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第6章『ファイントは常に地獄に居る/覚醒ファイントの章』

第230話(番外編) 真相と、覚醒と、《探偵》覚醒幽鬼(1)

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 ~~番外編 前回までの あらすじ!!!~~
 覚醒幽鬼となって、厄介な存在となった、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼。
 そんな覚醒幽鬼は無事に、ダブルエムの手によって処分される。
 
 だがしかし、覚醒幽鬼となった事で、【チーズフォンデュ世界】は救う事が出来ず。
 覚醒幽鬼を倒したダブルエムは、呪いを受けてしまう。
 
 呪いと、救えなかった事実。
 それに茫然自失となっている網走海渡と天地海里を放って、呪いによって死へと近付いているダブルエムは、また別の世界幽鬼と戦いを挑みに行くのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ===== ===== =====
 【《探偵》覚醒幽鬼】 レベル;Ⅲ+?
 あらゆる謎を解き明かす探偵たちが集う世界が閉じ込められていた【世界球体=探偵世界=】の力で歪み、そののちに未練を捨てて覚醒した、茅ヶ崎廻ちがさきまわるという名の覚醒幽鬼。倒すと、マナ系統職業の1つ、【探偵】が解放されず、呪いが与えられる
 あらゆる物事の本質を見抜き、正体を白日の下に晒す。この職業の前では、姿を偽ったり、隠したとしても全てが元の姿へと戻される
 『ルーマニア』! エッ、マタ『ル』?! ナラ、『留守番電話』!! マタ『ル』デ返シテキタ?! モウ『ル』デ思イツクノヲ、全部使ッチャタヨ~?!
 ===== ===== =====


【では、【白日しんそう】ってね】

 《探偵》覚醒幽鬼は、手にしている虫メガネ型の杖を、ダブルエムへと向ける。
 すると、虫メガネのレンズ部分に光が集約していき、ダブルエムに光が放たれる。

 放たれた光は、ダブルエムの右腕に命中して、彼女の右腕は身体から離れて、地面へと落ちる。
 いや、正しく言えば、右腕から、元の剣や宝石などのアイテムに戻された、というべきか。

「#相性 #最悪 ですね」

 光を避けるようにして動いたダブルエムは、懐から別のアイテムを取り出して、くっつけて、右腕にする。

「(【探偵】の力は、元に戻す力。能力上昇バフも、能力下降デバフも、あの光に当たった瞬間、ゼロへと戻される----問題は、その元に戻す力が、私の【テセウスの船】と相性最悪って事)」

 頭が探偵を思わせる帽子を深々と被り、でも服装はギャルっぽい服装という、なんともチグハグな《探偵》覚醒幽鬼。
 そんな覚醒幽鬼を見つつ、ダブルエムは相性の最悪さを嘆いていた。

 【テセウスの船】は、自分の欠損部位をアイテムを変化させて補うスキル。
 その変化させたアイテムの姿が、覚醒幽鬼の力によって、リセットされてしまうのである。
 つまりは、覚醒幽鬼の光を全身で受けた瞬間、生身の肉体部分の方が少ないダブルエムは、一瞬で敗北と言う状態なのだ。

「ほんとう、嫌な敵ですよ」
【ふふん! 探偵とは恨まれる事の多い職業。そんな軽口程度では、へこたれはしませんぞ?
 さぁ、どきたまえ! 全ての未解決事件だけでなく、事件を起こしてでも、推理してやるぅ~!!】

 覚醒幽鬼の犯罪宣言も含めた会話に突っ込む間もなく、ダブルエムに光が照らされる。

「くっ……!!」

 その時である。


「危ないっ、マイハニーちゃん!」
「マイハニーの配下ちゃん、危ないっ!!」


 ダブルエムの代わりに、攻撃を受けた2人が居た。
 彼女を追ってきた天地海里と、赤坂帆波のダーリンとして心配してきた空海大地。
 ダブルエムが一番会いたくなかった、元勇者の2人であった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 世界によって生まれし、全く同一存在たる元勇者の2人。
 空海大地と、天地海里は、同じタイミングでダブルエムを救うべく、光を自らが肉壁となることによって防いでいた。

 空海大地は、彼女の主たる赤坂帆波に頼まれて、この場にやってきた。
 いつまでも自身に付き纏う厄介払い的な立場ではなく、このまま死へと突き進む愚かな彼女を救って欲しい。
 そう願い請われ、ダブルエムの救出にやって来ていた。

 天地海里は、《チーズフォンデュ》覚醒幽鬼を倒した彼女を心配してやって来ていた。
 呪いをその身一つで受け止める様は立派で賞賛されるべきことではあるが、心配するくらいはさせて欲しいと、手助けのためにやって来ていた。
 ダブルエムの身を案じて、ダブルエムの救出にやって来ていた。

 2人が同じタイミングで、ダブルエムの救出にやって来たのは、偶然か、否か?

「(どちらにしても、#カオス な状況には変わりないです)」

 ダブルエムは、救援にやってきた2人を「来ないで欲しい」と言外で表現していた。
 主に顔で、ものすっごく嫌そうな顔で。

 空海大地と天地海里は、肉壁となって光を受け止めた。
 しかし、元々、《探偵》覚醒幽鬼の光攻撃は、"元に戻す能力"と"光属性の攻撃"程度のダメージしかなく、レベルⅩクラスの2人には蚊にも満たない程度の些細な攻撃であった。

 2人はお互いに顔を見合わせ、相対するかと思いきや、そのまま《探偵》覚醒幽鬼の迎撃へと移行する。
 かつての強敵てき踊り狂うランデブー、それくらいの気概がなければ勇者として戦えなかったとそれだけの事なのだろう。

 《探偵》覚醒幽鬼もまた、彼女なりに頑張って攻撃をしていた。
 【ネイルランチャー】だとか、【インスタグラムアタック】だとか、探偵と言うにはかけ離れたスキルだった。
 恐らくは彼女の基となっている茅ヶ崎廻という、ギャル恰好の少女の趣味っぽい攻撃だったけど。

 まぁ、結果として、勝敗はものの数分で着いた。
 2人の元勇者は、《探偵》覚醒幽鬼を殺さないギリギリを見極めて、縄で捕縛したのである。

「殺しちゃダメと言うなら、それまでだ。ただそういう縛りがついただけで、全く苦戦しなかったな。なぁ、海里」
「えぇ、まぁ私達の共同戦線コンビネーションが、あちらさんには敵わなかっただけですよ。ねぇ、大地」

 アハハッ、とこちらの闇が薄れるくらいの勢いで、肩を抱いて笑う2人。
 漫画でしか見たことがない、バトルの中で育まれる友情が、そこにはあった。
 青春っぽい姿に、【三大堕落】の【青春】担当である日野シティーミティーなら喜んだかもと、ダブルエムが思っていると。

【ふっ、このボクを縄だけで拘束できると思ってるのかい? こんなの、【探偵】のスキル【縄抜け】で----あれ? 抜けない?】
「【超勇者魔術・光縄ライトバインド】が、そんな身体を折って曲げるくらいのスキルで、逃げられるはずないでしょうが」
【くそう! 縄だから、【探偵】スキルの【ピッキング】や【窓壊し潜入術】も使えないし! 逃げられぬぅ!!】

 それはもはや、探偵ではなく、泥棒みたいなスキルであるのだが。
 ともあれ、勝敗は決していた。

【くぅ! こうなったら、最後の手段! 一か八かの大勝負!】

 覚醒幽鬼がそう言って、2人に攻撃を与えるまでは----。
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