俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第175話 空海大地はもう逃げない(2)

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 家を消し飛ばした犯人は、全身真っ白な女であった。

 白1色のセーラー服に身を包み、袖を通さない白一色のコートを羽織っていた。
 これまた白1色のツンツンへアーと、辛うじて女性だと分かるくらいの身体つき。
 そんな、全身真っ白な女は、憎しみの視線を空海大地へと向けていた。

「見つけたぞ、やっと見つけたぞ、ほら見つけたぞ! 貴様が空海大地、この世界を壊した勇者だな!」

 彼女はそれだけ言うと、虚空から----【アイテムボックス】から、これまた白1色の長剣を取り出す。
 その長剣に、空海大地は見覚えがあった。

 ----聖剣ソラハカツ。

 "ソラ(を)分断ワカつ"の名の通り、聖剣に力を込めれば天空すら両断する、勇者にしか扱えない聖剣。
 かつて空海大地が天空世界テンクウパンクに居た時に使っていた聖剣の1つである。

「(あの聖剣は、勇者にしか使えないはず……つまり、あの白女も、俺様と同じ天空世界の【勇者】?)」

「奥義、【勇者武術・斬】!」

 彼女が白い剣を振るうと、物凄い勢いの斬撃が空海大地へと襲い掛かる。
 先程、家を丸ごと吹き飛ばした、あの斬撃である。

「(この斬撃は‥‥…!?)」

 しかしながら、空海大地は斬撃を放っていた。
 それもちょうど、敵である女勇者の放った斬撃、その斬撃の一番弱い部分を狙って。

「----っ! 我が斬撃を、簡単に?!」
「やるねぇ、大地くん! 一発で、敵の技の弱点を見抜くだなんて!」

 空海大地は「違う」と、断言する。
 "見抜いた"のではなく、"知っていた"のである。

「あの斬撃、俺様の斬撃と全く同じ斬撃だった……」

 剣が斬撃として放たれるタイミング、軌道、それにどこに力が込められているか。
 また、どこを突けば、斬撃を完璧に封じられるか。

 自分の斬撃と細部まで含め、全く同じだからこそ、どこに力を加えれば技として成立しなくなるかを良く分かっていた。

 ----あの女勇者は、自分である。


「アレは、君だよ。【天空世界】の勇者である空海大地くん」

 赤坂帆波は、女勇者を見ながらそう言った。

「そもそも、魔王シルガが使ったスキル【世界改変ワールドメイク】は、うちの【不老不死】担当のダブルエムのスキル【リ・セット】を基に発動するスキル。つまりは、【リ・セット】の効果も発動している。
 【リ・セット】は、対象となる相手の行動の1つを選択し、その選択の前まで時間を逆行させて、その選択をしないようにするスキル」

 右の道を行ったら災厄に巻き込まれるのならば、分かれ道の前まで遡らせて、右の道以外の道を選ぶようにする。
 試験問題の解答欄を1つずつズラして解答してた時は、試験開始前まで遡らせて、解答欄がズレないようにさせる。

 嫌な選択をする前まで遡り、嫌な選択を無意識的に取らせないようにするスキル。
 そんなスキルが、【リ・セット】である。

「そして、恐らくだけど【リ・セット】の対象となったのは君だ、空海大地くん。
 世界を滅ぼすほどの強いエネルギーを抑えずに帰ったせいで、世界を滅ぼした空海大地くん。ならば、世界を滅ぼす前に戻り、エネルギーを抑えるように、行動を変えさせた」

 その結果が、あの女勇者の登場、という事なのだろうと、赤坂帆波は説明する。

「それじゃあ、アイツは? あの女勇者は?」
「【リ・セット】は対象をスキル内に含めるか、含めないかを選択できる。魔王シルガは君の行動をトリガーとしておきながら、君をそのスキルの影響の範囲内から除外した」

 そもそも【天空世界から帰った勇者が、力を抑えずに帰った結果、世界に亀裂が入った】という結果を変えたいのに、肝心の勇者様が居ない。
 そこでスキルは、代役を用意した。
 スキルの影響から自力で脱した雪ん子達の代役を用意したのと同じように、空海大地の代役を世界が自ら作り出したのだ。

「気を付けてくれよ、空海大地くん。彼女は、君と同じ勇者だ」


「我が名は、【天地海里あまちかいり】! 【天空世界】を滅びから救った勇者であり、そして、今から世界に亀裂と言う物を刻み付けた、悪しき勇者----空海大地を撃ち滅ぼす者なり!」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 勇者、天地海里あまちかいり

 彼女は魔王シルガによって改変された世界で、空海大地の代わりに【天空世界】を救った勇者という立場と、人気MyTuberのマイマインを運営している女勇者。
 つまりは、この世界における空海大地である。

 人々が遥か上の天空みらいに想いを馳せる【天空世界】において、空海大地という勇者は、絆という大地いまを信じて、力を得た。
 一方、天地海里という勇者は、海の底----人々が遺し忘れて行った海原かこに目をつけ、力を得た。

 大地いまを信じた空海大地と、海原かこを継承した天地海里。

 魔王シルガの呼びかけとスキルにより、状況を把握した彼女は、この世界に亀裂を与え、なおかつ1人の少女を亡き者にした破壊の権化たる空海大地に戦いを挑むのであった----。


「さぁ、折檻の時間だ! 【勇者魔術・火球】!」
「----【ファイアーボール・極】っ!!」

 海里はいくつもの火球を《マナ》を用いて作り出し、それを大地は《マナ》の力で作った巨大な火球で飲み込んでいた。

「【スピリット変換・雷神】っ!」
「【勇者天術・震】! 地面よ、震えよ!」

 大地は自らを《スピリット》の力で雷へと変え、雷の超高速で海里に迫る。
 一方、海里は《スピリット》の力で地面に振動の属性を与えて、うねうねとさせながら攻撃と回避を同時に行う。

「さらに【勇者体術・裁】! 光の刃よ、敵を穿て!」

 さらに、《プラーナ》の力で、神の奇跡を再現する海里。
 光の柱が、大地へと迫り----

「くっ! おらぁっ!!」

 溜まらず、大地は聖剣を【アイテムボックス】から出して、それを弾く。

 ----聖剣アース。
 【天空世界】で彼が使っていた武器の1つであり、聖剣ソラハカチに匹敵するほどの力を持つ聖剣だ。

「(しかし、匹敵するだけで、勝る訳ではないんだよな)」

 今の戦いで、大地は確信した。
 あの女勇者、天地海里もまた、自分と同じく四大力を4つとも扱える強敵である、と。

 そして、気付いていた。
 聖剣ソラハカチを犠牲にして魔王を撃ち滅ぼした自分とは違い、相手はそれをしなくても魔王を倒せるほどの実力がある、と。


「----ええい、埒が明きません!」

 海里はそう言うと、1つのスキルを----大地すら知らないスキルを発動する。


「スキル、発動! 【海の遺物ロストテクノロジー】!
 現れよ、【天空世界】にて捨てられし、古代文明たちよっ!」
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