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第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』
第279話 オニャンコポン(2)
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『我が【街】の防衛機構、オニャンコポン。
冒険者よ、そう容易く攻略できると思うな』
オニャンコポンの口から出てきたのは、無機質な、機械的な音声。
【街】と書かれた仮面はオニャンコポンの意識を乗っ取り、侵入者である冴島渉達に攻撃を開始した。
----しかしながら、オニャンコポンはボス魔物とは言え、"レベルⅠ"。
【アバトゥワの塔】のボス魔物たるオニャンコポンは、アフリカに伝わる女神を基に生み出されている。
そしてアフリカの女神オニャンコポンが司るは、"天空"。
『----落ちよ、雹』
冴島渉達の頭上に、黒い暗雲が広がって行く。
そして、暗雲から雹が、どこにでもある雹が、冴島渉達目掛けて落ちて来る。
直径5cmほどの、巨大な球状や塊状の氷の粒が、冴島渉達に向けて雨のように降り注ぐ。
5cmほどの巨大な雹は落下速度はなんと時速100kmを越えており、その雹は単体でも甚大な被害を引き起こしていた。
たかが、天候。されども、雹。
小さな雹が降っているだけであるが、一説には雹の被害を"雹害"と呼ぶくらいだ。
自動車のボンネットや、窓ガラス、さらには家屋の破損。
農作物に大きな被害を与えるだけでなく、人の頭に直撃した場合には脳震盪を起こしたりして、最悪、死の危険性さえある。
そんな巨大な雹が、蟻に跨れるほどの大きさの小人になった冴島渉達へと降り注ぐ。
『さぁ、雹よ。侵入者を葬り給え』
----そうして、巨大な雹は、冴島渉達へと、相手を殺すべく降り注いでいったのである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(ここまで……です?)」
自分の何倍にも及ぶ巨大な雹が降り注ぎ、悪癖龍マルガリータは自らの敗北を悟った。
いくら数十にも及ぶレアスキルを持っているマルガリータと言えども、自身に迫りくる巨大な雹を破壊するほどのスキルは持ち合わせていなかったからだ。
「(せっかく、上手く行くと思ったのに……)」
作戦を提案したのは、ココア。
しかし、それが出来ると判断したのは、マルガリータ当人。
蟻達を自らの魅力で虜にし、臼を倒して、オニャンコポンの顔を傾けさせる。
途中までは上手く行ったが、結果としていま、敗北しているのは自分達だ。
----次、頑張れば良い。
----今回でダメでも、次頑張れば良い手が思いつく。
----もしくは、この経験を糧として、新たなレアスキルが手に入るかもしれない。
マルガリータはそう納得しようとした。
自分はこのパーティーの中では一番の新参者であり、レベルが低い。
故にだからこそ、これから多くの成長の機会があるのだと。
『まったく、仕方ない♪ 仕方ない♪』
しかし、そんな機会すら、このパーティーでは与えてくれない。
『蟻と一緒に戯れるご主人ちゃんを見ていたかったけど、ここまで、だね♪』
----ずしぃぃぃぃんっっ!!
マルガリータに迫る雹を、巨大な雹を、"元の大きさに戻ったファイント"が払いのける。
===== ===== =====
【聖域生成】 固有スキル
;自らが管理する聖域を生成するスキル。聖域内にいる味方の能力は上昇し、逆に敵の能力は減少していく
===== ===== =====
それは、ファイントが持つ固有スキル【聖域生成】。
聖域という特殊なフィールドを生み出し、味方を強く、そして敵を弱くするスキル。
そして、このスキルを張れば、このダンジョンの【アバトゥワ】という小人の影響を受けない領域を生成できる。
『要するに、簡単な話だよね♪
【このダンジョンと言うフィールドが私達を小人状態にしてたんだから、それを覆す領域を張れば良い♪】というだけよね☆』
そう、ファイントが本気を出せば、スキルを発動すれば、それで済む話。
やらなかったのは単に当人が楽しむため、蟻に跨れるほどの小さなボスとの思い出を共有する、ただそれだけのため。
冴島渉が最初に行わせれば、それで済むだけの話。
現に今、ファイントは同じサイズとなった事で、圧倒的優位が消えたオニャンコポンの仮面を破壊し、そのまま目を合わせる。
『はい、攻略完了♪』
----情けなかった。
マルガリータは自分が情けなかった。
マルガリータは、アイドルに憧れている。
しかしその前に、ドラゴンなのだ。
ドラゴンとは、圧倒的な上位種族。
強者である事、王者である事が必須条件である、そんな最強種族。
今の今まで、マルガリータはドラゴンである事を『あたりまえ』の事と認識し、アイドルであろうとしていた。
そして今、マルガリータはドラゴンである事を求めた。
最強である事を、自分が最強の種族である事を求めたのであった----。
===== ===== =====
Fランクダンジョン《アバトゥワの塔》のボス魔物を倒しました
確定ドロップとして、魔石(小)がドロップします
また、初回討伐特典として以下の物の中から、1つを選んで取得できます
なお、2回目以降は討伐特典は発生いたしません
----- ----- -----
「可愛いボクに寄こせ その力を」
----- ----- -----
----ドラゴンによる 強制介入を 確認
悪癖龍マルガリータに 【ボスモンスターコア《アナンシ》】を 付与します
悪癖龍マルガリータは 固有スキル【物語の王アナンシ】を 獲得しました
===== ===== =====
(※)ボスモンスターコア《アナンシ》
自らの力不足を憂い、ドラゴンの矜持として強者であることを望んだマルガリータが、ダンジョン【アバトゥワの塔】と同じく、アフリカにあるダンジョン【ナンシーおばさんの書庫】から奪い取ったモノ
ボスモンスターコアとは、ダンジョンのボス魔物の魂であり、このコアがある限りはダンジョンボスモンスターを倒しても何度でも復活し、逆にこれを奪えばダンジョンを存在させたままボス魔物を消し去ることが出来る
(※)アナンシ
アフリカにあるダンジョン【ナンシーおばさんの書庫】にいたボス魔物。コアをマルガリータが取り込まれたことにより、ダンジョン内から消失した
アナンシとは、アフリカ神話における神であり、妖精。『ギゾー』『クワク・アナンセ』『ナンシーおばさん』など様々な別名を持ち、悪戯好きなトリックスターとして、ある時は他者を騙して出し抜こうとした梨、またある時は人を助けたりする
全ての"知恵"を独占しようと、世界中の"知恵"を瓢箪に閉じ込めようとするが、最後には虚しさを悟って"知恵"を解き放ったという伝承を持ち、また自身が主人公である物語以外にも“全ての物語の王”になったという伝承も持つ
冒険者よ、そう容易く攻略できると思うな』
オニャンコポンの口から出てきたのは、無機質な、機械的な音声。
【街】と書かれた仮面はオニャンコポンの意識を乗っ取り、侵入者である冴島渉達に攻撃を開始した。
----しかしながら、オニャンコポンはボス魔物とは言え、"レベルⅠ"。
【アバトゥワの塔】のボス魔物たるオニャンコポンは、アフリカに伝わる女神を基に生み出されている。
そしてアフリカの女神オニャンコポンが司るは、"天空"。
『----落ちよ、雹』
冴島渉達の頭上に、黒い暗雲が広がって行く。
そして、暗雲から雹が、どこにでもある雹が、冴島渉達目掛けて落ちて来る。
直径5cmほどの、巨大な球状や塊状の氷の粒が、冴島渉達に向けて雨のように降り注ぐ。
5cmほどの巨大な雹は落下速度はなんと時速100kmを越えており、その雹は単体でも甚大な被害を引き起こしていた。
たかが、天候。されども、雹。
小さな雹が降っているだけであるが、一説には雹の被害を"雹害"と呼ぶくらいだ。
自動車のボンネットや、窓ガラス、さらには家屋の破損。
農作物に大きな被害を与えるだけでなく、人の頭に直撃した場合には脳震盪を起こしたりして、最悪、死の危険性さえある。
そんな巨大な雹が、蟻に跨れるほどの大きさの小人になった冴島渉達へと降り注ぐ。
『さぁ、雹よ。侵入者を葬り給え』
----そうして、巨大な雹は、冴島渉達へと、相手を殺すべく降り注いでいったのである。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(ここまで……です?)」
自分の何倍にも及ぶ巨大な雹が降り注ぎ、悪癖龍マルガリータは自らの敗北を悟った。
いくら数十にも及ぶレアスキルを持っているマルガリータと言えども、自身に迫りくる巨大な雹を破壊するほどのスキルは持ち合わせていなかったからだ。
「(せっかく、上手く行くと思ったのに……)」
作戦を提案したのは、ココア。
しかし、それが出来ると判断したのは、マルガリータ当人。
蟻達を自らの魅力で虜にし、臼を倒して、オニャンコポンの顔を傾けさせる。
途中までは上手く行ったが、結果としていま、敗北しているのは自分達だ。
----次、頑張れば良い。
----今回でダメでも、次頑張れば良い手が思いつく。
----もしくは、この経験を糧として、新たなレアスキルが手に入るかもしれない。
マルガリータはそう納得しようとした。
自分はこのパーティーの中では一番の新参者であり、レベルが低い。
故にだからこそ、これから多くの成長の機会があるのだと。
『まったく、仕方ない♪ 仕方ない♪』
しかし、そんな機会すら、このパーティーでは与えてくれない。
『蟻と一緒に戯れるご主人ちゃんを見ていたかったけど、ここまで、だね♪』
----ずしぃぃぃぃんっっ!!
マルガリータに迫る雹を、巨大な雹を、"元の大きさに戻ったファイント"が払いのける。
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【聖域生成】 固有スキル
;自らが管理する聖域を生成するスキル。聖域内にいる味方の能力は上昇し、逆に敵の能力は減少していく
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それは、ファイントが持つ固有スキル【聖域生成】。
聖域という特殊なフィールドを生み出し、味方を強く、そして敵を弱くするスキル。
そして、このスキルを張れば、このダンジョンの【アバトゥワ】という小人の影響を受けない領域を生成できる。
『要するに、簡単な話だよね♪
【このダンジョンと言うフィールドが私達を小人状態にしてたんだから、それを覆す領域を張れば良い♪】というだけよね☆』
そう、ファイントが本気を出せば、スキルを発動すれば、それで済む話。
やらなかったのは単に当人が楽しむため、蟻に跨れるほどの小さなボスとの思い出を共有する、ただそれだけのため。
冴島渉が最初に行わせれば、それで済むだけの話。
現に今、ファイントは同じサイズとなった事で、圧倒的優位が消えたオニャンコポンの仮面を破壊し、そのまま目を合わせる。
『はい、攻略完了♪』
----情けなかった。
マルガリータは自分が情けなかった。
マルガリータは、アイドルに憧れている。
しかしその前に、ドラゴンなのだ。
ドラゴンとは、圧倒的な上位種族。
強者である事、王者である事が必須条件である、そんな最強種族。
今の今まで、マルガリータはドラゴンである事を『あたりまえ』の事と認識し、アイドルであろうとしていた。
そして今、マルガリータはドラゴンである事を求めた。
最強である事を、自分が最強の種族である事を求めたのであった----。
===== ===== =====
Fランクダンジョン《アバトゥワの塔》のボス魔物を倒しました
確定ドロップとして、魔石(小)がドロップします
また、初回討伐特典として以下の物の中から、1つを選んで取得できます
なお、2回目以降は討伐特典は発生いたしません
----- ----- -----
「可愛いボクに寄こせ その力を」
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----ドラゴンによる 強制介入を 確認
悪癖龍マルガリータに 【ボスモンスターコア《アナンシ》】を 付与します
悪癖龍マルガリータは 固有スキル【物語の王アナンシ】を 獲得しました
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(※)ボスモンスターコア《アナンシ》
自らの力不足を憂い、ドラゴンの矜持として強者であることを望んだマルガリータが、ダンジョン【アバトゥワの塔】と同じく、アフリカにあるダンジョン【ナンシーおばさんの書庫】から奪い取ったモノ
ボスモンスターコアとは、ダンジョンのボス魔物の魂であり、このコアがある限りはダンジョンボスモンスターを倒しても何度でも復活し、逆にこれを奪えばダンジョンを存在させたままボス魔物を消し去ることが出来る
(※)アナンシ
アフリカにあるダンジョン【ナンシーおばさんの書庫】にいたボス魔物。コアをマルガリータが取り込まれたことにより、ダンジョン内から消失した
アナンシとは、アフリカ神話における神であり、妖精。『ギゾー』『クワク・アナンセ』『ナンシーおばさん』など様々な別名を持ち、悪戯好きなトリックスターとして、ある時は他者を騙して出し抜こうとした梨、またある時は人を助けたりする
全ての"知恵"を独占しようと、世界中の"知恵"を瓢箪に閉じ込めようとするが、最後には虚しさを悟って"知恵"を解き放ったという伝承を持ち、また自身が主人公である物語以外にも“全ての物語の王”になったという伝承も持つ
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