俺の召喚獣だけレベルアップする

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第8章『【街】/武装姫ヘミングウェイの章』

第276話 【アバトゥワの塔】(1)

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 ~~前回までの あらすじ!!!~~
 勝手に転移されたヨーロッパ国で、冴島渉の召喚獣の1体、武装姫ヘミングウェイが闇落ちされて、敵の手に落ちた。
 事情を堕天使ファイント・ルシファーから聞いた冴島渉は、ヘミングウェイを奪った【街】があるレムリア大陸へと向かう事にしたのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ----幻の大陸、レムリア大陸。

 インド洋に浮かぶ幻の古代大陸であり、なおかつ俺の召喚獣、武装姫ヘミングウェイを奪った【街】がある場所だ。

 いま俺はそのレムリア大陸を目指して、一路、アフリカへと向かっていた。

 何故、直接レムリア大陸に向かわないのかと言われるだろうが、これがレムリア大陸へ向かうための最短ルートの1つだからである。



 幻の古代大陸であるレムリア大陸、そこは【街】がこの時代に蘇らせた大陸。
 当然ながら船や飛行機などの直行便は、存在しない。

 ならば、とレベルⅤの【召喚士】である俺は、空を飛ぶ巨大鯨型の召喚獣【空島クジラ】や、海をも走って通過する超人の輸送特化型召喚獣【韋駄天キャリアー】などを使おうとするも、マイマイン----つまりはレベルⅩの冒険者たる空海大地から止められた。
 どういう理由なのかは、同じレベルⅩの冒険者たる赤坂帆波さんの方から説明を受けた。

 なんと、レムリア大陸で【街】は、侵入者を寄せ付けない防御結界を張っているらしいのだ。

 相手の攻撃力、貫通力、特性などを無視する、レムリア大陸の超常的存在によって生み出された異次元バリア。
 このバリアの前には、俺でなくても、俺なんかよりも遥かにレベルが高いはずの空海大地や赤坂帆波ですら破壊も、通過も出来ない、無敵の障壁である。

 では、どうすれば良いのか。
 その答えこそが、俺がいま向かおうとするアフリカなのである。

 レムリア大陸は、レベルⅩ相当の空海大地と赤坂帆波でも、入れないほどの超強力すぎる障壁が張られている。
 しかしそんな強力な障壁にも、欠点はある。

 それは----出入り口の存在。

 インド洋に浮かぶ古代大陸は、四方に大きな国が存在する。

 東に、インドネシア。
 西に、アフリカ。
 南に、オーストラリア。
 北に、インド。
 
 この4つの国の中心に位置する巨大古代大陸、それがレムリア大陸なのだ。

 そして【街】は、この4つの国の特定のダンジョンに、自分達の住むレムリア大陸への入り口を作った。
 この4つのダンジョンは階段がないワンフロアダンジョンと呼ばれるダンジョンで、ボスを倒せば、すぐさまレムリア大陸へと直行することが出来る。
 そんなあからさまな通り道を作る事により、無敵の障壁を維持している。
 明確な弱点が多数あるも強力な能力を持つ吸血鬼のように、強力すぎる結界を維持するためにすぐに通れる出入り口を用意しているのだと、空海大地と赤坂帆波は教えてくれた。

 それを聞いた俺は、アフリカにある出入り口にあるダンジョン、【アバトゥワの塔】に入ったという訳だ。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「はぁはぁ……」

「《ぴぴっ? ご主人、だいじょうぶ?》」
「ご主人様、きつそうね☆ なんなら【騎馬】スキルで運んであげましょうか?」
「主殿、無茶は禁物じゃよ。妾も辛い、主殿はもっと辛い。"うぃーく"を話すのは悪い事ではないと思うのじゃ」
「ボス、ボス! 可愛いボクは疲れました! 休憩しましょう!」

 俺達はいま、【アバトゥワの塔】というダンジョンを歩いていた。

「戦わないタイプのボス、とは聞いていたが……まさか、こういうタイプだとは----」

 俺はそう言いつつ、上を、遥か上を見上げる。


 そこにはエベレストの100倍は軽くあろうかという、"石臼"。
 そして、その石臼と同じくらいにまで巨大な、猫耳女性。


 ===== ===== =====
 【オニャンコポン】 ランク;Ⅰ 《アバトゥワの塔》ボス魔物
 司祭を通さず、人との共存を願う心優しき女神の伝承を持つボス魔物。攻撃は一切通じない代わりに、顔を合わせて会話する事で恥ずかしくて逃げ帰ってしまう
 ===== ===== =====


 俺の前にそびえるこの巨大な猫耳女性は、オニャンコポン。

 ここアフリカに伝わる現地住人が信奉する神、オニャンコポンの伝承から生まれたボス魔物だ。

 オニャンコポンという伝承では、人と共に暮らしていたが、老婆が石臼でヤムイモなる食べ物を挽いていたところ、うっかり杵がすっぽ抜けてオニャンコポンに直撃。
 「人間と一緒に暮らすことは難しい」とまるで哲学的なことを、ただ杵が当たっただけで悟ったオニャンコポンは、その後、天空に住むようになったと伝わっている。

 伝承では、その後、老婆は臼を積み上げて謝りに行ったとされており、あの巨大な臼はその伝承になぞらえて設置されているのだろう。

 その後の伝承では、老婆は臼をいくつも積み上げて、オニャンコポンに謝罪しにいこうとしたのだそうだ。
 なんで臼を積み上げようとしたのかは分からんが、老婆のガッツと謎根性で臼タワーはオニャンコポンが暮らす空の世界に目と鼻の先にまで近づいた。
 しかしあと一個足りなかったために一番下の臼を取ろうとして、臼で積み上げた臼タワーは崩れ、下界で倒れた臼に巻き込まれて多数の被害が発生。
 その事を見たオニャンコポンは、さらに悲しみ、遥か空の彼方へと去って行ったと伝わっている。

 俺達がする事は、簡単だ。

 ただ石臼の上に登って、目の前に居るオニャンコポンと顔を合わせて、さらに上空の世界----つまりはダンジョンの外まで逃げ帰ってもらう事。
 たったそれだけで倒せるのだから、このダンジョンは非常に楽だと言えるだろう。

 問題があるとすれば----


【ギギッ!!】

 
 俺達の前に、蟻の群れが立ち塞がる。

 蟻型の魔物だが、特に強力なスキルも持ち合わせていない、ただの蟻サイズの魔物だ。
 問題は、その蟻サイズの魔物が、俺達の前に、"巨大な犬サイズで出現している事"。

 そう、今の俺達は----蟻に跨れるほど、小さくなっていたのであった。



(※)【アバトゥワの塔】
 アフリカに存在する、レムリア大陸へと続く出入り口が存在するワンフロアダンジョン。ボスはオニャンコポンで、臼の上に自力で辿り着き、オニャンコポンと顔を合わせて退散させることがクリア条件となっている。そのため、空を飛ぶものには飛行限界が用意されており、臼を上らないとクリアできない設計となっている
 アバトゥワとは、アフリカに伝わる小人の妖精であり、その背丈は蟻に乗る事が出来るほど小さいと伝わっている。このダンジョンに入るとクリアするまで、アバトゥワと同じ背丈まで縮んだ状態でダンジョン攻略に挑まなくてはならず、【召喚士】などで召喚獣を呼び出しても同じように小さい身体の状況で挑戦する事となる
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