俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
52 / 354
第2章『新たな召喚獣、新たな世界/ファイントの章』

第51話 オーラ VS スピリット(3)

しおりを挟む
「(----さて、では止めと参りましょうか)」

 言葉も発しないまま、スティーリアは必殺の剣を、雪ん子の心臓めがけて突き刺す。
 スティーリアも、そして攻撃されている雪ん子自身も、雪ん子の死を確信していた。

 ----だが、それはスティーリアの"3本目の腕・・・・・"によって、止められた。

「(----?! うっ、腕?!)」
「《???》」

 最初に言っておくと、その腕はスティーリア自身の物ではなかった。
 なにせその腕は、見覚えのある機械の腕だったからだ。

 ----バシンッ!!
「(ウグワーッ!!)」

 自分の懐から現れた機械の腕は、スティーリアの顔を思いっきりぶん殴った。
 腕はなかなかの頑丈さで、それが思い切り殴って、防ぐことなくクリーンヒットしたんだから、スティーリアの身体は吹っ飛ばされていた。
 そりゃあもう、まるで野球ボールが遥か遠くの客席の方まで飛ぶくらい、思いっきり吹っ飛んだ。

「(いたたた……!)」

 壁にぶつかったのに、それでも普通に立ち上がってくるスティーリア。
 自分の身体を、咄嗟に衝撃を吸収する特性へと、スピリットの力で変えたからである。
 とは言っても、衝撃は減っただけで消えてはないし、全然身構えてなかったからダメージも大きい。

「(この機械の腕、魔法の一種? 確か、機械系の魔物が使う《マルチアーム》なる技に似ている)」

 どう考えても、【剣士】である雪ん子がやったとは思えない攻撃。
 こんな攻撃が最初から出来るんだったら、前からやっていたはずだ。

「(でも、このボスの間は私と雪ん子の2人だけのはず……はっ!)」

 と、そこでスティーリアは咄嗟にスピリットの力で剣の形を変える。
 形を変えると共に、自分の懐から伸びる機械の腕を斬り飛ばす。

 斬り飛ばした機械の腕は、そのまま宙を舞い、上空にて爆発する。

「(……間違いないですね、完全にこちらの行動が読まれた上で魔法が放たれている。
 こちらの行動を見たうえで、技を放っているとしか思えない)」

 ----しかし、どうやって見ているのだろうか?

 スティーリアはそう考えて、その答えに辿り着いた。
 そう、答えはさっき弾き飛ばした斬撃だと。

 スティーリアはスピリットの性能を見せつけるために、雪ん子の強力なる斬撃を、弾力性を持たせた斬撃で弾き飛ばした。
 その際に全部を返しきれずに、部屋のあちこちに飛んで行ったものがあった。

 ある斬撃は地面を抉り、ある斬撃は天井を穿ち----そして、壁に飛んだ斬撃は大きな穴を生み出していた。
 壁に区切られた先で、雪ん子の勝利を待っている冴島渉とファイントの2人のいる部屋に繋がる、大きな穴を。

 あの大きな穴は、いわば通り道。
 大きな穴が、ボスの間を2つに分ける壁に穴が出来たことにより、スキルが通るようになったのだ。

 良く見ると、大きな穴は向こう側からも少し、掘られたような形跡があった。
 機械の腕がさっきのタイミングで出てきたのも、あの時にようやくスキルが発動するようになったから、と考えるべきだ。

 スティーリアはそう納得し、壁の向こうの敵の存在を意識する。

「(確か、あちらには魔法を使う召喚獣が1体居ましたね。
 恐らくはその召喚獣が、あの大きな穴からこちらの様子を窺いつつ、魔法かなんかで攻撃しているはず)」

 壁として分けられてこそいるが、このボスの間はもともとは1つの部屋。
 大きな穴さえ開けば、向こうから青魔法で援護する事も可能である。

 ファイントは、向こうの部屋から先程の魔法を使ってきたヤツは、そこからこちらの状況を確認しつつ、攻撃しているんだと。

「(一刻も早く、青魔法を使っている方を倒さないと)」

 そのためには、雪ん子を早く倒さなければならない。
 彼女を倒せば、壁が無くなり、雪ん子を倒した際に出る配下の騎士達と共に、向こうの部屋まで攻め入れる。

 【魔法使い】は確かに厄介ではあるが、いかんせん接近戦に弱いのが事実。
 当たることを覚悟の上で特攻すれば、確実に懐まで潜り込めて、スピリットの剣で一撃だ。

 後は、召喚術のスキルを封じられた、役立たずの【召喚士】が1人。
 ファイントと言う【魔法使い】を倒せば、スティーリアの勝利は確実なものとなる。

「(そのためにも、まずは雪ん子を倒しませんと。
 彼女はもう虫の息。私の必殺技たる【突く氷柱スティング・スティーリア】ならば、後一撃で倒せるでしょう)」

 いきなり来たからびっくりしたが、魔法が来るかもしれないと分かっていれば、防げる。
 完璧に防ぐのは無理だろうが、死にかけの雪ん子1人を倒すことくらいは出来るだろう。

「《ピィ……》」
「(おや、まだ立ちますか)」

 見ると、雪ん子はゆっくりと立ち上がり、剣を構えていた。
 しかしながら、身体はふらふら、脇腹に与えた【突く氷柱スティング・スティリーア】のダメージも大きい。

「(私の勝ちは揺るがない……最後に、自分の技で倒れるという、自滅エンドを与えましょう)」

 雪ん子が剣を振るのとほぼ同時に、スティーリアは先程と同じように斬撃にスピリットを付与して弾力性を与える。
 念のために、先程防ぎきれなかった斬撃ですら、防ぎきるほどの強力な弾力性を。

 そして、互いに剣は振られた。
 頼りない姿勢から放たれた雪ん子の斬撃は、先程よりも----


 ----威力も、そして速さも増していた。

「(~~~?! 速っ!!)」

 気付いた時にはスティーリアは、吹っ飛ばされていた。
 強力な弾力性を施した斬撃も、ぷっつんと力を与えすぎて切れた輪ゴムの様に、無残に消えていた。

「(あの姿勢で……あの怪我で……どうして、威力が上がる……のか)」

 スティーリアは知らない。
 そう、とあるスキル----彼女が無意味と判断した、【召喚士】たる冴島渉が持つスキルの存在を。


 ===== ===== =====
 【凶悪なる締め付け】……使役している召喚獣や魔物を、暴力などで支配した際に得られるスキル。善属性の配下の戦闘能力が大幅に下がり、悪属性の配下の戦闘能力が大幅に上がる
 ===== ===== =====


 そう、スティーリアが警戒すべきだったのは、魔法を使うファイントではない。
 居るだけで、雪ん子がこんなに弱々しく怪我しようとも、先程の何倍もの力で攻撃できるスキルを持つ【召喚士】の存在を。

 そして、スティーリアは倒されたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす
ファンタジー
 病院で病死したはずの月島玲子二十五歳大学研究職。目を覚ますと、そこに広がるは広大な森林原野、後ろに控えるは赤いドラゴン(ニヤニヤ)、そんな自分は十歳の体に(材料が足りませんでした?!)。  時は、自分が死んでからなんと三千万年。舞台は太陽系から離れて二百二十五光年の一惑星。新しく作られた超科学なミラクルボディーに生前の記憶を再生され、地球で言うところの中世後半くらいの王国で生きていくことになりました。  べつに、言ってはいけないこと、やってはいけないことは決まっていません。ドラゴンからは、好きに生きて良いよとお墨付き。実現するのは、はたは理想の社会かデストピアか?。  月島玲子、自重はしません!。…とは思いつつ、小市民な私では、そんな世界でも暮らしていく内に周囲にいろいろ絆されていくわけで。スーパー玲子の明日はどっちだ? カクヨムにて一週間ほど先行投稿しています。 書き溜めは100話越えてます…

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされ、生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれてしまった、ベテランオッサン冒険者のお話。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

ダンジョンの隠し部屋に閉じ込められた下級冒険者はゾンビになって生き返る⁉︎

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 Bランクダンジョンがある町に住む主人公のカナンは、茶色い髪の二十歳の男冒険者だ。地属性の魔法を使い、剣でモンスターと戦う。冒険者になって二年の月日が過ぎたが、階級はA〜Fまである階級の中で、下から二番目のEランクだ。  カナンにはAランク冒険者の姉がいて、姉から貰った剣と冒険者手帳の知識を他の冒険者達に自慢していた。当然、姉の七光りで口だけのカナンは、冒険者達に徐々に嫌われるようになった。そして、一年半をかけて完全孤立状態を完成させた。  それから約半年後のある日、別の町にいる姉から孤児の少女を引き取って欲しいと手紙が送られてきた。その時のカナンはダンジョンにも入らずに、自宅に引きこもっていた。当然、やって来た少女を家から追い出すと決めた。  けれども、やって来た少女に冒険者の才能を見つけると、カナンはダンジョンに行く事を決意した。少女に短剣を持たせると、地下一階から再スタートを始めた。

処理中です...