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第1章『俺の召喚獣だけレベルアップする/雪ん子の章』

第3話 大外れの【召喚士】

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 市役所で冒険登録した俺、冴島渉。
 俺が神様から与えられたのは、大外れと呼ばれる【召喚士】というジョブだ。

 その職業ジョブの欠点を、俺は今、猛烈に体感している。



 冒険者登録してから、早10日。
 俺は今、ダンジョンの中を潜っていた。

 Fランクダンジョン(※1)のうちの1つ、《木こりが暮らす水辺》。
 洞窟の中にも関わらず、緑溢れる穏やかな雰囲気が漂うこのダンジョンで、俺は【召喚士】として与えられた唯一のスキルを発動しようとしていたのだ。

「では、《召喚》っと」
「「「「「ゴブゥ~!!」」」」」

 俺が発動したスキル《召喚》によって、5体のゴブリンが召喚獣として召喚された。
 こいつらのレベル(※1)は最低クラスのレベルⅠ。
 つまりは、レベルⅠの冒険者が普通に倒せる強さしかない、奴らザコだ。


 ===== ===== =====
 【ゴブリン】 レベル;Ⅰ
 緑色の肌を持つ、邪悪なる小鬼。魔王や、それに準ずる強大な魔力を持った悪の魔法使いの悪の軍団の尖兵として頻繁に活用されており、人にちょっとした悪さをするのが好き
 ===== ===== =====


 俺が召喚したのは、ゴブリンと呼ばれる小鬼の召喚獣だ。
 コイツらは子供くらいの体躯しかなく、身体能力も高い訳ではなく、その上、サボり癖もひどいという、良い所がほとんどない奴らだ。
 だが、なんでそんな奴らを使っているかと言えば、簡単に言えば、こいつら・・・・くらいしか・・・・・使える奴らが居ないからだ。

 【召喚士】が大外れだと言われているのが、これが理由である。

 今の俺のはレベルⅠ----これは、一般人とほとんど変わらない強さっていう意味なんだが。
 普通のレベルⅠの冒険者は、神から与えられた職業ジョブから得られたスキルを使って、冒険者として戦う。
 同じ時に冒険者登録した【剣士】の海渡なんかは、剣を縦に豪快に振るう【縦一文字斬り】や、剣の切れ味を上げる【速攻磨き】なるスキルを得られたという。

 つい先日も、レベルⅠながら、4人パーティーでレベルⅡの魔物、ジャイアントスネークなる魔物を倒したと聞いた。

 対して、俺が得られたのは、魔力を消費して召喚獣を呼ぶ【召喚】というスキルのみ。
 俺は命題のおかげで魔力が人よりも多いので一度に5体召喚することが出来るが、俺が召喚できるのはゴブリンなどランクⅠの召喚獣だけ。

 そして、残念なことに、レベルⅠの召喚獣を4体集めたとしても、レベルⅡの魔物には歯が立たないのだ。

 人間、普通の冒険者なら格上の魔物でもスキルや作戦などを用いて、攻略することが出来る。
 だが、召喚獣の場合、たとえゴブリンを1万体召喚できたとしても、レベルⅡの魔物1体だろうと倒すことができないのだ。

 さらに冒険者の場合は成長してレベルⅡになったりして強くなっていくが、召喚獣はレベルⅠの場合、未来永劫レベルⅠのまま。
 激闘を越えての成長も、確かな経験に基づく戦法の確立も、召喚獣には一生こないのだ。

 もう分かるだろう?
 つまりは、俺のスキルでは、こうやって倒せるレベルⅠの魔物を探して、自分よりも格上がいたら撤退するという戦い方しか出来ないのだ。

「せめて他に攻撃用のスキルだとか、召喚獣を強くするスキルだとかがあれば別だったかもしれんが」

 残念なことに、俺が使えるスキルは、何度見ても、魔力を消費して召喚獣を呼び出す【召喚】だけ。
 他に冒険者と一緒に出来れば、足止め要員くらいは出来たと思うが、俺は命題のせいで人間と組むことができない。

「冒険者としては、無理、ってか……」

 あー、しんどい。



 まぁ、元々冒険者として活躍するつもりは全然なかった。
 お金がない時の、ちょっとした小遣い稼ぎくらいは出来るんじゃないかという、そういう目論見を持って、俺は冒険者となった。
 だから、力がないといって嘆くのは筋違いだとは思う。

「まぁ、けっこう稼いでるんだけど」

 【召喚師】は大外れだと言われているが、別にお金が稼げない訳ではない。
 この【召喚士】ではレベルを上げて、冒険者として大成するのは難しい、ということから、【召喚士】は大外れと言われているだけだ。

 金を稼ぐという面だけ見れば、俺はけっこう稼いでいる方だ。
 召喚獣を召喚し、同じレベルⅠの魔物を倒すことだけに集中させた結果、1回の稼ぎはだいたい5万円くらいになっている。
 安全マージンとして、戦いの際には、敵1体に対して必ず召喚獣2体以上で攻めさせてるし、そういう面でも完璧な布陣だ。

 無理して冒険しようとしなければ、これでも十分良いだろう。
 ほとんどの冒険者が、装備代やら、治療費などで赤字になる中、俺だけは召喚獣に働かせて、怪我をしないようにすれば黒字であり続けるんだから。

「----でも、ここらでデカい収入が欲しいよな」

 人間ってのは、欲張りな生き物だ。
 お金を稼げば稼ぐほど、もっと収入が多くなって欲しいと願うように出来ている。
 今の俺のように、収入5万で満足せず、もっと稼ぎたいと思ってしまう事のように。

「それに、1回くらいやってみたいと思うよな」

 冒険者になったからには、一度くらい。

 ダンジョンを支配する、ボスとやらを討伐してみたいって。





(※1)Fランクダンジョン
 攻略難易度が最低ランクのダンジョンのこと。Fランクが最低ランクで、その後はEランク、Dランク、Cランク、Bランク、Aランクと徐々に上がっていく
 難易度が高くなればなるほど、出てくる魔物の強さや得られる金品の額が大きくなる

(※2)レベル
 対象の強さがどの程度なのかを示す指標のこと
 多くの冒険者がレベルⅠから始まり、様々な経験を得て上へと上がっていく
 また、魔物の強さもこのレベルで表記されているが、人間以外の者は、レベルはどんなに頑張っても上がりはしない
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