俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
293 / 354
第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』

第277話 【アバトゥワの塔】(2)

しおりを挟む
 "アリ"とは、とても力が強い生物である。

 なにせ、自分の体重の700倍の重さを運ぶことが出来るといわれている。
 さらには、上下の顎が生み出す力は自分の体重の300倍を超えると言われており、蟻の身体じしんを虫としては極めて高い8cmもの高さまで押し上げ、40cm近く離れたところまで弾き飛ばすことが出来る。

 これを仮に、人間サイズに換算する。
 ここでは2mmの蟻を800倍、160cmの人間サイズになったとして考えてみることとする。

 体重が60kgとして、運ぶことが出来る重さは、驚異の"42t"。
 顎の力だけで"64m"を優に超える高さまで飛ばし、"320m"も離れた所まで一気に飛ぶことが出来る。

 これはまさしく、超人並みの能力である。

 そして今、【アバトゥワの塔】にて、小人アバトゥワサイズとなった俺達は、そんな蟻に苦戦していた。


 ===== ===== =====
 【キリング・ジャイアント】 ランク;Ⅰ
 強い相手に対して、著しい闘争心を持つ蟻型の魔物。自分よりも強い相手と戦う場合、自身の戦闘能力を上げることができる
 ===== ===== =====


 俺達の前に現れたのは、【キリング・ジャイアント】というランクⅠの魔物の群れ。
 キリング・ジャイアントは、自分よりも相手が強い場合、戦闘能力をほんの少し、具体的に言えば2倍にまで上げる事が出来るというそれだけの魔物でしかない。
 2倍というと強いかもしれないが、キリング・ジャイアントは本物の蟻と同じくらいの2mmくらいの大きさしかないのだ。

 そんな蟻の力が2倍になったところで、人間に勝てると思うだろうか?

 召喚獣として召喚する際も、召喚する際に必要となる魔力はゴブリンの1/1000----つまり、ゴブリン1000匹とようやく魔力で釣り合うくらいの扱いしか受けていないのだ。

 それくらい弱いキリング・ジャイアントの群れに対し、俺達は"苦戦"していた。

「《ぴぴっ!!》」
【アンッツゥ~!!】

 【《悪童龍神ポリアフ・マスタードラゴン》雪ん子(オーバーロード)】という本来であれば強力すぎる雪ん子の剣撃が。
 ----キリング・ジャイアントの顎で、止められていた。

 ランクⅤの雪ん子と、ランクⅠのキリング・ジャイアント。
 本来であれば勝負にもならないはずの戦いが、互角と言う形で、俺達の前で繰り広げられていた。

「《ぴぎぃ!!》」
【アンツゥ~!】

 ……あっ、互角と言う訳ではない。
 今、雪ん子がちょっと強めに力を込めたら、普通にキリング・ジャイアントが真っ二つになってた。

 つまり、たかが蟻一匹を始末するのに、雪ん子が本気にならなければならない事態が繰り広げられていた。

【【【アントォ!!】】】
「《ぴぴっ!!》」

 そしてそのまま、雪ん子はキリング・ジャイアントの群れ目掛けて、突進していった。

 ランクに差があるのに、どうしてこういう事態になっているかというと、その理由は俺達が相手しているオニャンコポン、そんな彼女が握る杖にあった。


 ===== ===== =====
 【下剋上等の杖】 装備アイテム
 【街】所属の開発ベンチャーちゃんが、【世界球体=下剋上世界=】を加工して生み出した杖型の装備アイテム。装備者の周囲に下剋上等フィールドを展開し、周囲の者が倒される時に得られる経験値を全て自らに吸収する

 (※)下剋上等フィールド
 弱者であろうとも自らの知恵と力を使い、常に下剋上が行われている【下剋上世界】と同様のフィールド。この世界では弱者と強者との、圧倒的な力の差はなくなり、例え弱者であってもシステムの壁を越えて強者を葬ることが出来る
 ===== ===== =====


 オニャンコポンが持つ、杖。
 その杖が発する下剋上等フィールドというのが、本来はランクが上なはずのこちらにも、ダメージが効く仕様へと変換しているのだ。

 あの杖さえなければ、こんな蟻なんか、大きさの差なんて関係なく、無双できると言うのに!

 ただでさえ、こちとら、小人アバトゥワサイズで大変だというのに……。

 ファイントも雪ん子ほどではないが、魔法が効きづらいらしく、なかなか前に進まない。
 相手はただのランクⅠの蟻型魔物で、こっちはオニャンコポンと顔を合わせれば終わるのに!




「ボス! ここは、可愛いボクに、お任せあれ!」

 と、そんな中、悪癖龍マルガリータがそう宣言する。

「いっくよぉ~! マルガリータ・オン・ステージ! イン・アフリカ!」

 そして、何故かマルガリータは、いきなりアイドルのように、歌い始めるのであった……。



(※)【世界球体=下剋上世界=】
 【街】が所有していた【世界球体パンクスフィア】の1つで、球体の中には常に下剋上が行われている戦乱の地たる【下剋上世界ゲコウジョウパンク】が閉じ込められている
 この【世界球体】には、弱者であろうとも、隙さえちゃんと見極めることが出来れば、強者を倒せるという一発逆転を果たすことが出来る。逆に言えば本来であれば絶対に勝てるであろう強者であろうとも、一瞬たりとも気が抜けない状況に晒され続けるという事である

 【街】はこの能力を杖という、装備アイテム状に加工し、ランクⅠの魔物しか出てこない【アバトゥワの塔】を強力な高ランクダンジョンに変えた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...