俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第4章『ダンジョンの試練、最強の黒鬼と雪ん子に師匠?!/雪ん子(オーバーロード)の章』

第136話 第2回戦:雪ん子の天敵、空亡(1)

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「《ぴぴぴ、ぴぃぃぃぃぃ!!》」

 【イメージ召喚】によってほんの少し強化された、雪ん子。
 彼女は召喚されるや否や、迷いなくいきなりニチアサちゃんに斬りかかったのである。
 その剣には一切の迷いなく、確実に相手を殺すことだけを考えられた、殺戮の剣。

「うん、良い殺意だ。まるでこちらの事を知っているかのような、良い殺意だね」

 そんな雪ん子の殺意を、まるで待ち望んでいたかのような顔をして眺めるニチアサちゃん。
 避けることなどせず、雪ん子の剣はニチアサちゃんの肩に深々と突き刺さる。

「やはり、君だけは・・・・覚えてるようだね」
「《ぴぴっ……忘レル、訳ないっ!! 主、傷ツケタ!》」
「良いね! スキルを発動した私ですら記憶がなくて、状況から判断してるのに、そっちは記憶がある----実に興味深い」

 嬉しそうにそう語るニチアサちゃんだが、俺には何のことだか、さっぱり分からなかった。

 ……雪ん子が、覚えている?
 いつも以上に殺意を持って斬りかかる雪ん子の様子からして、ニチアサちゃんに恨みがあるのは確かなようだ。

 いつ、雪ん子とニチアサちゃんは接触したんだ?
 雪ん子が接触してるなら、俺も接触してるはずだが……もしかして、なにかのスキルでも使って、俺と出会った戦いを、"なかった事"にした、とか?
 そんなバカげた話があるかと思うが、先程の痛みだけを与えるスキルを容易く使えたのを見ると、それも納得である。

 しかし、なんでそれで、ニチアサちゃんが嬉しそうに笑うんだろうか?

 
「じっくり観察したいところだけど、今は召喚獣同士の対決の時間なんだ。だから、彼女に任せよう」

 いきなりである。
 いきなり、飛来した相手が、雪ん子へと真っ赤な炎を投げつけてきたのである。
 【炎属性無効化】のスキルを持つ雪ん子は、その炎を気にもせずに受けて----大ダメージを受けていた。

「《ぴぴぴぴぴぃぃっぃぃぃ!!》」

 その場に転げまわる雪ん子。
 めちゃくちゃ痛そう、それだけは確かに伝わるほど、彼女は闘技場の地面を転び、やがて立ち上がる。


「【召喚士】へのレッスン、その3。"召喚獣とは空想の産物である"。
 妖怪や魔物などの伝承を知ることで、召喚できるようになる召喚獣もいる。そして、その中でオリジナル召喚獣を用意して最強を語る【召喚士】も星の数ほどいる。そういう【召喚士】たちは考えを改めるべきなのだ」

 ニチアサちゃんは懐から、1本の巻物を取り出して広げる。
 巻物には何十匹もの、多種多様の妖怪が描かれている。

 ----百鬼夜行絵巻。
 鬼や妖怪達が群れを成して、行列を為して夜の道を歩いている姿、"百鬼夜行"を描いた巻物であった。

 そして、その巻物の最後には、巨大な赤い球状の物体が禍々しい闇の黒雲に包まれた様子で描かれていた。
 恐らく百鬼夜行の最後として夜を終える象徴のようなもの----太陽かなにか、なのだろう。

「自分で考えた創作上の召喚獣を召喚することは、遥かに難しい。何故なら、思い込みが強い人間でない限り、こう考えてしまうからだ。『これは自分が作った物』と。そんな思いだと、召喚獣を生み出せない。オリジナルはそれくらい、難しい。
 だから、二次創作が良い。考え方を、過去の偉人が作り出した伝説などの逸話の解釈を変える方が遥かに楽。そして、その解釈を変えた結果、生まれたのがこの召喚獣だよ」



 ニチアサちゃんが、俺の雪ん子とほぼ同時に召喚した召喚獣。
 それはマイクとマラカスを持った黒い顔をした、セーラー服を着た女子高生であった。
 頭にはヘッドホンを付けており、その黒一色の顔の中心には不気味な一つ目がこちらを覗いていた。

「ちょりーっす☆ あるじぃのために、うちは頑張っちゃうので応援の方よろ、よろぉ~!!」


 ===== ===== =====
 【空亡そらなき(カラオケ)】 レベル;Ⅲ 
 召喚種族名;百鬼夜行の大神・空亡そらなき
 装備職業;シンデレラ

 いくつかの解釈と誤解が重なって生まれた、創作上の妖怪の王。百鬼夜行絵巻の末尾に「夜が明け太陽が昇ると共に妖怪が去っていく」という場面があり、この太陽を"百鬼夜行の終わりに出現する強大な妖怪"と見なしたものが、空亡である。その誕生の経緯故に、妖怪に対しては特攻の力を持つ
 日野シティーミティーに召喚された際、青春をイメージした【カラオケ】の印象を大きく受け、マイクを持った、ヘッドホンを取り付けた女子高生らしい姿になっている
 ===== ===== =====


空亡そらなき……?」
「そう、あなたが太陽と見なした、百鬼夜行絵巻に最後に描かれた巨大な赤い球体。あれを『百鬼夜行の終わりに出現する強大な妖怪』として描いた妖怪。それがこの空亡。
 妖怪である限りは、この空亡に敵うことはない。進化して種族が変わっていたとしても、その雪ん子ちゃんが妖怪を基にしている事実は変わらない。
 果たして、そこの雪ん子ちゃんに、妖怪という過去がある彼女にこの空亡を倒せるのか、見物だね」

 ニチアサちゃんは「期待してるよ、雪ん子ちゃん」とエールを送る。
 自分を召喚したニチアサちゃんに期待されなかった腹いせに、空亡は雪ん子へと襲い掛かる。

「もう! あるじぃの期待を受けるのは、この空亡----空ちゃんの役目なんだよ!
 そんなあんたには、これで燃え尽きちゃえぇ~!」

 空亡が放ったのは、先程と同じ炎攻撃。
 真っ赤に燃える炎の一撃は、雪ん子へと襲っていた。

「《ぴぴっ!!》」

 あの炎は受けてはならないと理解した雪ん子は、自らも炎を発していた。
 しかしながら、雪ん子が放った炎は、空亡の炎をすり抜けた。

「《ぴぴ?!》」
「うちは妖怪特攻の主、空亡! この力は妖怪である限りは必ず大ダメージとなって、妖怪である限りは防げないんですよ! つまりは、空亡・オン・ステージぃぃ!! きらぁ~ん☆」

 炎で防げないと思った雪ん子は、今度は物理的に避ける事にした。
 闘技場の地面を壊すほどの勢いで、ロケットスタートを決めた雪ん子は、そのまま空亡に剣で斬りかかる。

 しかし、その剣は空亡の前で、ポキッと折れる。
 ちょうどいいタイミングで、空亡に当たる直前で、限界を迎えたかのように剣は折れていた。

「《剣が?! ----あぅ?!》」

 そして、雪ん子の頭の上に、まるでコントのようにタライが落ちてきたのであった----。



(※)カラオケ・フォーム
 日野シティーミティーが思う【青春】っぽい事の1つ、"カラオケ"のイメージが概念として生まれた特殊な衣装。召喚獣の姿形に影響し、特殊な力を与える
 全ての攻撃が多少ノリが良くなり、テンションがはっちゃめっちゃに上がりやすくなる。ぶっちゃけマイクとマラカスは、テンションを上げるための小道具です
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