俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第193話 世界を敵に回すだけの覚悟(2)

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「まだ死なせませんよ、ファイントちゃん? なにせ、面白いのは----悪だくみは、ここからなんですから♪」

 ハジメの言う通り、彼女の悪事はここからが本番であった----。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ハジメは【スピリット】の力を使い、自らの周囲を神域へと変えていた。
 ハジメという偽の十二支の神々である【イタチ】が生み出した、偽りの領域。

「----来て、断神ちゃん☆」

 そして彼女が呼び出したのは、ネズミの神----十二支の神々の、最初を飾る神である。
 ネズミの神、その名も断神。
 その権能は【切断】。この世のありとあらゆる物を切り裂く、最強の切断能力を司る神様。

「その神様の力で、私を殺させるつもり?」
「え~? 指で摘まめるくらい、小さなあなたにそんな勿体ない事はしないわよ☆ 後輩ちゃんはね♪」

 10cmほどの小さな身体になったファイントに、ハジメはそう言いながら、したい事を始める。
 もうファイントにハジメを止めることは出来ない、なにせ【魔物錬成】の際に能力値やステータス値を弄って、スキルすらまともに発動できない身体に変えたため、ファイントはただ見ているしかないのだ。

「そう、この断神ちゃんのスキルを、見ている事しか♪」

 そう言って、ハジメは断神に魔力を送り込む。


「さぁて、最後はとっておきの魔法で決めてあげようかな?
 ----もっとも、この魔法のことは私は聞いただけで、発動したところは見てないんだけどね☆」


 断神は魔力を加えられることによって、赤く染まっていく。
 ただ色が変わっていくだけでなく、込められた魔力によって断神に1つの性質が加えられていた。

 ----なんてことはない。
 ただ、この断神によって切断されたモノは、"もう二度とくっつく事はない"と、ただそれだけである。

「----いっくよぉ☆ 千山鯉ちゃんの、とっておきの禁断魔法!
 今からそれを見せましょう! 超強力魔法、【断神による縁切鋏】!」

 それは、千山鯉が発動しようとしていた、とある魔法。
 その効果は----"あらゆる縁をなかったことにし、二度と繋げなくさせる、絆を壊す最凶の禁術魔法"。

 そんな禁術を、ハジメは"自らへと・・・・"発動していた。


 ===== ===== =====
 【断神による縁切鋏】の 効果が 発動します
 対象者の 縁を なかったことに します

 冴島渉との 縁が 失われました
 【召喚 レベルアップ可能】の 効果が 失われました
 ===== ===== =====


「なっ……!!」

 それは、ファイントが欲していたモノの消失を意味していた。
 そう、冴島渉の召喚獣としての居場所の消失を。

「後輩ちゃんを召喚してくれたことは感謝してるけど、既に【独断専行】によって自力召喚が可能となった今となっては必要ないよね☆
 ----なにより、あなたが後輩ちゃんから奪い取りたかったのは、これ・・だけでしょ? だから、待ってたの。あなたの目の前で、あなたが一番欲していたモノの消失させるっていう、サイッコーにたぎる悪だくみを♡」

 ハジメのその顔は、とっても楽しそうな、愉悦の顔。
 敵対者ファイントに相応しい、そういう顔であった。

「でね、悪天使のファイントちゃん? 後輩ちゃんはね、あなたから欲しいものがあるの。
 そう、真名解放に得られるであろう、あなたのスキル達♡」

 ハジメには、悪天使のファイントの代役として呼び出された彼女には、見当がついていた。
 彼女の真名、そして解放によって得られるであろう強大なスキルを。

「そのスキル、ストーカー対策ネックレスの効果によってあなたから貰うよ☆ いくら、あなたが真名解放して強くなろうとも、その小ささなら、スキルすら発動できずに、なにも出来ないでしょう?
 後輩ちゃんは、その力を貰うけどね? そして、そのスキルと力で、全世界に月神の力で、最凶に怖すぎる恐怖の幻影を見せましょう!」

 それこそが、ハジメの計画である。
 
 真名解放によって強力な力を得たファイントの力を奪い取り、月面に恐怖の幻影を植え付ける。
 そして、人々が月を見て、恐怖の幻影によって恐れおののかせ、逃げた判定によって【敗走蛙】で万単位、億単位の、大量のスキルを獲得する。
 あとは、それらの力を用いて、純粋に世界を征服する。

 悪役として、敵対者ファイントとして。
 それが、ハジメの計略なのである。

「と言う訳で、早速始めましょうよ。ファイントちゃん?
 真名解放の手順は簡単だね。あなたの目の前で、真名を呼ぶだけ、だなんて」

 ニヒヒ、とハジメは不気味に笑っていた。

 小さくなったファイントの顔は分からない。
 小さくなったから見えない、とかではなく、どういう顔をして良いか分からないと言ったような無表情な顔で。

 ハジメはそんな事を気にせずに、堂々と言い放つ。

「ファイントちゃん、あなたの真名は----」


 そして、ハジメは死んだ。
 真名解放したファイントによって、圧倒的な力で。

「----あぁ、最悪の心地」

 ファイントは、久方ぶりに戻れたその姿に、嬉しさよりも落胆した心地で。
 ただ、漫然と、落とし前をつけに行くのであった。

 ----そう、魔王シルガなる相手に。



(※)【断神による縁切鋏】
 全てを切り裂く【切断】の権能を持つ、十二支のネズミの神様である断神の力を用いて発動した魔法。禁術である【縁切鋏】という魔法を再現している
 効果は、えにしの断絶。特定の絆のみを斬り捨てる
 正月のファイントであるハジメは、冴島渉との縁を断絶し、自分に勝ったとしてもファイントにその居場所を取り戻させないという方法を選んだ
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