がきちんとしていれば、勝負は私の勝ちだっただろうね」
それは負け惜しみでもなんでもなく、正しい分析であった。
彼女が本気で戦えば勝っていたのは彼女であり、それが出来ない状況だからこそ、雪ん子達は勝てたのだから。
現に対戦相手であるファイントもまた、この戦いで勝てたのは自分の運が良く、相手の運が酷かったと最初に認めていたくらいなのだから。
「何はともあれ、勝ったのはこちらです。さっさと冴島渉の居る所に案内してくださいな」
ファイントの言葉に、スカレットは懐からスイッチのような物を出して応える。
彼女がボタンを押すと、いきなり宙に黒い穴のような物が出現し、雪ん子とファイントの2人はその中から冴島渉の気配を色濃く感じ取っていた。
冴島渉以外にも、そこからはココアやマルガリータ、ヘミングウェイの気配も感じられ、どうやら全員合流しているようであった。
「《ぴぴ! ご主人、いま行く!》」
待ちきれないとばかりに雪ん子が行き、その後を続こうとしてファイントは、スカレットの身体に変化を感じていた。
感覚からして、スカレットがなんらかのスキルを使ったのであろうことは、ファイントは分かっていた。
「……あなた、何をしたの?」
ファイントは脅すようにそう言い、スカレットは「悪あがきだよ」と応える。
「【パティシエ】のスキルを使って、我が魂の源であるルトナウムを保護しただけの事。これ以上は、このファントムの身体も持たないし……せめて身体もこの魂と同じだけのレベルがあれば、世界全体を私好みに出来たんだけどなぁ……。
第一ラウンドは、君達の勝ちだよ」
「第一ラウンド……?」
スカレットの言葉に何らかの違和感を感じつつも、ファイントがそれを聞くことはなかった。
スカレットは煙のように消え去り----ファイントはそれを確認しつつ、雪ん子に続く形にて、黒い大穴の中に消えていくのであった----。
(※)絶望スカレット
【街】の実質的なリーダー的存在。担当する役職は、絶望
本気で戦えば世界全体を変えるほどの実力を持っているが、身体を構築している召喚獣であるレベルⅤ【ファントム】がそれに耐えられないため、いま現在は出力を抑えて戦っていた
本来の実力であれば、この世界そのものを改変し、自らの住みやすい、それこそ理想の【街】を作れるだけの才覚の持ち主
スカレットは口から血反吐を吐き、その場に倒れる。
雪ん子とファイント、そしてスカレットの戦いは、スカレットの敗北に終わっていた。
スカレットの能力、それは確かに強力無比な代物であり、【無限の距離】という超強力な防御スキルを持つ彼女----恐らく、普通に戦えば、雪ん子とファイントの敗北も十分にあり得た。
スカレットが敗北した理由は、たった1つ。
----彼女の身体が、あまりに弱かった事。
スカレットは、世界を救った元勇者である赤坂帆波の、【街】における姿。
世界を救った元勇者である彼女は、レベルにして見ればⅩ以上……いくら強くなったとはいえども、雪ん子とファイントでは2人がかかりであったとしても、勝利するのは難しかった。
しかし、そんな赤坂帆波は、この世界に帰って来た空海大地が起こした時空震----時空の歪み----に巻き込まれ、ルトナウムという代物になってしまう。
今のスカレットは魂こそレベルⅩ相当の元勇者としての実力はあれども、身体自体はレベルⅤの召喚獣であるファントム。
いくら魂自体はレベルⅩ相当であろうとも、身体はレベルⅤ----まるでそれは、エンジンこそ立派ながら、それを扱う車体があっていないのと同じ。
いかに強力な力を持つスカレットであろうとも、それでは十分に自分のスペックを発揮できずに、結果としてスカレットの敗北となったのであった。
「いやはや、言い訳するつもりは毛頭ないが、私の身体がきちんとしていれば、勝負は私の勝ちだっただろうね」
それは負け惜しみでもなんでもなく、正しい分析であった。
彼女が本気で戦えば勝っていたのは彼女であり、それが出来ない状況だからこそ、雪ん子達は勝てたのだから。
現に対戦相手であるファイントもまた、この戦いで勝てたのは自分の運が良く、相手の運が酷かったと最初に認めていたくらいなのだから。
「何はともあれ、勝ったのはこちらです。さっさと冴島渉の居る所に案内してくださいな」
ファイントの言葉に、スカレットは懐からスイッチのような物を出して応える。
彼女がボタンを押すと、いきなり宙に黒い穴のような物が出現し、雪ん子とファイントの2人はその中から冴島渉の気配を色濃く感じ取っていた。
冴島渉以外にも、そこからはココアやマルガリータ、ヘミングウェイの気配も感じられ、どうやら全員合流しているようであった。
「《ぴぴ! ご主人、いま行く!》」
待ちきれないとばかりに雪ん子が行き、その後を続こうとしてファイントは、スカレットの身体に変化を感じていた。
感覚からして、スカレットがなんらかのスキルを使ったのであろうことは、ファイントは分かっていた。
「……あなた、何をしたの?」
ファイントは脅すようにそう言い、スカレットは「悪あがきだよ」と応える。
「【パティシエ】のスキルを使って、我が魂の源であるルトナウムを保護しただけの事。これ以上は、このファントムの身体も持たないし……せめて身体もこの魂と同じだけのレベルがあれば、世界全体を私好みに出来たんだけどなぁ……。
第一ラウンドは、君達の勝ちだよ」
「第一ラウンド……?」
スカレットの言葉に何らかの違和感を感じつつも、ファイントがそれを聞くことはなかった。
スカレットは煙のように消え去り----ファイントはそれを確認しつつ、雪ん子に続く形にて、黒い大穴の中に消えていくのであった----。
(※)絶望スカレット
【街】の実質的なリーダー的存在。担当する役職は、絶望
本気で戦えば世界全体を変えるほどの実力を持っているが、身体を構築している召喚獣であるレベルⅤ【ファントム】がそれに耐えられないため、いま現在は出力を抑えて戦っていた
本来の実力であれば、この世界そのものを改変し、自らの住みやすい、それこそ理想の【街】を作れるだけの才覚の持ち主
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