俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
224 / 354
第6章『ファイントは常に地獄に居る/覚醒ファイントの章』

第212話 VS幽鬼ノブナガ(2)

しおりを挟む
「ふんっ!!」

 虚空からいきなり手の中に出現させた二丁拳銃で、幽鬼ミツヒデはマルガリータがばら撒いたアルター・フェザーを全て撃ち落としていた。
 そしてそのまま、次の攻撃へと移行する。

「----アイドルは歌が資本!」

 幽鬼ミツヒデはそう言うと、すーっと大きく息を吸う。

「それなら、こっちだって!!」

 アイドルとしての対抗意識からか、マルガリータもまた大きく息を吸う。

「「~~~~~~~~~!!」」

 同時に、2人は大きな声を出して、ぶつけ合う。
 それはお互いのプライドのぶつかり合い、トップアイドルを目指す者同士の意地のぶつかり合いだった。

「がはははっ!! 流石は同じ夢を持つ、トップアイドルを目指そうとする者達のぶつかり合いじゃのう!
 この意地のぶつかり合いの勝敗を見守りたいというのも一興じゃが、これは戦じゃから」

 そう言って、幽鬼ノブナガは自分の身体から骨を出して、それを1つに繋ぎ合わせていく。
 完成したのは2mを軽く超える長刀で、尖った骨がいくつも刀身から出ているのが特徴の刀。

「生前愛した光忠製には及ばぬが、これも良い刀じゃ。銘をとりあえず、【龍殺し】とでも名付けようかのう」

 幽鬼ノブナガはしゃれて、そう名付けたが、実際の目的はその龍殺し----つまりは、悪癖龍マルガリータを殺すためであった。


 【神階英雄:魔王】は、骨をぶつけた物を武器にする職業である。
 それは四大力も対象であり、つまりそれは【マナ】系統の【召喚士】に呼び出された召喚獣もまた対象である。

「(まぁ、とは言っても普通に身体にぶつけるだけじゃ、ダメじゃ。体内の血液に、直接、この骨をぶち当てないとダメなんじゃが)」

 そのために生み出したのが、この【龍殺し】という長刀である。
 剣は「叩く」「斬る」「突く」などを基本としているが、この【龍殺し】は"「抉る・・」"。
 刀身に尖った骨がいくつも出ているのは、相手の肉に直接食い込むことを想定しての事である。

「----どの骨が食い込むかなど、儂には分からん。分かるのは、これを相手の肉に食い込ませた瞬間、体内の血液と骨が反応して、武器としてくれることだけじゃ!!」

 幽鬼ノブナガは、マルガリータに向かって走る。
 その速さはかなりの速さであり、ミツヒデと戦うマルガリータは対処が遅れた。

「(----貰った!)」

 
 幽鬼ノブナガは、【龍殺し】を振るう。

 そして、それを"雪ん子が防いでいた"。

「《ぴっ! マルガリータ、主、知らない?!》」
「がはははっ!! そうか、一番強いお主もここに落ちていたのかっ!!」

 雪ん子は【龍殺し】をそのまま力を込めてへし折ると、マルガリータに視線を移す。
 そして、そのまま一気に状況を理解した。

 この2人は、敵。
 主さんは、ここには居ない。

 それだけ分かれば、雪ん子には十分であった。


「《私、こっちを殺る!》」
「じゃあ、可愛いボクはこっちだね!!」

 
 2人は、それぞれに対処する相手を決めた。
 雪ん子はノブナガを、マルガリータはミツヒデを。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「----トップアイドルは私の物ですんで!!」

 ミツヒデは龍の翼で飛び上がると共に、手にスナイパーライフルを出す。
 そして、銃弾を放つと、銃弾は勝手に複雑な弧の軌道を描きながら、マルガリータに向かって来る。

 明らかに自然の法則を無視した、銃弾の動き。
 なんらかのスキルかと判断したマルガリータの頭に、ぴこんっと閃きが生まれる。

「新しいスキル、ゲットしちゃったよ! 新スキル【アイドル杖術・撃】!」

 彼女が杖を振るうと、魔法が銃弾の形で生まれて、ミツヒデに迫る。
 ミツヒデは先程と同じように、息を大きく吸って、超音波を放つ。

「~~~!!」

 しかし、マルガリータの放った銃弾型の魔法は、ひょいっと超音波を避けて、ミツヒデにぶつかる。
 ミツヒデにぶつかると共に、ミツヒデは魔法によるダメージを受け、さらに周囲に綺麗なエフェクトが広がる。

「アイドルの力を与えられた銃弾型魔法は、可愛いボクの魅力と同じく、逃げられないんだよねぇ! そして、厄介なファンの攻撃も全て避けちゃう!」

 ----要約すれば、マルガリータの魔法は、必ず命中し、相手の攻撃は必ず避けるから防ぐことも出来ない。
 今しがた、マルガリータが発現させたスキルは、そんな恐ろしいスキルだったのである。

「----ぐはっ!!」

 それと同時に、ノブナガも吹っ飛ばされていた。
 雪ん子が放つ龍の形をした斬撃は、ノブナガを吹っ飛ばしていたのだ。

「こんなの、強すぎじゃよ?! 同じ【オーバーロード】なのに、強すぎじゃろうが! いくらなんでも!」
「《うるさいっ!!》」

 そしてもう一度、斬撃を放ち、ノブナガはミツヒデとぶつかる。

「よしっ! 今こそ、出番だね!」

 そうして、マルガリータは神経を集中させ、身体に力を高めていく。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 

 先日、マルガリータは冴島渉から1枚の紙を手渡された。

「雪ん子が要らないって言うから、だったらマルガリータに渡しておこうと思ってな。ほら、マルガリータはやってみたそうだったし」

 最初は、意味が分からなかったマルガリータではあったが、その紙の中身を見て、嬉し涙を流してしまった。
 あまりにも嬉しすぎて、アイドル的には禁止行為の1つである冴島渉へのハグをしてしまって、嫉妬心にかられた雪ん子に殺されてしまうなどのハプニングはあったのだが。

 つまり、何が言いたいかというと、その紙は【古代龍魔法】の使い方が書かれた紙であった。
 そう、彼女が望んだ、あの千山鯉が使っていた古代龍魔法をどのように発動すればいいかが明記された、彼女が待ち望んで仕方がない代物なのであった。

 それは、千山鯉が保険代わりに遺していた紙であった。
 主を救うために、生贄になることを選んだ千山鯉が、雪ん子に託した【古代龍魔法】の使い方を明記した紙なのであった。
 実際の所、その使い方に関しては、継承と同時に、雪ん子の本能に刻み込まれたため、必要なかったのだが。

 そして、必要なくなったはずのその紙が、今、マルガリータの手に渡ることによって、彼女が古代龍魔法を会得したのである。

「(----そう、そして古代龍魔法の欠点と改善案も、その紙には書いてあった。
 そして、この力は、この可愛いボクの力と合わさる事によって、さらなる進化を遂げちゃうんですよ!)」


 古代龍魔法、それは超強力な魔法。
 その欠点である魔力をほぼ使い切ってしまう所を失くしたのが、半古代龍魔法。
 そして、その魔法は、マルガリータの手によって、さらに生まれ変わる。


「半古代龍魔法の形成に、可愛いボクの魔力を半分。そして残ったもう半分の魔力を----」

 マルガリータは、千山鯉が見つけ出した「古代龍魔法は魔力を全て使わなくても良い、半分でも十分な威力が出る」という特性を使って、半古代龍魔法として強力な魔法を形成。
 そして、もう半分の魔力を使って----エルダードラゴンエッグ・アルターの力を使って、"別の異次元の世界"から大量の魔力を集めて、半古代龍魔法へと注ぎ込んでいく。

 既に完成してある半古代龍魔法に、別次元の世界の力がどんどん蓄えられていく。
 そして、それはマルガリータの力を、止め栓ストッパーにしているだけの、彼女のオリジナル魔法。

「この魔法は、可愛いボクの手を離れた瞬間、完成するっ!
 古代も、半古代も越えた、私だけのオリジナル魔法!」

「ヤバい……?! 儂の直感が死を、本能寺のあの時を予感させる?!」
「えぇ、こちらはあんたの腹心の猿が、迫った時を……!」

 2人の幽鬼に逃げる事すら許さず、マルゲリータはその魔法を放つ。


「----名付けて、"悪癖龍魔法"! その第1号、【マルガリータのブラックブレス】!!」


 そして、それは放たれた。
 放たれたその魔法は、2人の幽鬼を飲み込む。
 
 飲み込んだ後、異次元のエネルギーはアルター・フェザーと同じ効果を発揮する。
 つまり----エネルギーは、元々あった世界へ帰還する。

「可愛いボクが、いろんな世界のファンから貰ったエネルギー! 既に可愛いボクですら、どこから貰ったか分からない大量の世界から貰ったエネルギーは、あなた達の身体に纏われたまま、帰還する!」

 そして、2人の幽鬼は魔法に飲まれて消えていくのであった----。



(※)悪癖龍魔法
 悪癖龍マルガリータのみが使える、オリジナル魔法。彼女が、古代龍魔法の特性を理解し、半古代龍魔法をアレンジした末に完成させた
 半古代龍魔法によって判明した「半古代龍魔法を発動するのに、最低限必要な魔力量」----自身の全魔力の半分を使って、魔法の大元を作る。そして悪癖龍マルガリータの種族特性を利用し、残った魔力を全部使って、様々な異次元の世界からエネルギーを集めて、魔法の中に閉じ込めて、十分に攪拌させてから放つ
 放たれた魔法は、マルガリータというストッパーを失くしたことにより、真価を発揮する。この魔法に当たった全ての物は、異次元から来たエネルギーに複雑に絡み合い、そしてそれぞれの世界へ持っていかれる。身体が複数の色々な世界に持っていかれるため、召喚獣や魔物であろうとも、この魔法を喰らった場合、二度と元の姿には戻れない
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...