俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
310 / 354
第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』

第294話 ブイオーは『なにか』を察する

しおりを挟む
 ----空気が変わった。


 それを直に感じているのは、ココアと相対するブイオー自身であった。
 目の前で戦っているココアが、明らかに別種の存在へと変わろうとしているのが、肌で感じていた。

「(ラブホちゃんの危険度が、明らかに上がりまくってる?!)」

 災害ブイオーは、ココアに勝てる自信があった。
 なにせ、絶望スカレットから、最凶最悪の職業ジョブを授かったからだ。


 ----スピリット系統職業【塔】。


 この職業ジョブは、タロットカードの1つ----16番目の大アルカナ【塔】をモチーフにしている職業ジョブである。

 ----【塔】。
 それは全部で22枚ある大アルカナの中でも、異色で、異質な大アルカナ。

 タロットカードには正位置、逆位置で意味合いが変わって来る。
 ちなみに、カードの上下が正しい位置の場合を『正位置』と呼び、逆の場合を『逆位置』と呼び、主にタロットを用いるタロット占いではこれを重要視している。

 例えば7番目のアルカナ【戦車】には、正位置だと『勝利』『優勢』『開拓精神』などの意味合いを持つが、逆位置だと『暴走』『劣勢』『焦り』など正位置とは反対の意味合いを持っている。
 簡単に言えば、正位置の大アルカナには良い意味合いが、逆位置の大アルカナにはそれとは逆の悪い意味合いを持っていると言える。
 勿論、正位置でも悪い意味合いを持つ大アルカナとして、【死神】や【悪魔】といった大アルカナもあるが、そういう場合は逆位置だと良い意味合いを持っている。

 基本的には正位置で持つ意味合いと、逆位置では反対の意味合いを持っていると言える。

 しかし、そんな中、【塔】は異色の大アルカナと言える。
 なにせ、【塔】は正位置と逆位置、そのどちらも凶悪なイメージしか持っていないのだ。

 正位置には、【破壊】【悲惨】【精神崩壊】など。
 逆位置には、【必要悪】【不幸】【天変地異】など。

 つまりは、正位置と逆位置、いずれにおいても凶----悪い意味を持つとされている、唯一のカード。

 災害ブイオーに与えられたこの【塔】という職業ジョブは、ブイオーと敵対する全てに災厄や災難を与える職業ジョブなのである。
 
「(私自身ブイオーと戦うだけで、常に全ステータスやらに弱体化デバフをかけ、さらには相手からの回復以外は全て吸収して自分の強化バフになる、私が有利でしかないこの戦い。
 ラブホちゃんの負けは、確定事項のはずなのに----)」

 自分が圧倒的に有利なはずなのに……。
 何故だか"このままだと負ける"という未来が、ブイオーに突き付けられているようであった。

「(ともかく、遊びは終わりにした方が良いですね。ラブホちゃん、あなたに対する復讐譚はこの超強力なスキルで終わらせましょう)」

 ブイオーは、【塔】の中でもっとも威力の高い、相手に破滅をもたらすスキルの発動を選択する。

「----職業スキル【八十禍津日神やそまがつひのかみ】!」

 このスキルは、穢れの多い国----黄泉国よみのくにに行った時の穢れによって成った神、八十禍津日神をモチーフにしたスキル。
 凶事や悪事に関係する神と考えられており、この神には2つの立場そくめんがある。

 1つは、『禍いをもたらす悪神的な性格』を強調する立場そくめん
 もう1つは、『悪いことに対して過ちを正させる善神的な性格』を強調する立場そくめん

 そしてこのスキルは、その2つの立場そくめんを両方発揮するスキル。


 つまり、このスキルの敵対者に『禍いをもたらし』、相手からの攻撃という『過ちを正させる』。
 ----かするだけで相手の体力を99%9割9分削り、相手からの攻撃を強制的に"停止"させる全体攻撃スキル。

 当たらない方が難しい攻撃を、受けたが最後、体力は残り僅か。
 そしてこちら側に対する全ての攻撃を停止、発動を全て制限させる。

 『攻撃』とは相手に殴り掛かったり、斬りかかったりするといったモノではなく、私自身ブイオーと戦う行為すらも『攻撃』とみなされる。
 すなわち、"歩く"や"走る"といった行為だけでなく、"呼吸する"や"心臓を動かす"といった生命維持行為ですらも『攻撃』となるのである。

「(さぁ、お別れだ。----ラブホちゃん)」

 そしてブイオーは技を放ち、


 それがもう遅かったと、知る事となったのであった。



(※)【塔】
 災害ブイオーの職業。スピリット系統
 絶望スカレットが災害ブイオーに与えた職業ジョブであり、簡単に言えば『敵対すると弱体化してしまう』という敵弱体化に特化した職業ジョブ。正確には、敵を弱体化する環境へと変質させる職業ジョブ
 【塔】に関連した、禍々しい神様や悪魔などの名前を持つスキルが多く、一番威力が高いスキルは【八十禍津日神やそまがつひのかみ】であり、かするだけで相手の体力を99%9割9分削り、相手からの攻撃を強制的に"停止"させる全体攻撃スキル
 その他にも、様々な敵対者に災いをもたらす、まさしく【災害】を担当する事となった災害ブイオーに相応しい職業ジョブなのである
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

処理中です...