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第7章『たまにはゆっくり、旅館でいい気分♪/吸血女帝ココアの章』
第247話(番外編) 幽鬼コジロウ
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----固有スキル【未練あるなら】。
それは地獄の主サタンを主としていた幽鬼カルタフィルスのスキルであり、味方である死者を地獄から呼び起こすという、強制復活スキルである。
雪ん子達と戦う際、彼女は味方を増やすために、このスキルを使った。
具体的にどの程度増やしたかと言えば、雪ん子達"以外"の死者を、全て味方として復活の機会を与えたのである。
幽鬼カルタフィルスにとって、敵とは、冴島渉と召喚獣達。
それ以外は、彼女にとって、全て味方という判断で、【未練あるなら】を発動させたのである。
当然ながら、そんな雑な定義にて復活された者達が、全て幽鬼カルタフィルスの陣営に与するはずがない。
幽鬼ノブナガの声に従って、雪ん子達と戦う事を決めたのは、復活された死者達の、"極少数"。
その他の復活した"大多数"の死者達は、復活させてくれた幽鬼カルタフィルスに感謝した。
そのまま幽鬼カルタフィルスの戦いに参加せずに、そのまま別のダンジョンで復活して、己の自由気ままに過ごすのであった----。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【----せいっ】
とあるダンジョンで、1人の少年が刀を振るっていた。
全身を泥で出来た鎧で身を包む、120センチメートルもないほど小柄な少年。
そんな少年は自分の身長の倍近くある、2メートルにもなる長刀を振るう。
彼が刀を振るった先、それはダンジョンの壁である。
壁に対して、少年が縦に斬りつけると共に、それとは別方向に、横方向に斬撃の跡が刻み込まれる。
壁につけられた斬撃の跡を誇らしげに見つめた後、今度は違う方向に斬りつけ始める。
少年は、今度は横方向に、斬撃を与える。
そして、壁に横方向に斬撃の跡が刻み込まれたかと思ったら、次の瞬間には斜め方向の斬撃の跡が刻み込まれていた。
【ふむっ……】
最初の斬撃には満足していたはずの少年は、2回目の斬撃については不満気な表情を浮かべていた。
少年の名は、【幽鬼コジロウ】。
かの有名な死者、"佐々木小次郎"をモチーフとした、侍である。
===== ===== =====
【幻影のソードマスター/幽鬼コジロウ】 ランク;? 【侍】
あの有名な死者、「佐々木小次郎」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。特殊な泥の甲冑に身を包んだ、常在戦場を心に刻む侍
敗北を重ねながらも、数々の剣豪や侍に対して長刀『物干竿』を手に戦国を駆け抜けた侍。長刀で放ったとは思えない秘剣『燕返し』は後世にも広く伝わっている
かの英雄には様々な伝承や解釈が存在し、名前・出自・年齢ともにまちまちで、絶対と考えられる信憑性の高い史料は存在しない。後世において伝わる彼の人物像は、『武公伝』で描かれている佐々木小次郎をベースにされていると言われている
===== ===== =====
【まだまだ精度が甘いな。まだ、修練に励むべきだ】
幽鬼コジロウは再び斬撃を放とうとして----
「それは、ちょーっと待ってくれないかな? 幽鬼コジロウくん?」
----1人の少女に呼び止められた。
呼び止めたのは、紅色の長髪をした黒いドレスの女性である。
シルクハットを深々と被ったその女性は、2本の大太刀を持って、幽鬼コジロウをよびとめた。
その様子を、2本の大太刀を構える姿を見て、幽鬼コジロウには1人の侍を思い返していた。
そう、自分と最も縁が深い侍、二刀流の侍たる宮本武蔵を。
【お前、もしや武蔵か? 某と同じく蘇った……いや、少女として蘇った、のか?】
「いやいや。残念ながら、私は君の決闘相手たる宮本武蔵ではないよ?」
----くるりっ。
その場で一回転した黒いドレスの女性は、ぽいっと2本の大太刀を放り投げた。
「私の名前は、【スカレット】。【街】所属の、【絶望スカレット】と申します。
----さぁ、絶望に沈める時間です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから----僅か、"3分後"。
【----かはっ!?】
幽鬼コジロウは、地面に叩きつけられていた。
【何が?! 何をした?!】
彼の感覚からして見れば、"倒されていた"。
何があったのかはまるで分からずに、ただ気付いた時には倒されていたのである。
刀を振るう事すらさせてもらえず、何をされたのかも全く分からないまま倒されていたのである。
「幽鬼コジロウ、あなたの目的は分かってるよ。あなたは、剣を極めたいんだよね。
……うんうん、答えなくても分かってますよ。君が蘇った目的は、人の身で剣の道を、ただ極める。戦闘での勝利も、多くの弟子を迎える事も、そういった事よりも君の目的は剣の道。
自らが目指す理想の剣を放つ事----それが、君が蘇った目的、なんでしょう?」
----事実、であった。
幽鬼コジロウの目的は、剣の道を究める事。
生前、果たせなかった『最高の剣技』を放つために、彼は蘇ったのである。
「【オーラ】系統職業の【侍】、その力は剣や刀を使う際の戦闘能力上昇。
君はそんな【侍】の職業の力を使わず、自らの力のみで究極の剣技を作り出す。恐らくだけど----太刀を一振りすると共に、別方向に一太刀を与える。
……いや、恐らく君が目指す最高の剣技とは、たった一太刀で相手に幾太刀もの斬撃を加える。そういう攻撃こそ、君の目指す到達点なのでは?」
【……?!】
幽鬼コジロウは、驚いていた。
彼女の言う事は、まさしく事実なのであった。
幽鬼コジロウが【未練あるなら】というスキルで、復活を果たしたのはこれが目的なのである。
彼が生き返ってでも果たしたかった目的とは、最高の剣技----たった一太刀で、相手に幾重にも斬撃を与えるという最高の剣技----【燕返し】を極めた先にある奥義。
それこそが、幽鬼コジロウの目的なのである。
「けれども、"くだらないね"」
スカレットと名乗った彼女は、そう彼に言う。
「必殺技だなんて、本当にくだらないね。漫画やゲームじゃあるまいし、必ず殺す技だなんて、本当にどうでも良いよ。
私からして見れば、そんな事のために生き返るだなんて、本当にくだらないなぁ」
心底バカにしたように、スカレットはそう言う。
「意思なんて、才能と力を無駄にする鎖でしかないよ。本当、どうでも良いわね。
----君が有用なのは、その剣技だけ。空を優雅に飛ぶ燕さえ軽く斬る、振り下ろした刃を瞬時に返して即座に二撃目を与えるその剣技」
【お前は……何を言って……】
「だから、その才能だけ貰うよ。
----固有スキル【絶望ノンプレイヤー】」
そして、幽鬼コジロウは"消された"。
かの少年の意思は消され、ただのNPCへと"変えられてしまう"。
「ははっ、本当に良い顔だね。表情もない、素晴らしいNPC顔だよ。
----絶望に沈んだ、本当に良い時間だったよ」
スカレットは嬉しそうに、そのダンジョンを、幽鬼コジロウだったNPCのもとを、去って行ったのであった。
(※)【幻影のソードマスター/幽鬼コジロウ】
幽鬼カルタフィルスのスキル【未練あるなら】によって、蘇った者の一人。蘇った目的は、彼の理想の剣技を完成させる事
最強の剣技を完成させる事だけを目的としており、それ以外はどうでも良かったため、幽鬼カルタフィルスの援軍としては行かず、そのままダンジョンで剣の修行をしていた
一太刀振った際、彼が思う理想の剣筋を幾重にもつける----たった一太刀で相手を斬り刻む必殺剣を目指していたが、絶望スカレットによってNPCに変えられてしまった
(※)【絶望ノンプレイヤー】
絶望スカレットが持つ固有スキルの1つ。対象をNPC、ノンプレイヤーキャラクターへと変える力を持つ
いわゆる、相手の魂をそのまま奪い取って、人ではないモノへと変えるスキルであり、使用する目的は今の所不明である
それは地獄の主サタンを主としていた幽鬼カルタフィルスのスキルであり、味方である死者を地獄から呼び起こすという、強制復活スキルである。
雪ん子達と戦う際、彼女は味方を増やすために、このスキルを使った。
具体的にどの程度増やしたかと言えば、雪ん子達"以外"の死者を、全て味方として復活の機会を与えたのである。
幽鬼カルタフィルスにとって、敵とは、冴島渉と召喚獣達。
それ以外は、彼女にとって、全て味方という判断で、【未練あるなら】を発動させたのである。
当然ながら、そんな雑な定義にて復活された者達が、全て幽鬼カルタフィルスの陣営に与するはずがない。
幽鬼ノブナガの声に従って、雪ん子達と戦う事を決めたのは、復活された死者達の、"極少数"。
その他の復活した"大多数"の死者達は、復活させてくれた幽鬼カルタフィルスに感謝した。
そのまま幽鬼カルタフィルスの戦いに参加せずに、そのまま別のダンジョンで復活して、己の自由気ままに過ごすのであった----。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
【----せいっ】
とあるダンジョンで、1人の少年が刀を振るっていた。
全身を泥で出来た鎧で身を包む、120センチメートルもないほど小柄な少年。
そんな少年は自分の身長の倍近くある、2メートルにもなる長刀を振るう。
彼が刀を振るった先、それはダンジョンの壁である。
壁に対して、少年が縦に斬りつけると共に、それとは別方向に、横方向に斬撃の跡が刻み込まれる。
壁につけられた斬撃の跡を誇らしげに見つめた後、今度は違う方向に斬りつけ始める。
少年は、今度は横方向に、斬撃を与える。
そして、壁に横方向に斬撃の跡が刻み込まれたかと思ったら、次の瞬間には斜め方向の斬撃の跡が刻み込まれていた。
【ふむっ……】
最初の斬撃には満足していたはずの少年は、2回目の斬撃については不満気な表情を浮かべていた。
少年の名は、【幽鬼コジロウ】。
かの有名な死者、"佐々木小次郎"をモチーフとした、侍である。
===== ===== =====
【幻影のソードマスター/幽鬼コジロウ】 ランク;? 【侍】
あの有名な死者、「佐々木小次郎」の概念がダンジョンの魔物となって生まれた姿。特殊な泥の甲冑に身を包んだ、常在戦場を心に刻む侍
敗北を重ねながらも、数々の剣豪や侍に対して長刀『物干竿』を手に戦国を駆け抜けた侍。長刀で放ったとは思えない秘剣『燕返し』は後世にも広く伝わっている
かの英雄には様々な伝承や解釈が存在し、名前・出自・年齢ともにまちまちで、絶対と考えられる信憑性の高い史料は存在しない。後世において伝わる彼の人物像は、『武公伝』で描かれている佐々木小次郎をベースにされていると言われている
===== ===== =====
【まだまだ精度が甘いな。まだ、修練に励むべきだ】
幽鬼コジロウは再び斬撃を放とうとして----
「それは、ちょーっと待ってくれないかな? 幽鬼コジロウくん?」
----1人の少女に呼び止められた。
呼び止めたのは、紅色の長髪をした黒いドレスの女性である。
シルクハットを深々と被ったその女性は、2本の大太刀を持って、幽鬼コジロウをよびとめた。
その様子を、2本の大太刀を構える姿を見て、幽鬼コジロウには1人の侍を思い返していた。
そう、自分と最も縁が深い侍、二刀流の侍たる宮本武蔵を。
【お前、もしや武蔵か? 某と同じく蘇った……いや、少女として蘇った、のか?】
「いやいや。残念ながら、私は君の決闘相手たる宮本武蔵ではないよ?」
----くるりっ。
その場で一回転した黒いドレスの女性は、ぽいっと2本の大太刀を放り投げた。
「私の名前は、【スカレット】。【街】所属の、【絶望スカレット】と申します。
----さぁ、絶望に沈める時間です」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから----僅か、"3分後"。
【----かはっ!?】
幽鬼コジロウは、地面に叩きつけられていた。
【何が?! 何をした?!】
彼の感覚からして見れば、"倒されていた"。
何があったのかはまるで分からずに、ただ気付いた時には倒されていたのである。
刀を振るう事すらさせてもらえず、何をされたのかも全く分からないまま倒されていたのである。
「幽鬼コジロウ、あなたの目的は分かってるよ。あなたは、剣を極めたいんだよね。
……うんうん、答えなくても分かってますよ。君が蘇った目的は、人の身で剣の道を、ただ極める。戦闘での勝利も、多くの弟子を迎える事も、そういった事よりも君の目的は剣の道。
自らが目指す理想の剣を放つ事----それが、君が蘇った目的、なんでしょう?」
----事実、であった。
幽鬼コジロウの目的は、剣の道を究める事。
生前、果たせなかった『最高の剣技』を放つために、彼は蘇ったのである。
「【オーラ】系統職業の【侍】、その力は剣や刀を使う際の戦闘能力上昇。
君はそんな【侍】の職業の力を使わず、自らの力のみで究極の剣技を作り出す。恐らくだけど----太刀を一振りすると共に、別方向に一太刀を与える。
……いや、恐らく君が目指す最高の剣技とは、たった一太刀で相手に幾太刀もの斬撃を加える。そういう攻撃こそ、君の目指す到達点なのでは?」
【……?!】
幽鬼コジロウは、驚いていた。
彼女の言う事は、まさしく事実なのであった。
幽鬼コジロウが【未練あるなら】というスキルで、復活を果たしたのはこれが目的なのである。
彼が生き返ってでも果たしたかった目的とは、最高の剣技----たった一太刀で、相手に幾重にも斬撃を与えるという最高の剣技----【燕返し】を極めた先にある奥義。
それこそが、幽鬼コジロウの目的なのである。
「けれども、"くだらないね"」
スカレットと名乗った彼女は、そう彼に言う。
「必殺技だなんて、本当にくだらないね。漫画やゲームじゃあるまいし、必ず殺す技だなんて、本当にどうでも良いよ。
私からして見れば、そんな事のために生き返るだなんて、本当にくだらないなぁ」
心底バカにしたように、スカレットはそう言う。
「意思なんて、才能と力を無駄にする鎖でしかないよ。本当、どうでも良いわね。
----君が有用なのは、その剣技だけ。空を優雅に飛ぶ燕さえ軽く斬る、振り下ろした刃を瞬時に返して即座に二撃目を与えるその剣技」
【お前は……何を言って……】
「だから、その才能だけ貰うよ。
----固有スキル【絶望ノンプレイヤー】」
そして、幽鬼コジロウは"消された"。
かの少年の意思は消され、ただのNPCへと"変えられてしまう"。
「ははっ、本当に良い顔だね。表情もない、素晴らしいNPC顔だよ。
----絶望に沈んだ、本当に良い時間だったよ」
スカレットは嬉しそうに、そのダンジョンを、幽鬼コジロウだったNPCのもとを、去って行ったのであった。
(※)【幻影のソードマスター/幽鬼コジロウ】
幽鬼カルタフィルスのスキル【未練あるなら】によって、蘇った者の一人。蘇った目的は、彼の理想の剣技を完成させる事
最強の剣技を完成させる事だけを目的としており、それ以外はどうでも良かったため、幽鬼カルタフィルスの援軍としては行かず、そのままダンジョンで剣の修行をしていた
一太刀振った際、彼が思う理想の剣筋を幾重にもつける----たった一太刀で相手を斬り刻む必殺剣を目指していたが、絶望スカレットによってNPCに変えられてしまった
(※)【絶望ノンプレイヤー】
絶望スカレットが持つ固有スキルの1つ。対象をNPC、ノンプレイヤーキャラクターへと変える力を持つ
いわゆる、相手の魂をそのまま奪い取って、人ではないモノへと変えるスキルであり、使用する目的は今の所不明である
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