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第2章『新たな召喚獣、新たな世界/ファイントの章』

第59話 おや? 雪ん子の様子が??

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 ダンジョンを消滅させたその日のうちに、まさか新しく生まれたダンジョンに入るだなんて、想いもしなかったよ……。
 しかも、【超特殊ダンジョン】だなんて、絶対になんか罠とかあるでしょ、これ。


 でもまぁ、俺はダンジョンに入っていた。
 ファイントが目だけは笑っていない笑顔で、ずっとこちらを見ていたからである。
 だからこそ俺は、【風雲! ドラキュラブホ城!】なんていう、ふざけたダンジョンに入ったのである。

 ダンジョンに入ると、目に映って来たのは----極彩色で彩られた派手な空間であった。
 壁は色鮮やかなピンク色、床は一面真っ赤、そして壁に付けられた燭台とかは原色で塗られているみたいだった。

 極彩色の色鮮やかな世界ながら、調度品などは棺桶やら鎧の甲冑やら、それから天井に潜む蝙蝠とかで、なんとなーくドラキュラ城っぽさはあるんだが----。

「なんて言うか、不気味?」

 色鮮やかすぎて、逆に気持ち悪いって言う感覚だな。
 これがラブホテルを取り込んだせいなのだろうか?

「まぁまぁ、ご主人! こんな素敵な城に見とれてないで、ドラキュラが来る前に雪ん子ちゃんを召喚してくださいな!」
「それも、そうだな」

 と言う訳で、俺は雪ん子を召喚した。
 この前の《雪山の騎士城》のボスとの戦闘後は、あまりにも傷が酷すぎるからすぐさま【送還】したのだが----

「傷は大丈夫そうだな」
「《ピィ? きず?》」

 "傷"と聞いた雪ん子は、身体を確認する仕草をしていたが心当たりがなさそうに見えたので、恐らくはこの前みたいに悪ゲージは溜まってないのだろう。
 また斬られたら溜まったもんじゃないから、いちいち確認しておかないとな……。

 大丈夫そうだったので、早速『ベンチャーちゃん』に作ってもらった『王家のペンダント』を装備してもらった。
 つけ方が分からなかったのか、ファイントにペンダントを首からかけさせて、『装備』させてもらっているのを見ながら、雪ん子のステータスを確認するんだけれども----


「これって……」


 ===== ===== =====
【《悪の手先》雪ん子】 レベル;Ⅱ+15
 個体レベル;13→15(限界値) ※進化可能
 装備職業;悪の剣士
 攻撃力;E+10→E+14
 属性攻撃力;E+21→E+25
 防御力;E+10→E+14
 素早さ;E+11→E+15
 賢さ;D+45→D+49

 固有スキル;【氷結の申し子】;全ての攻撃に対し、氷属性を付与する
      ;【悪の申し子】;全ての攻撃に対し、悪属性を付与する

 後天スキル;【剣技】;剣などの武器を持つ時、強力な技を発動する
      ;【オーラ制御(小)】;オーラの力を身体の一部に溜めるなど制御するスキル。オーラを使う際、補正効果が発生します
      ;【嗜虐性】;相手を痛がらせるほど、ステータスが上昇する
      ;【殺意の目】;敵の弱点を瞬時に見抜くが、殺人衝動が起きるようになる
      ;【忠実なる奴隷】;主に逆らわなくなる。また、主の命令を受けると戦闘能力が上昇する
      ;【ステータス表示偽装】;装備アイテム効果。ステータスの一部を鑑定不能にし、このスキルの存在を相手から見えなくする。現在適用;《悪の手先》、《悪の剣士》
      ;【王家の瞳】;装備アイテム効果。隠し通路を見つけやすくなります
      ;【慕われし王】;装備アイテム効果。パーティーに居る同族の数だけ戦闘能力が上昇します 該当同族;【悪属性】、【氷属性】、【精霊族】のいずれか
 ===== ===== =====


 色々と、雪ん子のスキルが増えている。

 まず、装備アイテムである『王家のペンダント』によって増えたスキルが、【ステータス表示偽装】、【王家の瞳】、そして【慕われし王】の3つ。
 これらは装備アイテムである『王家のペンダント』を手に入れた時点で、スキル効果は分かっていたので問題はない。

 でも、同族の数だけ戦闘能力が上昇するやつで、【悪】の属性でも可能なのは嬉しいよな。
 【氷属性】だと相手が氷の弱点----メラッメラの炎だった場合、けっこう苦戦するかもだが、【悪属性】ならば割かし軽減されそうな感じはある。
 ファイントも、多分【悪属性】だろうし。

 そして、【オーラ制御(小)】って言うのは、《雪山の騎士城》のボスとの対決で手に入れたスキルだろうか。
 どういう経緯かは知らんが、今までスキルになってなかった部分が、スキルになったのは嬉しい所である。


「おっ! 雪ん子ちゃん、【進化可能】っていう文字が出てますよ!」
「《ピピッ?!》」

 むにゅんっ、と、俺の頭を胸でわざと押さえつけながら、俺が見ているステータス画面を覗き込むファイント。

「(やめろぉぉぉ!! 見たくないんだよ、それは!!)」

 【進化可能】っていう文言もそうだが、なんかヤバそうな目で見ている雪ん子の暗い顔が怖いんだよぉ!!
 お前だろ、雪ん子がヤバい目で巨乳を憎むうんぬんかんぬんの話をしたのは!!
 もう今日はいっぱい、いっぱいなんだよ! 情報がいっぱいすぎて!

「(そりゃあ、【進化可能】ってのは嬉しい話だぜ?)」

 マイマインさんは、そういう動画は一切アップしてなかった。
 だからこれは、俺だけが、召喚獣をレベルアップできる俺だけが、見つける事が出来る要素なのだと思う。

「(多分だが、俺がレベルⅡになって、雪ん子がまだ雪ん子だから出てきたんだろうな)」

 俺の主戦力である雪ん子は、今ではレベルⅡの召喚獣になっている。
 しかしながら、それは恐らく《悪の手先》という称号の効果によって、だ。
 普通、【召喚士】ってのはレベルが上がる毎に、新しい召喚獣----今まで使えなかった召喚獣に変えていくのが普通らしい。

 戦術を変えるっていう意味もあるが、今までのよりもハイランクな召喚獣に変えるってヤツな。
 レベルⅠの【ベビーキマイラ】から、地面を液状化して高速で移動するレベルⅡの【プールキマイラ】っていうヤツにするとか。
 レベルⅠの【ゴブリン】から、普通に上級のレベルⅡの【ゴブリンエリート】っていうヤツにするとか。

 まぁ、そういう風に進化系を使う、ってのが主流なのだそうだ。
 今までの戦術を捨てて、新たな方法を模索するのって、やはり大変だろうしな。

 で、システムはこう告げている訳だ。
 「雪ん子もレベルⅡの同系統の魔物に進化させませんか? もうこれ以上はレベル上がりませんよ?」ってな。

「で、システムが提示してるのはこの3体か」


 ===== ===== =====
 以下の3体の中から、進化系を選んでください
 ただし、進化系を選択した場合、個体レベルはリセットされます

・【雪女】 レベルⅡ
 雪の妖怪の中でも最も有名で、かつ恐ろしい召喚獣。相手を凍え死にさせる冷気を纏い、人と契約をして破ったら殺すという伝承が色濃く根付いている

・【雪姫スネグーラチカ】 レベルⅡ
 ロシア民謡に伝わる、西欧のサンタクロースであるジェド・ローマスの孫娘。大量の雪に命を吹き込まれて誕生した精霊だと伝わっている

・【氷姫騎士スティーリア】 レベルⅡ
 とある世界で活躍したとされる、氷の力を宿した姫騎士。強大な氷の力を持ち、剣技で人を魅了したと伝えられている
 ===== ===== =====


 この中で、一番強そうなのは3番目の【氷姫騎士スティーリア】。
 恐らく、雪ん子がこの間戦ってたやつだろう。
 だが、俺は能力を見てないから、どういう能力になるのか分かんないんだよな。

 とすると、【雪女】か、【雪姫スネグーラチカ】辺りだろうか。
 【雪ん子】の伝承から考えるとすると、【雪女】にするのが筋だが、この【雪姫スネグーラチカ】の"姫"っていう部分も良さそうだし。

「(一回、この2体は召喚してスキルを確かめ----)」

 ----ゾゾッ!!

 しかし、そう考えた瞬間、一気に脳内が冷やされた。
 ゆっくりと視線を動かすと、そこには静かな表情でこちらを見る雪ん子の姿が。

「あ~、これは女の嫉妬心とか、独占欲系も色濃く出始めてますなぁ~☆
 多分、雪ん子ちゃんが居ない所で試してもバレますね、これ☆ むしろ、バラしますね♪」

 「よっ! 愛されてますなぁ!!」と、ファイントは茶化すが、そうなんだろうか。
 あれはまるで、余計なことをしたら殺す的な、殺人鬼か暗殺者の目に見えたが。

「まぁ、進化はしないけどな」

 なにせ、個体レベルがリセットされるんだろ?
 それなのに、こーんな1回ボスを倒したら終わりのダンジョンで、試すわけないじゃん。
 やるとしたら、このダンジョンで、ファイントオススメの召喚獣を召喚して、それで3人が良い感じにレベルアップで来てから、だ。

 俺はかなり慎重派だからな。
 レベルアップしたらレベルが上がり辛くなったり、逆に最初のうちはレベルアップ前よりも弱くなる可能性を考えちゃうし。

「ともあれ、まずはこの変なダンジョンを攻略するぞ」

「《おぉ~!!》」
「やりましょ~う☆」

 雪ん子とファイントの声も受けつつ、俺はこのラブホダンジョン攻略を始めるのであった。
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