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第6章『ファイントは常に地獄に居る/覚醒ファイントの章』
第199話 カイトカイト詐欺
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「ふぅ~、やれやれ。ダンジョン討伐は疲れるよ」
俺、冴島渉は疲れを癒すために、ベッドで横になる。
いやぁ~、強敵だった!
まさか、あそこで武器の間合いを伸ばして、攻撃のリズムを変えてくるとは。
あの雪ん子を気絶状態にさせるのは流石としか言えないし、マルガリータが新スキル【海の美声】を獲得してなければ、負けてたかもしれない。
けれどもまぁ、勝てたし、お目当てのアイテムも手に入ったから、良しとしようじゃないか。
「終わりよければ、全て良し! ダンジョン攻略も上手く行ってるし、順調! 順調!」
うん! 何事も、問題ないよねっ!!
「----と、そんなお気楽に構えてられんよな」
ポチッと、テレビを点けると、"あのニュース"が例のごとく、流れていた。
『皆様、ご覧くださいませ! 突如として現れた、あの赤黒い空間を!
あの地獄としか思えない空間では、ドローンが確認した限りでも、血の池やら、動き回る死者などが歩き回る危険な空間です! 政府は民間人を全て救助したと言っていますが、未だに地獄は広がるばかりで、一部研究機関では民間人が隔離施設から誰1人戻ってない事に、政府の隠ぺい工作があるという可能性を----』
ここ最近、何度も何度もテレビで流れている、同じニュース。
およそ500平方メートルと言われる、突如として現れた地獄のような場所。
「まさか、あの地獄のようなのを作ったのが、うちのファイントとは未だに信じられん。どういうことなんだか」
そう、この地獄化、なんでもうちのファイントが引き起こしている事態なのだそうだ。
ファイント----正式な真名はサタン、だっけ?
うちのファイントは、真名解放によってレベルⅨの超強い召喚獣へと進化を遂げ、と同時に世界を地獄へと変えちゃうヤバい奴になってしまったんだそうだ。
ココアから聞いた話だから、確証はないんだけど……まぁ、そうなんだろうな。
いや、ただ【黄金召喚】で呼び出した召喚獣が、なんでそんなとんでも召喚獣になるんだよ。
地獄の主サタンと、対象となったスキル【青魔導を識る者】って、まったく関係性がないように思うんだけど?!
「俺の召喚獣が暴れているから、俺がなんとかすべきなんだろうけど……どうやって行けば良いんだ?」
嘆いていても、どうにもならん。
問題を起こしたのが、俺が召喚したファイントならば、解決しなきゃならないも俺のはずだ。
しかしながら、問題がある。
そう、問題はファイントの所までどう行くのか。
なんでも、あの地獄のような場所には、レベルⅣ以上の魔物がわんさか解き放たれているらしい。
そんな所を突っ切って、ファイントの所まで辿り着けるのか。
そして、真名によって地獄の主サタンとなったファイントを、どう助けるのか。
----未だに、答えは出ない。
答えは出ないし、そうこうしているうちにも状況は悪化しつつあるらしい。
「あ~、もうっ! どっか、他の俺よりも強い冒険者が、なんとかしてくれないかなぁ!」
盛大な他力本願発言をしていると、俺の携帯がぶるりと震えて、電話の合図を鳴らす。
画面を確認すると、そこには『網走海渡』という、俺の友人の名前が現れていた。
----網走海渡。
俺の友人であり、俺と同じ日に冒険者になった【剣士】であった。
あちらさんは既に冒険者として、だいぶ先のステージに居るらしい。
あんでも、既にレベルⅥなんだとか。
"攻撃が2回攻撃になるが、大剣しか使えない"という、【剣士】の網走海渡。
それと、"魔力量が上昇するが、人間とパーティーを組むことが出来ない"という、【召喚士】の俺。
【剣士】と【召喚士】は戦い方も全然違うし、俺の命題が酷いというのもある。
しかしながら、同日に冒険者になったのに、なんだかズルいと感じてしまう。
そんな、ちょっとした劣等感を持つ海渡の電話だったので、ちょっぴり身構えていた俺。
「----と、いつまでも出ないのも失礼だよな」
慌てて俺は、携帯を取るのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「『うわぁ、久しぶりですね、冴島渉。どうです、順調な冒険者稼業を送ってるちゃん、ですか?』」
空海大地は、目の前で行われている詐欺行為に驚いていた。
携帯片手に『網走海渡』の名を騙るのは、【どん底】担当のビーワンちゃん。
彼女はスマホを使って、冴島渉の友人として、彼に話をしているのだ。
恐ろしいのは、そこに"何の違和感もない"こと。
時折、ビーワンちゃんは「『そうそう! 剣で戦うのは本当に楽しいちゃん、ですよね~!』」などと、明らかに彼女しか使ってなさそうな言葉遣いをしている。
そんな雑な詐欺行為なのにも関わらず、相手は偽物だと気付いていない。
いや、"気付かせない"。
「なるほど、これが固有スキル【偽りの姫君】か」
「『えぇ、そうなのです! このスキル発動中は、どんな失言をしようが、姿を見られない限りは嘘バレないちゃん、になれるのですよ! どうだ、私こそ、"マスター"に相応しい女なのですよ!』」
本当に、凄いスキルだと大地は感心していた。
嘘を喋っている今の姿を見られなければ、例え後で嘘だと分かっても騙されたと気付けない。
さらには、電話表記などの文字部分にも対応している。
こういう電話による詐欺には、相性抜群のスキル。
「(ほんと、固有スキルで良かったぜ。これさえあれば、詐欺師の一人勝ち間違いなしのスキルだからな)」
今の、明らかに海渡とは思えない台詞を聞いてもなお、電話の向こうの相手である冴島渉は気付いていないようだ。
ほんとう、凄すぎるスキル。
そして、ビーワンちゃんは友人の振りをしながら、こう冴島渉を焚きつける。
「『知ってるか、冴島渉? 実は2つ隣町に、レベルⅢ【召喚士】限定のレベルアップのための大会が開かれるらしい。そこでたった1回勝つだけで、レベルⅤになれるってさ』」
それを話すと、ビーワンちゃんはしめしめっと、嬉しそうな顔をする。
恐らくは、相手が乗り気なのだろう。
電話の声が聞こえない大地にも、冴島渉の驚きと喜びの声が聞こえてくるようだった。
「『……あぁ、お前だから話してるんだ。絶対に向かえよな?
それとも、これ以上ランクの差が開いても良いのかな?』……って、切れちゃいました」
「もっと煽りたかったちゃん、ですけど」と、ビーワンちゃんは少しだけ残念そうだった。
「でも、ここまで煽れば、あの冴島渉は必ず大会に参加するでしょう。
----【三大堕落】である私の罠とは、思いもよらずに」
(※)【偽りの姫君】
【三大堕落】所属、【どん底】担当のシーヴィーちゃんの持つ固有スキル。自らが嘘をついている姿を見られない限り、他者に成り代わる事が出来るスキル
嘘をついている姿を見られない限りは、たとえどんな突拍子もない、相手に寄せる気がない言葉を話そうとも、相手は違和感すら覚えることが出来ない。また後で嘘だと判明しても、相手はいつ騙されたのかすら分からない
『嘘を信じ込ませるスキル』ではなく、『なりすましてもバレないスキル』なため、相手を思い通りに操るスキルではない
俺、冴島渉は疲れを癒すために、ベッドで横になる。
いやぁ~、強敵だった!
まさか、あそこで武器の間合いを伸ばして、攻撃のリズムを変えてくるとは。
あの雪ん子を気絶状態にさせるのは流石としか言えないし、マルガリータが新スキル【海の美声】を獲得してなければ、負けてたかもしれない。
けれどもまぁ、勝てたし、お目当てのアイテムも手に入ったから、良しとしようじゃないか。
「終わりよければ、全て良し! ダンジョン攻略も上手く行ってるし、順調! 順調!」
うん! 何事も、問題ないよねっ!!
「----と、そんなお気楽に構えてられんよな」
ポチッと、テレビを点けると、"あのニュース"が例のごとく、流れていた。
『皆様、ご覧くださいませ! 突如として現れた、あの赤黒い空間を!
あの地獄としか思えない空間では、ドローンが確認した限りでも、血の池やら、動き回る死者などが歩き回る危険な空間です! 政府は民間人を全て救助したと言っていますが、未だに地獄は広がるばかりで、一部研究機関では民間人が隔離施設から誰1人戻ってない事に、政府の隠ぺい工作があるという可能性を----』
ここ最近、何度も何度もテレビで流れている、同じニュース。
およそ500平方メートルと言われる、突如として現れた地獄のような場所。
「まさか、あの地獄のようなのを作ったのが、うちのファイントとは未だに信じられん。どういうことなんだか」
そう、この地獄化、なんでもうちのファイントが引き起こしている事態なのだそうだ。
ファイント----正式な真名はサタン、だっけ?
うちのファイントは、真名解放によってレベルⅨの超強い召喚獣へと進化を遂げ、と同時に世界を地獄へと変えちゃうヤバい奴になってしまったんだそうだ。
ココアから聞いた話だから、確証はないんだけど……まぁ、そうなんだろうな。
いや、ただ【黄金召喚】で呼び出した召喚獣が、なんでそんなとんでも召喚獣になるんだよ。
地獄の主サタンと、対象となったスキル【青魔導を識る者】って、まったく関係性がないように思うんだけど?!
「俺の召喚獣が暴れているから、俺がなんとかすべきなんだろうけど……どうやって行けば良いんだ?」
嘆いていても、どうにもならん。
問題を起こしたのが、俺が召喚したファイントならば、解決しなきゃならないも俺のはずだ。
しかしながら、問題がある。
そう、問題はファイントの所までどう行くのか。
なんでも、あの地獄のような場所には、レベルⅣ以上の魔物がわんさか解き放たれているらしい。
そんな所を突っ切って、ファイントの所まで辿り着けるのか。
そして、真名によって地獄の主サタンとなったファイントを、どう助けるのか。
----未だに、答えは出ない。
答えは出ないし、そうこうしているうちにも状況は悪化しつつあるらしい。
「あ~、もうっ! どっか、他の俺よりも強い冒険者が、なんとかしてくれないかなぁ!」
盛大な他力本願発言をしていると、俺の携帯がぶるりと震えて、電話の合図を鳴らす。
画面を確認すると、そこには『網走海渡』という、俺の友人の名前が現れていた。
----網走海渡。
俺の友人であり、俺と同じ日に冒険者になった【剣士】であった。
あちらさんは既に冒険者として、だいぶ先のステージに居るらしい。
あんでも、既にレベルⅥなんだとか。
"攻撃が2回攻撃になるが、大剣しか使えない"という、【剣士】の網走海渡。
それと、"魔力量が上昇するが、人間とパーティーを組むことが出来ない"という、【召喚士】の俺。
【剣士】と【召喚士】は戦い方も全然違うし、俺の命題が酷いというのもある。
しかしながら、同日に冒険者になったのに、なんだかズルいと感じてしまう。
そんな、ちょっとした劣等感を持つ海渡の電話だったので、ちょっぴり身構えていた俺。
「----と、いつまでも出ないのも失礼だよな」
慌てて俺は、携帯を取るのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「『うわぁ、久しぶりですね、冴島渉。どうです、順調な冒険者稼業を送ってるちゃん、ですか?』」
空海大地は、目の前で行われている詐欺行為に驚いていた。
携帯片手に『網走海渡』の名を騙るのは、【どん底】担当のビーワンちゃん。
彼女はスマホを使って、冴島渉の友人として、彼に話をしているのだ。
恐ろしいのは、そこに"何の違和感もない"こと。
時折、ビーワンちゃんは「『そうそう! 剣で戦うのは本当に楽しいちゃん、ですよね~!』」などと、明らかに彼女しか使ってなさそうな言葉遣いをしている。
そんな雑な詐欺行為なのにも関わらず、相手は偽物だと気付いていない。
いや、"気付かせない"。
「なるほど、これが固有スキル【偽りの姫君】か」
「『えぇ、そうなのです! このスキル発動中は、どんな失言をしようが、姿を見られない限りは嘘バレないちゃん、になれるのですよ! どうだ、私こそ、"マスター"に相応しい女なのですよ!』」
本当に、凄いスキルだと大地は感心していた。
嘘を喋っている今の姿を見られなければ、例え後で嘘だと分かっても騙されたと気付けない。
さらには、電話表記などの文字部分にも対応している。
こういう電話による詐欺には、相性抜群のスキル。
「(ほんと、固有スキルで良かったぜ。これさえあれば、詐欺師の一人勝ち間違いなしのスキルだからな)」
今の、明らかに海渡とは思えない台詞を聞いてもなお、電話の向こうの相手である冴島渉は気付いていないようだ。
ほんとう、凄すぎるスキル。
そして、ビーワンちゃんは友人の振りをしながら、こう冴島渉を焚きつける。
「『知ってるか、冴島渉? 実は2つ隣町に、レベルⅢ【召喚士】限定のレベルアップのための大会が開かれるらしい。そこでたった1回勝つだけで、レベルⅤになれるってさ』」
それを話すと、ビーワンちゃんはしめしめっと、嬉しそうな顔をする。
恐らくは、相手が乗り気なのだろう。
電話の声が聞こえない大地にも、冴島渉の驚きと喜びの声が聞こえてくるようだった。
「『……あぁ、お前だから話してるんだ。絶対に向かえよな?
それとも、これ以上ランクの差が開いても良いのかな?』……って、切れちゃいました」
「もっと煽りたかったちゃん、ですけど」と、ビーワンちゃんは少しだけ残念そうだった。
「でも、ここまで煽れば、あの冴島渉は必ず大会に参加するでしょう。
----【三大堕落】である私の罠とは、思いもよらずに」
(※)【偽りの姫君】
【三大堕落】所属、【どん底】担当のシーヴィーちゃんの持つ固有スキル。自らが嘘をついている姿を見られない限り、他者に成り代わる事が出来るスキル
嘘をついている姿を見られない限りは、たとえどんな突拍子もない、相手に寄せる気がない言葉を話そうとも、相手は違和感すら覚えることが出来ない。また後で嘘だと判明しても、相手はいつ騙されたのかすら分からない
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