俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第186話 その者の名は----

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 ダブルエムの身体を乗っ取った魔王シルガは、欲深い魔王であった。
 なにせ、彼はドラゴンという、一番を目指す種族なのだから。

 ドラゴンは、夢を見る種族だ。
 悪癖龍マルガリータがトップアイドルを目指すように、その世界での一番を目指す種族。

 魔王シルガは魔王として生まれ、魔王の中での一番を目指していた。


 ----にも関わらず、魔王シルガは弱かった。
 赤坂帆波が倒した107いる魔王の中で、一番弱い魔王であった。
 どんなに頑張っても、魔王シルガが最弱の魔王であるという事実は変わらなかった。


 でも、だからこそ魔王シルガは、欲深かった。
 魂の状態でダブルエムの身体に入り込んだ時も、虎視眈々とその身体を奪うチャンスを狙っていた。

 そんなにまでなっても生を望む魔王シルガだったからこそ、ダブルエムの身体を奪えたのかもしれないが。

 そして、魔王シルガは、ドラゴン種の魔王の時よりも、圧倒的なる力を得た。

 【オーバーロード】という、圧倒的なる力。
 部品さえあれば、自分の身体をノーリスクで復活できる能力。
 そして、世界を再構築する際に得た、好きなように世界を作り替える能力。

 まさしく魔王シルガは、この世界における魔王の中での一番であった。

「でも、何故だ? 何故、この魔王シルガ様の上に誰かが居ると、我が本能は告げているのだ?」

 それは、ドラゴンとしての本能であった。
 一番を夢見るドラゴンとしての本能が、自分がまだ一番ではないと告げていた。
 その相手がだいたいどの辺りに居るかまでは分かるが、何故かその相手が誰なのかは分からなかった。

「おかしいぞ。居場所は分かるのに、何故その相手が誰なのかは分からないんだ?」

 居場所が分かるならば、相手が誰なのかも分かるはずだ。
 しかしながら、その相手が分からない。
 その事実が、魔王シルガを余計に、苛立たせる。

「----こうなれば、我が配下を送り込んで始末させよう」

 自分の上の1位の席に君臨する者がいるならば、対処する方法は2つ。
 ----そう、たったの2つだけ。
 
 その者よりも強くなって1位の座を奪い取るか。
 もしくは、その者を殺して1位の座を空っぽにするか。

 魔王シルガが選んだのは、後者である。
 顔も知らない1位を殺して、1位の座を空っぽにするという、そういう方法である。

「幸いにも、配下候補はいくらでもいる」

 魔王シルガはそう言って、【世界球体】を手にする。

 ダブルエムが所有していた、1000以上にも及ぶ【世界球体】。
 魔王シルガに乗っ取られるほど、非好戦的で消極的な彼女が持っている【世界球体】は、戦いに向いている物は少なかった。

 ----というか、なかった。

 色物と呼ばれるような、そんなのしかなかった。

「----とりあえず、これで行こうか」

 魔王シルガはそう言って、1つの【世界球体】を手に取る。

「あまり好戦的とは言えないが、こんなのでも役に立つかもしれない」

 早速、魔王シルガはその【世界球体】を自身の配下へと変えて召喚するスキル【黄金召喚】を発動させる。
 そして、出来た召喚獣を、件の相手がいるダンジョンに送り届ける。

 ----そう、Cランクダンジョン《東神話大陸》に。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ほ~ほけきょ♪ 撃つべし、放つべし、射るべしっ!!」

 いきなり俺、冴島渉の目の前に現れたその巨大な黒鬼は、拡声器型の二丁拳銃から銃弾を放ってきた。

「くそっ! 召喚、【ガードガーゴイル】----って、一撃?!」

 俺は防御に特化した石像型のガーゴイルを生み出すも、拡声器型拳銃から放たれる銃弾によって、一瞬で倒されていた。
 ガードガーゴイルは、がっちがちに硬くて、普通の拳銃なんかでやられるほど柔じゃないはずなのに。

「----というか、何だ? この巨大な黒鬼は?」

 俺は、鑑定を使って正体を確かめる。


 ===== ===== =====
 【《ウグイス嬢》黒鬼・巨躯】 レベル;Ⅴ
 別世界に住まう者達に頼まれて宣伝広報活動に従事する者達の世界を閉じ込めた【世界球体=ウグイス嬢世界=】の力を得た、巨大なる黒鬼の魔物。倒すと、マナ系職業の1つ、【ウグイス嬢】を使用することが出来るようになる
 広報活動目的なため、宣伝する相手が偉大であればあるほど戦闘能力が上がる。戦闘の際は拡声器型拳銃から音声を凝縮した弾丸を放って攻撃し、倒した相手は広報活動を手伝う同志にさせる
 ===== ===== =====


「----ウグイス嬢?!」

 鑑定して俺が分かったのは、相手が【ウグイス嬢】の力を得た巨大なる黒鬼だということ。
 そして、俺が召喚して操る限界であるレベルⅢ----その2段階上の敵だという事である。

「ほ~ほけきょ♪ 偉大なる魔王シルガ様のために! あなたを倒して、同志にさせてもらいましょ~う♪」
「くそっ……!」

 俺は選択を迫られていた。
 そう、逃げるか、レベルⅤ以上の制御できない召喚獣を呼ぶか。

 逃げても、俺の身体能力では、恐らくはすぐに追いつかれてやられて、同志とやらにさせられる。
 レベルⅤ以上の召喚獣は、今の俺では制御できないし、あの巨大な黒鬼が倒せば同志とされるため、さらに危険な状況になる。

「(くそぅ、もしかしたら俺のレベルアップ召喚獣達なら、なんとかなったのかもしれないのにっ!!
 アイツら、どこに居るんだ?!)」

 千山鯉、正月のファイント、そしてココアとマルガリータ。
 俺がレベルアップ可能状態にして育てた"6人"さえいれば----っ!!

 ん? 6人?

「何故だ? なんで俺は、6人と言う数字を思い浮かべた?」

 まるで、俺の知らない2人が居るなんて----

「あれ?」

 俺はそう言いながら、アイツに一度斬られた事のある手首を押さえる。

「そう言えば、俺が初めて召喚した召喚獣って、千山鯉だよな?
 で、俺はそいつに斬られた? 【魔法少女】なら、撃つ方が楽だよな?」

 なのに、何で斬られたんだ?
 まるで【魔法少女】じゃなくて、斬ったのが【剣士】のようなヤツだったかのように----。


「「《主様っ!!》」」

 と、そこに千山鯉----いや、千山鯉と同じ顔をした、合計2人の召喚獣が現れた。
 そしてその千山鯉と同じ顔をした召喚獣を見て、なにか違和感を覚えていた俺の脳神経が1本に繋がる。

 繋がった脳神経が導く通りに、俺は彼女の名を千山鯉と共に叫んでいた。

「千山鯉! "雪ん子"! そいつは敵だ、やっつけろ!!」
「「《了解っ!!》》」

 そして、千山鯉と、そして雪ん子の2人は、巨大な黒鬼に戦いを挑むのであった。
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