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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』
第18話 《東神話大陸》のクエスト(2)
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クエストは、順調に進んでいた。
レギオン単位で召喚したゴブリン達による、バカにデカすぎる野菜や果物を収穫も、問題なく進む。
途中で、めちゃくちゃデカいミミズとか、アルマジロかと思うくらい硬い皮を持つダンゴムシとかが居たんだけど、レベルⅤのNPCのノーマンの鍬攻撃、それから雪ん子による【剣技】とかで、普通に対処できる強さだったし。
「(クエストで稼ぐのもアリ、かもな)」
ここまで美味しいのは探すのは難しそうだが、このクエストが終わった後は、海渡に教えてもらいながらクエストで稼ぐという方向性で行こうかな。
クエストで稼ぐと言うのも、冒険者の在り方の1つだと思うし。
楽観的にそのような未来地図を脳内で描いていると、ノーマンさんがこちらに近付いてきた。
なんだか酷く怯えた様子と言うか、申し訳なさそうな様子と言う感じで。
「あぁ、すまないね。君は確か、たくさん魔物を召喚していた【召喚士】くんで間違いなかったかい?」
「えぇ、【召喚士】の冴島です。冴島渉」
「サエジーマさん、ですね。すみませんが、魔力はまだ残っていますか?」
「……? えぇ、まぁ?」
俺は神様からの命題のせいで、人間とパーティーを組めないというデメリットがあるが、その分、人よりも魔力量は多い。
ボス魔物を2体倒したおかげなのかは分からないが、レベルはⅠのままなのに、魔力量は着実に増えてる。
あと2、3回くらいは、送還を使用せずとも召喚できるだろう。
「そうですか。それなら、頑丈そうな魔物……いや、召喚獣を2体ほど貸していただきたいんですが」
「えっと……すいません。事情を説明して貰えますか?」
いきなり召喚獣を2体貸し出しと言われても、まったく状況が見えないのだが。
「そうですね……まずは説明すべきですよね」
アハハ、と笑いながら頭をかくノーマン。
その様子はNPCには全く見えず、本物の人間みたいだ。
ただ、いっさい瞬きをせず、呼吸による胸の上下運動も一切しないという、人間離れしている点を除けば、だが。
「実は、5人の冒険者がわたくしのクエストをせず、それどころか後方にそびえるラリンポス山に向かったとの情報が入って来ましてね。あの山も魔物は少なく、そして弱いのですが、村人ですら近寄ってはいけない地域なので、呼び戻そうかと思いまして」
「なるほど。それで、頑丈そうな召喚獣が必要な理由は……?」
「単に、怪我をしていた場合に運ぶ人手が必要ですので。他の方はクエストに忙しく、【召喚士】であるサエジーマさんだけが、召喚獣を呼んでもらって救助人員として貸していただけると思いまして」
確かに、そうかもな。
ノーマンはバカデカい野菜や果物の収穫のために、わざわざクエストという形で依頼して収穫して貰っている。
そんな彼ら彼女らの頑張りを、5人の不心得な冒険者探しに汚されたくないと言った感じだろうか。
「お願いします。貸していただけたら、5人の冒険者を救った後、彼らの報酬の一部をサエジーマさんにお渡しいたしますので」
「分かりました、そういう事でしたら」
だとしたら、頑丈そうな召喚獣というリクエストにも納得だ。
怪我をした冒険者を運ぶという想定なら、がっしりとした召喚獣の方が良いからな。
「と言う訳でっ! 出でよっ、【ゴーレム】!」
俺は召喚陣から、2体のゴーレムを召喚した。
===== ===== =====
【ゴーレム】 レベル;Ⅰ
土塊から生み出されし、心を持たない人形兵。主の命に忠実に従い、それを守らないと暴走してしまう
大きな人型の姿で力が強く、その分、速度が遅いのが欠点
===== ===== =====
土から生み出された、俺の倍はあろうかと思われる、2体の巨大な土人形は、ゆっくりと俺の方に近付いてきた。
「これで良いですか、ノーマンさん?」
「ゴーレムですか。確かにこれなら良いですね。では、ありがたく----」
2体のゴーレムを引き連れ、早速5人の冒険者を連れ戻そうとするノーマンに、俺は1つだけお願いすることにした。
「あの、ノーマンさん。よろしかったら、雪ん子も連れて行ってください。彼女が居なくても、ゴブリン達だけでクエスト達成できそうですし」
なにより、雪ん子は俺の召喚獣の中で、唯一レベルアップ可能な召喚獣。
ノーマンと共にラリンポス山に向かってもらい、あわよくば同行者として経験値を得られないかと考えたのだ。
「ピィッ!」
「分かりました、良いでしょう。冒険者さん達も、ゴーレムとだけ行くよりも、可愛らしい女の子を連れた方が警戒しないかもですね。わたくしは冒険者さん達と敵対したい訳ではなく、ただ単に連れ戻したいだけなので」
こうして、2体のゴーレム、そして雪ん子をお供にして、ノーマンはラリンポス山に向かった。
クエストの最中に逃げ出した、5人の冒険者を連れ帰るために。
「まぁ、その間にクエストを終わらせておこうか」
俺はそう思いながら、ゴブリン達の仕事っぷりに感心しつつ、クエストの達成を目指すのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、その例の冒険者である羽佐間達一行は、伝説の物質----ルトナウムを目指し、洞窟を進んでいた。
5人が洞窟の中の道を真っすぐ歩いていると、そこにユニークモンスター達の拠点を発見した。
「あったぞ、ユニークモンスター達の拠点」
見ると、そこには10体ほどのユニークモンスターだけの群れがあった。
ゴブリンが突然変異したユニークモンスター、【レッドキャップ】である。
===== ===== =====
【レッドキャップ(ユニークモンスター)】 レベル;Ⅰ ユニーク前;ゴブリン
ゴブリンが突然変異して生まれた魔物。神から見捨てられし醜悪なるゴブリンが、それでも神へ祈りを捧げて拒絶された絶望の怒りから生まれたとされる
斧による人の斬殺を至上の喜びとしており、名前の由来となった"赤い帽子"の赤は犠牲者の血の色だと言われている
===== ===== =====
洞窟の奥の方、そこに居たのは斧を持った、年老いたゴブリン----レッドキャップ。
100体に1体の低確率で生まれるユニークモンスターのはずなのに、それが群れとなっている時点で、ここになにかあるのは確かである。
「よし、じゃあ行ってくるぜ」
羽佐間はそう言って、拳を強く握りしめると、そのまま1体目のレッドキャップを殴り飛ばした。
「ウグワーッ!」
「そうだ! もういっちょう!」
短い悲鳴と共に飛んで行ったレッドキャップの悲鳴に誘われ、他のレッドキャップ達も続々と羽佐間に向かって来る。
「ユニークモンスターだろうが、そんなの関係ねぇ。油断さえしなきゃ、お前らのようなヤツにやられる俺じゃねぇよ。どんなに強くなろうが、ゴブリンはゴブリンだからな」
羽佐間は続いて2体目のレッドキャップ撃破のために、殴り掛かっていた。
羽佐間がレッドキャップ達を惹きつける中、残りの4人のメンバーはアイテムボックスからツルハシを取り出した。
そして、それで近くの岩壁を壊していく。
「おっ! これかな?」
「あぁ、こっちも出た!」
「同じく~!」
岩壁を壊し始めて約10分くらい、次々とルトナウムを発掘できたという報告が上がっていく。
===== ===== =====
【ルトナウム】 素材アイテム
別次元にあるとされる、高純度のエネルギーと繋がる"扉"の性質を持つ人工物質。燃やすことでエネルギーの一部を取り出すことができ、扉を全開にするまではこの物質は減少することも、消えることもない
生物の傷口から侵入し、別次元のエネルギーを与えて、変化を促す
===== ===== =====
「間違いない……それがルトナウムだ!」
羽佐間は嬉しそうにそう答えた。
倒した10数体のレッドキャップから、ドロップアイテムがあるかを探していたのかが馬鹿らしくなるくらいだ。
「良いぞ、良いぞっ! おいっ、アイテムボックスを出せ! ルトナウムを回収しろっ!」
「はっ、はいっ!」
「良いか、怪我してたら近寄んじゃねぇぞ! ルトナウムは傷口に入ると、とんでもないことが起こるとされてるからな!」
アイテムボックスにルトナウムを詰める中、羽佐間は上手く行ってると自信があった。
「(ルトナウムは文明を変えるほどの力を持つ、超希少素材。しかしながら、生物に憑りついて変化を促すっつー意味が分からん副作用的な効果がある)」
その副作用的な効果から、ユニークモンスターが大量発生したのだろう。
おかげで、容易く見つけることが出来たが、その分、採取も気を付けなければならない。
「(まぁ、俺ら全員、怪我なんかしてねぇし、レッドキャップもレベルⅡの俺からして見れば、ザコでしかない。こりゃあ、楽勝だぜ)」
ルトナウムを手に乗せ、この黄金よりも価値がある物質に、羽佐間は笑いが止まらなかった。
他の4人もまた、これを売ることで手に入る大金を考え、全員が笑っていただろう。
「しかし、兄貴」
と、そこで1人の男が羽佐間に問いかける。
「こんな夢のようなアイテム、国の秘密機関とかがいっぱい持ってるんじゃね? 俺らより高ランクの冒険者が、ガッポガッポって」
「いや、それはねぇぜ」
そうだ、それだけは絶対にねぇ。
なにせ、このルトナウムは、自然界にあるもんじゃねぇ。
とある冒険者が作り、俺自身が埋めた、俺たちを有名にするための、仕込みだからなぁ。
そんな事を考えていると、洞窟の奥からまたしてもレッドキャップが現れた。
はぁはぁ息を大きく、さっきまで戦ってたレッドキャップよりも、さらに弱く見える。
「はぁー、仕方ねぇな。死にに来たなら、殺してやんねぇとよ」
羽佐間はそう言って、拳を大きく振り上げ----
----そのまま、腕ごと切断された。
「何っ!?」
羽佐間が驚き、レッドキャップの強さに意味が分からずにいると、やがてその理由が見えてきた。
===== ===== =====
【ルビーキャップ(ユニークモンスター)】 レベル;Ⅱ ユニーク前;レッドキャップ
レッドキャップが変異し、他人を欺いて人を殺すことを覚えた魔物。レッドキャップと見た目がそっくりだが、その赤い帽子の血は何十年と塗り固められている強者の印である
===== ===== =====
「ユニークモンスターの、ユニークモンスターっ?!」
それは、予想しておくべき事だった。
本来、ユニークモンスターは、通常の魔物のうちの100体に1体が、稀になる魔物。
そんなユニークモンスターの中から、さらにユニークモンスターが出る確率となると、単純計算で1万体に1体。
しかし、この場所は、ユニークモンスターを生みやすくさせるルトナウムが眠る地である。
ユニークモンスター達の中からさらに上位の魔物が生まれる可能性も、考慮すべきであった。
しかし、それよりも羽佐間が気にしたのは、腕。
ルビーキャップに斬られ、血管が露わになった、腕だ。
そんな地面に落ちた腕の血管に、べちゃっと液体がかかる。
その液体は、大金と思って彼らがすりすりしていた、ルトナウム----。
ルトナウムは血管から中へと入って、そして、近くに居た羽佐間本人をも巻き込み、変異していく。
そして、新たなユニークモンスターが、生まれようとしていた。
===== ===== =====
【警告】
冒険者【羽佐間 武】の身体に 異常変異現象が 発生しました
ルトナウムの効果により 変異進化を 行います
魂の 保護に 失敗しました
記憶を失くしたまま 進化を 実行します
===== ===== =====
レギオン単位で召喚したゴブリン達による、バカにデカすぎる野菜や果物を収穫も、問題なく進む。
途中で、めちゃくちゃデカいミミズとか、アルマジロかと思うくらい硬い皮を持つダンゴムシとかが居たんだけど、レベルⅤのNPCのノーマンの鍬攻撃、それから雪ん子による【剣技】とかで、普通に対処できる強さだったし。
「(クエストで稼ぐのもアリ、かもな)」
ここまで美味しいのは探すのは難しそうだが、このクエストが終わった後は、海渡に教えてもらいながらクエストで稼ぐという方向性で行こうかな。
クエストで稼ぐと言うのも、冒険者の在り方の1つだと思うし。
楽観的にそのような未来地図を脳内で描いていると、ノーマンさんがこちらに近付いてきた。
なんだか酷く怯えた様子と言うか、申し訳なさそうな様子と言う感じで。
「あぁ、すまないね。君は確か、たくさん魔物を召喚していた【召喚士】くんで間違いなかったかい?」
「えぇ、【召喚士】の冴島です。冴島渉」
「サエジーマさん、ですね。すみませんが、魔力はまだ残っていますか?」
「……? えぇ、まぁ?」
俺は神様からの命題のせいで、人間とパーティーを組めないというデメリットがあるが、その分、人よりも魔力量は多い。
ボス魔物を2体倒したおかげなのかは分からないが、レベルはⅠのままなのに、魔力量は着実に増えてる。
あと2、3回くらいは、送還を使用せずとも召喚できるだろう。
「そうですか。それなら、頑丈そうな魔物……いや、召喚獣を2体ほど貸していただきたいんですが」
「えっと……すいません。事情を説明して貰えますか?」
いきなり召喚獣を2体貸し出しと言われても、まったく状況が見えないのだが。
「そうですね……まずは説明すべきですよね」
アハハ、と笑いながら頭をかくノーマン。
その様子はNPCには全く見えず、本物の人間みたいだ。
ただ、いっさい瞬きをせず、呼吸による胸の上下運動も一切しないという、人間離れしている点を除けば、だが。
「実は、5人の冒険者がわたくしのクエストをせず、それどころか後方にそびえるラリンポス山に向かったとの情報が入って来ましてね。あの山も魔物は少なく、そして弱いのですが、村人ですら近寄ってはいけない地域なので、呼び戻そうかと思いまして」
「なるほど。それで、頑丈そうな召喚獣が必要な理由は……?」
「単に、怪我をしていた場合に運ぶ人手が必要ですので。他の方はクエストに忙しく、【召喚士】であるサエジーマさんだけが、召喚獣を呼んでもらって救助人員として貸していただけると思いまして」
確かに、そうかもな。
ノーマンはバカデカい野菜や果物の収穫のために、わざわざクエストという形で依頼して収穫して貰っている。
そんな彼ら彼女らの頑張りを、5人の不心得な冒険者探しに汚されたくないと言った感じだろうか。
「お願いします。貸していただけたら、5人の冒険者を救った後、彼らの報酬の一部をサエジーマさんにお渡しいたしますので」
「分かりました、そういう事でしたら」
だとしたら、頑丈そうな召喚獣というリクエストにも納得だ。
怪我をした冒険者を運ぶという想定なら、がっしりとした召喚獣の方が良いからな。
「と言う訳でっ! 出でよっ、【ゴーレム】!」
俺は召喚陣から、2体のゴーレムを召喚した。
===== ===== =====
【ゴーレム】 レベル;Ⅰ
土塊から生み出されし、心を持たない人形兵。主の命に忠実に従い、それを守らないと暴走してしまう
大きな人型の姿で力が強く、その分、速度が遅いのが欠点
===== ===== =====
土から生み出された、俺の倍はあろうかと思われる、2体の巨大な土人形は、ゆっくりと俺の方に近付いてきた。
「これで良いですか、ノーマンさん?」
「ゴーレムですか。確かにこれなら良いですね。では、ありがたく----」
2体のゴーレムを引き連れ、早速5人の冒険者を連れ戻そうとするノーマンに、俺は1つだけお願いすることにした。
「あの、ノーマンさん。よろしかったら、雪ん子も連れて行ってください。彼女が居なくても、ゴブリン達だけでクエスト達成できそうですし」
なにより、雪ん子は俺の召喚獣の中で、唯一レベルアップ可能な召喚獣。
ノーマンと共にラリンポス山に向かってもらい、あわよくば同行者として経験値を得られないかと考えたのだ。
「ピィッ!」
「分かりました、良いでしょう。冒険者さん達も、ゴーレムとだけ行くよりも、可愛らしい女の子を連れた方が警戒しないかもですね。わたくしは冒険者さん達と敵対したい訳ではなく、ただ単に連れ戻したいだけなので」
こうして、2体のゴーレム、そして雪ん子をお供にして、ノーマンはラリンポス山に向かった。
クエストの最中に逃げ出した、5人の冒険者を連れ帰るために。
「まぁ、その間にクエストを終わらせておこうか」
俺はそう思いながら、ゴブリン達の仕事っぷりに感心しつつ、クエストの達成を目指すのであった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、その例の冒険者である羽佐間達一行は、伝説の物質----ルトナウムを目指し、洞窟を進んでいた。
5人が洞窟の中の道を真っすぐ歩いていると、そこにユニークモンスター達の拠点を発見した。
「あったぞ、ユニークモンスター達の拠点」
見ると、そこには10体ほどのユニークモンスターだけの群れがあった。
ゴブリンが突然変異したユニークモンスター、【レッドキャップ】である。
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【レッドキャップ(ユニークモンスター)】 レベル;Ⅰ ユニーク前;ゴブリン
ゴブリンが突然変異して生まれた魔物。神から見捨てられし醜悪なるゴブリンが、それでも神へ祈りを捧げて拒絶された絶望の怒りから生まれたとされる
斧による人の斬殺を至上の喜びとしており、名前の由来となった"赤い帽子"の赤は犠牲者の血の色だと言われている
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洞窟の奥の方、そこに居たのは斧を持った、年老いたゴブリン----レッドキャップ。
100体に1体の低確率で生まれるユニークモンスターのはずなのに、それが群れとなっている時点で、ここになにかあるのは確かである。
「よし、じゃあ行ってくるぜ」
羽佐間はそう言って、拳を強く握りしめると、そのまま1体目のレッドキャップを殴り飛ばした。
「ウグワーッ!」
「そうだ! もういっちょう!」
短い悲鳴と共に飛んで行ったレッドキャップの悲鳴に誘われ、他のレッドキャップ達も続々と羽佐間に向かって来る。
「ユニークモンスターだろうが、そんなの関係ねぇ。油断さえしなきゃ、お前らのようなヤツにやられる俺じゃねぇよ。どんなに強くなろうが、ゴブリンはゴブリンだからな」
羽佐間は続いて2体目のレッドキャップ撃破のために、殴り掛かっていた。
羽佐間がレッドキャップ達を惹きつける中、残りの4人のメンバーはアイテムボックスからツルハシを取り出した。
そして、それで近くの岩壁を壊していく。
「おっ! これかな?」
「あぁ、こっちも出た!」
「同じく~!」
岩壁を壊し始めて約10分くらい、次々とルトナウムを発掘できたという報告が上がっていく。
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【ルトナウム】 素材アイテム
別次元にあるとされる、高純度のエネルギーと繋がる"扉"の性質を持つ人工物質。燃やすことでエネルギーの一部を取り出すことができ、扉を全開にするまではこの物質は減少することも、消えることもない
生物の傷口から侵入し、別次元のエネルギーを与えて、変化を促す
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「間違いない……それがルトナウムだ!」
羽佐間は嬉しそうにそう答えた。
倒した10数体のレッドキャップから、ドロップアイテムがあるかを探していたのかが馬鹿らしくなるくらいだ。
「良いぞ、良いぞっ! おいっ、アイテムボックスを出せ! ルトナウムを回収しろっ!」
「はっ、はいっ!」
「良いか、怪我してたら近寄んじゃねぇぞ! ルトナウムは傷口に入ると、とんでもないことが起こるとされてるからな!」
アイテムボックスにルトナウムを詰める中、羽佐間は上手く行ってると自信があった。
「(ルトナウムは文明を変えるほどの力を持つ、超希少素材。しかしながら、生物に憑りついて変化を促すっつー意味が分からん副作用的な効果がある)」
その副作用的な効果から、ユニークモンスターが大量発生したのだろう。
おかげで、容易く見つけることが出来たが、その分、採取も気を付けなければならない。
「(まぁ、俺ら全員、怪我なんかしてねぇし、レッドキャップもレベルⅡの俺からして見れば、ザコでしかない。こりゃあ、楽勝だぜ)」
ルトナウムを手に乗せ、この黄金よりも価値がある物質に、羽佐間は笑いが止まらなかった。
他の4人もまた、これを売ることで手に入る大金を考え、全員が笑っていただろう。
「しかし、兄貴」
と、そこで1人の男が羽佐間に問いかける。
「こんな夢のようなアイテム、国の秘密機関とかがいっぱい持ってるんじゃね? 俺らより高ランクの冒険者が、ガッポガッポって」
「いや、それはねぇぜ」
そうだ、それだけは絶対にねぇ。
なにせ、このルトナウムは、自然界にあるもんじゃねぇ。
とある冒険者が作り、俺自身が埋めた、俺たちを有名にするための、仕込みだからなぁ。
そんな事を考えていると、洞窟の奥からまたしてもレッドキャップが現れた。
はぁはぁ息を大きく、さっきまで戦ってたレッドキャップよりも、さらに弱く見える。
「はぁー、仕方ねぇな。死にに来たなら、殺してやんねぇとよ」
羽佐間はそう言って、拳を大きく振り上げ----
----そのまま、腕ごと切断された。
「何っ!?」
羽佐間が驚き、レッドキャップの強さに意味が分からずにいると、やがてその理由が見えてきた。
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【ルビーキャップ(ユニークモンスター)】 レベル;Ⅱ ユニーク前;レッドキャップ
レッドキャップが変異し、他人を欺いて人を殺すことを覚えた魔物。レッドキャップと見た目がそっくりだが、その赤い帽子の血は何十年と塗り固められている強者の印である
===== ===== =====
「ユニークモンスターの、ユニークモンスターっ?!」
それは、予想しておくべき事だった。
本来、ユニークモンスターは、通常の魔物のうちの100体に1体が、稀になる魔物。
そんなユニークモンスターの中から、さらにユニークモンスターが出る確率となると、単純計算で1万体に1体。
しかし、この場所は、ユニークモンスターを生みやすくさせるルトナウムが眠る地である。
ユニークモンスター達の中からさらに上位の魔物が生まれる可能性も、考慮すべきであった。
しかし、それよりも羽佐間が気にしたのは、腕。
ルビーキャップに斬られ、血管が露わになった、腕だ。
そんな地面に落ちた腕の血管に、べちゃっと液体がかかる。
その液体は、大金と思って彼らがすりすりしていた、ルトナウム----。
ルトナウムは血管から中へと入って、そして、近くに居た羽佐間本人をも巻き込み、変異していく。
そして、新たなユニークモンスターが、生まれようとしていた。
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【警告】
冒険者【羽佐間 武】の身体に 異常変異現象が 発生しました
ルトナウムの効果により 変異進化を 行います
魂の 保護に 失敗しました
記憶を失くしたまま 進化を 実行します
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【ストーリー紹介】
幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。
そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。
養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。
だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。
『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。
貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。
『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。
『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。
どん底だった主人公が一発逆転する物語です。
※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
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