俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第163話 勝利へのカウントダウン

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「----ヤバいですね、完全に逃げられちゃいました」

 鋼鉄製の鯨軍団を6匹ほど倒されたハジメは、完全に2人を見失っていた。
 雪ん子とファイント、どちらのスキルか策略か分からないけれども、2人の姿を完璧なまでに見失っていたのである。

 逃げられた、という事を把握した瞬間、ハジメの持つスキルが発動する。


 ===== ===== =====
 スキル【敗走蛙ニゲカエル】が 発動
 スキル【増援】を 自動取得 いたします

 【増援】;魔法やスキルを発動すると、遅れて勝手に増援がやってくるスキル。攻撃の強さは、自分で放った強さと同等である
 増援の量は、敵の強さによって変動され、敵が強ければ強いほど増援の量は増えていく
 ===== ===== =====


「おっ、良い感じのスキルをゲットぉ~! いやぁ、後輩ちゃんはどんどん強くなっちゃいますなぁ!」

 ハジメは嬉しそうに、新たに得た【増援】を確かめていた。

 ----真名を解放することで得た、固有スキル【敗走蛙】。
 これはハジメの真名である【イタチ】の伝承から生み出された、ハジメのみが取得できる固有スキルである。

 イタチは、十二支を決める神様の元に13番目に辿り着いた動物。
 しかしながら、イタチと同着で13番目に辿り着いた動物がもう1匹いた。
 その動物こそ、蛙。

 イタチは神に反抗し、抗議し、そして地位を得た。
 蛙は神に反抗せず、抗議せず、ただ帰って何も得なかった。

 真っ向から刃向かう事で、得たイタチ。
 黙って退いてしまった事で、なにも得られなかった蛙。

 その伝承から、正月のファイントこと、ハジメはとあるスキルを獲得した。
 そのスキルこそ、【敗走蛙】。


 ===== ===== =====
 【敗走蛙ニゲカエル】;相手が敗走することで、自動的にスキルを獲得するスキル。一戦闘につき1つスキルを獲得するスキルで、どれだけ相手の数が居ようとも獲得できるスキルの数は1つである
 逃げた相手の強さによって、獲得できるスキルが決まる。ただし、自分がもし相手に敗走をしてしまった場合、【敗走蛙】で取得したスキルのうち、3つを相手に譲渡してしまう
 ===== ===== =====


 【敗走蛙】を持つハジメは、相手が自分とのバトルで逃げれば、逃げるほど、ハジメが持つスキルはどんどん増えていく。
 雪ん子とファイントの2人を逃がしても、ハジメとしては万々歳である。

「おっ……そんな事を考えてたら、私とは逆の、2人は逃がさないという考えの人から連絡ですなぁ」

 着ている振袖の懐から、ハジメは携帯電話を取り出す。
 そして、かかってきている相手を待たせすぎないように、すぐさま電話を取った。

「もしもし、もっしもしっ? こちら、正月のファイント、ハジメちゃんの携帯電話ですよ?」
『《ぎょぎょ。首尾はどうですか、我が同胞?》」

 携帯電話の向こう側から聞こえてきたのは、千山鯉。
 正月のファイントと同じく、それ以上にあの2人を主から遠ざけたいと考えている召喚獣である。

「首尾ですか、後輩ちゃんとしては失敗だったと言うべきべき? それはまぁ、便利なスキルが手に入ったと喜んでおしまいで、どう?」
『《……納得できないんだぎょ》』
「おやおや、また、何故に? 私としては雪ん子の2人を襲う事に初めから違和感があったのですけど?」

 雪ん子とファイントの2人は、千山鯉達にその座を奪われた召喚獣達。
 千山鯉達にとっては、いつか自分達の座を奪い返すかも知れない相手。
 戦うべき相手とはいえるかもしれないが、相手は自分達と同じ召喚獣である。

 倒したとしても、また勝手に召喚されてこちらに戻って来る相手である。

「(正直な所、【敗走蛙】がなかったら私は戦おうとも思わなかった相手なのに、なんで千山鯉ちゃんは戦いを強制するんだろう?)」

 変だと思っていると、千山鯉の次の言葉で彼女の気持ちが理解できた。
 

『《ぎょぎょ~。何故って、あんなの倒したくてしょうがないでしょう?
 我が最愛たる冴島渉様に、すがりつき、愛されようとして、へばり付く、ゴミ。クズ。カス。
 あんな劣悪にして、愚劣にして、最悪な者共に、私がどう思うなんて想像もつくでしょう?

 主様に指一本たりとも触れさせる事無く、一目だけでも見る事すら許さず、主様の知らないところでその生涯を終えさせる。それこそが、この千山鯉なりの、主様に対する忠義です》」


「(いや、忠義って言うか……まぁ、これ以上は言わないでおこう)」

 下手な事を言って、仲間であるはずの彼女に殺されかかりたくない。
 ハジメはそう感じながら、千山鯉に質問を投げかける。

「それで、そちらの方は? 確か、雪ん子達とご主人の間を切り離す術がある、って話では?」
『《ぎょぎょ。そちらの方も、抜かりなく策は張っているでぎょ》」

 『《超強力固有魔法、縁切鋏》』と、千山鯉はそう言った。


『《あらゆる縁をなかったことにし、二度と繋げなくさせる、絆を壊す最凶の禁術魔法。
 手間こそかかりますが、これを発動できれば、もう二度と雪ん子とファイントの2人は、こちらの世界へと来ることは出来ないでしょう。

 召喚獣とは、【召喚士】を目印にして、こちらの世界へと来る存在。いかにダンジョン外で、主様の手を介せずにこちらに召喚できるとしても、目印たる主様との縁をなくせば、こちらに戻ってくることは出来ない。
 この禁断の魔法が発動した瞬間、私達の勝利は確定するんだぎょ》」

 今からその時が楽しみだ、とハジメは思った。

 その事を知った時の、彼女達の絶望の表情。
 それは実に、甘美にして、心躍る表情に違いないのだから。

「……んで、その禁術はいつになったら発動できるんです? 後輩ちゃん的には明日明後日にでも、発動して欲しいんですけれども?」
『《そう簡単な魔法ではないんだぎょ。なので、時間がかかる》」
「どれくらい?」


 そのハジメの問いに、千山鯉は『《"3週間"くらいだぎょ》』と答える。


『《断言するんだぎょ! 1月もかからず、彼女達と主様の縁を、この千山鯉が切り離して見せましょう!》」
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