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第9章『失楽園のツクり方/冒険者サエジマ・ワタルの章』
第302話 マルガリータは成長途中(1)
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「----勝利を確信している時、それが一番の油断というのを理解しておくべきだよ。
そういう所もしっかり記憶すべきだったね。召喚獣のお2人さん?」
ニヒヒッと、不敵な笑みを浮かべながら、スカレットは2人にそう話す。
----スキル【無限の距離・反転】。
自分に向かって来る攻撃を、全て力の方向を反転させる。
相手に当てるはずだった攻撃は、逆向きとなり、自分へと返って来る攻撃となって、2人へと返って来た。
しかもただ返って来るだけではなく、そこにはスカレットの職業の特性が加わった状態で戻って来た。
「《ぴぴっ?! うごけ、ないっ?!》」
「動きが制限、身体が固定されてる?!」
そう、スカレットの職業である【パティシエ】。
その特性たる【万物の固定】というモノが、反転させられた2人の攻撃と共に、雪ん子とファイントはその場に固定されてしまったのだった。
「戦いとは常に利口な方が勝つ。この勝負、利口なのは私だったようですね」
そして、スカレットは2人にさらにスキルを施す。
そのスキルは、【達人の超直観】と呼ばれるスキルで、本来ならば料理中に活用するスキル。
「その効果は----考える時間を得るために体感時間を百万倍にもする。
そして、それを、あなた達に反転付与、っと」
「《----?!》」
「----?!」
本来であれば体感時間を百万倍にもして、考察して作戦を考える時間を作る【達人の超直観】。
それを反転し、"体感時間が百万分の1にする"というモノとなってしまい、彼女達にとっての『1秒』が、実際の時間だと『およそ11日と半日』になってしまっているのだ。
もう彼女達には、なんの拘束も必要ない。
なにせ、こちらとは全く別の次元で生きる者達となったのだから。
「----さてさて、冴島渉の方はどうなってるのかな?」
スカレットはそう言って、"見"に回るのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(……なんだよ、これ)」
俺、冴島渉は目の前で広がる光景に、どうすれば良いか困っていた。
目の前で戦っているのは、悪癖龍マルガリータと、変わり果てた姿となったヘミングウェイ。
狂暴そうな恐竜を思わせる右腕と脚、そして恐竜の部分には凍てつく氷が纏われている姿となった、ヘミングウェイ。
その凶悪な右腕と脚を振るうことで、氷を纏った爪の斬撃が放たれる。
それに応戦するは、マルガリータ。
【アルターフェザー】で生み出した羽によって氷を纏った斬撃を異界へと送る事で防ぎつつ、【ドラゴニック杖術】による攻撃によってヘミングウェイを攻め続ける。
一見するとマルガリータ優勢に思えるかもしれないが、マルガリータは後衛、つまり後ろから魔法などで攻撃するタイプの召喚獣。
一方でヘミングウェイは元々は盾役をさせるために召喚した召喚獣だから前衛、前で戦う事を前提としている。
マルガリータは盾役など他の仲間と一緒に戦うのを想定しており、この状況はまずい。
……だけど、召喚ができない。
恐らくスキル封印かなにかだと思うが、召喚が出来ない俺には見ていることしか出来なかった。
「はぁはぁ……気持ちいい!! 攻撃がめちゃくちゃ、きもちぃぃ~!!」
いや、見ているだけしか出来ないんだが……ヘミングウェイは闇落ちしても、やっぱりドМなんだな。
なんか心配するのが、少し馬鹿らしく思えて来るなぁ。
けれどもまぁ、敵の手に落ちているのは確かだし、何とか助け出さないといけないよな。
あの恐竜のような身体も、なんか不穏というか、怪しげな感じがするし、なんとかしなければ……。
「(でも、それ以上に気になるのは----)」
氷を纏う恐竜のような腕を持つヘミングウェイ。
それ以上に気になるのは----
「----せいっ!!」
杖を振るう、マルガリータ。
ドMであるヘミングウェイは自ら当たりに向かい、マルガリータの杖は見事に命中する。
命中したのは良い、良いんだが----
----ぐぐぐっ!!
「(やっぱりだ)」
----伸びている。
明らかに、マルガリータの腕が"伸びている"。
翼の先が血で塗れており、頭には電脳の輪っかが浮かんでいる。
他にも腕や足などもググっと伸びていて、うちのマルガリータは戦闘中に成長しているようだった。
明らかに別物として成長している。
「(……これはまさか、進化?)」
いや、俺はなにも指示していないんだが……。
なんで進化し始めてるんだ、マルガリータは?
ヘミングウェイの変化よりも、進化しようとしているであろうマルガリータの変化。
そっちの方が、俺としては気になるのであった。
(※)【達人の超直観】
【パティシエ】など、職人系の職業などに発現するスキル。作業中に発動する事によって、超集中状態に入る事で作業中に思案、考察することが出来るようになる
使用する事で熟練度が溜まっていき、使い続ければ続けるほど体感時間を長く感じることが出来る。スカレットの場合は1秒を100万秒、およそ11.5日くらいに感じることが出来る
さらにスカレットは、逆に100万秒を1秒に変えて、他者に付与することができる
そういう所もしっかり記憶すべきだったね。召喚獣のお2人さん?」
ニヒヒッと、不敵な笑みを浮かべながら、スカレットは2人にそう話す。
----スキル【無限の距離・反転】。
自分に向かって来る攻撃を、全て力の方向を反転させる。
相手に当てるはずだった攻撃は、逆向きとなり、自分へと返って来る攻撃となって、2人へと返って来た。
しかもただ返って来るだけではなく、そこにはスカレットの職業の特性が加わった状態で戻って来た。
「《ぴぴっ?! うごけ、ないっ?!》」
「動きが制限、身体が固定されてる?!」
そう、スカレットの職業である【パティシエ】。
その特性たる【万物の固定】というモノが、反転させられた2人の攻撃と共に、雪ん子とファイントはその場に固定されてしまったのだった。
「戦いとは常に利口な方が勝つ。この勝負、利口なのは私だったようですね」
そして、スカレットは2人にさらにスキルを施す。
そのスキルは、【達人の超直観】と呼ばれるスキルで、本来ならば料理中に活用するスキル。
「その効果は----考える時間を得るために体感時間を百万倍にもする。
そして、それを、あなた達に反転付与、っと」
「《----?!》」
「----?!」
本来であれば体感時間を百万倍にもして、考察して作戦を考える時間を作る【達人の超直観】。
それを反転し、"体感時間が百万分の1にする"というモノとなってしまい、彼女達にとっての『1秒』が、実際の時間だと『およそ11日と半日』になってしまっているのだ。
もう彼女達には、なんの拘束も必要ない。
なにせ、こちらとは全く別の次元で生きる者達となったのだから。
「----さてさて、冴島渉の方はどうなってるのかな?」
スカレットはそう言って、"見"に回るのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(……なんだよ、これ)」
俺、冴島渉は目の前で広がる光景に、どうすれば良いか困っていた。
目の前で戦っているのは、悪癖龍マルガリータと、変わり果てた姿となったヘミングウェイ。
狂暴そうな恐竜を思わせる右腕と脚、そして恐竜の部分には凍てつく氷が纏われている姿となった、ヘミングウェイ。
その凶悪な右腕と脚を振るうことで、氷を纏った爪の斬撃が放たれる。
それに応戦するは、マルガリータ。
【アルターフェザー】で生み出した羽によって氷を纏った斬撃を異界へと送る事で防ぎつつ、【ドラゴニック杖術】による攻撃によってヘミングウェイを攻め続ける。
一見するとマルガリータ優勢に思えるかもしれないが、マルガリータは後衛、つまり後ろから魔法などで攻撃するタイプの召喚獣。
一方でヘミングウェイは元々は盾役をさせるために召喚した召喚獣だから前衛、前で戦う事を前提としている。
マルガリータは盾役など他の仲間と一緒に戦うのを想定しており、この状況はまずい。
……だけど、召喚ができない。
恐らくスキル封印かなにかだと思うが、召喚が出来ない俺には見ていることしか出来なかった。
「はぁはぁ……気持ちいい!! 攻撃がめちゃくちゃ、きもちぃぃ~!!」
いや、見ているだけしか出来ないんだが……ヘミングウェイは闇落ちしても、やっぱりドМなんだな。
なんか心配するのが、少し馬鹿らしく思えて来るなぁ。
けれどもまぁ、敵の手に落ちているのは確かだし、何とか助け出さないといけないよな。
あの恐竜のような身体も、なんか不穏というか、怪しげな感じがするし、なんとかしなければ……。
「(でも、それ以上に気になるのは----)」
氷を纏う恐竜のような腕を持つヘミングウェイ。
それ以上に気になるのは----
「----せいっ!!」
杖を振るう、マルガリータ。
ドMであるヘミングウェイは自ら当たりに向かい、マルガリータの杖は見事に命中する。
命中したのは良い、良いんだが----
----ぐぐぐっ!!
「(やっぱりだ)」
----伸びている。
明らかに、マルガリータの腕が"伸びている"。
翼の先が血で塗れており、頭には電脳の輪っかが浮かんでいる。
他にも腕や足などもググっと伸びていて、うちのマルガリータは戦闘中に成長しているようだった。
明らかに別物として成長している。
「(……これはまさか、進化?)」
いや、俺はなにも指示していないんだが……。
なんで進化し始めてるんだ、マルガリータは?
ヘミングウェイの変化よりも、進化しようとしているであろうマルガリータの変化。
そっちの方が、俺としては気になるのであった。
(※)【達人の超直観】
【パティシエ】など、職人系の職業などに発現するスキル。作業中に発動する事によって、超集中状態に入る事で作業中に思案、考察することが出来るようになる
使用する事で熟練度が溜まっていき、使い続ければ続けるほど体感時間を長く感じることが出来る。スカレットの場合は1秒を100万秒、およそ11.5日くらいに感じることが出来る
さらにスカレットは、逆に100万秒を1秒に変えて、他者に付与することができる
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