俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
119 / 354
第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』

第112話(番外編) 四天王の5人目って、テンション上がらない?(1)

しおりを挟む
 甘言のシーヴィーが撃破されてから、しばらく経ったある日。

 とあるダンジョン内で、【三大堕落】の1人、【不老不死】担当のダブルエムはピンチに陥っていた。
 ビリビリっと、大型スマホ画面でも痺れてる顔を披露するダブルエムは、身体が痺れて動けない状態にあった。

 いわゆる、【麻痺】という状態異常の状態である。

『まさか、ここまで追い詰められるとは…… #不覚です』
「お前には色々と聞きたいことがあるしな、ダブルエム」

 ダブルエムを追い詰めているのは、空海大地。
 幽霊船ホッカイドーで佐鳥愛理を倒した彼は今、この世界で一番有名な冒険者となっていた。

 そりゃあ神様から勅命を貰うほどの指名手配犯----佐鳥愛理を倒した冒険者なのだから、有名になって当然だろう。
 しかしながら、彼はその有名になった自分を、素直に受け入れられなかったのだ。
 他ならぬ、佐鳥愛理のことが。

「甘言のシーヴィーは冒険者によって倒されたというのが情報で上がっていたが、お前が倒されたという情報は上がってなかったからな。最も、【不老不死】を殺せる人間がいるとも思えないが」
『ピピピ……油断したね…… #油断大敵 #マジやばす』

 今、ダブルエムは空海大地から、状態異常の1つである【麻痺】を喰らって、動きを封じられていた。
 前回の戦いで、ダブルエムは状態異常に弱いという知見を得ていた空海大地にとっては、楽勝の事だった。

 後は、ダブルエムというよりも指定した人間を探せるスキルで、ダブルエムがダンジョンでなにかを企んでいるところを発見。
 そして今、物凄い連打で、【麻痺撃スパークフィスト】を叩きこんで、動きを止めたのである。

『魅了は克服したので大丈夫かと思いきや……まさか次は麻痺とは……。状態異常、恐るべし……』
「完全に倒すことは難しいが、状態異常が効くと知った今、一撃一撃に麻痺の状態異常を与える【麻痺撃スパークフィスト】さえあれば、勝つのは容易なんだ」

 未だに麻痺で動けなくなってるダブルエムの首根っこを掴んで、空海大地はダブルエムに尋ねる。

「聞きたい事は、大きく分けて2つ。まず佐鳥愛理について」

 幽霊船ホッカイドーで倒した、【三大堕落】の【文明】担当の、ダブルエム。
 彼女は完全に、空海大地と戦う----というよりかは、空海大地の前で倒されることを想定した戦い方をしていた。
 自らの存在を消滅させるような毒で、情報流出を抑えるだなんて、まともな考え方では出来ないだろう。

「彼女は、"生きてるのか・・・・・・"?」

 そう、聞いた話によると、甘言のシーヴィーという【三大堕落】の1人は、《死亡保険》赤鬼という召喚獣の力によって復活したという。
 だとすれば、自らの存在を消滅するような行動を取った佐鳥愛理も……生きている可能性が高い。
 そう考えるのが筋じゃないだろうか?

「なぁ、答えろ。ダブルエム。時間をかけても麻痺は解除できないぞ、時間経過で解けそうになったらまた再度【麻痺撃スパークフィスト】をかけるだけで----」
『#ドーンだYO!!』

 と、そんな中、背後から・・・・ミサイルが飛んでくる。
 慌てて、空海大地は防御膜バリアを作り出して、ミサイルを防いでいた。

『うわぁお?! やっぱり不意打ちでも倒せないなんて #マジめんどい
 これって、不老不死にさせる仕事じゃないよね #やっぱし』

 後ろからミサイルを撃ってきたダブルエムは、そのまま麻痺で倒れているダブルエムを起き上がらせる。
 つまり、2人のダブルエムがこのダンジョンにいるという状態だった。

「それが----答え、ってか?」
『『まぁ、そうですね。人間を複数人にすることが出来る、佐鳥愛理ちゃんの固有スキル【分裂玩具マトリョーシカ】の力ですね。簡単に言うと #無限増殖 的な?』』
「なるほど、それが佐鳥愛理が簡単に自殺した理由か……」

 恐らく、使えば使うだけ、対象を増やすことが出来るスキル、という感じだろうか。
 それなら、あんなにあっさりと自ら消滅という形を取ったのにも、説明がつく。

「(だが、それでもなんで俺の前で自殺を選んだ?)」

 そんな便利なスキルがあるのならば、例えば100人に分裂して一斉に襲い掛かれば、佐鳥愛理が勝利する可能性は高いだろう。
 なのに、自らの死を偽装する理由は……なんだろう?

「だが、理由さえ分かれば、俺の大量のスキルで対処可能だぞ? ダブルエム?」

 空海大地の持つスキルの中に、《プラーナ》系統の【呪術師】の力で、【共鳴り】というスキルがある。
 簡単に言えば、何百体に分裂しようとも、1体にダメージを与えれば全員にダメージを与えるスキルだ。

「佐鳥愛理が生きてると分かった今、彼女を探し出して、何体に分裂しようとも、【共鳴り】で全員にダメージを与えるだけだ。
 お前らの有利にはならないぞ、ダブルエム!!」
『『まぁ、でしょうねー』』

 と、2人となったダブルエムは互いに手を合わせて、1人と戻る。
 なるほど、そうやって戻るのかと感心していると、『質問は終わりですか?』とダブルエムは尋ねた。

『あなたに完全に負ける気はしませんが、勝てる感じも同じくゼロなので、2つの質問とやらを聞いた段階で逃げようと思います。なので、出来れば早めに、その質問とやらを教えてくれません?』
「1つ目の質問……"佐鳥愛理が生きてるのか"という理由には、それで説明が付いたとしても----もう1つ」


 そう、どちらかと言えば、空海大地にとっては、こちらの方が重要なのである。

 ----なんで、空海大地じぶんはそこまで恨まれているのか?

「(【三大堕落】----シーヴィーとやらには会ってないが、彼女達は全員、自分に対して大きかれ小さかれ、殺したいほどの殺意を抱いている。だが、どれだけ考えても、心当たりがない)」

 【天空世界】で倒した敵かと思ったり、自分が稼ぎまくっていることをひがんだ故の犯行かと思ったりしたのだが……そういうのとはまるで違う。
 だからこそ、不気味なのである。

 自分が何をして、それでどうしてここまで恨まれているのかが。


『2つ目の質問がないようなので、では#重大発表 コーナー!!』

 と、どう質問すべきか空海大地が迷っているうちに、ダブルエムは高らかにそう宣言する。

『コーナー名は"四天王の5人目って、テンション上がるよね"!!』


「つまり、こういう事ですね」


 いつの間にか、ダブルエムの後ろに、1人の女子高生が立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。  カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。  それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。  けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

処理中です...