上 下
65 / 350
第2章『新たな召喚獣、新たな世界/ファイントの章』

第64話 【妖狐】吸血鬼の能力

しおりを挟む
 3体目のレベルアップ可能な召喚獣、吸血鬼のココアを召喚した俺。
 しかしながら、ココアは吸血鬼でありながら、【妖狐】という職業ジョブのせいなのか狐の性質の要素の方が強い、狐な吸血鬼として召喚された。

「で、そんなココアがあれだ」

 と、俺は雪ん子とファイントの2人に、ダンジョンの隅で体育座りをするココアを指差す。

「おかしいのじゃ……妾の"あいでんてぇてぇ"たる吸血鬼よりも、狐なぞの方が強いなど……。
 これは夢じゃ、悪夢なんじゃああああああ!」

「あらあら♡ 随分、個性的なのが出てきましたね♪」
「《主、うるサイ、殺す?》」

 ファイントは楽しそうに笑っているから良いが、雪ん子、お前は剣を下ろせ。
 ココアに向けてるんだろうが、振り回してるから俺の髪もほんの少しかするんだよ。

「こりゃあ、使える召喚獣かどうか以前の問題だな」

 明らかにネタ枠、つまりは面白いだけで使える訳ではないタイプの召喚獣っぽい。
 まぁ、今回は基となった物自体にルトナウムが浸っていたから、レベルアップできたようなものだし。
 召喚してからレベルアップ可能にどうやってするかを考えていたから、結果オーライ?

「(というか、やっぱりルトナウムが関係してるんだな)」

 ファイント、そしてココア。
 2人ともレベルアップ可能になる条件として、ルトナウムが関係している。
 ファイントの時は俺が直接手に入れて、ココアの時は物自体にルトナウムがかかっていて。

 ----じゃあ、雪ん子は?

 そもそも、なんで【木こりの地縛霊】のドロップアイテムとして、"召喚獣をレベルアップできるようにする"なんてものが出てくるんだ?



「----待つのじゃ! 主殿!」

 と、【木こりの地縛霊】の謎について考え始めていたら、吸血鬼のココアが大きな声でそう告げる。

「妾は確かに狐畜生なぞの身体にされて、戸惑っておったのじゃ。しかしながら、妾は主殿の召喚獣。
 主殿の力となるため、妾は生み出されたんじゃ! 妾の力を見ずに、判断されるのは困るのじゃよ」

 先程まで、うろたえていたとは思えない口調で、ココアはそう力強く言う。

「吸血鬼とは、誇り高く、その力を見せるのじゃ。そして、召喚獣とは【召喚士】たる主殿の力となる者。
 誇り高く、"ぷらいどぉ"のある妾は、主殿のためにこの力を使うことを誓おう」
「ココア……」

 もっふもふの尻尾をゆらゆら揺らしながら、「えぇい! 勝手に動くでないっ!!」と言っているので、どこか閉まらない感じもするのだが……。

「《ピィ! 主のため戦う、仲間っ!》」
「そうですねぇ、すっごく誇りが好きな娘みたい----って、あらぁ♪ 良い所に☆」

 と、ファイントの見ている方向には、このダンジョンの魔物----【プリズンビスク】の姿があった。


 ===== ===== =====
 【監獄人形プリズンビスク】 レベル;Ⅱ
 森や川などに捨てられたビスクドールに、怨みや怨念などが降り積もった結果生まれたとされる魔物。下半身に鳥籠のような硬い檻があり、この鳥籠の中には自らが殺した死体を入れている
 鳥籠の中に心臓代わりのコアがあり、これを破壊することで討伐できる。この性質のため、同じく核を潰さないと討伐出来ないスライムの亜種という説がある
 ===== ===== =====


 俺達の前に現れたのは、3mは軽くあろうかとも思えるくらいの巨大なビスクドールの魔物。
 黒いゴシックドレスみたいな服に身を包んだ、端正な顔立ちのお人形さんは、ふわふわ浮かびながら、俺達を狙っている。

「あぁ、あいつは止めとこう。あれは雪ん子とファイント用の魔物だ」

 仮想敵----この間の【機動要塞】のボス吸血鬼に似た、硬い魔物対策というべきか。
 あの時はファイントの【ファイアーバレット】と、雪ん子の氷属性攻撃によって、硬い城壁鎧を破壊した。
 熱して、冷まして、熱して、また冷まして----そう言った風にして、ボス吸血鬼の硬い城壁鎧を破壊したんだけど。

 似たような敵が今後も出ないとは限らないので、練習用ということで、このプリズンビスクとの戦いを想定してみたのだ。
 こいつも硬い鳥籠を破壊しないと、弱点である核に攻撃できないという意味では、ボス吸血鬼と似たような相手だからな。

「----ふむっ! しかしながら、妾ならばあんな相手、すぐに倒せるのじゃ!!」

 と、俺が止めたのにも関わらず、ココアは魔法で炎の球を作り始める。
 あれは火魔法の一番初歩的な魔法、確か【ファイアーボール】だったか?

「(ココアの持っているスキルの1つに、【五属性魔法】っていうスキルがあったな)」

 なるほど、ココアは火の魔法、それに氷の魔法のどちらも使えるからな。
 そんな彼女ならば、高熱と冷凍のどちらも出来るなら、確かに1人で大丈夫かもな。

「(そう言えば、【妖狐】の職業ジョブの特性ってなんなんだろう?)」

 特に見てなかったのだが、いったいどういう職業ジョブで----


「《火よ! 球体となりて敵を倒せ! ファイアーボール!》」


 ココアは火球を生み出す魔法、【ファイアーボール】の魔法を放った。
 ココアが放った【ファイアーボール】は、うねうねと不安定に揺れていて、今にも消えそうな不安定な火球だった。
 そんな不安定に揺れる【ファイアーボール】はプリズンビスクの鳥籠に当た----らずに、すり抜けた・・・・・

《----グヒッ??》

 プリズンビスクの鳥籠のような檻をすり抜けた火球は、そのまま積み重なった人の死体の山にぶち当たっていた。

《グギャ?!》

 プリズンビスクは驚いているようだった。
 まぁ、本来は鳥籠という盾に守られている核に、盾を壊される事なく攻撃されたんだからな。
 困惑して、当然かもしれない。

「これこそ妾の職業ジョブ、【妖狐】の力じゃぞ? 放つ魔法属性の属性の部分を、変える事が出来る----これこそ、【妖狐】の能力じゃ!!」


 ===== ===== =====
 【妖狐】 マナ系統職業
 魔法を放つ際に、その魔法の属性を他の属性や種族に変更することが出来る。また他者のスキルの属性なども変更して使うことが出来る
 ただし、別の属性や種族に変更した場合、威力は半減してしまう
 ===== ===== =====


「今のは【ファイアーボール】という魔法の、"火属性"の部分を"邪霊族"に変えてみたんじゃ。火のような燃え盛る力は消えたが、邪霊族を思わせるすり抜け能力を得た訳じゃな?」

 ----なるほど、それは便利だな。
 【ファイアーボール】の亜種として、雷の球の【サンダーボール】、土の球の【クレイボール】といったモノもあるが……すり抜ける魔法ってのは、聞いたことがないな。
 他にも、"戦士族"や"精霊族"での【ファイアーボール】ってのは、どういう能力に変化するのか、試してみたいところである。

「教えてやろう、主殿。妾達、吸血鬼にとって、弱点とは恥ずべき物ではない。
 妾達、吸血鬼は血の繋がりを大切にする。吸血鬼は弱点が多い種族であるから、出来ないことが非常に多いんじゃ。だから、出来る者が出来る事をし、出来ない者は他に出来る事をする。それが吸血鬼にとっての、家族ということじゃ」
「家族……」

 なるほど、なかなかに深い。
 俺もうっかり、しみじみと感動してしまいそうである。

「感動したじゃろ、感動したじゃろ? ならば褒美として、妾の好物たる油あ----って、なんでじゃあああああ! 妾は血が"らぶぅ"なはずなんじゃああああああ!!」


 ただ、このすぐ発狂する癖と、

「《ぴぃ! ぴぃぴぃ!!》」
「凄いよねぇ~、びっくりしたよ、すり抜けて♪ でも、倒してないのはちょっとねぇ♪」

 ちゃんと倒したのかどうかくらいは、確認して欲しかったな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...