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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第179話(番外編) 結成! アイドルグループ!

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「----と言う訳で、我が名は【《箱推し》赤鬼】! 我を倒したくば、全員で我をときめかせ、全員で我に告白したまえよ!」

 開口一番、そんな事をのたまう敵に対して、俺はこう思った。

「(うわぁ、また変なの出たなぁ)」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ある日、俺達----俺、雪ん子、ファイント、ココア&マルガリータのいつもの召喚獣達一行----はとあるダンジョン攻略を行っていた所、そんな事を言う敵と遭遇した。

 頭が四角いプレゼントボックスになっており、爪がカラフルなペンライトになっているその奇妙な赤鬼は、俺達に向けてそう言うのであった。


 ===== ===== =====
 【《箱推し》赤鬼】 ランク;?
 たった1人の推しを決めるという事よりも、複数人の推しが居る方が人生は幸福でいられると信じられている世界を閉じ込めた【世界球体=箱推し世界=】の力を得た、赤鬼の魔物。倒すと、スピリット系職業の1つ、【箱推し】を使用することが出来るようになる
 特殊なスピリットの力によって、相手の感情を読み取ることで、敵をアイドルグループという箱として決定し、互いの気持ちが揃わなければ攻撃できないようにするハメ戦法を得意とする
 ===== ===== =====


「と言う訳で、喰らえっ! 【支配領域・アイドルステージ】!」

 プレゼントボックス頭の赤鬼は、ペンライトの爪を床へと沿わせる。
 すると、俺の召喚獣達を真っ白な光が覆っていた。

 そして、俺の召喚獣がアイドルになっていた。

「は?」

 俺は、啞然としか言いようがなかった。
 全員の恰好がそれぞれをモチーフにしたであろう、アイドルの衣装を着ていたからだ。

 雪ん子は真っ白な雪、ファイントは紫を基調とした堕天使、ココアは狐と吸血鬼、そしてマルガリータが音符などの歌関連。
 それぞれが、皆、アイドルの装いに変化していたのである。

「《ぴぴっ? なにこれ?》」
「これは、刺激的☆」
「なんじゃ、こりゃあ?!」
「可愛いボクが、さらに可愛くなったねぇ♪」

 雪ん子は、状況を理解できておらず。
 ファイントは、状況を楽しそうに楽しみ。

 ココアは、雄たけびをあげて。
 マルガリータは、喜びの声をあげていた。

「さぁ、アイドル衣装にしてやったぞ! お前達は今から、アイドルグループ【ザ・召喚獣ズ】だっ!」

 ババンっと、勝手に断言する赤鬼。

 こうして、アイドルになった召喚獣と、《箱推し》赤鬼との戦いが幕を……開けた、のか?
 俺がそれくらい困惑するくらい、召喚獣達も困惑しているみたいだった。

「《ぴぴぃ……? これ、どうすれば?》」
「衣装は可愛いけど、どうすれば可愛いボクの力になるのかな?」

 雪ん子とマルガリータの2人は、いきなりアイドル衣装に変えられて困惑しているみたいであった。
 そりゃあ、そうだよな。アイドル衣装は、困惑するよな。



 そして、一番最初に動いたのは……意外や意外、ココアだった。

「えぇい! こう言うのは、早い方が被害は少ないのじゃ!
 【主殿、大好きなのじゃ!】」

 ココアはそう言う愛の告白と共に、ファイアーボールを《箱推し》赤鬼にぶつけていた。

 ----1 Combo!!

「ぐふっ……そっけない、ただの言葉だけかと思いきや、言葉に込められた思いは上等な……! お主、さては慣れておるな!」
「慣れたくはないが、一応は経験者じゃからな! さぁ、雪ん子! マルガリータ! 続いて行くのじゃよ!」

 ココアの行動を見て、要領を心得たのか、雪ん子とマルガリータの2人も続く。

「《ぴぃっ! 【好き好き、だーいすき】!!」
「【まっ、可愛いボクに相応しいボスよね】!」

 ----2 Combo!
 ----3 Combo!

「うぐっ……?! 重すぎて強すぎる愛、そして普通に慕う愛!
 だがしかし、我を倒したくば、全員の想いを1つにしなければ、勝てはしないのだ!」

 《箱推し》赤鬼の言葉に全員の視線が----最後の1人、ファイントに向けられていた。


「……えっ? これ、私の出番ある系? 雪ん子ちゃんとか、マルガリータちゃんとかの想いが強いから、大丈夫だと思ったのに……」

 「やれやれ」と、ファイントはそう思いながら攻撃しようとして----

「----あれ? これって、もしかして私も恥ずかし告白をしなくちゃダメな系、なの?」


 そして、そこからファイントの地獄が始まった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ごっ、【ご主人って好きだな、私は~】」

 ----Miss!!

 やり直し。
 3人の召喚獣達によって、また【3 Combo!!】した後、ファイントの番がやって来る。

「【私はコーヒー好きだし、一緒に、コーヒー飲みたいなぁ~】って」

 ----Miss!!

 やり直し。
 3人の召喚獣達によって、また【3 Combo!!】した後、ファイントの番がやって来る。

「【あっ、愛してるよ? うん、本当に私なりに、うん】」

 ----Miss!!

 やり直し。
 3人の召喚獣達によって、また【3 Combo!!】した後、ファイントの番がやって来る。

「-----【フツーに、スキダナー】」

 ----Miss!!

 やり直し。
 3人の召喚獣達によって、また【3 Combo!!】した後、ファイントの番がやって来る。


 やり直し、やり直し、やり直し……何度も何度も、やり直す。

「ふんっ、最後の1人よ! お主は打算とか、そういうのが諸々ある感じがして、他の2人ほど純粋ではないし、そして吸血鬼の彼女ほど吹っ切れてもない! 故に不純な気持ちはあるから、純粋な3人のアイドルとの気持ちにズレがある!
 もっと、もっと純粋なる気持ちを解放しろ! じゃなければ、死ぬぞ! 《サイリウムネイル》!」

 赤鬼はそう言うと、カラフルなネイルで、雪ん子達を攻撃していく。
 どうやら一度、コンボのための攻撃をすると、それ以降はノーダメージ判定になるみたいだ。

 全員が1回ずつ攻撃して、4 Combo判定で、ようやく1ダメージ、という事なのだろう。


「くそっ、攻撃方法はバカっぽいのに、ふっつうに強いんだけど、こいつ?!」
「つーか! 告白とかは、私のキャラじゃないですよ! 【ほんと、この赤鬼ムカつく】!」

 そう言いながら、ファイントは赤鬼への不満を、ぶつけて----


 ----1 Combo!!


「「《「え?」》」」

 そう、その攻撃が通った。
 ファイントの、愛とは関係ない不満に満ちた攻撃が、《箱推し》赤鬼に通ったのである。

「(あっ、なるほど)」


 そこでようやく、俺はこいつの戦い方を理解した。

 そう、こいつは全員で愛を叫ぶわけではない。
 全員で、同じ思いで攻撃するのだ。
 それこそが、コイツのダメージに繋がる鍵となる。

 告白とか言って来たり、前回の事があったから、愛の告白のみ有効だと思ってしまったのであった。
 相手へ不満を漏らすのも、それはそれで、"告白"だもんな……。

 ----2 Combo!!
 ----3 Combo!!
 ----4 Combo!! ダメージっ!!

「ぐふっ、良い攻撃だった、ぞ……」


 そして、俺達はなんとか、ヤツの倒し方を見つけ、無事に勝利を手に入れるのであった----。



(※)【支配領域・アイドルステージ】
 スピリット系統職業の【箱推し】が、スピリットの力を用いて生み出した支配領域。相手をアイドルグループに変える、ただし男女混合グループはアイドルとして認められていないらしく、人数が多い方、またはスキル使用者によって男女どちらがアイドルになるかが決定される
 アイドルとして選ばれた方は、【アイドル衣装】に変えられ、"全員の気持ちや想いが一緒じゃなければ、ダメージを与える事が出来ない"という性質に変質させられる。そして、気持ちを全員一緒にして、コンボを全員で繋げなければダメージが与えられないようにさせられるため、なかなかに厄介な戦い方を強いられる。なお、一度にアイドルとして変えられる限界は48人まで
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