上 下
270 / 350
第7章『たまにはゆっくり、旅館でいい気分♪/吸血女帝ココアの章』

第256話 ボタン瞳リターンズ(2)

しおりを挟む
「【雷帝】!」

 ブイオーは空を舞いながら、雷を放つ。
 放たれた雷は空間を抉りつつ、ココアへと迫って来る。

「----土魔法の壁、なのじゃ!」

 ココアは魔法を用いて、土の壁を作り出す。
 作り出された土の壁はブイオーの放つ雷にぶつかると共に、ぽろぽろっと、まるで砂のようになって崩れてゆく。

「粉々じゃな……」

 ココアの眼には、ブイオーの放つ雷が、ただの雷魔法でないことは分かっていた。

 雷魔法が壁にぶつかった瞬間、ココアは悪寒に支配された。
 自分の中の魔法が切り刻まれ、分解されるような、バラバラにされてしまった感覚。

「(考えてみれば、壁を破壊したからと言って、砂のようになるのは可笑しい話じゃ)」

 土魔法で作った壁が、強い衝撃を加えられて、瓦礫や破片となって散らばるのならまだ分かる。
 しかし、砂のようになるだなんて、本当に物凄い力によって、分解でもされない限りは砂にはならないだろう。

「災害を名乗るうちの雷が、ごくごく普通な雷としての特性しか持ってない訳がないでしょう。
 ----うちの雷は荒々しい嵐のような性質を持ち、触れた物質を破壊し尽くす雷なのですし」


 ===== ===== =====
 【雷帝・嵐】
 雷属性の中でも、格別といっても良いほど上級のスキル。その雷は嵐のように、全てを無慈悲に斬り潰す
 この雷に触れた物は、原子や魔力レベルで粉々に1つずつ斬り潰され、回復できないくらいにバラバラにする
 ===== ===== =====


「なるほどのう。あらゆる物を"ばらばら"にする雷かのぅ……雷は速いし、強そうじゃわい」
「ふふんっ! そぉら、まだまだ行くよ!」

 ----先程までは、小手調べ。
 そう言わんばかりに、ブイオーは雷を放つ、放つ、放つ。

 そんな触れたら一発アウトな雷を、ココアは魔法の壁で防ぐ、防ぐ、防ぐ。

「ほらほら、ほら! どんどん、どんどん行くぞ!」
「----くそう! だがしかし、妾1人でなければ……!」
「仲間の到着でも待ってるんですか? 残念ながら、それは無駄というもの!」

 ばんっ、完璧に断言するブイオー。

「うちの仲間、絶望スカレットがあなたの仲間を足止めしています。そもそも、仲間がどこに居るかも分からずに、探し出せるとでも?」
「くっ……!」

 実は、冴島渉達と合流して、ブイオーを倒せれば良いと思ったココア。

「(まぁ、妾に敵が差し向けられている以上、あちら側にも敵が向けられてると考えるのが自然じゃからのう。
 ----しかし、絶望スカレット、のぅ)」

 ココアの頭の中では、【災害】と名乗ったブイオーが思い浮かぶ。

「(【災害】と、名と称号を変えたシーヴィー。そして、主殿達の所には【絶望】の名を冠する者……。
 なにか、とんでもなくヤバイ連中ではあるようじゃ)」

 冴島渉達の到着を待つ構えで居た、吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世。
 しかしながら、ここでココアは冴島渉達を迎えに行くという選択肢を、頭の中に入れる。

「しかし、主殿達はいったいどこに……」

 と、その時である。


 ----どっかああああああんっっ!!


 後ろに見えるドラキュラ城が、爆破したのだ。
 屋根が吹き飛び、そこから1匹の小鬼が吹き飛ばされる。

【ステエエエエエエッキキキキ! ファイントと雪ん子、強すぎでステッキィィィィ!】

 そして、小鬼は爆破した。


「……爆破したのじゃ」
「……爆破、しましたね」

 2人の意見が合致する中----

 
 ココアは走って行き、その後をブイオーが追うのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「【《ステッキ》小鬼】があっという間にやられてました、ね」

 残念無念、とばかりに、かの小鬼を引き連れてやって来た敵。
 ペストマスクを被った、シルクハットの婦人さんは呆気なくそう語る。

 【街】所属の、【絶望】担当の、スカレット。
 そう名乗っていた彼女は、2匹の小鬼を引き連れて、夜魔ヴァンパイア・ポーンを"支配下"に書き換えて現れていた。

 1匹は、さきほど吹っ飛ばされた《ステッキ》小鬼。
 頭が魔法の水晶玉になっている、両腕がステッキになっている小鬼は、呆気なく雪ん子とファイントに吹っ飛ばされていた。

 そして、もう1匹。
 夜魔ヴァンパイア・ポーン達を瞬時に撃退した、小鬼。

【スキル【推し幸せ光線】でペンライト!】

 それは、七色に光るペンライトの頭を持つ、【三大堕落】のメンバーが探していた小鬼。
 ----《ペンライト》小鬼であった。

【さぁ! スカレット様のために、推しを幸せにする光線でハッピーハッピーさせるでペンライト!】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

処理中です...