上 下
98 / 350
第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』

第92話 出でよ、俺だけの融合召喚獣(1)

しおりを挟む
~~前回までの あらすじ!!!~~
 うむ、妾の名前は吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世!!
 ちょっぴり色々な経緯があって、狐の尻尾を2本生やしていたり、悪の黒マントをひらひらとなびかせているだけの、ただのレベルⅢの召喚獣なのじゃ!!

 主殿である冴島渉と共に、旭川の超巨大工場へとやって来た。
 そして今、妾達は、妾を……そう、吸血鬼にして高貴なる妾に、無様にも悪意を押し付けた巨悪の使者!
 目がボタンなどと言うふざけた格好の女、甘言のシーヴィーと戦う事となった。
 
 そして、そんな彼女は、変質させる力、四大力の1つである《スピリット》の力で、2体の召喚獣を融合させ、新たな召喚獣を生み出したのであった!!


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「"----【融合スピリット召喚】! 出てこい、めちゃんこ可愛い召喚獣!
 現れ出でよ、屍龍族!! 屍龍メガボタンデスドラゴン!!"」

 シーヴィーが召喚……いや、融合召喚して生み出したのは、巨大な骨龍スカルドラゴン
 はずれ職業として揶揄やゆされる【召喚士】の世界では、情報収集が大切だ。
 俺は、幾つものMyTuberの動画や情報を仕入れてるので、分かる。

「(屍龍族なんて、聞いたことがないぞ……!!)」

 第一、魔法属性などを他の属性や種族に変えられる【妖狐】の力を持つ、ココアの協力もあって、ある程度、種族名は把握している。
 しかしだが、鳥獣族の中でもさらに強力な"龍族"の力、そして死んでも生きてる"邪霊族"の力----その2つの力を宿したこの召喚獣。

 ----確実にザコじゃない事だけは確かだ。

「行け、屍龍メガボタンデスドラゴン!! デスブレス!!」
『グォォォォ、ンンンンンンッッ!!』

 カパッと、メガボタンデスドラゴンの大きな口が開く。
 身体の中心、胸元で光り輝く紫結晶アメジストが輝きを強めると共に、メガボタンデスドラゴンの喉の奥が暗黒の闇に満ちていく。

『ガアアアアアアアアッッ!!』

 メガボタンデスドラゴンの口から、死の気配を漂わせる、強力なる息吹ブレスを放つ。
 強力な息吹は空中を腐らせ、死なせ、俺達の方へ向かって来る。

「ココアっ!!」
「任せるのじゃ!! 《雷よ、天から降り注ぐ天の力を持って聖なる守護となれ! ホーリー・ライトニングシールド》!!」

 ココアが魔法を発動すると共に、天から真っ白な光が降り注ぐ。
 降り注いだ光は、俺とココアの2人を守るように展開する。

 ----ぐぐぐっ!!

 雷属性で生み出した光のベールは、メガボタンデスドラゴンの息吹によって、じわじわと侵食されていく。
 光のベールは強力な死の息吹により腐っていき、パタリパタリと光の膜が剥がれていく。

「ぐぬぬっ……!! この強さは……!!」
「死ねぇぇぇ!! デスブレスっ!!」

 メガボタンデスドラゴンの死の息吹はさらに強まり、ココアの作った光の膜を消し去る。

「----!! 《風よ》!」

 光の膜という防御癖を失った俺達に降り注ぐ死の風に対し、ココアは風魔法で俺達ごと吹っ飛ばして避ける。
 数秒後、あるいは一瞬のうちに、俺達が居た床は腐り落ち、毒の沼地が出来ていた。

「逃げても無駄だ! やれ、メガボタンデスドラゴン!!」
『グォォォォンンンン!!』

 と、逃げた俺達を追うように、メガボタンデスドラゴンはさらに死の息吹を、方向を変えて放つ。

「くっ……! もう一度じゃ……!」

 ココアが先程と同じ光の膜を張ろうとしたその時、死の息吹が宙にて止まる。
 まるで、なにか壊せない壁にぶつかったかのように、死の息吹がそこで止まっていた。

「ん……? メガボタンデスドラゴン、吐くのをやめろ!」
『グルル……』

 異常確認のため、シーヴィーが死の息吹を吐くのを止めさせたことで、俺達も息吹を止めた正体を知ることが出来た。

「リョクチャ……!!」

 そう、死の息吹を止めたのは、【不滅長寿(卵限定)】なる死をも防ぐスキルを持ったエルダードラゴンエッグ。
 ココアは慌てて風魔法で風を操り、自らの懐に、相手の攻撃を止めた立役者を移動させる。

「リョクチャ、無茶をしおって!! お主、死なないとは言え、あんな強力そうな息吹を受け止めて、辛かったろうに! あまり姉である妾を心配させるではないのじゃ!!」
「(コテンッ)」
「分かれば良いのじゃ! 分かれば!」

 
「お別れの時は済みましたか? ボタンちゃん?」


 と、シーヴィーは透き通った声でそうココアに尋ねる。

「その卵、死なないスキルでも持ってるのかなぁ? すっごく興味あるけど、その前にあなた達を殺してから、奪い取るとしましょう」

 ふーっと、シーヴィーはメガボタンデスドラゴンに息を吹きかける。
 すると、骨だけの身体がフラフラッと揺れ始め、紫色の骨の脚の爪に、邪悪な死の気配が集っていく。

「いくら死を防げるとは言っても、しょせんは卵。今度の爪による攻撃は死は防げても、吹っ飛ばされるでしょうね。あなたが死なないとしても、仲間を殺すくらいは出来そうです」

 「クスクスっ……」と、笑いがこみ上げて来て溜まらないという感じのシーヴィー。

「(マズいな……)」

 確かに、先程エルダードラゴンエッグが相手の攻撃を防げたのは、それが吐息だったから。
 死の気配を纏っているとは言っても、それさえ防げばただ強いだけの突風。
 【ドラゴンパワー】というスキルを持つエルダードラゴンエッグなら、なんとか吹き飛ばされずに防げるだろう。

 しかし、それが近距離攻撃ともなると、話は別問題。
 あの巨体、それに恐らく息吹を吐く速度からしても、そんなに遅い感じではないだろう。
 例えエルダードラゴンエッグが攻撃の1つを防げたとしても、アイツの脚は全部で4本、尻尾と、それに頭突き攻撃もあると考えれば、合わせれば6回攻撃出来る。
 
「(エルダードラゴンエッグはレベルⅣ……レベルⅢの俺が召喚しても、ちゃんと指示通り防いでくれるか分からんし、逆に怒って俺達を攻撃するかも知れない)」

 かと言って、レベルⅢ以下の死んでも良い種族----邪霊族は総じて、そんなに速い召喚獣が居ないんだよな。

 ----どうすれば良い?
 

 悩んでいると、ココアが「あれじゃ……」とシーヴィーを指差す。

「ココア?」
「先程、あ奴が使っておった"すきる"----【融合召喚】とか言っておったじゃろ?」

 確かに、そのスキルによって、ヤツはあの屍龍メガボタンデスドラゴンを召喚したのだ。

「主殿、奴が使っておった流れは、見ておったじゃろ?」
「まさか----」

 「そう、そのまさかとやらじゃ」と、彼女はこう答える。


「【融合召喚】には【融合召喚】。主殿、妾の妹を【融合召喚】に使うのじゃ!!」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 アイツの、シーヴィーが【融合召喚】を使った流れは、覚えている。

 まずは、両脇に召喚獣をセット。

「出でよ、【ギルタブリル・ジンバーロック】」

 俺が召喚したのは、ココアが聞きだしたという、エルダードラゴンエッグお勧めの召喚獣。
 蠍の身体と人間の身体が合わさったギルタブリル、その中でも強力すぎる力ゆえに制御装置が付けられている強力なギルタブリル。


 ===== ===== =====
 【ギルタブリル・ジンバーロック】 レベル;Ⅲ
 人間の身体と蠍の身体の両方の性質を持つ、別名「蠍人間」であるギルタブリルの変異種。ギルタブリルはレベルⅡの召喚獣だが、様々な実験を施されることにより、自分の身体を滅ぼすかもしれないほどのエネルギーを秘めている
 あまりにも強すぎる力を制御するために、研究者によってジンバーロックと呼ばれる強力な鎧によって制御されている
 ===== ===== =====

 
 そんなギルタブリル・ジンバーロックの身体を、【召喚銃の魔導書(未完成)】によって会得した《スピリット》の力によって、赤いスライムに変質させる。
 そして次に、エルダードラゴンエッグの番だ。

「リョクチャ……お主、こうなることが、自身を【融合召喚】させるために、ギルタブリル・ジンバーロックのことをオススメしたんじゃな? 自分の半身、自らと融合させる者の名を、妾に教えるために」
「(コクッ! コクッ!!)」
「リョクチャぁ……!! 偉い子じゃ、すっごい子じゃのぉ!!」

 ココアと別れを済ませたエルダードラゴンエッグを、先程と同じく《スピリット》の力によって、今度は青いスライムへと変質させる。

 そして、この2つのスライムを掛け合わせて----むむっ!!

「けっこう、難しい……!!」

 そもそも、《スピリット》なんて今回初めて使う故、スキルなんかと違って、なんの動作補助もなくやっているだけ。
 難しくて、困惑して当然なのだ。

「(だが、やり遂げて見せる!!)」

 強い決意と共に、力を込めて、そして----


 ===== ===== =====
 《スピリット》の力によって 2体の召喚獣が 1体の召喚獣に融合していきます

 …… …… ……
 …… ……
 ……

 成功しました!!

 融合に成功したため 新たな召喚獣を 召喚します
 また【召喚 レベルアップ可能】により レベルアップ可能状態で 召喚します
 ===== ===== =====


 準備は、整った……!!

「出でよ、俺だけの、融合召喚獣!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

処理中です...