上 下
192 / 350
第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第182話 まさしく"ちいと"な佐鳥愛理

しおりを挟む
「【黒化編成:黒影→蝙蝠】! 相手の首をっ切れ、職業スキル【急所必中】!」

 佐鳥愛理は自身の影から、無限に真っ黒な影の蝙蝠の軍団を生み出していく。
 その蝙蝠達はクルクルと回転しながら、ココア姉妹に向かって来る。

「いっ、くぞぉぉぉぉぉぉ!」

 マルガリータはそんな蝙蝠軍団に対して、真っ向から突っ込んで行く。
 手にしている杖に、魔力を込めて魔法を構成しているようだが、防御用ではなく、攻撃用の魔法を構成しているだろう事は想像がついた。

「この蝙蝠達、意外と攻撃力高めだよ~? 防がなくて良いのかな~?」
「防ぐのはマルガリータではなく、ココアの役目じゃよ!」

 ココアはそう言って、バトルフィールド全体を、光属性の魔法で包み込んでいた。
 光属性の魔法は、影の蝙蝠達を照らして、そのまま"蝙蝠達を消していく"。

「多くの作品がそうであるように、影は光によって消える! 妾の光によって、お主の闇は消させてもらおう!」
「----そして、可愛いボクが攻撃する! 【アイドル杖術】、そして新スキル【S級体術】!」

 影の蝙蝠達はココアの魔法の光によって消え失せ、主力となっている影を消したことで無防備になってしまっている佐鳥愛理に杖を突き立てる。
 【アイドル杖術】の効果により、キラキラとしたエフェクトが飛び散る杖を、後衛向きと言われる【マナ】系統職業のマルガリータとは思えないほどの、効力な突きが放たれる。

 ----しかし、その突きは、佐鳥愛理の前の空気に阻まれていた。

「職業スキル【金庫破り】。私の目の前の空間を、金庫にしました」

 クルクルと、佐鳥愛理の目の前の空間が回り、マルガリータが突いた杖を防いでいた。

「空気が、硬い壁になって、可愛いボクの攻撃が防がれたです?!」
「これは壁ではないですよ、金庫です。壁はただの壁でしかありませんが、金庫は貴重な物を敵から守るモノ……故にあなたの攻撃を防ぎつつ----」

 佐鳥愛理はそう言いながら、口を大きく開ける。
 そこには、レーザーを放つレーザー砲が現れていた。

 そして、レーザー砲の砲身が光り輝くと共に、マルガリータの肩をレーザーが貫いていた。

「~~~っ!」
「貴重な物である私は、普通に攻撃が出来るという。どうですか、この人体改造によって取り付けたレーザー光線の味は? 影を光で消されようとも、私にはまだ色々な攻撃手段があるという事ですよ」

 レーザーに肩を貫かれたマルガリータは、痛みで地面を転がりながら、絶叫する。
 その絶叫が【悪癖音波】のスキルによって、災厄と言う形で具現化するのを避けつつ、ココアはマルガリータの傍へと近付く。

「リタ! 痛みで我を忘れてるのは分かるが、悲鳴は止めよ! スキルが暴走して、攻撃となっておる!」
「~~~~!! だっ、だいじょうぶです、妾の姉御っ!」

 マルガリータは我を取り戻したようで、ココアに支えながら立ち上がる。
 その立ち上がった姿を見て、口を閉じてレーザー砲をしまった佐鳥愛理は感心していた。

「レーザー光線、普通に強めに打ったはずなのに……大丈夫だなんて、流石はドラゴンの身体。頑丈さが桁違い、ですね?」

 ガチャンガチャンっと、佐鳥愛理の身体が変形していく。
 大きく開けた口からは先程のレーザー砲、両脚からは高速で回転する車輪、そして背中からは空を飛ぶためのジェットパックを背負っていた。

 ----とてもじゃないが、怪盗とは思えない姿であった。

「時代遅れな【怪盗】の恰好を、少しでも近代的にするための機械兵装。
 ----さぁ、全てを放って、反抗的なあなた達に折檻せっかんするとしましょう」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 佐鳥愛理の、機械兵装攻撃は続く。

 両脚の車輪を回転させて移動し続け、時折ジェットパックを用いて空中を舞う。
 そして、レーザー砲から光線を放って、攻撃してくる。

「もうっ! ここは、可愛いボクの歌声で! ~~~♪」
「リタよ! 頼むのじゃ! 妾は光属性の魔法で、"あたっく"するのに精一杯なのじゃよ!」

 マルガリータは【悪癖音波】でレーザー光線を相殺しつつ、ココアは光属性の魔法を続けていた。
 ココアは、佐鳥愛理の闇攻撃をさせないように、光を放ち続けなければならないため、攻撃する余裕がなかった。

「(本当は、リタと共に攻撃したいのじゃが、一瞬でも気を緩めると闇が覆ってしまう。
 ----むむっ、まるで太陽が空から落ちるのを止めるようじゃ!)」

 何故かは分からないが、このダンジョンを覆う夜闇が、どんどん拡大していくようで。
 ココアが必死に頑張って光属性の魔法を使い続けなければ、佐鳥愛理が使える夜闇を出してしまうため、攻撃に使える余力がないのである。

「妾の姉御! 相手、めちゃくちゃ強いんですけど!?」
「そうじゃな! あれは"ちいと"って奴じゃな!」

 ココアとマルガリータは攻撃しているのだが、圧倒的に相手の方が有利そうだ。

「どうですか、この【文明】担当の佐鳥愛理の力は! ゲームで言えば、隠しボス級の力を持つこの私の力は!」

 「ハーハハハハッ!」と、そんな声が聞こえてきそうなくらいな声で、佐鳥愛理は高らかに笑っていた。

「妾の姉御……こうなったらっ!!」
「----?! もしや、あれを使う気か、リタ?!」

 ココアの言葉に、マルガリータは頷いていた。


「えぇ、可愛いボクの心を奪ったあの魔法を!
 ----古代龍魔法を、再現しますっ!」



(※)機械兵装
 佐鳥愛理が【分裂玩具マトリョーシカ】を使って生み出した分身を用いて、全身に機械を搭載した姿。全身のあらゆる箇所に108の兵装が取り付けられており、さらにはその身に宿す3体の魔王の力を引き出すことで身体能力も非常に高いため、まさしくチート級の能力を保有していると言えよう
 それぞれの評価としては、以下の通り。

 "マスター"曰く「おもしろびっくり兵器人間」
 シーヴィー曰く「男の夢を結集させた、私ほどでもないけど美人」
 ダブルエム曰く「文明さん」
 日野シティーミティー曰く「なんか凄いけど、【青春】とは全く関係ないので、本当にどうでも良いとしか思えないので私には聞かないでください。……え? ちゃんとした評価が欲しい? なんでそんな事を決めなくちゃいけないんですか? 私は【青春】とは関係ないことはしたくはない、そういう人間なので(以下略」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...