俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』

第105話 妾とわっち、【妖狐】とヨーコ(2)

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『エルダードラゴンエッグ……失礼、リョクチャとやらと会話していると"思い込んでる・・・・・・"お主の姿が、あまりに滑稽で、無様で、楽しくてのぉ。
 そもそもなんで会話できると思ったんじゃ? 相手はただ転がるしか出来ない相手と、対等に会話なぞ、出来るはずがないのに』

 クスクスと、ヨーコは思い出しながら笑っていた。

『相手はただ転がるだけの、卵でありんしょ? 相手の伝えられるボディーランゲージは、転がる向きを変えるか、頑張ってジャンプするか。そんな程度で、どうして主殿とやらに伝えられたんじゃろうて。
 「そこでリョクチャから、召喚獣を1体召喚して欲しいと言われたのじゃよ。なので、出来ればこの召喚獣を、召喚して欲しいのじゃ」ってさっ!』

 『あれはマジで笑えたでありんすよ!』と、彼女はゲラゲラと笑いだす。
 上品に取り繕うも無理な、めちゃくちゃ面白すぎる笑いとして。

『ギルタブリル・ジンバーロックぅぅぅ? どういう神経と伝え方をしたら、そのような会話を聞き取れるんじゃよ! アレはお主を通して見させてもらった中で、特別笑い転げる話で----』
「----黙るんじゃよ」

 と、ココアは冷たい視線で、ヨーコをギロリと睨みつけていた。
 それは自分に加護をくれている神様に対する目線ではなく、大切な家族を罵倒された姉だからこそ出る侮蔑の目線であった。

「リョクチャを笑う事は、妾が許さぬ。そして、その姿も……その姿で笑う事は、もっと許さぬ」
『自分が笑ってるように見えるから、って事でありんすか? まぁ、似てるのはたしかでありんすしのう』

 『これは失敬』と、ヨーコは笑うのを止める。


『----けれども、何故お主は自分の言葉で言わなかったんでありんすか?』


「えっ……」

 子供が純真な瞳で質問した時のように、ヨーコはココアにそう問いかける。

『リョクチャ……いや、転がったりする事しか出来ないエルダードラゴンエッグが、「ギルタブリル・ジンバーロックが良い」と言えるはずはない。じゃったら、その召喚獣を選んだのは、お主の、ココア・ガールハント・ヒアリング3世という吸血鬼の判断なんじゃろう?
 何故、自分の言葉としてではなく、エルダードラゴンエッグの言葉として話したんでありんすか?』

 確かに、ヨーコの言う通りであると、ココアは思った。

 最初はエルダードラゴンエッグは自分の後輩、つまりは妹になるかもしれないとココアは感じた。
 だからこそココアは一生懸命話しかけたが、エルダードラゴンエッグはただ転がったり、跳ねたりしただけ。
 「肯定」なら「横に転がる」、「否定」なら「その場に留まる」などと、軽い意思疎通くらいなら出来るかと思ったが、そんな事はなかった。
 

 かのエルダードラゴンエッグは、無作為に転がり、無意味に跳ね、無邪気に動き回っていた。
 そこに意思疎通ができるところなど、1ミリも存在してはいなかったのである。


 エルダードラゴンエッグをかまってココアが感じたのは、相手は意思などない、ただの召喚獣だってこと。
 ただスキル【孵化選び】で、適性のあった主殿のところにやってきただけ。
 甘言のシーヴィー、というかメガボタンデスドラゴンの攻撃から主殿の身を守ったように見えたのも、ただ適性のある者を守ろうとした、ただスキルが自動発動して守っただけ。

 それだけの、召喚獣----それがエルダードラゴンエッグ。

 彼女に意思があると、そう主殿に嘘を吐いたのは、ココアなりの、ちょっとした嘘。
 エルダードラゴンエッグにはそういう力があるんだと、主殿に感じてもらうために吐いた嘘。
 だって、そうじゃないと、ただずーっと、スキルの影響で着いて来るエルダードラゴンエッグに、主殿が気味が悪いと言って捨てるかもしれなかったから。

「(それは、嫌じゃった)」

 妹になるかもしれないと、そう思った相手を捨てるなんてことは、したくなかった。
 それは吸血鬼としての、家族を大事にする己の誇りに恥じる行為だったから。
 ただ生まれる前から意思疎通が出来ないというだけで、まだ生まれてない命をなかったことにするなど、吸血鬼として誇れない行為だと感じたから。

「(天才ではないという事は最初から分かっておった。
 だからじゃのう、リョクチャが「~ぬ」とか言った、ちょっぴりアホの子だったのも素直に受け入れられたのは)」

 卵の段階から完璧なる意思疎通が出来ればそうは感じなかったが、そうではないヤツだったので、こういう召喚獣になるだろうなと予め覚悟していた。
 まぁ、想像よりも、だいぶアホだったが。

『そもそも、吸血鬼とドラゴンエッグが、種族もまるっきり違うというに、家族に、ましてや姉妹になんぞ成れるはずがないでありんしょうに。
 かのエルダードラゴンエッグが【融合召喚】の副作用で消えた時も、ただ姉ならこうするというアピールでしただけでありんしょう? 違うのでありんすか?』
「違いま……いや、そうじゃな。流石は神様、その通りじゃよ」

 そもそも、【融合召喚】に頼った時が間違いだったのかもしれない。
 主殿なら使えるかもしれなくて、だったらギルタブリル・ジンバーロックと混ぜたら、それなりの融合召喚獣が出来るのかもしれない。
 そうすれば、あの甘言のシーヴィーという、憎き相手を倒せるって----。

「妾は、かのエルダードラゴンエッグに姉妹愛なぞ感じておらんかった。
 ただ主殿の召喚獣になるかもしれないから、妾が率先して世話しておっただけじゃ。雪ん子とファイントは、妾の先達、じゃからのう」


 そう、それだけの----憎きシーヴィーを追い詰めるだけの、ただの召喚獣仲間。
 それがリョクチャ。リョクチャ・ガールハント・ヒアリング4世という名前を与えた、召喚獣。


『だったら、何故、わっちが彼女の事で笑うのを許せんのでありんすか?』


 そうだ。その通りだ。
 本当にどうでも良いと思っているのならば、ココアが怒る筋合いなんてない。

 ----じゃあ、なんで自分そっくりな姿をしたヨーコが笑うのが、許せないのだろう?

 その答えは、もうココアの中で出ていた。
 だから、ココアは素直に自分の今の気持ちを、リョクチャへの気持ちを口にする。



「最初は、ただの召喚獣仲間じゃった。別に姉妹愛とかは感じてなかったのじゃ。
 じゃがのう、未だに妾の頭から離れんのじゃ……リョクチャが無邪気な笑顔で妾の事を、『妾お姉ちゃん』と呼んでいた姿が」


 ----ここはリョクチャにお任せぬ! "妾お姉ちゃん"!!
 ----いっけええええええぬぬぬぬっっ!!
 ----やったね、妾お姉ちゃん!!

 彼女との思い出は、さほど多くない。
 でも、ココアをあんなにも姉として慕ってくれた彼女が、【融合召喚】の副作用で身体が崩れかけ、それを銃で撃ち倒された姿が、ココアの脳裏に強くこびりついていた。

「だから妾は忘れぬ。妾に、"妾お姉ちゃん"と無邪気に呼んでくれたリョクチャの事を。
 例え"でぇおちきゃら"だったとしても、の」
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