俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』

第87話 召喚獣 "ランクⅡ"

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「----引く気がないなら、とりあえず溶かしてしまいましょう」

 すーっと、シーヴィーは大きく息を吸う。
 それを見て、ココアが【五属性魔法】を用いて、水の壁----《アクアシールド》という魔法の盾を生み出す。

「【とろけさせましょう。ハイパーメルティーボイス】」

 それは、ただの声だった。
 最強の【召喚士】としての格の違いを見せつける的な発言をしたのに、シーヴィーの攻撃は、ただの発声攻撃。

 1人の、目玉がボタンというだけの美少女が発した声は、空気を振るわせ、空気を溶かしていく・・・・・・
 溶けてゆく空気はこちらに向かってきて、それがココアが作った《アクアシールド》にぶつかる。

 水で出来た《アクアシールド》が溶けてゆく空気にぶつかり、《アクアシールド》までゆっくりと溶けていく。

「なんじゃ、これは……!? 魔法が、溶ける……?!」
「もーっと、溶かしてあげましょうか」

 すーっと、シーヴィーはさっきと同じように大きく息を吸い始める。
 ココアはぐぐっと我慢していたかと思ったら、《アクアシールド》をシーヴィーに向かって、投げつける。

「どっせーいっっ、なのじゃあああああ!!」

 投げられた水球……《アクアシールド》を見て、シーヴィーは溜めていた空気をそれめがけて放つ。

「-----?! 【溶かし落としましょう。クイックハニーボイス】」

 シーヴィーが放った声は、先程よりも空気が溶け落ちるスピードよりも速く、シーヴィーが投げた《アクアシールド》に当たって溶かしていた。

「----へぇ。うちのスキル【蕩ける声スウィートボイス】を返すだなんて、ラブホちゃんは面白いねぇ。このスキル、基本的に無敵なんですけどね。
 例えば、こういう風に----ねっ」

 と、彼女は大きく息を吸い込んで、そのまま後ろを振り返る。

「【堕落ちよ、メルティーポエム】」

 シーヴィーが発声するとともに、俺が後ろから攻撃しようと送り込んでいたコウテイスズメバチの集団は、一瞬で溶けて消えていく。
 アレは体力を削るとか、貫通させるだとか、そういう次元の話ではなく、存在そのものを消滅させているようであった。

「普通はこういう風に、防ごうとしても存在そのものを溶かす無敵スキルであって、だからこそ【甘言のシーヴィー】という名で活動してるんだけどね。
 少し調子に乗っていたのかもしれない。君達には、最強の【召喚士】たる方で相手すべきだった」

 「反省、反省」と、凄く綺麗な声を奏でながら言うシーヴィー。


「----【召喚】」


 幻想的な響きと共に、シーヴィーの左右に、それぞれ2体の召喚獣が現れる。
 それはレベルⅠのレイス、そしてレベルⅠのドラゴンキッズ----つまり、ココアが最初に会った時に出たという布陣そのものだった。


 ===== ===== =====
 【《ボタン瞳の》レイス】 レベル;Ⅰ
 身体を持たない、霊体のみで存在する召喚獣。陽の光を浴びると体力が奪われて、勝手に消滅してしまう欠点を持っている
 消滅の回避のためか、この召喚獣は物に憑りつくという力を持っており、憑りついている間は物を移動させることが出来る
 シーヴィーの能力のせいか、ボタンとなった目玉で攻撃している


  = ☆ = ☆ = ☆ =


 【《ボタン瞳の》ドラゴンエッグ】 レベル;Ⅰ
 全てのドラゴン系モンスターの始まりとされる、ドラゴンの卵型の召喚獣。卵の中身はまだなんのドラゴンになるか定まっておらず、その身体は硬いドラゴンの卵の殻に覆われている
 まだよちよち歩きも上手く出来ないため、遠くを移動する時は転がって移動している
 シーヴィーの能力のせいか、ボタンとなった目玉で攻撃している
 ===== ===== =====


 それらは目玉をボタンに変えたという点こそある物の、どう考えてもレベルⅢとなったうちのココアと比べるとめちゃくちゃ役不足と思える、召喚獣2体であった。
 
「(これなら、ココアで勝てるだろう。多少イレギュラーがあったとしても、雪ん子とファイントが戻ってくるのを待てば----)」

 楽観的に、多少は「勝てるだろう」とそう思っていた俺だった。

 ----ぎゅっ。

 しかし、その楽観的な感覚を、引き戻してくれたのは、ココアであった。
 彼女は寂しそうに、というか震えながら、俺の服の裾を握っていた。

アレ・・が……アレ・・が……!!」
「(そうだよな、不安だよな)」

 ココアにとっては、相手は自分を絶望的な想いに引き落とした、最悪の相手。
 戦っていた記憶を失うくらい、辛い相手なんだ。
 怖くて、震えて、当然である。

 だから俺は、彼女の手をそっと握り返す。

「----!! すっ、すまんのじゃ。気付かぬうちに、主殿の手を、妾----」
「謝らなくても良い。絶対勝つぞ」
「主殿……」

 と、ゴツンっと、俺の頭に小さな石みたいな衝撃が加わる。
 なんだと思って、乗ってる物を取ると、それはエルダードラゴンエッグだった。

「そうだな、お前もいるよな」
「(コロンッ)」
「リョクチャ……主殿……」

 うるうると若干涙目になっていた彼女だが、俺の手をそっとどかすと、袖で涙を拭っていた。


「ぐすっ……そうじゃな! リョクチャの、妹の前で、無様な戦いは見せられんのじゃ!!
 主殿、雪ん子とファイントが来る前に、"びくとりあ"を掲げるぞっ!!
 妾の戦い、リョクチャよ!! しっかり卵の中から見とくが良いのじゃよ!!」

勝利ビクトリーだな、了解だ」
「(コロンッ)」

 俺達は準備完了とばかりにシーヴィーを見ると、シーヴィーはレイスとドラゴンエッグにそっと手を伸ばしていた。

「話は終わりましたか? では、特と、自分達がどれだけの強者と戦おうとしているか、じっくりと見るが良いでしょう!!
 この最強の【召喚士】、甘言のシーヴィーだけが使える、【スピリット召喚】を!!」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「まずは、右手」

 シーヴィーは右手を、自身の右側に召喚しておいた《ボタン瞳の》レイスの上へと移動させる。
 すると、右手からなにか赤いオーラが降り注ぎ、レイスの身体が変化していく。
 ぐにゃぐにゃと、まるでスライムでも扱っているかのように、レイスの面影が一切ない、宙に浮かぶ赤いスライムに変化していた。

「続いて、左手」

 今度は左手を、これまた自身の左側に召喚しておいた《ボタン瞳の》ドラゴンエッグの上へと移動させる。
 今度は左手から青いオーラが降り注ぎ、ドラゴンエッグの身体も変化していく。
 ぐにゃぐにゃと、先程の再現でも行ってるかのように、青いスライムへとドラゴンエッグを変化させるシーヴィー。

「《スピリット》の力は、変質させる力。刀身の性質を変えたり、相手の能力を吸収したりと、形あるものに性質を与えて、不安定な形として再構成する力。
 今、うちの手によって2体の召喚獣の身体は、召喚獣としての力はあるが、存在は不安定な物へと変わった」

 そして、色が違う2つのスライムを、慣れた手つきで近付け、合わせていく・・・・・
 赤と青、色が違う2色のスライムは混ざり合い、新たに紫色の別のスライムが生まれる。


「"龍の力を受け継ぎしドラゴンエッグよ、全ての生物の中でも頂点に達するドラゴンの力を見せよ!
 死の力を受け継ぎしレイスよ、あらゆる物を呪い、生きとし生けるものを死の絶望へと落として見せよ!
 相反する2つの力は今、この場にて、新たな召喚獣として生まれ変わる!!

 ----【融合スピリット召喚】! 出てこい、めちゃんこ可愛い召喚獣!
 現れ出でよ、屍龍族!! 屍龍メガボタンデスドラゴン!!"」


 そして、2つの召喚獣の力が混ざり合った紫のスライムは、元の姿に、スライムではない召喚獣の力へ戻っていく。

 現れたのは、巨大な骨龍スカルドラゴン
 ドラゴンの皮の代わりに、レイスの青白い炎を纏い、紫色に変色した骨の身体からは大量の魔力を感じる。
 胸元に光る紫結晶アメジストと、目玉代わりのボタンが特徴の、ヤツの召喚獣。


 ===== ===== =====
 【屍龍メガボタンデスドラゴン】 ランク;☆☆ 屍龍族
 ドラゴンの中でも特異な、死ぬことによって生れ落ちる屍龍族の召喚獣。全身に死の魔力が満ち満ちており、骨のような身体には濃い死の魔力が凝縮している
 胸元に光る紫結晶アメジストは心臓ではなく、胃袋の役割をしており、食べたりしたものはこの結晶の中に力として溜められるのだとされている
 ===== ===== =====


「うちだけが使用できる【融合スピリット召喚】でのみ呼び出せる、"ランクⅡ"の召喚獣。
 目がボタンで、すっごく、可愛いですよね?」
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