上 下
15 / 350
第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第15話 友人に誘われ、クエストを考える(1)

しおりを挟む
 今月の収入が、ヤバい。
 ヤバいとはいい意味ではない、ダメな方の意味だ。

 俺の今月の冒険者としての収入が、先程確定した。
 およそ2万円とのことだった。

 俺はその事を知り、市役所の上の冒険者待合所なるカフェもどきっぽい場所で、頭を抱えていた。

 平日の昼間は学校に通ってるし、そもそも羽目を外して遊びたいとの事もあったので、ダンジョンに潜った時間はおおよそ20時間程度だろうか。
 時給で換算すると、おおよそ1000円くらい。
 どこかのコンビニで働くのとどっこいどっこいだ、しかもあんな死ぬかもしれない目に合って、だ。

「(いや、ツリーアルラウネは良い稼ぎになったけどさー)」

 Fランクダンジョン、《魔獣の狩場山》。
 このダンジョンの名前は、人間がつけたものではない。
 俺達にジョブだとか、レベルとかをくれた神様が、「ここは《魔獣の狩場山》と言うダンジョンですよー」とシステムを通して教えてくれていたものだ。
 ダンジョンの名前というのは、そのようにして付けられている。

 《魔獣の狩場山》のボスは、後ろからの攻撃でも対処できる【梟熊アウルベアー】。
 ボスが熊だから、このダンジョンは、"魔獣が狩場とする山"----だから、《魔獣の狩場山》という名前なんじゃないかって言われたくらいである。

 しかしながら、本当は【大樹妖花ツリーアルラウネ】という、植物型の魔物。
 つまりは、"魔獣が狩場とする山"ではなく、"魔獣を餌として狩場にする生物がすむ山"という意味だったのだ。

 あんまり違わないかって?
 Cランクのダンジョンに、《上級魔獣の狩場山》があるとしても?
 そしてそこのボスの間に【狂暴なる梟熊バーサーク・アウルベアー】という獣型の魔物が居て、そいつを倒したのに、誰もドロップをゲットしていなくても?

 俺の情報は、《上級魔獣の狩場山》のドロップ発生のヒントとして、けっこう高めに買い取ってもらえた。
 【狂暴なる梟熊バーサーク・アウルベアー】を殺さずに瀕死に追い込めば、もしかすると【大樹妖花ツリーアルラウネ】の上位種へと変貌を遂げ、そいつを倒すことで初めて、ドロップが出てくるんじゃないかって。
 そのダンジョンはこっちと違って、けっこう稼ぎ場らしいので、この情報はかなり高く、証拠となるツリーアルラウネの魔石と共に、買い取ってもらえた。

 その高い報酬のほとんどを、俺が貯金を切り崩しながら得てきた情報料と、効果がなくなってしまいただの棒きれとなってしまった《獣狩りの剣》のレンタル代+弁償代で、消えてしまった。
 あの後、《獣狩りの剣》を市役所の人が鑑定したところ、重要な獣型魔物の特攻スキルが消えていたらしい。
 恐らくは、雪ん子に【剣技】が宿ったのと引き換えに、《獣狩りの剣》の力が消えてしまったのだろう。

「そして手に入れた仙丹も、まさかの譲渡不可能アイテムとは」

 雪ん子が選んだ仙丹、【ツリーアルラウネの仙丹】。
 これは俺だけしか持つことが出来ず、俺だけしか飲めないという、他人に譲渡が不可能なアイテムだったらしい。
 つまり、俺が飲んだら、【女傑】という、女性しか使えない力が手に入るだけ……。

 まぁ、飲んだ後のスキルの状態なら交換できるらしいのだが、その方法も分からないし。
 そもそも、交換相手も居ないし。

 ……失敗したな。
 これだったら、【アウルベアー・ナックル】を選んで、売り払えば、もっと行けただろうに。

 まぁ、後でなにかの役に立つかもだし、気にせず、取っておこう。
 RPGでいうところの、ステータス上昇系の種系アイテムは最後に使おう、という感じの。



 問題は他にもある。

 ダンジョンから帰る最中、雪ん子はけっこう沢山の【転がす草タンブルウィード】や、襲い掛かってくる魔獣を、軽く伸して倒してきた。
 しかし、その最中に、


 ===== ===== =====
 雪ん子は 魔物を 倒しました
 経験値を 取得できません
 ===== ===== =====


 などという文言が出てきたのだ。
 多分、あまりにも弱すぎて、経験値として得られないってことだと思う。
 その証拠に、レベルⅡの魔物を倒した時は、ほんのちょっぴり経験値を得られたから。

 Fランクダンジョンでは、もうこれ以上レベルアップできないし、となると稼ぎもこれ以上は上がらない。
 一度、大金を得られるかもという事情を知ってしまった以上、これで満足できない。

 Fランクダンジョンの上は、Eランク……!
 そこに入るには、市役所から許可を、Eランクに入っても良いよという許可が要る。
 普通なら、上級冒険者についていけば済む話だが、俺は"魔力量が上昇するが、人間とパーティーを組むことが出来ない"という命題のせいで、審査が厳しいからな……。

 さて、雪ん子という、俺だけの特別な召喚獣というカードを切るべきか。
 
「うーん……出来れば、このまま隠しておきたいし……」

 どうすれば良いか迷っていると、

「おっ! 居た居たっ! やっぱここに居たか、渉!」

 実に懐かしい声が聞こえてきた。

「……海渡、か」

 声の主は、"攻撃が2回攻撃になるが、大剣しか使えない"という当たりの命題を引き、ただいまレベルⅠの【剣士】として、絶賛大活躍中の少年だった。
 高級そうな腕時計、高そうな宝石のはまったネックレス、そして分厚そうな財布……どれを見ても、最近稼いでますよ感を出す彼。

 そう、俺と一緒に冒険者登録をして、良い思いをしている、網走海渡であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

死んでないのに異世界に転生させられた

三日月コウヤ
ファンタジー
今村大河(いまむらたいが)は中学3年生になった日に神から丁寧な説明とチート能力を貰う…事はなく勝手な神の個人的な事情に巻き込まれて異世界へと行く羽目になった。しかし転生されて早々に死にかけて、与えられたスキルによっても苦労させられるのであった。 なんでも出来るスキル(確定で出来るとは言ってない) *冒険者になるまでと本格的に冒険者活動を始めるまで、メインヒロインの登場などが結構後の方になります。それら含めて全体的にストーリーの進行速度がかなり遅いですがご了承ください。 *カクヨム、アルファポリスでも投降しております

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

戦闘狂の水晶使い、最強の更に先へ

真輪月
ファンタジー
お気に入り登録をよろしくお願いします! 感想待ってます! まずは一読だけでも!! ───────  なんてことない普通の中学校に通っていた、普通のモブAオレこと、澄川蓮。……のだが……。    しかし、そんなオレの平凡もここまで。  ある日の授業中、神を名乗る存在に異世界転生させられてしまった。しかも、クラスメート全員(先生はいない)。受験勉強が水の泡だ。  そして、そこで手にしたのは、水晶魔法。そして、『不可知の書』という、便利なメモ帳も手に入れた。  使えるものは全て使う。  こうして、澄川蓮こと、ライン・ルルクスは強くなっていった。  そして、ラインは戦闘を楽しみだしてしまった。  そしていつの日か、彼は……。  カクヨムにも連載中  小説家になろうにも連載中

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

処理中です...