俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第5章『夏だ! 海だ! 千山鯉だぁ~!/雪ん子の座を奪いし召喚獣・千山鯉の章』

第158話 ドリンクバーで長時間たむろするようなお話(1)

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「《ずるい-----!!》」

 近場の、どこにでもあるファミリーレストランで、1人の少女の悲鳴があがっていた。

 蒼炎が描かれた着物を着た、青い炎で作り出された角を生やす、女子高生。
 そう、何を隠そう、冴島渉の本当の・・・召喚獣、雪ん子ちゃんである。

「《ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい、ずっるーいいいいいいい!!》」
「落ち着きなって、雪ん子ちゃん☆」

 ぴゅーっと、ドリンクバーで作ったミックスジュース(いくつものジュースを適当に混ぜて作ったあれ)を飲むモデルのような美人。
 もう1人の、冴島渉の本当の・・・召喚獣であるファイントであった。

 彼女達が何故、こんな事になっているのかといえば、それは全て世界が作り替えられたからだ。



 何者かの手によって、この世界は新たに作り替えられた。
 その何者かについては、雪ん子もファイントも別に興味がないから良いのだが、問題はその作り替え方である。

 世界を作り替えた何者か----仮にエックスとでも呼ぶとしよう。

 エックスは世界を自分の力で包み込み、スキルの力によって初期化フォーマットを行った。
 その際、【オーバーロード】の力を持っていた雪ん子とファイントの2人は、世界を包み込むほどの強力な力を寄せ付けず、エックスは邪魔だったので2人を一旦、別の場所に置いといた。

 世界を無事、初期化したエックスは、自らの好きなように世界を作り替えた。
 ダンジョンを増やしたり、あるいは世界全体にマナが満ちている状況にしたり、もっと色々と改変を行っているのかもしれないが。

 その際、困ったのは、一旦別の場所に置いた2人のせいで開いた穴の存在である。

 たった2人という、世界から見れば些細な人数ではある。
 だが、それでも2人の召喚獣がいた穴を、なにかで埋めておく必要があった。

 なので、代わりとして用意したのが、"千山鯉"と"正月のファイント"である。
 そうして補填をきちんと用意し、世界は無事に再構築が完了された。

 再構築が完了した世界、そこに雪ん子とファイントの2人の居場所はない。
 何故なら、2人の代わりが、彼女達の居場所を奪っていたからだ。

 単純に2人を殺せば丸く収まるという話でもない。
 なにせ偽物が本物の振りをしているというような単純な話ではなく、世界という存在が用意した、もう1つの可能性----雪ん子とファイントを選ばなかった世界からの者という話だからだ。

 "雪ん子"と"ファイント"は、冴島渉の、本物の召喚獣である。
 しかしながら、それと同時に、"千山鯉"と"正月のファイント"もまた、冴島渉の、本物の召喚獣なのだから。
 どちらも偽物ではなく、どちらも本物だから厄介なのである。

 そのため、2人は冴島渉から隠れるように、それでも近くに居たいと、彼らが潜っているダンジョンの近くにあるファミリーレストランに居ると言う訳なのだ。



「まぁ、最もココアとマルガリータの2人の協力がなかったら、もっと話はややこしくなってたでしょうけどね♡」

 吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世と、悪癖龍マルガリータ。
 彼女達は、再構築前の2人の事を、覚えていた。
 どうやら、【召喚 レベルアップ可能】が、2人と居た経験を忘れないように保護した結果だと、ファイントは推理した。

 なので、2人には千山鯉達に気付かれないように、冴島渉の様子を報告してもらっていたのである。

「《むぅ~!! マスターと、冒険した~い》」
「そりゃあ、無理だよ、雪ん子ちゃん♪ 今の私達は、ご主人にとっては見知らぬ他人だからね☆」

 もし仮に、人間として偽れるアイテムを得て、冒険者仲間としてパーティーを組もうとする。
 しかしながら、我らが冴島渉は【魔力量が上昇するが、人間とパーティーを組むことが出来ない】という命題なる制約があるため、パーティーを組むことは出来ない。

 では、堂々と召喚獣として出て行ったら、どうなるのか?
 そうしたら、冴島渉とは別の【召喚士】が出した召喚獣だと思われ、最悪の場合には敵だと判断されて戦闘に発展するかもしれない。

「一番、現実的な方法としては----ご主人の後をストーカーのように付いて行くパターンとかです? まぁ、パーティーって言うよりかは、いつもいる他人みたいな感じだと思いますけど☆」
「《ダメ! そんなの、ダメ!》」
「……まぁ、私も言ってて、面白くはないと思ってましたが」

 雪ん子はぶくぶくっと、ドリンクバーでいれてきたジュースを泡を出すくらいに、不満気な様子であった。

「(まぁ、雪ん子ちゃんは主様大好き召喚獣ですからね~)」

 元々、雪ん子は【召喚士】である冴島渉のことが好きであった。
 それも、【殺意の目】という、殺人衝動があるにも関わらず、だ。
 そして今の彼女は、【殺意の目】が進化して、【神呪の目】というスキルへと変わっていた。

 【神呪の目】は人ではなく、神を疎むスキル。
 つまりは、神を殺したいと思うスキルである。

 このスキルを得たことにより、人を殺したいという想いよりも、神を殺したいという想いへと変化し。
 同時に、人を殺したいという想いがありながらも、あれほどまでに慕っていた冴島渉への想いが爆発した。

 今の雪ん子ちゃんは、主様大好きすぎてどうにかなってしまいそうなことになっていた。

「(そんな彼女が、主様のところにいけないという過重なるストレスにどこまで耐えられるかな……)」

 雪ん子がいつ暴走して、ストレス発散と称して、自分を殺しに来る時が来るかもしれない。
 そうならない前に、なんとかしないといけない。

 ファイントはそう思いながら、必死にアイデアを絞り出すのであった。
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