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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第17話 《東神話大陸》のクエスト(1)

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 一説によると、ダンジョンの大きさは、そのダンジョンのランクによって変動するらしい。
 Fランクダンジョンなら最奥に行くのに2時間くらいで行けるのだが、Aランクダンジョンともなるとその大きさはもう1つの地球と同じくらいあるらしい。
 そして高ランクのダンジョンによっては、ボスが複数体、別の場所にいる事も珍しくないらしい。

 今回行くことになった、Cランクダンジョン《東神話大陸》もそういった巨大なダンジョンの1つだ。
 アメリカ大陸とほぼ同じくらいのドデカいフロアには、10体以上のボスが各地に点在しているらしい。

 ……とまぁ、そんなに広いダンジョンだと、危険なエリアもあれば、魔物がほとんど居ない安全なエリアもある。
 それが今回、クエストを受ける場所であった。


「皆さん、今日も集まってくれてありがとう! 今日も元気に、収穫していきましょうね!」

 頭に麦わら帽子を被った筋肉隆々のNPC、ノーマンと言う名の農家の号令の元、俺達はクエストを始めた。
 このクエストが穴場だって事は海渡の嘘ではないらしく、俺以外にもレベルⅠの冒険者などを中心に十数人がこのクエストを受けていた。

 クエスト内容自体は、比較的安全な農地で作物を収穫していくという、簡単なモノだったし。
 こんなにたくさんの冒険者が受けるという、人気があるのも頷けた。
 報酬も、40個収穫して納品できれば5万円。それ以上に収穫すると5個ごとにプラス5千円と、かなり破格の設定だったし。

「まぁ、これはかなり想定外だったけど」

 俺はそう言いながら、雪ん子と2人でこのドデカいかぼちゃ相手に奮闘していた。


 ===== ===== =====
 【オバケかぼちゃEX】
 とても大きいかぼちゃ。魔力を吸い大きくなったため、食べても問題はない
 ===== ===== =====


「(……いや、問題はあるだろう!)」

 俺は2m近くある、巨大かぼちゃにそうツッコんだ。

 ……そう、今回収穫する作物はどれもデカい。
 ノーマンは軽々と収穫して行ってるが、2m近いかぼちゃに、50m掘っても芋が見えてこないサツマイモ、軽い樹と同じくらい太そうな白ネギなど……どれもがデカいのだ。

 味は良いのだが、どれもがめちゃくちゃデカいのだ。
 これは10個収穫するだけでも、骨が折れそうだ……。

 まぁ、召喚獣をレギオン単位でゴブリンを召喚しておいたし、10個ならなんとか……。
 周りは山や村で、魔物もほとんど居ない安全な場所だし、こりゃあ時間いっぱい頑張るしかしかないのかもな。

「よし、頑張っていくか」

 ゴブリン達の頑張りに期待しつつ、俺は収穫を続けるのであった。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 一方、その収穫物を納品することを失敗する覚悟で、このクエストを受けた者達が居た。
 レベルⅡの【格闘家】、羽佐間武はざまたけしと、それに連なって行動する4人の一行である。

 【格闘家】である羽佐間は、生まれた時から恵まれた人間であると自覚していた。
 地元名家の四男坊として、家の責任は負わず、ただ自分の好きなように大金を動かすことが出来た。
 体格にも恵まれ、喧嘩では負け知らずという、凄腕っぷりだ。

 そんな彼だからこそ、冒険者でも一番を目指そうと思案していた。
 ほとんどの人間がレベルⅠから始まる中、レベルⅡからスタートできる自分は、神様からも優遇されていると信じていた。

「で、兄貴? なんでクエストをやろうとしないんです?」
「市役所に目を付けられると、マズいっすよ?」

 自分の力に惹かれてついてきたレベルⅠのカス共は、そう助言するように言ってきた。
 奴らはデカいことを自分で成し遂げようともせず、羽佐間のおこぼれを貰いたいだけの、ただのお荷物である。
 だが、自分を神のように、特別な人間だと賞賛してくれる彼らのために、羽佐間は渋々、説明を始める。

「良いか? そもそもクエストなんてのは、既に達成してんだよ。そこの気の弱そうな男を見て見ろ」

 羽佐間の言葉で、他の3人は奥の方で縮こまっていた少年を見る。
 少年は、鞄を広げると、その中には皆が必死な形相で収穫していた野菜が、鞄の中に積み込まれていた。

「「「まさか、アイテムボックス(※1)っ?!」」」
「正解だ。めちゃくちゃ重要なスキルだぜ」

 そう、羽佐間がクエストを達成しようともせずに、余裕でいられるのは、自分の配下が持つこの有能スキル----アイテムボックスのおかげだ。
 これさえあれば、後は鞄から出す時にだけ手を貸せば良いし、あんなデカ重いモノをわざわざ運ぶのも少なくて済みそうだ。

「こいつがアイテムボックスで、俺達5人分の最低限の収穫を提出すればいい。
 そう、俺達は今、かなり時間的に余裕なのだ」
「「「なるほどぉ!! さっすが、兄貴!」」」

 カス共の賞賛の言葉を聞いて嬉しく思いつつ、羽佐間は今回の真の目的について語り始める。

「実はよぉ、アイテムボックスで簡単に依頼をこなせるから、今回のクエストを受けたんじゃねぇ。
 この《東神話大陸》っていう場所に来たかったんだ」

 4人がぽかんっとしている様子を見て、自分だけが知ってる優越感で嬉しくなる中、彼は情報を知らないバカなカス共に説明する。

「良いか、この辺りはよぉ、確かに魔物も弱いし、数も少ねぇ。けどなぁ、後ろにあるあの山----ラリンポス山なるふざけた名前の山には、レベルⅠの、ユニーク個体(※2)が大勢出るエリアがあるらしい」

 ユニークってのは、そもそも同じ系統の魔物よりも強い代わりに、出現する可能性は1/100程度。
 そんなのがゴロゴロと出現する、謎の山。

 実に、不可解だと思わねぇか?
 羽佐間はそれに着目した。

「実はよぉ、あの山には、ユニークが大勢出るエリアには、とんでもねぇアイテムが眠ってるらしいんだ。
 聞いて驚け。なんと、石油のように燃やしたりすると莫大なエネルギーを出すんだが、どんなに燃やそうとも、量が減らねぇ・・・・

 そう、今から羽佐間が採取に向かおうとしているのは、そんなとんでもチートアイテム。

 化石燃料の代表格の石油のように燃やすことでエネルギーを出すが、そのエネルギー量は石油のおよそ1万倍。
 地球環境にも優しく、有害な物質は一切出てこない。
 しかも、どんなに燃やしても、元の量が減らないというからびっくりな性質付き。

 そんな夢のようなチートアイテムの名は、

「ルトナウム。俺達の文明を何ランクも挙げてくれる、文字通り夢のようなアイテムだぜ」





(※1)アイテムボックス
 一部の冒険者のみが会得している、めちゃくちゃ便利なスキルのうちの1つ。中に入れた物の重さをなくし、中に入っている間の物体の保存状態をそのまま保持する
 中には生物をも入れられるモノや、保存が出来ない劣化物まであるとされる

(※2)ユニーク個体
 魔物がなにかの偶然からか、通常よりも強い力を得て生まれてきた個体。なぜ生まれるのかと言った理由はまだ分かっておらず、発生確率はおよそ100体に1体程度
 ユニークになろうとも、レベルが上がらないが、倒すとドロップを手に入れる事が出来る
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