俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第7章『たまにはゆっくり、旅館でいい気分♪/吸血女帝ココアの章』

第273話 ファイント、スカレットに----(2)

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 ----暗黒武装姫ヘミングウェイ。

 左半分のツインテールを、闇夜よりも暗い漆黒の髪に変えられた、暗黒方面ダークサイドに堕ちたヘミングウェイ。
 彼女は「クケケケ……」と良く分からない笑い声をあげながら、敵であるはずの絶望スカレットの隣に立っていた。

「あなた、勝手に召喚獣を変えたのね」

 私が睨みながら言うと、スカレットはまるで言葉遊びでもしてるかのようにこう答えた。

「いいや、召喚獣を混ぜただけだよ。合一召喚獣の片方を、レベルⅥ【冥界姫ラセツ】へと」



 合一召喚獣----2種類以上の召喚獣を組み合わせて召喚する、極めて特殊な召喚獣。
 武装姫ヘミングウェイの場合、左半分に妖怪系の召喚獣、右半分に戦乙女系の召喚獣を組み合わせることで、身体を構築している。
 なんで身体を色々な召喚獣に交換しているなら、脳や心臓はどうなっているのかという問題は考えるまでもない。

 ----考えるべき問題は、その脳を侵食するほどの邪悪な召喚獣。

 冴島渉のレベルはⅤ----つまり、レベルⅥの召喚獣【冥界姫ラセツ】を御せるほどの力はない。
 その冥界姫ラセツの暗黒の力が、暗黒武装姫ヘミングウェイへと変え、そして絶望スカレットの仲間という我々の敵となった。

 ファイントはそう分析し、絶望スカレットを睨みつける。



ご主人様の物を盗ったらいけないって、あなたは習わなかったんですか?」
「残念ながら、ヘミングウェイを物扱いする人には、言われたくはないかなぁ?」

 ----それに、君はもうそういう軽口を聞けなくなる。

 スカレットはそう言って、懐から金色の手袋を取り出した。



 ===== ===== =====
 【理想手袋】 近距離兼遠距離武器
 射程範囲;視界に入る範囲 理想の実現確率;98%

 《理想郷》小鬼を倒した事で生まれる、専用武器。黄金の手袋の形をした、視界に入る範囲なら相手がどこに居ようとも射程範囲となれる、近距離武器にして、遠距離武器
 この武器自体には攻撃力はなく、その能力は他者の『生きる希望』を奪う事。生きる希望を奪われた相手は、なにを受けても感じ取れない死人と同等になってしまう
 ===== ===== =====



「これは、【《理想郷》小鬼】という小鬼を倒した際に手に入れた、他者の希望を奪う武器。まぁ、感情を失くす武器であって、絶望に堕とす武器ではないので、あんまり気に入ってるとは言えないんだけどね。
 ----でも、君を我が【街】の住人に出来るなら、私はこれを喜んで装着つけるよ」
「私の、地獄の主サタンとしての能力【地獄生成】ですね」
「話が速くて、助かるよ」

 【地獄生成】----それはファイントの忌むべき以前の姿、地獄の主サタンが持っていた固有スキル。
 地獄の主サタンが居る場所を中心として、地獄を広げまくるスキル。

「私の【地獄生成】を利用して、【街】の理想の世界を作るつもりなんでしょう? 何かを生み出すには、何かを破壊する----創造と破壊は、表裏一体なのですから」
「えぇ、【街】のために一度、この世界を破壊するのに、あなたの【地獄生成】のスキルは実に良い・・っ!!」

 スカレットは、歯が見えるほどの満面の笑みで、そう答える。

「私達【街】は破壊を推奨していません。私達が欲しいのは、ただ【街】を作るために整地された土地。
 あなたの【地獄生成】は地獄という領域にて、この世の文明を破壊する。その上、地獄からは死者が蘇るから、その者をルトナウムの身体として利用できる。一石二鳥とは、まさにこの事! 実に良いっ!!
 故に、その力----我が【街】のために使わせてもらいましょう」

 理想手袋を嵌めたスカレットが、ぎゅっと虚空を握りしめる。
 それと同時に、ファイントの身体が、なにか大きな手のようなモノで握りしめる感覚が襲う。

 しかし----

「----この程度、ですか?」

 それをファイントは、すました顔で受け流していた。

「痛っ……?!」

 むしろ、攻撃を仕掛けたスカレットの方が、大きなダメージを受けて、手から血を流しているくらいだった。


「極めて堅固な城と同等の防御力を得るスキル【湯池鉄城とうちてつじょう】。それさえあれば、あなたの手袋なんて、攻撃にも入りませんよ☆」

 ふふんっと、自慢げに誇るファイント。



「(この手袋、防御力無視なんだけど)」

 一方で、スカレットはファイントの強さに感嘆していた。

「(《理想郷》小鬼から生み出された理想手袋は、現時点で最強の洗脳武器。相手の希望を奪い取るこの武器に、抗うスキルはないと思っていましたが----とんだ強敵ですよ)」

 つまり、先程のファイントは、ただ単に素で防いだのだ。
 
 彼女の希望は、この手袋で奪い取れないくらい、強固で、そして膨大だ。

「----経験できない召喚獣。その召喚獣が記憶し、経験を知る事で生まれた、感情。その強さを、甘く見過ぎたようです」

 仕方ない、とスカレットはあっさりとプランを変更する。


「聖天使ファイント・ルシファー、あなたに伝言を頼みます。
 内容は、武装姫ヘミングウェイを取り返したくば、私の所に取り返しに来るが良い。

 ----【街】の本拠地、【伝説の大陸レムリア】にある我々の街に」


 「じゃあね、また会おうよ」とスカレットは、ヘミングウェイと共に帰って行ったのであった。



(※)伝説の大陸レムリア
 はるか昔の地球に存在していた大陸であり、絶望スカレットが復活させた大陸。現在は【街】の本拠地が置かれており、元々レムリアにあったとされる高度な文明を使っている
 『人々が頼んだことだけを教えてくれる、宇宙存在からの伝達があった』とされており、その他には『ワープによる移動』、『テレパシーによる意思疎通』、『超能力で空を飛ぶ人達』など、極めて高度な超文明があり、【街】はその超文明を使っている
 一番の特徴として、『自分と他の人々との境がなかったため、家も持ち物もパートナーも全てみんなで共有するという考え方が普通であった』と伝えられている。レムリア人は心と心が繋がっているため、疑うことや嫉妬するということはなかった
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