俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第4章『ダンジョンの試練、最強の黒鬼と雪ん子に師匠?!/雪ん子(オーバーロード)の章』

第124話 こぶトリまぞく(2)

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「弾け飛べ、黒の衝撃!! 魔族武術【黒の殴波おうは】!!」
「《【王剣術・覇】奥義、王の剣・斬神きりがみ!!》」

 油留木和花は全身に青いオーラを纏いつつ、全身を《オーラ》の力を駆け巡らせる。
 そして、全身の身体能力を極限にまで高めた状態で、殴りつけることによって、衝撃波を放っていた。

 それに対し、雪ん子は瞳を見開き、剣を縦横無尽に斬りつける。
 縦に、横に、斜めに、【召喚士】である俺なんかには見えない速度で、斬撃で壁を作り上げていた。
 当たれば全てを斬りつける、そんな斬撃の壁によって、油留木和花の放った衝撃波を斬り落とし、本体にもダメージを与えていた。

「良い攻撃だな、雪ん子。まぁ、とりあえず"おかわり"を貰っておいてよ、【鬼怒楽園きどらくえん】」

 自分の攻撃の反動ダメージで、大量の血を噴き出すほどのダメージを受けている油留木和花。
 彼女はそう言うと、またしてもあのレアスキルによって、自分のダメージを全部、雪ん子へと押し付ける。
 それによって、雪ん子の身体に、さらに幾つもの傷が生まれていた。

「《ぴぴぴ……!! 【氷炎の申し子】!!》」

 雪ん子は氷と炎の2つの属性の力を操作し、自らがダメージを受けて血が出ている個所を止血していた。
 傷口を凍らせて血を止め、別の傷口は燃やして傷口ごと消したり。
 出血こそ止められたが、それでも雪ん子の身体がボロボロであることには変わりなかったが。

 既に雪ん子は相手の【鬼怒楽園きどらくえん】によって押し付けられたダメージで身体がボロボロ、一方でダメージを押し付けた油留木和花はほぼ無傷----。
 圧倒的に、こちらが不利な状況であった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「無敵すぎだろ、自分のダメージを相手に押し付けるって……」

 俺は2人の戦いを、いや、2人以外に入ることを許されないその戦いを見守るしか出来なかった。
 
「いやー、これは恐らく、決闘相手以外、横入りさせない結界ですね」

 と、俺の横で、口笛吹ながらのん気に観戦していた、ファイントが気軽にそう言う。
 自分では敵わないと、ファイントは諦めて、雪ん子と油留木和花の戦いを観戦することにしたみたいだ。
 さっき、「もし雪ん子ちゃんが負けたら、その時は諦めましょう。ねっ、ご主人?」と言っていたし。

 ……いや、守ってくれよ。
 敵わないにしても、少しは頑張って欲しいのだが。

「今、こそっと相手に見えないように魔法を打ち込めるかなーって思ってやって見たんですけど、ダメですね。結界に、魔法の術式ごと弾かれましたよ。
 2人の熱い戦いが始まる前は魔法が通っていたので、多分、油留木和花が"これは横やりで邪魔されたくない"と感じて、決闘相手以外を排除する結界のスキルを使ったんでしょうね。多分」

 「ざんね~ん」と、ファイントは笑いながら言っていた。
 まぁ、あんなダメージを押し付けるレアスキルを手に入れている彼女だ、そういう決闘を邪魔されないようにするスキルの1つや2つくらい持っていてもおかしくはない。

 となると、鞭による支援も出来ないし、後は雪ん子があの青い肌の【魔族】冒険者を倒してくれることを、祈る事しか出来ないのだ。

「そもそも、雪ん子ちゃんという前衛タンクがいなきゃ、あんな化け物、この私1人で倒せる訳ないじゃん。ご主人、良い召喚獣居ないの?」
「お前ら4人が特別なんだよ、今呼び出せる召喚獣であんな超強い冒険者に対抗できるのなんて、居ない」

 そもそも、俺の強みはレベルアップ可能召喚獣の4人だけ。
 その他は、他の【召喚士】と同じく、はずれ職業ジョブのままなのだから。

「(うちの4人のレベルアップ可能召喚獣の中で、防御力が一番低いのは、ファイント。しかしそんなファイントでも、その防御力を越える他の召喚獣ってのは片手の指の数よりも少ない)」

 それだけ、レベルアップの力はすさまじく、それ以外は俺の力ってのは本当に弱いのだから。

「でもまぁ、あの【|鬼怒楽園(きどらくえん)】ってスキル、無敵って訳じゃないみたいですね」

 と、油留木和花を観察していたファイントがそう進言する。

「ほら、あそこの頬の辺り。青い肌だからちょっと分かり辛いですけど、血が出てるように見えません?」
「……確かに」

 ファイントの指摘があったから分かったのだが、確かにダメージを相手に全部押し付けているはずの油留木和花の頬に、うっすらと傷がついて血が出ていた。
 さっきまでド派手に血が出ていて、頬からの血はうっすら程度だったので、分かり辛かったのだが。

「多分だけど、回数制限だとか、そういうのじゃなくて、あれって反動ダメージしか押し付けられないんじゃないです? 自分が付けた傷は押し付けられるけど、相手からの傷は押し付けられない、とか」
「なるほど、そうじゃなかったら強すぎるか」

 もし仮に、相手から受けたダメージでも全部押し付けて回復できるのなら、こんな試験に参加していること自体、不自然だ。
 そんなに強いのなら、とっくにもっと上のレベルになっていておかしくない。

 だとしたら、勝機はあるのかもしれない!!

「----雪ん子! 相手が技を使う前に、全力で攻撃しろ!」

 そう、距離を取られて、【鬼怒楽園きどらくえん】を使われないように。
 距離を詰めて、隙すら作らず、一気に叩けば、勝てるかもしれない。

「雪ん子! 全力全開で、相手に近付いて叩き斬れっ!!」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「《----ぴぴっ!! 分かった!!》」

 主の言葉を受け、雪ん子は剣を構えたまま、油留木和花の懐へと踏み込む。
 相手はなにか技を発動しようとしている前に、雪ん子は相手の喉元へ向かって、剣を突く。

「魔族変化【スピリット・黒鋼ブラックメタル】!!」

 和花は自分の喉元を《スピリット》の力によって、黒い鋼のように変化していた。
 黒い鋼のように変化して硬質化した和花の喉元は雪ん子の剣を弾き、弾かれた剣先を和花の手ががっちり掴み取っていた。

「ほほぉ、殺意に満ちた突き攻撃ですなぁ。一瞬遅れていたら、喉が潰され、決闘の敗北が決まっていた。
 ----うん、殺意に満ちた、私好みの良い攻撃でしたよ」
「《ぴぴっ……》」
「まぁ、だからこそ、狙いがめちゃくちゃ正確だからこそ、逆に攻撃を受け止めやすかったですよ」

 「そして、私のスキルの秘密も良く見抜いた」と、彼女は刀身をがっちりと掴んで動かないようにして、そう答える。

「レアスキル【鬼怒楽園きどらくえん】----このスキルは、【自分が受けたダメージを、相手へと押し付ける】という効果を持っている。
 けれども、それは自分が行った技による反動ダメージのみ。攻撃すると自分にダメージが来る反動技だとか、自爆技だとか言われているモノだけ。全ての攻撃が大きな反動となってしまう【魔族】という職業ジョブを最大限に発揮できるスキルと言えましょう。
 ---まぁ、確かに、このスキルを対処しようとしたら、一気に詰め寄るしかないですね」

 反動ダメージによって血をぴゅーぴゅー流しながら、油留木和花は雪ん子の剣をがっちり握りしめながら、アハハっと笑っていた。

「----ところで、私の命題、覚えてます? 私の命題は【四大力を全て扱うことが出来るが、武器を持つことが出来ない】という物なんだけど、さて、問題です」

 ----ピシピシッ!!

 雪ん子の剣から、油留木和花が握っている剣先から嫌な音が聞こえて来ていた。

クエスチョンQ.、というモノです。この命題を持つ私が、相手の武器を掴み続けたらどうなるか?」

 ----ぱりぃんっ!!
 
 彼女の手の中で、雪ん子の剣先が派手に弾け壊れていた。
 剣が壊されたことで、動揺する雪ん子から、油留木和花はサッと距離を取る。

「----正解は、"相手の武器が壊れてしまう"でした。そして剣を失った、【剣士】こそ倒しやすい相手はいないんですよね?」

 距離を取った和花は【鬼怒楽園きどらくえん】のスキルを発動し、雪ん子にダメージを押し付けるのであった。
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