俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
188 / 354
第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第178話 千山鯉とダンジョン探索(2)

しおりを挟む
 千山鯉達が挑戦しようとしている相手は、このCランクダンジョン《東神話大陸》の中でもトップクラスに厄介なボス魔物である。

【ブルルンッ!!】
「あいつが、今回倒すボス魔物----【偽龍騎トロイドラゴ】か」

 そこに居たのは、というかボスの間に君臨しているのは、巨大な龍を模した像であった。
 木製なのにも関わらず、その龍像はドクンドクンっと脈打っているようであった。


 ===== ===== =====
 【偽龍騎トロイドラゴ】 ランク;Ⅲ 《東神話大陸》ボス魔物
 龍神を目指すもなれなかった者達の無念の情が、龍の姿を模した像に結集して生まれた像型のボス魔物。その像には、龍神を目指した者達の負の情念が隙間なく、染み込んでいる
 自らの過去と決別すべく、このトロイドラゴは常に動き続けており、動き続けている間は全ての身体能力が永続的に上昇していく。一方で動きを止めた場合、自らの過去に縛り付けられ、全ての身体能力が永続的に下降し続けていく
 ===== ===== =====


 龍の像を模したそのボス魔物、トロイドラゴは行動を開始した。
 相手は下部につけられた車輪を高速回転させ、千山鯉に向かって----は来ずに、ただ通り過ぎていく。

「(まぁ、そりゃあそうですよね。そういうボス魔物ですから)」

 トロイドラゴに【戦う】という選択肢はない。
 何故ならば、トロイドラゴは【移動する】事こそが、【戦う】事なのだから。

 移動する事、それだけしていればトロイドラゴはどんどん強くなる。
 ヤツにとって、わざわざ攻撃という手段を取る必要などなく、移動するだけで、敵が勝手に死ぬのだから、そりゃあ移動する。うん。
 移動が、すなわち攻撃なのである。

「既に時速60kmくらいだろうか。千山鯉、早く倒さないと厄介な事になるぞ」
「《ぎょぎょ! 了解するだぎょ!》」

 このトロイドラゴの正式な倒し方は、車輪を壊すこと。
 移動し続ければ強くなり続けるこのボス魔物の一番重要な部分は、移動のための車輪である。
 あれさえなくなれば、トロイドラゴは移動手段を失って、弱体化する。

 勿論、神を模したご神体であるトロイドラゴの身体は木製とは思えないほどに頑丈だが、車輪さえなんとか出来れば、あのトロイドラゴは、ほぼ攻略したも同義である。

 けれども、千山鯉が今からしようとしているのは、そういう戦い方ではない。

「《----術式展開、だぎょ》」

 千山鯉はそう言って、意識を集中していく。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 千山鯉は、身体、そして魂へと刻み付けられたライナーに魔力を流す。
 全体の半分だけ、魔力を流す。
 
「《----古代龍魔法は、確かに強大な魔法だぎょ。でも、身体の負担が大きすぎるぎょ》」

 本物の古代龍ですら、1日5回が限度の強力すぎる、古代龍魔法。
 しかしながら、あの雪ん子と戦うには是非とも古代龍魔法は必要であり、5回と言いう回数はあまりにも少ない。

 ----だから、千山鯉は考えた。
 1日5回以上、古代龍魔法を使うための方法を。

「(それが、この半古代龍魔法だぎょ)」

 文字通り、半分だけの古代龍魔法。
 ライナーを半分だけ使用する、古代龍魔法の劣化版。

 身体中、そして魂全体に刻み込んだライナー全てに、魔力を注ぎ込んで発動するのが、古代龍魔法。
 しかしながら、身体に負担がかかるため、千山鯉は1日3回が限度である。

 そして、その欠点を開発するために編み出したのが、この半古代龍魔法。
 古代龍魔法をギリギリ保てるくらい、そのために導き出した量というのがライナー全体の半分。
 そのギリギリ保てるだけのライナーにだけ魔力を通して発動する、劣化魔法。

「(とは言え、今回が初披露なんだぎょが)」

 そう、これはあくまでもスキルではない、ただの技術。理論なのだ。
 威力も半減するのか、それとももっと弱くなるのか、あるいはまさかのゼロダメージになるのかすら分からない。
 そもそも発動するかどうかも分からない、まだ理論なだけのぶっつけ本番。
 
 しかし、これくらいでないと、冴島渉を取れない。
 雪ん子から奪えない。

 これぐらいの覚悟、決めなきゃ千山鯉しょうかんじゅうじゃない。
 冴島渉と共に歩む召喚獣として、恥じないようにするために。

「(トロイドラゴ、あんたはその予行演習だぎょ)」

 千山鯉が準備しているうちに、トロイドラゴは限界ギリギリの速度----時速200kmになっていた。
 これがかのボス魔物のスピードの限界、つまりは一番強い状態と言う訳だ。

 これくらいの強さじゃないと、この半古代龍魔法が使えるかどうかは分からない。
 相手は雪ん子と言う超強力な召喚獣だ、これでも弱いくらいだ。

【ブルルルルンンンンッッ!!】
「《こっちに向かって来るぎょね》」

 最高速に到達したトロイドラゴは、千山鯉の方へと移動してくる。
 このまま突っ込んで、潰してしまうつもりだろう。


「《----発動》」


 だからこそ、千山鯉は発動した。
 彼女オリジナルの、半古代龍魔法を。


【ぶうぇうおうぇういおgふぉうぇるごううぇrくぉうgとぇうおqgふおうぇ?!??!!W??W!?W?!?W】


 一撃、である。
 トロイドラゴは、千山鯉が放った魔法により、一瞬で消滅していた。

「《ぎょぎょぉ……》」

 その光景を、放った千山鯉ですら驚いていた。
 何故なら、その半古代龍魔法の威力は、"古代龍魔法・・・・・と同等・・・"。
 それでいて、何発も打てそうなくらい、身体に負担が一切ないのだ。

 古の技術は、全て今の技術よりも優れている訳ではない。
 古では無駄な要素などなく完璧とされていた剣術も、現代からして見れば改良の余地がある穴だらけの剣術だったりするように。
 古から伝わる最強の古代龍魔法にも、実は改良できる部分があった。

 要は、千山鯉が作った半古代龍魔法は、オリジナルである古代龍魔法を越えていた。
 その上、千山鯉の考えが正しければ、この半古代龍魔法にはまだ可能性があった。
 これ以上の、更なる改良が可能な可能性を。

「《ぎょぎょ! 主様!》」

 だから、千山鯉は主様たる冴島渉に、今のバトルの、とりわけ半古代龍魔法についての感想を聞こうとして----


「《主様はもういないっぴ。私の主様を、返しに来てもらったッぴよ》」


 そこで、宿敵との対決が、雪ん子が居る事を知ったのであった。



(※)半古代龍魔法
 古の時代において、最強と称された古代龍魔法を、千山鯉の手によって改良された新魔法。身体への負担を少なくし、それでいて古代龍魔法と同等の威力を発揮する
 古代龍にしか扱えない失われた魔法ということで、魔法を継ぐ担い手が居なかったため、今まで欠点に気付く者が居なかった古代龍魔法だが、千山鯉が見出した法則によって、まだ改良の余地がある魔法である事が判明する
 現在、改良に向けて、鋭意考察中
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。 ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。 仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...