俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政

文字の大きさ
上 下
6 / 354
第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第6話 困った時は、MyTuber

しおりを挟む
「で、これがその報酬って訳か……」

 Fランクダンジョン《木こりが暮らす水辺》。
 俺はそのダンジョンのボス魔物、【木こりの地縛霊ファントム】を攻撃させる前に倒すという、完封勝利を成し遂げた。

 目的は、持っているだけで運の値を倍にして、さらに魔物を倒した際に得られる金額を1.2倍にするという、金策には重要なアイテム、【金の斧】。
 だが完封勝利した俺には、全然情報のなかったドロップアイテムが報酬の1つとして並んでいて、俺はそれを選択した。

 それがこの、【召喚 レベルアップ可能】というスキルである。



 ===== ===== =====
 【召喚 レベルアップ可能】(スキルレベルⅠ)……【召喚士】が召喚獣を召喚する際に使うスキルに作用し、召喚獣をさらなる高みへ連れていくだろう
 効果;召喚獣1体を対象にし、レベルアップ可能状態へ変更します。それ以降、その召喚獣は送還しても、効果を引き継ぎます
 ===== ===== =====


 これは俺が【召喚】で呼び出した召喚獣1体に対して、"レベルアップ可能"という項目を付与するというスキルだ。
 レベルが一切上がらないために外れモノとして扱われてきた召喚獣。
 それをレベルアップ可能にするんだから、このスキルの壊れっぷりが分かるという物だろう。

 ----だが、問題がある。
 それはこのレベルアップ可能状態に出来るのが、たった1体だけって事だ。

 《スキルレベルⅠ》ってあるから、恐らくはこのスキルレベルとやらを上げれば、2体以上、あるいは全ての召喚獣がレベルアップ可能になるかもしれない。
 しかし、このスキルの入手条件自体がほぼイレギュラーであり、なおかつどうすればスキルレベルが上がるのかが分からない以上は、この1体目とやらは慎重に選ばなくては……。



「とは言え、どいつにすべきか」

 ダンジョンの中で考えたら、魔物に襲われると考え、自室へと帰って早速思案という形にしたのは良いだろう。
 たった1体だけしか選べない以上、いつ、今は倒せないレベルⅡ以上の魔物に襲われて死んだら、元も子もないからね。

 召喚獣と一口に言っても、その数は膨大だ。
 【召喚士】レベルⅠで、まだレベルⅠの召喚獣しか呼べない俺でも、呼べる種類はざっと1000を軽く超える。

 その全てを俺は網羅している訳ではなく、ただ市役所で【召喚士】認定された際に貰った冒険者パンフレット(※1)に書かれていたオススメを試しているだけに過ぎないのだ。

「そう言えば、確かあのパンフレットに……」

 机の上にあった、全部を読むのを半ばに諦めたパンフレットを、さらさらーっと読み進めていくと、最後の方のページに、URLが載っていた。
 【召喚士】同士の交流の場、つまりは攻略情報を載せる有志達のページだ。

 早速、パソコンにURLを入力して検索をかけると、すぐさま目的のページは見つかった。

 ----【召喚士になった! けど、不遇にも負けないぞぉ~! の広間】。
 なんともしょっぱいフォントが、【召喚士】の残念具合を物語っているような気がする。

「なんかもう、この時点で負け感が半端じゃないけど」

 気を取り直して、情報収集、っと。
 Webページを開いてみると、まず見えてきた項目の中に【召喚士が不遇の理由とは?!】みたいなのが見えてきてしまった。

 どうやら【召喚士】がハズレであることは、誰の目にも明らからしい。
 わざわざ冒険者支援を目的としている、市役所主導----もとい、国主導のページでこれが消されていないって事は、【召喚士】のヤバさっぷりが見えてくる。

 でもまぁ、今見ておきたい項目はそれじゃないので、スルー。

 下の方を見ていくと、【召喚獣、なにが一番可愛い?!】や【召喚士だからこそできる、簡単荷物持ちのやり方】などというしょうもないネタが続いていき、そして----

「……あった」

 一番最後の方に、1本の動画を見つけた。

 動画タイトルは、【レベルⅠ召喚獣 元勇者が教える人気召喚獣トップ5】。
 動画投稿者は、既に60万人ものファンがいるという大手冒険者MyTuberのマイマインさんという人らしい。

 このマイマインさんは、嘘か本当かは分からないが、どうやら別世界で勇者として活躍していた経験を持つ超凄腕の冒険者さんらしい。
 実際、彼1人で他の冒険者がパーティーを組んでも成し遂げられていない功績をあげている。

 例えば、一流冒険者が100階層にも辿り着けない中、彼1人で1000階層の魔物を余裕で倒す動画を上げていたり。
 あるいは、本職の生産職(※2)さんが知らないレシピを多く公開していたり。
 また、自分の職業ジョブが【なし】という俺達以上のハズレなのにも関わらず、【召喚士】を初めとしたあらゆる職業の情報を知っていたり。

 兎にも角にも、あり得ないくらいの功績をあげて、冒険者系MyTuberのトップを進んでいる人。
 それがこの動画の投稿者の、マイマインさんという方らしい。

「(自分で考えても埒が明かない。とすると、ここはやっぱり、優秀な先輩さんのお話を参考にさせていただこうじゃないですか)」

 俺はそう思って、動画再生ボタンを押した。





(※1)冒険者パンフレット
 市役所に用意されている、初心者向けの冒険者用パンフレット。それぞれの職業ジョブの特徴や、ダンジョンの潜り方などの基本的な要素だけではなく、ドロップアイテムを売る換金所、ダンジョンマップの購入方法など、市役所目線で作られた要素も多い
 ページ数は20ページほどと少ないのだが、文字がぎっしりと書き込まれているため、読み辛いとの評判

(※2)生産職
 武器を作る【鍛冶職人】や、薬などを錬成する【錬金術師】など、物を生み出す性質の職業ジョブの総称。ダンジョンの外などで、物を作り出す際に様々なアドバンテージを発揮する
 ダンジョン内においては、武器の耐久度を大幅に減少させる代わりに威力を上げる【壊心の一撃】や、アイテムのドロップ率を上げる【素材収集】などで、パーティーの一員として活躍する
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる! ×ランクだと思ってたギフトは、オレだけ使える無敵の能力でした

赤白玉ゆずる
ファンタジー
【コミックス第1巻発売です!】 早ければ、電子書籍版は2/18から販売開始、紙書籍は2/19に店頭に並ぶことと思います。 皆様どうぞよろしくお願いいたします。 【10/23コミカライズ開始!】 『勘当貴族なオレのクズギフトが強すぎる!』のコミカライズが連載開始されました! 颯希先生が描いてくださるリュークやアニスたちが本当に素敵なので、是非ご覧になってくださいませ。 【第2巻が発売されました!】 今回も改稿や修正を頑張りましたので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。 イラストは蓮禾先生が担当してくださいました。サクヤとポンタ超可愛いですよ。ゾンダールもシブカッコイイです! 素晴らしいイラストの数々が載っておりますので、是非見ていただけたら嬉しいです。 【ストーリー紹介】 幼い頃、孤児院から引き取られた主人公リュークは、養父となった侯爵から酷い扱いを受けていた。 そんなある日、リュークは『スマホ』という史上初の『Xランク』スキルを授かる。 養父は『Xランク』をただの『バツランク』だと馬鹿にし、リュークをきつくぶん殴ったうえ、親子の縁を切って家から追い出す。 だが本当は『Extraランク』という意味で、超絶ぶっちぎりの能力を持っていた。 『スマホ』の能力――それは鑑定、検索、マップ機能、動物の言葉が翻訳ができるほか、他人やモンスターの持つスキル・魔法などをコピーして取得が可能なうえ、写真に撮ったものを現物として出せたり、合成することで強力な魔導装備すら製作できる最凶のものだった。 貴族家から放り出されたリュークは、朱鷺色の髪をした天才美少女剣士アニスと出会う。 『剣姫』の二つ名を持つアニスは雲の上の存在だったが、『スマホ』の力でリュークは成り上がり、徐々にその関係は接近していく。 『スマホ』はリュークの成長とともにさらに進化し、最弱の男はいつしか世界最強の存在へ……。 どん底だった主人公が一発逆転する物語です。 ※別小説『ぶっ壊れ錬金術師(チート・アルケミスト)はいつか本気を出してみたい 魔導と科学を極めたら異世界最強になったので、自由気ままに生きていきます』も書いてますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...