俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第8話 元勇者系MyTuberによる、召喚獣紹介動画(2)

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「さて、では次は第2位の紹介です」

 と、同率3位の召喚獣2体を送還したマイマインが、次に召喚陣から召喚したのは、背中の4枚の羽で宙を舞う少女であった。
 全身がうっすらと透明な彼女は、自由気ままに空を飛んでいた。

「第2位に選ばれた召喚獣は、【シルフ】です。風で、皆様をサポートしてくれる精霊です」


 ===== ===== =====
 【シルフ】 レベル;Ⅰ
 エレメンタルと呼ばれる、属性を司る4体の精霊のうちの1体。風を司る精霊で、虫のようなその羽で、自由自在に空を舞う気ままな少女の召喚獣
 そよ風から突風など、風の強さを自由自在に操ることができ、風の温度も変える事が出来る
 ===== ===== =====


 シルフは、自由気ままに空を舞いながら、時折、風を操っては綺麗な緑の髪をなびかせていた。

「シルフは、空気や風などを表す精霊型の召喚獣で、戦闘よりもダンジョン探索に有用な召喚獣です。敵の待ち伏せをかいくぐったり、罠を見破ったりするのに有効です。ダンジョン探索に、是非とも使いたい1匹ですね。
 では、最後になりましたが、マイマインが選ぶ、最も使えると思われるランクⅠの召喚獣を発表させていただきたいと思います」

 シルフを送還したマイマインが、最後に、第1位として発表するために召喚する召喚獣。
 最後に召喚陣から現れたのは、人懐っこそうな可愛らしいライオンの子供であった。
 いや、尻尾は蛇になっており、良く見るとライオンの頭の横に、山羊の頭もある。

 2つの動物の顔と、蛇の尻尾を持つ獣。
 それが、彼が第1位として紹介した、召喚獣であった。

「第1位は、可愛らしさと俊敏さが特徴の獣型! 【ベビーキマイラ】です!」


 ===== ===== =====
 【ベビーキマイラ】 レベル;Ⅰ
 キマイラの幼生であり、なおかつ人に懐かせるために生み出されたとも言われる、人造召喚獣。獅子と山羊の頭は周囲を見渡し、尻尾の蛇が噛むことで弱いながら麻痺を与える
 召喚主に限らず、人に非常に懐く習性を持っており、小さな身体ながら大人が乗っても平気で動ける
 ===== ===== =====


「ベビーキマイラは、合成獣キマイラの幼体として設定されている召喚獣です。レベルⅠの召喚獣の中では、攻守ともに優れた召喚獣であり、その上、この小ささながら人1人分を背負っても動ける力強さを持っております。
 もしまだ、ベビーキマイラを召喚したことがない召喚士の方がいらっしゃいましたら、是非とも召喚して、その強さを実感して欲しい所ですね」

 ----ベビーキマイラかぁ。

 確かに紹介された中だと、これが一番優秀そうだ。
 この召喚獣は今まで知らなかったし、この召喚獣に【召喚 レベルアップ可能】を使うとするか。

 そう思って動画の視聴を止めようとすると、「最後に1つだけ----」となんとも意味深な言葉が聞こえてきた。
 動画の残り時間もそんなには残っていなかったため、それだけ見てからにしようかと思って、動画の再生を続けた。





「最後に、【召喚士】になってしまった方のために、1つだけアドバイスを差し上げましょう。
 次に召喚する召喚獣は、レベルⅣのボスクラスの召喚獣であります」

 そう言って、マイマインはさっきまでとは、まるで違う召喚陣を出現させる。
 大きさはさほど変わっていないが、その複雑さは全然違う。
 例えるとすれば、粗悪な剣を見た後に、めちゃくちゃ丁寧で複雑な刀を見た時のような。

 ----レベルⅣ用の召喚陣ってことかな。

 召喚陣の複雑さは、動画越しでも良く分かる。
 これがいつか、俺でも召喚できるようになるのだろうか。

 そう思いながら見ていると、その複雑なレベルⅣ用の召喚陣から、大蛇が現れた。

 その大蛇の名前を、俺は良く知っていた。
 何故なら、その特徴的な見た目からゲームなどでも、お馴染みの存在だったからだ。

「これがレベルⅣの召喚獣、【ヤマタノオロチ】です」


 ===== ===== =====
 【ヤマタノオロチ】 レベル;Ⅳ
 8つの首と尾を持つ、巨大な蛇の召喚獣。人を喰らう伝承の中で酒に酔う伝承があるため、状態異常にかかりやすい欠点を持つ
 洪水の化身であり、8つの首から大量の水を浴びせ、人々を苦しめたとされる
 ===== ===== =====


 マイマインが最後におまけとして召喚したのは、ヤマタノオロチ。
 8つ首の大蛇で、その身から伝説の聖剣が出てきたとされる、ゲームなどでもおなじみの存在だ。

 そんな良く知る召喚獣は、小さくなって机の上に載せられるほどの大きさでも迫力が半端じゃなく、8つの首は画面越しでも分かるくらい俺の方に威嚇していた。

「ヤマタノオロチは、水を司る龍神様という伝承を持つ召喚獣であり、高いステータスを揃えるドラゴン系の召喚獣の中でも、圧倒的な水属性の攻撃を持っています。
 さて、そんなヤマタノオロチなんですが、実は異世界----わたしが勇者をやっていた向こうの世界では、誰も召喚していませんでした。当たり前と言えば、当たり前なんですが、知らない召喚獣なんて召喚するのを躊躇ためらうのも、無理はありません」

 「しかし、問題はそこではないのです」と、もったいぶった言い方で、こちらの興味を引くマイマイン。

「実は、ヤマタノオロチを召喚獣として召喚する以前に、向こうの世界では誰も知らなかった。当然ですよね、異世界にはない、日本に伝わる伝説の生物ですし。
 だから、召喚可能の中に入っていなかったんです」

 ----ん? だったらなんで、今は召喚できているのだろうか?
 ----マイマインはなぜ今、ヤマタノオロチを召喚したりしたのだろうか?

 その答えは、マイマインがすぐに出してくれた。


「実は、召喚獣は自ら知識を得る事で、召喚できるようになるのです。それがわたしが思う、【召喚士】の真の強みです。
 知識として得た召喚獣のレベルは、今回のヤマタノオロチのように後で確認してください。これを使えば、わたしが紹介したのよりも良いのが、もしかしたら見つかるかもしれませんね?
 世界各国に眠る妖怪やら魔物やらの知識を得る事で、召喚陣から出せる召喚獣のレパートリーが増えるので、皆さんも是非、妖怪や魔物を知るために図書館や本屋さんなどで調べることをお勧めします」

 そう言って、マイマインは動画を締めくくったのであった。
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