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摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第184話 ボタン瞳の幼女ちゃん

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「----ぐふっ?!」

 佐鳥愛理は、赤い血を吐いて、その場に倒れ込む。
 どうやらマルガリータの赤い魔法、いや古代龍魔法が当たり、相応のダメージになっているみたいだ。

「マルガリータ! 今じゃ、【世界球体】を破壊するんじゃ!」
「了解だよ、妾の姉御!」

 と、マルガリータは佐鳥愛理に近付こうとして----


「----"召喚銃剣サモン・ビームブレード"!」


 いきなり現れた相手に、マルガリータが斬られていた。

「……?! なんじゃ、あいつは?!」

 ココアはそのいきなりの乱入者に、動揺を隠しきれなかった。
 その乱入者は全身から夜闇を放っており、どんどん溢れ出る謎の夜闇の発生源は、コイツだったようである。

 修道女の服装に身を包んだその10歳くらいの幼女は、背中に背負っている煙突から黒い夜闇をまき散らしており、その手には黄金の二丁拳銃を持っていた。
 そして二丁拳銃をホルダーにしまうと、佐鳥愛理を抱き起した。

「ほら、大丈夫なのです?」
「……えぇ、想定外の衝撃にびっくりしましたよ」

 そして佐鳥愛理とその幼女は、ココア達の前に立ち塞がる。 
 2人は再び立ち上がった佐鳥愛理よりも、その夜闇をまき散らす幼女の方が気になって仕方なかった。

 ----なにせ、その幼女の瞳は、"ボタン・・・"だったから。

「【怪盗】の奥の手、【至高の盗み】。このスキルはまさしく異次元の、至高ともいえる盗み。なにせ、盗みたい本人からではなく、その関係者から本人の物を盗みとするスキルなのだから。
 この力さえあれば、召喚獣相手に盗みを行うだけで、主である【召喚士】----つまりは、冴島渉が持つ持ち物を盗み取る事が出来る」

 そうして、佐鳥愛理が盗み取った持ち物は、【甘言の仙丹】。
 かつて冴島渉が倒したシーヴィーから、ドロップしたアイテム。

 そのアイテムの効果は、服用することで【蕩ける声スウィートボイス】を得ることが出来る。

「【蕩ける声】、それはうちの【三大堕落】メンバーであるシーヴィーを象徴するスキル! そのスキルを得ることが出来る【甘言の仙丹】を素材として、"マスター"が【奴隷商人】の力で呼び出した彼女こそ----」


「初めまして、お二人さん。
 ----"すり抜け天井"、"妖怪1足りない"、"今月の残金はゼロです"。底辺からこそ見える景色が、そこにはある! 【三大堕落】の【どん底】担当、【ビーワンちゃん】です! "ちゃん"まで含めて名前です!」


 その幼女----ビーワンちゃんは、二丁拳銃を構えながら、そう言うのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 一方その頃、Cランクダンジョン《東神話大陸》の一角。
 そこで、悪天使のファイントと、正月のファイント----2人のファイントによる青魔法決戦が行われていた。

「行くよ♪ ハジメちゃんの十二神攻撃っ!」

 正月のファイント、ハジメの号令によって、ファイントに12種類の攻撃が放たれていた。


 ネズミが、空間を斬り。
 牛が、全てを凍らせ。
 虎が、雷鳴を轟かせ。
 兎が、幻惑を放ち。

 鯨が、レールガンを放ち。
 蛇が、水場もないのにあり得ないほどの水をぶつけ。
 馬が、風を吹かせ。
 羊が、ファイントの行動を遅らせて。

 猿が、植物を操り。
 鳥が、豪炎をぶつけ。
 犬が、太陽を生み出してぶつけ。
 猪が、爆弾をぜさせ。


 12種類の動物の神々による攻撃が、ファイントに向かって放っていた。
 それに対し、ファイントは青い炎のような魔力を用いて、相手の攻撃を全て滅ぼしていた。
 ファイントはその青い炎のような魔力を、様々な武器の形に形態変化させて対処してた。

 時には鞭に、時には銃に、時には剣に----様々な武器の形で、ファイントは神の攻撃を弾き返していた。

「流石ぁ、ですね! 一応はオリジナル、後輩ちゃんの元ネタなだけはありますね! 神の攻撃を、こんなに簡単に防いじゃうだなんて!」
「防ぎますよ、なにせ本物ではなく、偽物なんですから。この領域のように」

 と、ファイントはハジメが職業スキルによって変えた空間を指差す。


 ===== ===== =====
 【天・青魔導士】 スピリット系統職業
 相手の魔法を学習ラーニングして自分の力とする、マナ系統の【青魔導士】の【スピリット】版の職業。自分が記憶している景色を周囲に投影し、投影した景色を操る
 空間を【スピリット】の力で自分の領域として書き換えるのに多大な力を使うが、書き換えた後の景色は何の制限もなく自分の自由にすることが出来る
 ===== ===== =====


 ハジメの職業、【天・青魔導士】。それはファイントの【青魔導士】のスピリット版。
 ハジメはスピリットの力で、ダンジョン領域に干渉して、ここを神が住まう領域として定めた。
 そして、普通なら力を使うだけでも凄まじく、姿を具現化して操るなど不可能な神々を、それらが暮らす空間を生み出すことで使役している。

「この職業ジョブと後輩ちゃんは、相性がたいへん良いんですよね」

 ハジメは羽子板で鳥神の火炎と、牛神の吹雪の、2つの球を器用に跳ねさせながら、そう言う。

「【天・青魔導士】は、魔力がこもったダンジョンなどの場所には、その魔力を上回るスピリットの力を使わなければ上書きできないため、大した領域は奪えない。しかし、後輩ちゃんには【独断専行】のスキルがある」

 【独断専行】----それはダンジョンの影響を受けなくなるスキル。
 であるならば、【天・青魔導士】と組み合わせた場合、ダンジョンの魔力に関係なく、スピリットの力が続く限り、永遠に好きなように自由にダンジョンを上書きできるようになる。

「今や後輩ちゃんは、全ての空間を自由自在に操作できる! まさしく、自由に!
 神々ですら、この私の手にかかっちゃえば、自由に呼び出せる! これこそ、自由の権化たる私の力なのですよ!!」

 ハジメは、楽しそうに、実に愉快そうにそう言う。

「(えぇ、多分、本当に楽しそうだね)」

 空間を好き勝手に、自由自在に使う。
 彼女の思いのままに、空間を変えて、あの神様さえ自分の手足として扱う。
 自由自在に、我がままに、ハジメは自らの領土を変える、まさしく自由な女。


「----実に、不自由な生活をしてますね」


 ファイントはそう侮蔑の表情を浮かべていた。

「何でもできる? 何でも自由自在に出来る? そんなにできる事があるのに、することがこの程度でしかないだなんて。それで自由を語るだなんて、私の代役ながら、なんて情けない……。
 自由とは、自分自身の意思に従って、振舞うこと。断じて、そう断じて----"神の力を借りる"なんて、他者の存在を前提として生きてるだなんて」

 ファイントは、彼女の後ろに控える動物の神々を、射殺さんばかりに向けていた。

「----神様と共にある。まだ神に意思を委ねてるだなんて」

 ファイントは、ゆっくりと瞳を開け、"金色の瞳"をハジメに向けていた。


「私の代役を語るなら、神に頼るな」


 ファイントはそう言って、【オーバーロード】の力を用いて生み出した、蒼炎の双刀をハジメへと向けていた。

「----さぁ、ここからは本気でぶち殺します。神殺し、始めましょうか」



(※)【スピリット】系統職業、【天・青魔導士】
 四大力の1つ、【スピリット】を用いる職業の1つ。主な使用者は、正月のファイント、蒼穹ヶ原紅葉
 ダンジョンの魔力を、【スピリット】の力で上書きすることで自らの領域として好きな景色に変える事が出来る能力を持つ職業。支配した領域内では、炎の雨を降らせたり、足元を裁くなどの別の環境にしたりと、自分の好き勝手に領域を自由に操作することが出来る
 ただし、ダンジョンコアから無理やり奪うのに力の大半を使うため、あまり大きな領域を自分の支配下に置くことは出来ないという欠点を持つ
 しかし、ダンジョンの魔力の影響を受けない【独断専行】と組み合わせる事によって、ダンジョン内であろうとも自らの支配領域をどんどん増やせるようになる

 ちなみに、【独断専行】などのダンジョンの魔力の影響を受けないスキルを持っていないにもかかわらず、ダンジョン内で即座に相手をアイドルにすることが出来る【箱推し】の職業は、スピリット系統では破格の性能を持つ


(※)ビーワンちゃん
 【三大堕落】の1人で、赤坂帆波が佐鳥愛理の頼みにより召喚した奴隷幼女。シーヴィーの記憶を一部受け継いでおり、シーヴィーと同じくシスター服とボタン瞳をこよなく愛する。名前の由来は『地下1階』を意味する『B1』から
 担当は、【どん底】担当。しかしながら、未だにどういう物なのかは、良く分かってないらしい
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