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第3章『決戦の北海道と、最強の召喚士シーヴィー/吸血鬼ココア・ガールハント・ヒアリング3世の章』
第80話 【三大堕落】不老不死担当のダブルエム
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----某国、某都市、とある街中。
そこは、以前は昼間から銃弾が飛び交う、紛争地域であった。
しかし今では、子供が安心して外を出歩ける、平和な地域へと生まれ変わっていた。
何故、ここまで劇的な変化があったのかと言われれば、それは恐らく、戦う理由がなくなったからだ。
世界各国にダンジョンと呼ばれる未開拓地域が生まれたことにより、人々はそこから奪い取ることに決めたのだ。
そもそも戦争をする理由なんて、大抵は相手が持つ資源や人材が欲しいという征服欲----。
地球の土地よりも、魅力的な異界の土地があるのに、戦争なんてする方が馬鹿馬鹿しいのである。
ダンジョンができ、冒険者が増え、敵が減り----そうして、この地域は平和となったのだ。
まさにダンジョンさまさま、といった所だろう。
そうして安全に出歩けるようになった子供達が、平和な街を騒ぎながら駆け回っていると、1枚の絵を見つけた。
「これ、な~に?」
「きれいだねー!!」
「すっごぉぉぉいい!」
それは、真っ白な銀世界を描いた、ストリートアート。
崩れかけの建物の壁にかかれた、雪国の絵。
その国はほとんど雨すら降るのも稀な国で、雪なんかこの国では数十年単位で降っていない。
子供達にとっては、初めて見る景色だったのだが、とても美しい雪国の景色に目を惹かれてしまっていた。
「「「きっれ~~~い!!」」」
子供達は初めて見る雪国を描いた絵に、魅了されていた。
どんどん魅了されて----そして----
「「「……えっ??」」」
----絵に、吸い込まれていた。
底なし沼に足を取られたかのように、子供達は絵の中に溶け込んでいく。
三次元の人間であるはずの子供達は、絵に吸い込まれるのと同時に、二次元の平面的な存在に。
身体全体が絵となっていく奇妙な感覚がして、どんどん身体から力が抜けていく。
「たっ、助けて!!」
「絵の中に、ぬっ、抜けないぃぃぃぃ?!」
「おかあさぁ~ん!!」
そうして----絵は子供達を飲み込む。
何事もなかったかのように、雪国の絵は前と同じように、建物の壁に描かれていた。
そう、雪ではしゃぐ子供達という、新たに加えられた個所など、誰も気にすることなく----。
「……うむ、実に良い絵だね。#不老不死 #最高」
その絵を、子供達を飲み込んだ絵を、最高と評する1人の人間がいた。
白衣に身を包み、デザイン性の欠片もない眼鏡と、何日か家に帰ってないだろうボサボサヘアーの、およそ女性らしさよりも研究者らしさが目立つ彼女----。
佐鳥愛理の冒険者仲間の1人、【不老不死担当】の女冒険者。
彼女の名前は、ダブルエム。
別名、【不老不死のダブルエム】。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダブルエムは、この国で絵を描いていた。
正しく言えば、絵を描かせていた。
高額な金銭を用いて人を雇い、壁に芸術的な、人を惹きつけ魅了する絵をいくつも描かせていたのだ。
先程の雪国の絵も合わせれば、既に20枚近くは、同じような絵がこの国のあちこちに点在している。
何故にそんなストリートアーティストみたいな活動を行っているかと言えば、彼女の言葉を借りれば、【単なる実験】である。
----絵の中に人を閉じ込めるスキル。
そのスキルを用いて、絵の中に人を閉じ込めているのだ。
先程の子供達が、雪国の絵の中に閉じ込められたように、彼女は多くの人間を絵の中に閉じ込めたのである。
----何故か?
勿論、不老不死担当である彼女がするのは、それが不老不死に繋がるモノだからだ。
絵の中に閉じ込められた人は、そのまま動けず、時間が止まってしまう。
絵に描かれたモノが腐らないように、絵の中に入った人間は歳を取らないのだ。
若干の問題点として、絵を壊されれば解放----ではなく、死んでしまうので、改良が必要なのだが。
だからこそ、ダブルエムは多くの人間を絵の中に、閉じ込めているのである。
どうすれば破壊されないか、改良するために。
「絵の中に閉じ込められた人達は、身動き1つできない可哀そうな人達。だけど、老いる事もない。
そして、あとは#こうすれば」
と、ダブルエムは、懐から1つのスプレーを取り出す。
スプレーのラベル部分には【永久保存剤】と書かれている。
「世界球体に閉じ込めた世界の1つ、【永久保存世界】の力を使った、文字通り、永久に保存するスプレー。
これをかければ、永久に、そう、例え地球が滅ぼうが、この絵は残り続ける。そう、#不老不死 #永遠に」
ダブルエムの頭には、悪意がなければ、善意もない。
ただ生き続ける、それしか頭にないのだ。
だからこそ、絵の中の子供達がどう考えているかという、普通の人間なら考えるだろう発想が思いつかない。
他人を思いやる心だとか、他人に優しくする心だとか、そういったモノが欠如しているのだ。
彼女が望むは、ただ不老不死----。
全ての人間に、平等に、望もうが望まなかろうが、不老不死を授ける。
それが、不老不死担当のダブルエムなのだから。
スプレーをかけようとしたその時、
『デンワニ・デ・ロー! デンワニ・デ・ロー!』
なんとも、間の抜けた着信音が聞こえてきた。
「……ん?? 携帯に着信?」
スプレーをかけようとしたダブルエムであったが、その前に電話が鳴ったので、スプレーを懐へ戻す。
彼女にとって、スプレーはいつでもかけられる行為であって、携帯に出る事の方が重要な行為だったからである。
「はい、もしもし。#ダブルエム ですよ?」
『私です、佐鳥愛理です。息災ですか、ダブルエム』
電話の主は、佐鳥愛理。
ダブルエムと同じ、冒険者パーティーの一員からの電話だった。
「あぁ、#佐鳥愛理 どうしたんですか、#永遠ぶり ですね?」
『なんですか、その"永遠ぶり"って。相変わらず、時間間隔が変ですよ、ダブルエム。文明的に言えば、20時間15分ぶりとか、そういう感じでお願いします』
「……そこまで厳密管理された、久しぶりも #どうかと」
『そんな事よりも、急ぎ、合流を求めます。シーヴィーの方にも、既に連絡はしましたので』
シーヴィーとは、佐鳥愛理、そしてダブルエムの冒険者パーティー仲間の名前である。
服などに取り付けるボタンを愛し、自分の目玉をボタンにしてる狂れた愛好家であり、時折、他人にも目玉をボタンに変えるという行為を楽しむ変質者。
「彼女も呼んだんですか……」
正直、ダブルエムはシーヴィーの事が苦手である。
目玉をボタンに変えようとしてくる事ではなく、単純に彼女の戦い方がダブルエムとは合わないのだ。
----なにせ、ダブルエムの信条と、全く正反対の戦い方をしているから。
「私とシーヴィーの2人を、同時に呼ぶ? 私が、#シーヴィー戦法 嫌っていると知ってて?
それはつまり----例の作戦を#実行 するつもりですか? #マジで?」
『えぇ、そうですよ。【三大堕落】、全員集合して作戦を行いましょう』
携帯の奥から、佐鳥愛理の笑い声が聞こえてくる。
「(そうだね……そもそも佐鳥愛理は、そのために今まで生きてきたと言っても、過言ではないですからね)」
ダブルエムはもうどうでも良いと割り切っているが、佐鳥愛理は絶対に許さない。
そう思っているからこそ、ダブルエムは佐鳥愛理の誘いを断らない。
「良いですよ、すぐさま向かいましょう」
『お願いしますね----不老不死のダブルエム。
決戦の地は、北海道。日本最北端、雪と氷に覆われた北の大地」
ダブルエムは、佐鳥愛理の誘いを断らない。
例えこの戦いで----"佐鳥愛理が死ぬとしても"。
そこは、以前は昼間から銃弾が飛び交う、紛争地域であった。
しかし今では、子供が安心して外を出歩ける、平和な地域へと生まれ変わっていた。
何故、ここまで劇的な変化があったのかと言われれば、それは恐らく、戦う理由がなくなったからだ。
世界各国にダンジョンと呼ばれる未開拓地域が生まれたことにより、人々はそこから奪い取ることに決めたのだ。
そもそも戦争をする理由なんて、大抵は相手が持つ資源や人材が欲しいという征服欲----。
地球の土地よりも、魅力的な異界の土地があるのに、戦争なんてする方が馬鹿馬鹿しいのである。
ダンジョンができ、冒険者が増え、敵が減り----そうして、この地域は平和となったのだ。
まさにダンジョンさまさま、といった所だろう。
そうして安全に出歩けるようになった子供達が、平和な街を騒ぎながら駆け回っていると、1枚の絵を見つけた。
「これ、な~に?」
「きれいだねー!!」
「すっごぉぉぉいい!」
それは、真っ白な銀世界を描いた、ストリートアート。
崩れかけの建物の壁にかかれた、雪国の絵。
その国はほとんど雨すら降るのも稀な国で、雪なんかこの国では数十年単位で降っていない。
子供達にとっては、初めて見る景色だったのだが、とても美しい雪国の景色に目を惹かれてしまっていた。
「「「きっれ~~~い!!」」」
子供達は初めて見る雪国を描いた絵に、魅了されていた。
どんどん魅了されて----そして----
「「「……えっ??」」」
----絵に、吸い込まれていた。
底なし沼に足を取られたかのように、子供達は絵の中に溶け込んでいく。
三次元の人間であるはずの子供達は、絵に吸い込まれるのと同時に、二次元の平面的な存在に。
身体全体が絵となっていく奇妙な感覚がして、どんどん身体から力が抜けていく。
「たっ、助けて!!」
「絵の中に、ぬっ、抜けないぃぃぃぃ?!」
「おかあさぁ~ん!!」
そうして----絵は子供達を飲み込む。
何事もなかったかのように、雪国の絵は前と同じように、建物の壁に描かれていた。
そう、雪ではしゃぐ子供達という、新たに加えられた個所など、誰も気にすることなく----。
「……うむ、実に良い絵だね。#不老不死 #最高」
その絵を、子供達を飲み込んだ絵を、最高と評する1人の人間がいた。
白衣に身を包み、デザイン性の欠片もない眼鏡と、何日か家に帰ってないだろうボサボサヘアーの、およそ女性らしさよりも研究者らしさが目立つ彼女----。
佐鳥愛理の冒険者仲間の1人、【不老不死担当】の女冒険者。
彼女の名前は、ダブルエム。
別名、【不老不死のダブルエム】。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ダブルエムは、この国で絵を描いていた。
正しく言えば、絵を描かせていた。
高額な金銭を用いて人を雇い、壁に芸術的な、人を惹きつけ魅了する絵をいくつも描かせていたのだ。
先程の雪国の絵も合わせれば、既に20枚近くは、同じような絵がこの国のあちこちに点在している。
何故にそんなストリートアーティストみたいな活動を行っているかと言えば、彼女の言葉を借りれば、【単なる実験】である。
----絵の中に人を閉じ込めるスキル。
そのスキルを用いて、絵の中に人を閉じ込めているのだ。
先程の子供達が、雪国の絵の中に閉じ込められたように、彼女は多くの人間を絵の中に閉じ込めたのである。
----何故か?
勿論、不老不死担当である彼女がするのは、それが不老不死に繋がるモノだからだ。
絵の中に閉じ込められた人は、そのまま動けず、時間が止まってしまう。
絵に描かれたモノが腐らないように、絵の中に入った人間は歳を取らないのだ。
若干の問題点として、絵を壊されれば解放----ではなく、死んでしまうので、改良が必要なのだが。
だからこそ、ダブルエムは多くの人間を絵の中に、閉じ込めているのである。
どうすれば破壊されないか、改良するために。
「絵の中に閉じ込められた人達は、身動き1つできない可哀そうな人達。だけど、老いる事もない。
そして、あとは#こうすれば」
と、ダブルエムは、懐から1つのスプレーを取り出す。
スプレーのラベル部分には【永久保存剤】と書かれている。
「世界球体に閉じ込めた世界の1つ、【永久保存世界】の力を使った、文字通り、永久に保存するスプレー。
これをかければ、永久に、そう、例え地球が滅ぼうが、この絵は残り続ける。そう、#不老不死 #永遠に」
ダブルエムの頭には、悪意がなければ、善意もない。
ただ生き続ける、それしか頭にないのだ。
だからこそ、絵の中の子供達がどう考えているかという、普通の人間なら考えるだろう発想が思いつかない。
他人を思いやる心だとか、他人に優しくする心だとか、そういったモノが欠如しているのだ。
彼女が望むは、ただ不老不死----。
全ての人間に、平等に、望もうが望まなかろうが、不老不死を授ける。
それが、不老不死担当のダブルエムなのだから。
スプレーをかけようとしたその時、
『デンワニ・デ・ロー! デンワニ・デ・ロー!』
なんとも、間の抜けた着信音が聞こえてきた。
「……ん?? 携帯に着信?」
スプレーをかけようとしたダブルエムであったが、その前に電話が鳴ったので、スプレーを懐へ戻す。
彼女にとって、スプレーはいつでもかけられる行為であって、携帯に出る事の方が重要な行為だったからである。
「はい、もしもし。#ダブルエム ですよ?」
『私です、佐鳥愛理です。息災ですか、ダブルエム』
電話の主は、佐鳥愛理。
ダブルエムと同じ、冒険者パーティーの一員からの電話だった。
「あぁ、#佐鳥愛理 どうしたんですか、#永遠ぶり ですね?」
『なんですか、その"永遠ぶり"って。相変わらず、時間間隔が変ですよ、ダブルエム。文明的に言えば、20時間15分ぶりとか、そういう感じでお願いします』
「……そこまで厳密管理された、久しぶりも #どうかと」
『そんな事よりも、急ぎ、合流を求めます。シーヴィーの方にも、既に連絡はしましたので』
シーヴィーとは、佐鳥愛理、そしてダブルエムの冒険者パーティー仲間の名前である。
服などに取り付けるボタンを愛し、自分の目玉をボタンにしてる狂れた愛好家であり、時折、他人にも目玉をボタンに変えるという行為を楽しむ変質者。
「彼女も呼んだんですか……」
正直、ダブルエムはシーヴィーの事が苦手である。
目玉をボタンに変えようとしてくる事ではなく、単純に彼女の戦い方がダブルエムとは合わないのだ。
----なにせ、ダブルエムの信条と、全く正反対の戦い方をしているから。
「私とシーヴィーの2人を、同時に呼ぶ? 私が、#シーヴィー戦法 嫌っていると知ってて?
それはつまり----例の作戦を#実行 するつもりですか? #マジで?」
『えぇ、そうですよ。【三大堕落】、全員集合して作戦を行いましょう』
携帯の奥から、佐鳥愛理の笑い声が聞こえてくる。
「(そうだね……そもそも佐鳥愛理は、そのために今まで生きてきたと言っても、過言ではないですからね)」
ダブルエムはもうどうでも良いと割り切っているが、佐鳥愛理は絶対に許さない。
そう思っているからこそ、ダブルエムは佐鳥愛理の誘いを断らない。
「良いですよ、すぐさま向かいましょう」
『お願いしますね----不老不死のダブルエム。
決戦の地は、北海道。日本最北端、雪と氷に覆われた北の大地」
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