上 下
100 / 350
第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』

第94話 ココアとリョクチャ

しおりを挟む
『グォォォォ、ンンンンンンッッ!!』

「わっ!! びっくりしたぬっ!?」

 メガボタンデスドラゴンが咆哮し、それに驚いたリョクチャがびくびくと肩を震わせたところで、第2ラウンドが始まった。
 メガボタンデスドラゴンは、胸元の紫結晶に力を溜めると、そのまま先程と同じ、強力な死の息吹ブレスを放つ。

「またあの"ぷれす"か。じゃったら----」
「ここはリョクチャにお任せぬ! "妾お姉ちゃん"!!」

 リョクチャはそう言うと、左手の針に毒を充填させ、空気中にサラサラーっと文字を書く。
 書かれた文字は『あいうえお』……ただの五十音のあ行は、そのまま空気中にぷかぷか浮かんでたかと思ったのだが、そのあ行に死の息吹が直撃する。

 しかし、あ行は物ともせず、ココアがあんなに頑張って防げなかった死の息吹を防いでしまっていた。

「よーし! 反撃だよ、妾お姉ちゃん!」
「妾お姉ちゃんって、妾のことかのう?! えぇい、後でしっかりとココアお姉ちゃんと呼ぶよう、しつけてやるからのう、リョクチャ!!」

 2人は互いに顔を見合わせると、そのまま息の合った姉妹プレイを見せつける。

 リョクチャが空中に雷……正確には天気予報で良く見かける、雷マークを書いていく。
 それを見て、ココアはすぐさま、自らも雷魔法を構築していく。

「出来たぬ! 妾お姉ちゃん、いっけー!!」
「えぇい!! 《雷よ、気高き狼のように敵の首を掻っ切れ!! ウルフェンボルト!!》」

 ココアが生み出したのは、雷の狼。
 全身が雷で生み出された、白銀の雷狼はボスの間を我が物顔でかけていき、その後を追うように放たれたリョクチャの雷マーク。
 雷マークは雷狼にぶつかり、そのまま2つは融合し、出来上がったのは二つ首の巨大な雷狼。

「いっけええええええぬぬぬぬっっ!!」
「やるのじゃああああああああっっ!!」

『ガォォォォォォォォンンンンッッ!!』

 そして、二つ首へと融合進化した雷狼は、メガボタンデスドラゴンの首にかじり付く。
 かじり付かれたメガボタンデスドラゴンの全身に雷がまとわりつき、メガボタンデスドラゴンは絶叫を上げる。

『グォォォン??!!』

 あまりにも強力な雷攻撃だった故か、メガボタンデスドラゴンの紫色の骨の身体が爆破によってバラバラになる。
 爆破によって、骨のドラゴンから、骨のごみ山になってしまうメガボタンデスドラゴン。
 そしてそのまま、骨の山は砂のように消えていくのであった……。

「よしっ! 倒したぬ!」
「----いえ、まだじゃよ! リョクチャ!」

 ココアの言葉通り、バトルはまだ終わってないようだった。


『ラブホちゃん、おかわりあげるね?』


 甘言のシーヴィーが逃げて行った方から、彼女の声と共に、2つの金色の光がこちらに向かって来る。
 飛来した金色の光はちょうど砂となって消えて行ったメガボタンデスドラゴンの辺りで止まると、形がだんだん変化していく。

『『キカカカッ……!!』』

 変化して現れたのは、灰色の着物を着た、雪ん子に良く似た召喚獣。
 ただ違うのはやはり目玉がボタンに変わっているところ、そして足の辺りがうっすら透明になって、まるで幽霊のように浮かんでいるところだろうか。


 ===== ===== =====
 【凍死精霊メガボタンデスノーフェアリー】 ランク;☆☆ 怨霊族
 生き物を殺すことを楽しむ怨霊族の中で、凍死を司る闇の精霊の召喚獣。その手に触れる物を相手の特性や耐性などを無視して、凍らせ、やがて凍死させる
 半透明な身体は純粋なる魔力の塊であり、なにかに宿ることでその物を凍死させて肉体を奪う事もできる
 ===== ===== =====

 
 メガボタンデスドラゴンの代わりに現れたのは、雪ん子によく似たランクⅡの融合召喚獣。
 2体のメガボタンデスノーフェアリーは、不気味に笑いながら、こちらをいつ襲うか、試しているようだった。

『私を追い詰めたかったら、こっちまで来たら良いよ? もっとも、そのメガボタンデスノーフェアリーを倒せたらの話だけどね?』

「うぐぐっ……!! 妾お姉ちゃんをバカにしてるぬ……!!」
「そうじゃのう、あやつを逃がすのは忍びないが、ここで追うとなると主殿が……!!」

 ココアは因縁的にシーヴィーを追いかけたい所みたいだが、追いかけないのは俺を心配しての事だろう。
 なにせ、あのメガボタンデスノーフェアリーと相手出来る召喚獣は、今ん所はココアとリョクチャの2人だけだからな。

 だから、俺は----

「よし、リョクチャ! ココアを連れて、シーヴィーを追って来い!!」

 リョクチャにそう命令する。

「ぬぬっ?!」
「あ、主殿! しかし、あの2体の融合召喚獣はどう対処するんじゃ!!」

 そうだ、確かに2人でないと、あの宙を不気味に舞うメガボタンデスノーフェアリーの相手は難しいだろう。
 だがしかし、俺にはまだ、頼りになる召喚獣がいるのだ。


「《ぴぴぴ!! 真似っこ、許さない!》」
「あらら♪ 雪ん子ちゃんにそっくりの召喚獣が相手なの♡」

 
 と、空間を割って現れたのは、シャドーストーカーに《決闘》の空間に閉じ込められていた、《悪童ポリアフ》雪ん子と《悪の天使》ファイント。
 そう、俺の頼りになる、レベルアップしている召喚獣の2人である。

「雪ん子、それにファイント。ココアが逃げたシーヴィーを追うため、お前達はあの雪ん子もどきを倒すんだ!」
「《やっちゃうっ!!》」
「はいは~い♪」

 と、言う訳だ。

 シャドーストーカーが対象のステータスをコピーできるとはいっても、スキルはコピーできない、いわば劣化コピーしか出来ない召喚獣。
 そんな劣化コピーなんか、俺の召喚獣ならそろそろ倒してて良い頃合いだろうと思ったのだが、ほんと、ジャストタイミングだったぜ。

「雪ん子もどきは、雪ん子とファイントに任せ、ココアとリョクチャは、シーヴィーをとっ捕まえてくれ。出来るよな?」
「主殿……感謝するのじゃよ!」

 ココアはそう言って、一足早く、シーヴィーが逃げた奥の方の入口へと走っていく。

「あっ、妾お姉ちゃん! ここは妹である私がやるぬっ! スキル《ジンバーロック》!!」

 と、慌ててリョクチャが、制限時間付きではあるが自らの能力を上げる《ジンバーロック》のスキルを発動し、物凄い勢いでココアに追いつくと、彼女を米俵をかつぐようにして、猛スピードでシーヴィーの逃げた方へかけていく。

「こっ、こら! 姉である妾を、米俵をかつぐようにして持って行く出ないわっ!!」
「でも妾お姉ちゃん、これが一番速いと思うぬ!!」
「~~~っ!! ならば、とっとといくぞ! "すぴど"を上げるのじゃ!!」

 そんな姉妹らしいやり取りが聞こえなくなったと思ったら、雪ん子もどき----メガボタンデスノーフェアリーが俺達に襲い掛かって来た。

「雪ん子、ファイント! 気を付けろよ、あいつの説明通りだと、捕まえられたらそれだけで凍らされるぞ!!」

 説明が正しいとすれば、あいつは雪ん子のような氷属性を有している相手ですら、凍らせることが出来る強敵だ。
 出来るならば、近距離ではなく、相手が届かない遠距離からの攻撃で倒したい所である。

「《ぴぃ! 分かった!》」

 雪ん子はそう言って、全身に炎と氷の2つのエネルギーを纏わせると、それを球体にして放つことで、雪ん子もどきを対処しているようだった。

「(凄いな、遠距離まで出来れば雪ん子、ほぼ無敵じゃん)」

 雪ん子の行動に感心している中、俺は作戦に参加せずに考え込むファイントに声をかける。

「ファイント! どうかしたか!」
「……!! あぁ、そうでしたね♪ もどきちゃんの相手します♪」

 そう言って、彼女も雪ん子もどきの戦いに、青魔法を用いて戦い始めたのだが。
 俺はファイントが何気なく呟いた言葉が、気になっていた。

 彼女は小さく、自分に覚えておくように、大事な事のように、こういったのだ。


 ----早くもどきちゃんを倒さないと。さもないと、手遅れになる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

処理中です...