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摂政

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第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』

第292話 災害ブイオーの職業(3)

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 ----【闇】属性の魔法、その【反転魔法】。

 災害ブイオーに効いたのは、それだけであった。
 それ以外の魔法は全て、災害ブイオーの能力上昇として認識されて、【闇】属性の【反転魔法】のみが、災害ブイオーの身体から吐血というダメージを引き出すことが出来た。

 つまり、災害ブイオーの弱点は、"自らの回復"。
 
「(回復魔法……いや、災害ブイオーにとって恵みになる魔法が、ヤツにとっての『災害』となる、という訳じゃな)」

 まるで回復の魔法で浄化される、不死アンデッドのような身体。
 理屈は何一つ分からないが、ともかくココアはブイオーに対する攻撃手段を発見した。

「(問題は、回復魔法ってのが妾はほとんど持っておらぬという事じゃ)」

 そもそも、ココアが使う四大力【マナ】は、エネルギーの力であり、魔術を司る力。
 治癒や回復などを司る力は、四大力【プラーナ】。

「(妾が使える回復系統の魔法なぞ、そんなに多くないぞ? 先程のように【闇】属性の【反転魔法】で……いや、アレはあまり多用できるような代物ではないのう)」

 そもそも、【反転魔法】は元々の魔法を無理やり反転させたモノ。
 元々しっかりとしている魔法を、無理やりに不安定な状態にしているようなモノなので、威力も勿論、不安定、暴走状態なのである。

 暴走している魔法を前提とした攻撃など、ココアの感覚からして見れば、とてもじゃないが策といえるような代物であった。

「(さて、どうするべきかのう)」



「----【首座悪霊ベルフェゴール】!」

 どうしようかとココアが悩んでいる間にも、ブイオーは次の攻撃に移行していた。
 
 ブイオーがスキルを用いると、彼女の雷の翼を覆うように機械のコードが覆う。
 そして雷を吸い取り、コードは超高速で回転するチェンソーとなっていた。

「ベルフェゴール……怠惰を司る悪魔の名を冠する"すきる"、じゃとはのう」


 ベルフェゴールとは、七つの大罪の1つ【怠惰】を司る悪魔。
 男を魅了する妖艶な美女の姿で現れる好色の罪をもたらす悪魔とされており、さらに占星術では性愛を司る金星の悪魔とみなされることもある。
 しかし、今回の場合は好色や性愛とかではなく、ベルフェゴールのもう1つの側面を色濃く出したスキルである、とココアは感じていた。

 ベルフェゴールのもう1つの側面----それは、"発明"を司る堕天使。

 便利な発明をすることにより、人々はその発明に頼り、やがては堕落する。
 『風が吹けば桶屋が儲かる』くらい、遠回りなやり方ではあるが、【怠惰】を司るベルフェゴールという悪魔が発明を冠する事、そして発明という側面を色濃く反映したスキルである事は間違いなかった。

 そして、そのチェンソーは、亜音速----つまりは、ほぼ音に近しいくらいの高速で、ココアを切りつけようと襲い掛かる。

「----【身体能力強化】!」

 そして、それをココアは身体強化の魔法で、かわしていく。
 無論、亜音速の速さで迫り来るチェンソーを躱しきるほどの速さを、バリッバリの後衛たるココアには持ち合わせていない。

 彼女がしているのは、あくまでも身体強化でチェンソーの攻撃を10割当たるから、8割当たるにする事。
 そして、自分の身体に防御という側面でもかけて、8割からさらに2割減らして、6割くらいにする事。

「(でも、流石に"ちぇーんそー"を受けきるのは、辛い!)」

 ココアは、自身の体力がゴリッゴリに削られているというのを自覚していた。

「(このままだと、妾の負けは確実! 濃厚! だとすれば、今からコイツを倒す新たな手段を見出さなければなるまい!)」

 対抗手段は分かっている。

 ----回復、または治癒。

 それがこの災害ブイオーにとっての弱点、彼女にとって受けたくない『災害』。
 しかしながらココアに回復魔法の適性は、ほぼゼロと言っても過言ではない。

 ならば、どうすれば良いか?
 答えは、既に決まっている。

 ----そういう存在に・・・・・・・なれば良い・・・・・

「(災害ブイオー、妾は今から、お主を倒すために、進化する!!)」
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