俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
158 / 354
第4章『ダンジョンの試練、最強の黒鬼と雪ん子に師匠?!/雪ん子(オーバーロード)の章』

第150話 パンはパンでも、食べられないパンって、なーんだ?

しおりを挟む
「"マスター"!!!」

 召喚獣として再びこの世界へと帰ってきた赤坂帆波マスターに、日野シティーミティーは抱き着いた。
 ジャンプしての、飛び込み抱き着きである。
 狗が飼い主の姿を見て、喜び勇んでじゃれつきにかかる図をそばで見ていたダブルエムが思い浮かべるくらい、見事な飛びつきようであった。

「うわぁっと」
「"マスター"だ! 本物だ! 生きてるよ、この人!」

 子供のようにじゃれつく日野シティーミティーに飛びつかれ、赤坂帆波はその場に倒される。
 倒された状態のまま、離れようとしない日野シティーミティーを、赤坂帆波はゆっくり、丁寧に撫でていく。

「うにゃぁ~……ふにゃぁ~……」
「うわっ、#猫みたい ですね。初めて見ましたよ、こんな#癒された顔 のダブルエムは」
「はいはい、ダブルエムったら。あんたも撫でられたいなら、頭だしな。それとも、夕張萃香とか呼んだ方が良い?」
「"マスター"だにゃぁ~!」

 もう1匹ほど増えた大きな猫ちゃんを、同じように撫でていく赤坂帆波。

「"マスター"! 聞いて、聞いて! 実はね、ニチアサちゃんは【青春】が分かっちゃったんだよ!」
「え~? あの、ニチアサちゃんが? 本当に?」
「本当だよぉ~。めちゃくちゃ色々調べて、分かるようになったんですから!」

 ぷくぅ~と頬を膨らませて抗議する日野シティーミティーに、「本当かなぁ?」とニヤニヤした顔を浮かべる赤坂帆波。

「じゃあ、テストしようかね? "パンはパンでも、食べられないパンって、なーんだ?"」
「ふふっ……"マスター"のなぞなぞ、本当に懐かしいですね。でも、とびっきりの【青春】を学んだ私には、既にその答えも分かってますよ?」

 「ふふんっ!」と大きく胸を張る日野シティーミティー。


「そもそも、"マスター"は私が何を答えても、違うとおっしゃった。
 以前に"マスター"が正解だと言っていた正解を、いくつも言ってるのに、それらも否定されてましたし」

 既にこのなぞなぞで、赤坂帆波が正しい答えだと言った解答例は10を越えている。
 『フライパン』、『ピーターパン』、『絵に描いたパン』、『審判』、『直談判』。
 『「パン」と鳴る音』、『プロパン』、『怪盗ルパン』、『折半』、『ジーパン』。

 "マスター"の「不正解」の言葉と共に、言われた解答を日野シティーミティーは全部覚えており、それらを次に問いかけられた際には答えているのだが。
 それを全部、"マスター"は「不正解」と否定していた。


「つ・ま・り、解答自体よりも大切なものがある。そして、私は"マスター"の表情を思い返して、"マスター"が楽しそうにしていたのを思い出しました!
 という事は、あれはなぞなぞの解答を問うていたのではなく、なぞなぞという会話を私と楽しもうとしていた! ----すなわち、皆で楽しく会話するための会話手段!
 だから正解は、【青春】! 一緒に楽しくエンジョイする! それこそ、このなぞなぞで"マスター"が問いたかった答えですっ!!」


 どやぁ、と答える日野シティーミティー。
 その答えを聞いた赤坂帆波は、「成長したね、ニチアサちゃん」と涙目になっていた。

「まさか、人の気持ちや思い出なんて一切分からなかった、あのニチアサちゃんがこんな答えを出してくれるだなんて……あなた達のご主人様としては、すっごく嬉しいよ」
「"マスター"……」

「え? そのなぞなぞ、答えって『ナン』なんじゃ? #ですよね 確か?
 前に"マスター"言ってましたよね? 『パンはパンでも食べられないパンってのは、『ナン』だ』って」

 余計な事を言うダブルエムに、2人は冷めた目で見つめていた。

「ダブルエム……今は、そういう揚げ足取りは要らないと思います。青春的にも」
「【不老不死】じゃない物を担当した方が良かったかもね、萃香は」
「酷い?! #酷くない ですか、それは?!」

 「「「アハハハッ!!」」」と、3人の笑い声が、ダンジョン内にて響き渡るのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「すやぁ~」

 ぐっすりと、赤坂帆波は寝息を立ててぐっすり眠っていた。

「#副作用 みたいな物ですね、【フギンとムニンの液体瓶】の」

 赤坂帆波が眠った理由について、ダブルエムはそう日野シティーミティーに説明した。

「【フギンとムニンの液体瓶】は、対象に関する記憶を色々な場所から収集してきます。その量があまりにも膨大すぎて、脳が整理する時間を身体に要求した。だからこそ、"マスター"の身体が一時的に眠りに落ちた。
 ----安心してください、恐らくは数時間くらいすれば、記憶の処理も終わるでしょうし」
「では、その頃を見計らい、【召喚登録】をしましょうか」

 と、ダブルエムはそう結論付けた。

 今現在、召喚獣である赤坂帆波の所有権は、冴島渉の物となっている。
 他人のスキルを勝手に用いる【貪欲なる右腕ムナガラー】というスキルを用いて、【召喚 レベルアップ可能】というスキルを勝手に使用していた。
 その勝手に使用した【召喚 レベルアップ可能】は赤坂帆波に記憶と経験が出来るように調整していたのだが、その影響は大きく、召喚を行った日野シティーミティーの召喚獣ではなく、冴島渉の召喚獣として現在は登録状態になっているのだ。

 ダブルエムはそこまで調べ上げて、【フギンとムニンの液体瓶】が完全に身体に馴染む頃には、【召喚 レベルアップ可能】の効果も身体に馴染むと判断した。
 なので、ちゃんと馴染んだ頃を見計らって、【召喚登録】によって日野シティーミティーの召喚獣として登録しようという計画を立てたのである。

「ほんと、作戦が無事成功しそうで、青春的に嬉しいですね……」

 心安らぐ顔で、日野シティーミティーは安心していた。

「あぁ、"マスター"が無事に完璧な状態 #馴染んだ状態 になったら、#サトエリちゃん にも伝えないとなりませんね。サトエリちゃんも、ニチアサちゃんに負けず劣らずの、"マスター"大好き勢ですし」
「----えぇ、そうね」

 心安らぐ、安心しきった雰囲気を漂わせる2人。


 そして、ダブルエムは、こう言った----。

「では、私の方の#作戦 も、手伝ってくれますよね? ニチアサちゃん?」

 ダブルエムはそう言いながら、"ゴツゴツとした少し大きい"【世界球体】を日野シティーミティーに向けていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

処理中です...