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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』
第178話 千山鯉とダンジョン探索(2)
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千山鯉達が挑戦しようとしている相手は、このCランクダンジョン《東神話大陸》の中でもトップクラスに厄介なボス魔物である。
【ブルルンッ!!】
「あいつが、今回倒すボス魔物----【偽龍騎トロイドラゴ】か」
そこに居たのは、というかボスの間に君臨しているのは、巨大な龍を模した像であった。
木製なのにも関わらず、その龍像はドクンドクンっと脈打っているようであった。
===== ===== =====
【偽龍騎トロイドラゴ】 ランク;Ⅲ 《東神話大陸》ボス魔物
龍神を目指すもなれなかった者達の無念の情が、龍の姿を模した像に結集して生まれた像型のボス魔物。その像には、龍神を目指した者達の負の情念が隙間なく、染み込んでいる
自らの過去と決別すべく、このトロイドラゴは常に動き続けており、動き続けている間は全ての身体能力が永続的に上昇していく。一方で動きを止めた場合、自らの過去に縛り付けられ、全ての身体能力が永続的に下降し続けていく
===== ===== =====
龍の像を模したそのボス魔物、トロイドラゴは行動を開始した。
相手は下部につけられた車輪を高速回転させ、千山鯉に向かって----は来ずに、ただ通り過ぎていく。
「(まぁ、そりゃあそうですよね。そういうボス魔物ですから)」
トロイドラゴに【戦う】という選択肢はない。
何故ならば、トロイドラゴは【移動する】事こそが、【戦う】事なのだから。
移動する事、それだけしていればトロイドラゴはどんどん強くなる。
ヤツにとって、わざわざ攻撃という手段を取る必要などなく、移動するだけで、敵が勝手に死ぬのだから、そりゃあ移動する。うん。
移動が、すなわち攻撃なのである。
「既に時速60kmくらいだろうか。千山鯉、早く倒さないと厄介な事になるぞ」
「《ぎょぎょ! 了解するだぎょ!》」
このトロイドラゴの正式な倒し方は、車輪を壊すこと。
移動し続ければ強くなり続けるこのボス魔物の一番重要な部分は、移動のための車輪である。
あれさえなくなれば、トロイドラゴは移動手段を失って、弱体化する。
勿論、神を模したご神体であるトロイドラゴの身体は木製とは思えないほどに頑丈だが、車輪さえなんとか出来れば、あのトロイドラゴは、ほぼ攻略したも同義である。
けれども、千山鯉が今からしようとしているのは、そういう戦い方ではない。
「《----術式展開、だぎょ》」
千山鯉はそう言って、意識を集中していく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
千山鯉は、身体、そして魂へと刻み付けられたライナーに魔力を流す。
全体の半分だけ、魔力を流す。
「《----古代龍魔法は、確かに強大な魔法だぎょ。でも、身体の負担が大きすぎるぎょ》」
本物の古代龍ですら、1日5回が限度の強力すぎる、古代龍魔法。
しかしながら、あの雪ん子と戦うには是非とも古代龍魔法は必要であり、5回と言いう回数はあまりにも少ない。
----だから、千山鯉は考えた。
1日5回以上、古代龍魔法を使うための方法を。
「(それが、この半古代龍魔法だぎょ)」
文字通り、半分だけの古代龍魔法。
ライナーを半分だけ使用する、古代龍魔法の劣化版。
身体中、そして魂全体に刻み込んだライナー全てに、魔力を注ぎ込んで発動するのが、古代龍魔法。
しかしながら、身体に負担がかかるため、千山鯉は1日3回が限度である。
そして、その欠点を開発するために編み出したのが、この半古代龍魔法。
古代龍魔法をギリギリ保てるくらい、そのために導き出した量というのがライナー全体の半分。
そのギリギリ保てるだけのライナーにだけ魔力を通して発動する、劣化魔法。
「(とは言え、今回が初披露なんだぎょが)」
そう、これはあくまでもスキルではない、ただの技術。理論なのだ。
威力も半減するのか、それとももっと弱くなるのか、あるいはまさかのゼロダメージになるのかすら分からない。
そもそも発動するかどうかも分からない、まだ理論なだけのぶっつけ本番。
しかし、これくらいでないと、冴島渉を取れない。
雪ん子から奪えない。
これぐらいの覚悟、決めなきゃ千山鯉じゃない。
冴島渉と共に歩む召喚獣として、恥じないようにするために。
「(トロイドラゴ、あんたはその予行演習だぎょ)」
千山鯉が準備しているうちに、トロイドラゴは限界ギリギリの速度----時速200kmになっていた。
これがかのボス魔物のスピードの限界、つまりは一番強い状態と言う訳だ。
これくらいの強さじゃないと、この半古代龍魔法が使えるかどうかは分からない。
相手は雪ん子と言う超強力な召喚獣だ、これでも弱いくらいだ。
【ブルルルルンンンンッッ!!】
「《こっちに向かって来るぎょね》」
最高速に到達したトロイドラゴは、千山鯉の方へと移動してくる。
このまま突っ込んで、潰してしまうつもりだろう。
「《----発動》」
だからこそ、千山鯉は発動した。
彼女オリジナルの、半古代龍魔法を。
【ぶうぇうおうぇういおgふぉうぇるごううぇrくぉうgとぇうおqgふおうぇ?!??!!W??W!?W?!?W】
一撃、である。
トロイドラゴは、千山鯉が放った魔法により、一瞬で消滅していた。
「《ぎょぎょぉ……》」
その光景を、放った千山鯉ですら驚いていた。
何故なら、その半古代龍魔法の威力は、"古代龍魔法と同等"。
それでいて、何発も打てそうなくらい、身体に負担が一切ないのだ。
古の技術は、全て今の技術よりも優れている訳ではない。
古では無駄な要素などなく完璧とされていた剣術も、現代からして見れば改良の余地がある穴だらけの剣術だったりするように。
古から伝わる最強の古代龍魔法にも、実は改良できる部分があった。
要は、千山鯉が作った半古代龍魔法は、オリジナルである古代龍魔法を越えていた。
その上、千山鯉の考えが正しければ、この半古代龍魔法にはまだ可能性があった。
これ以上の、更なる改良が可能な可能性を。
「《ぎょぎょ! 主様!》」
だから、千山鯉は主様たる冴島渉に、今のバトルの、とりわけ半古代龍魔法についての感想を聞こうとして----
「《主様はもういないっぴ。私の主様を、返しに来てもらったッぴよ》」
そこで、宿敵との対決が、雪ん子が居る事を知ったのであった。
(※)半古代龍魔法
古の時代において、最強と称された古代龍魔法を、千山鯉の手によって改良された新魔法。身体への負担を少なくし、それでいて古代龍魔法と同等の威力を発揮する
古代龍にしか扱えない失われた魔法ということで、魔法を継ぐ担い手が居なかったため、今まで欠点に気付く者が居なかった古代龍魔法だが、千山鯉が見出した法則によって、まだ改良の余地がある魔法である事が判明する
現在、改良に向けて、鋭意考察中
【ブルルンッ!!】
「あいつが、今回倒すボス魔物----【偽龍騎トロイドラゴ】か」
そこに居たのは、というかボスの間に君臨しているのは、巨大な龍を模した像であった。
木製なのにも関わらず、その龍像はドクンドクンっと脈打っているようであった。
===== ===== =====
【偽龍騎トロイドラゴ】 ランク;Ⅲ 《東神話大陸》ボス魔物
龍神を目指すもなれなかった者達の無念の情が、龍の姿を模した像に結集して生まれた像型のボス魔物。その像には、龍神を目指した者達の負の情念が隙間なく、染み込んでいる
自らの過去と決別すべく、このトロイドラゴは常に動き続けており、動き続けている間は全ての身体能力が永続的に上昇していく。一方で動きを止めた場合、自らの過去に縛り付けられ、全ての身体能力が永続的に下降し続けていく
===== ===== =====
龍の像を模したそのボス魔物、トロイドラゴは行動を開始した。
相手は下部につけられた車輪を高速回転させ、千山鯉に向かって----は来ずに、ただ通り過ぎていく。
「(まぁ、そりゃあそうですよね。そういうボス魔物ですから)」
トロイドラゴに【戦う】という選択肢はない。
何故ならば、トロイドラゴは【移動する】事こそが、【戦う】事なのだから。
移動する事、それだけしていればトロイドラゴはどんどん強くなる。
ヤツにとって、わざわざ攻撃という手段を取る必要などなく、移動するだけで、敵が勝手に死ぬのだから、そりゃあ移動する。うん。
移動が、すなわち攻撃なのである。
「既に時速60kmくらいだろうか。千山鯉、早く倒さないと厄介な事になるぞ」
「《ぎょぎょ! 了解するだぎょ!》」
このトロイドラゴの正式な倒し方は、車輪を壊すこと。
移動し続ければ強くなり続けるこのボス魔物の一番重要な部分は、移動のための車輪である。
あれさえなくなれば、トロイドラゴは移動手段を失って、弱体化する。
勿論、神を模したご神体であるトロイドラゴの身体は木製とは思えないほどに頑丈だが、車輪さえなんとか出来れば、あのトロイドラゴは、ほぼ攻略したも同義である。
けれども、千山鯉が今からしようとしているのは、そういう戦い方ではない。
「《----術式展開、だぎょ》」
千山鯉はそう言って、意識を集中していく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
千山鯉は、身体、そして魂へと刻み付けられたライナーに魔力を流す。
全体の半分だけ、魔力を流す。
「《----古代龍魔法は、確かに強大な魔法だぎょ。でも、身体の負担が大きすぎるぎょ》」
本物の古代龍ですら、1日5回が限度の強力すぎる、古代龍魔法。
しかしながら、あの雪ん子と戦うには是非とも古代龍魔法は必要であり、5回と言いう回数はあまりにも少ない。
----だから、千山鯉は考えた。
1日5回以上、古代龍魔法を使うための方法を。
「(それが、この半古代龍魔法だぎょ)」
文字通り、半分だけの古代龍魔法。
ライナーを半分だけ使用する、古代龍魔法の劣化版。
身体中、そして魂全体に刻み込んだライナー全てに、魔力を注ぎ込んで発動するのが、古代龍魔法。
しかしながら、身体に負担がかかるため、千山鯉は1日3回が限度である。
そして、その欠点を開発するために編み出したのが、この半古代龍魔法。
古代龍魔法をギリギリ保てるくらい、そのために導き出した量というのがライナー全体の半分。
そのギリギリ保てるだけのライナーにだけ魔力を通して発動する、劣化魔法。
「(とは言え、今回が初披露なんだぎょが)」
そう、これはあくまでもスキルではない、ただの技術。理論なのだ。
威力も半減するのか、それとももっと弱くなるのか、あるいはまさかのゼロダメージになるのかすら分からない。
そもそも発動するかどうかも分からない、まだ理論なだけのぶっつけ本番。
しかし、これくらいでないと、冴島渉を取れない。
雪ん子から奪えない。
これぐらいの覚悟、決めなきゃ千山鯉じゃない。
冴島渉と共に歩む召喚獣として、恥じないようにするために。
「(トロイドラゴ、あんたはその予行演習だぎょ)」
千山鯉が準備しているうちに、トロイドラゴは限界ギリギリの速度----時速200kmになっていた。
これがかのボス魔物のスピードの限界、つまりは一番強い状態と言う訳だ。
これくらいの強さじゃないと、この半古代龍魔法が使えるかどうかは分からない。
相手は雪ん子と言う超強力な召喚獣だ、これでも弱いくらいだ。
【ブルルルルンンンンッッ!!】
「《こっちに向かって来るぎょね》」
最高速に到達したトロイドラゴは、千山鯉の方へと移動してくる。
このまま突っ込んで、潰してしまうつもりだろう。
「《----発動》」
だからこそ、千山鯉は発動した。
彼女オリジナルの、半古代龍魔法を。
【ぶうぇうおうぇういおgふぉうぇるごううぇrくぉうgとぇうおqgふおうぇ?!??!!W??W!?W?!?W】
一撃、である。
トロイドラゴは、千山鯉が放った魔法により、一瞬で消滅していた。
「《ぎょぎょぉ……》」
その光景を、放った千山鯉ですら驚いていた。
何故なら、その半古代龍魔法の威力は、"古代龍魔法と同等"。
それでいて、何発も打てそうなくらい、身体に負担が一切ないのだ。
古の技術は、全て今の技術よりも優れている訳ではない。
古では無駄な要素などなく完璧とされていた剣術も、現代からして見れば改良の余地がある穴だらけの剣術だったりするように。
古から伝わる最強の古代龍魔法にも、実は改良できる部分があった。
要は、千山鯉が作った半古代龍魔法は、オリジナルである古代龍魔法を越えていた。
その上、千山鯉の考えが正しければ、この半古代龍魔法にはまだ可能性があった。
これ以上の、更なる改良が可能な可能性を。
「《ぎょぎょ! 主様!》」
だから、千山鯉は主様たる冴島渉に、今のバトルの、とりわけ半古代龍魔法についての感想を聞こうとして----
「《主様はもういないっぴ。私の主様を、返しに来てもらったッぴよ》」
そこで、宿敵との対決が、雪ん子が居る事を知ったのであった。
(※)半古代龍魔法
古の時代において、最強と称された古代龍魔法を、千山鯉の手によって改良された新魔法。身体への負担を少なくし、それでいて古代龍魔法と同等の威力を発揮する
古代龍にしか扱えない失われた魔法ということで、魔法を継ぐ担い手が居なかったため、今まで欠点に気付く者が居なかった古代龍魔法だが、千山鯉が見出した法則によって、まだ改良の余地がある魔法である事が判明する
現在、改良に向けて、鋭意考察中
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