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第64話 まさかの人物からのお出迎え?! 配信
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「ご利用ありがとうございました~。またのご利用、お待ちしております」
「あっ、はい。どうも」
----そして私は身体は十分、心はちょっぴりおもてなしされ過ぎて申し訳なく思いつつ、シュンカトウ共和国に辿り着いた。
ちなみにだけど、今回は無料だったんだけれども、実際にお金を払っての利用となると何十万、何百万もするのだそう。
なんか、大きな貸しをドラスト商会に与えてしまった気がするよ……。
「それじゃあ、姫様。盟主様がお待ちになられておりますし、一度お城まで参りましょう」
「でっ、でも私は師匠をドラスト商会まで案内するという使命が……」
共和国に着くなり、ここまで案内してくれた商人さんがそう言ってフランシアさんに手を差し出す。
しかしその手を、フランシアさんは私を商会まで案内してくれるという理由にて、断った。
「(おいおい、断られたからって、する事が私に目で助けを求める事かぁ?)」
うるうると、泣きそうな瞳をしながら「どうすれば良いんでしょう?」みたいに、こちらを見つめる商人。
----腹芸の1つや2つ、出来ないと商人失格でしょうに。
「えっと、多分だけど、この後に商会からお出迎えの人が別に来てくれるだろうから、私はその人に案内してもらうよ」
「----!! (コクコク!!)」
あー、嬉しそうな顔しちゃって。
だから、そういうのを隠すのが、大事だろうに。
「ベータちゃんも居るので大丈夫ですよ」と言うと、フランシアさんはそれでようやく納得してくれたみたいで、商人さんに連れられて城の方へと向かわれた。
「----それで、あなたが私を案内してくれるんですか?」
フランシアさんを連れて行った商人さんの姿が完全に見えなくなってから、私はそう声を出す。
「ふふっ、やはり気付かれたようですね」
その声に対応するように、道の後ろから大きな瞳の獣人女性が現れる。
愛嬌のある童顔ともいうべき顔立ちに、温厚でほんわかした優しい雰囲気を放つ高身長女子。
和服を着た狸獣人である彼女は、「うふふ」と笑いながら、こちらに現れる。
「あの商人は、もう一度ポーカーフェイスを覚えさせないといけませんね。お客様に動揺する姿を見られ、さらには助けを求めるなど、教育が足りません。
----それは別として、この度は、うちのスコティッシュが緊急の要件のために対応できませんため、ワッチが上司として対応させていただきたく思います」
「こちらワッチの名前になります」と、にこやかな笑顔と共に名刺を差し出してくる。
【シュンカトウ共和国ドラスト商会 代表:シガラキ・マホウサマ】
「ドラスト商会代表?!」
「えぇ、ドラスト商会の代表をさせていただいております狸獣人の【シガラキ】と申します」
ぺこりと、頭を深々と下げるシガラキ代表。
名刺をベータちゃんに渡しながら、私はシガラキ代表を見ていた。
「(狸獣人か……)」
狸獣人は、獣人の中でも魔法に長けた獣人族。
基本的に獣人族は肉体、つまりは武術に秀でた者が多いのだが、狸獣人の場合は肉体はさほど強くはないが、その代わりに魔法に秀でており、さらには商売にも長けている者が多い。
いわゆる純粋なるインテリ系獣人族であり、商売繁盛の守り神として狸獣人を真似た置き物を店先に並べる者も多い。
狸獣人は、朗らかな童顔の持ち主が多い。
……なのだが、いま目の前で笑みを浮かべるシガラキ代表は、顔こそ朗らかな童顔なのだが----なんだかこう、闇を感じるんだよね。
なんていうか、目で笑っているのに、心の底では『さて、どう調理してやろうか』みたいな雰囲気が漂わせている。
値踏みされているというか、どうしようか悩んでいるというか。……まぁ、気のせい、かもしれないけど。
「すみません、ススリアさん。担当をしておりますスコティッシュは、うちのエースともいってもいい商人。彼女と同等の商人は漏れなく商売に奔走しております。彼女は優秀な商売人であり、彼女と同等の接客を出来る者は、シュンカトウ共和国一の商会である我がドラスト商会でも少ないのです」
「マスター、つまりこれは"スコティッシュさんが居ないため、代わりにシガラキ代表が対応する"というのを回りくどく言っているのだと理解して良いのでしょうか?」
「ちょっ?! 言い方、考えて! 言い方!」
というか、やっぱりあのスコティッシュさんってば優秀だったのね。
うちにドラゴンで盟主様が欲しい商品を買い付けに来た時点で、それなりの立場だとは思っていたけど……まさか、エースとは。
だからって、エースが来れないから、代表が来るとか普通あるか?
「それなので、ここは代表であるワッチ自らが対処させていただきたく思います」
にこりと、満面の笑みを浮かべるシガラキ代表。
しかしながら、その笑みは商人として正しいポーカーフェイス……笑顔のはずなのに、やはりその瞳の奥はどことなく裏を感じる邪悪さを醸し出していた。
「どうでしょうか、ススリアさん? スコティッシュとは別に、ワッチ個人と話をしたりなど? そう、文字通り、『腹を割って』と」
「アハハッ!」と大きく、それこそわざとらしく笑うシガラキ代表。
「えっ、えっと……」
「さぁさぁ、早速話して行こうではないでしょうか。ねぇ、錬金術師ススリアさん?」
パチンっと彼女が指を鳴らすと、白い煙と共に、馬車がいきなり出現する。
どうやら、魔法で、今の今まで隠していたらしい。
「ささっ、お先にどうぞ?」
「どっ、どうも……」
----こうして私とベータちゃんは、シガラキ代表と共に、ドラスト商会に向かう事になったのでした。
やっぱり、無料で高級旅館並のサービスを受けながら来た事は、間違いだったかもしれないと思いながら。
「あっ、はい。どうも」
----そして私は身体は十分、心はちょっぴりおもてなしされ過ぎて申し訳なく思いつつ、シュンカトウ共和国に辿り着いた。
ちなみにだけど、今回は無料だったんだけれども、実際にお金を払っての利用となると何十万、何百万もするのだそう。
なんか、大きな貸しをドラスト商会に与えてしまった気がするよ……。
「それじゃあ、姫様。盟主様がお待ちになられておりますし、一度お城まで参りましょう」
「でっ、でも私は師匠をドラスト商会まで案内するという使命が……」
共和国に着くなり、ここまで案内してくれた商人さんがそう言ってフランシアさんに手を差し出す。
しかしその手を、フランシアさんは私を商会まで案内してくれるという理由にて、断った。
「(おいおい、断られたからって、する事が私に目で助けを求める事かぁ?)」
うるうると、泣きそうな瞳をしながら「どうすれば良いんでしょう?」みたいに、こちらを見つめる商人。
----腹芸の1つや2つ、出来ないと商人失格でしょうに。
「えっと、多分だけど、この後に商会からお出迎えの人が別に来てくれるだろうから、私はその人に案内してもらうよ」
「----!! (コクコク!!)」
あー、嬉しそうな顔しちゃって。
だから、そういうのを隠すのが、大事だろうに。
「ベータちゃんも居るので大丈夫ですよ」と言うと、フランシアさんはそれでようやく納得してくれたみたいで、商人さんに連れられて城の方へと向かわれた。
「----それで、あなたが私を案内してくれるんですか?」
フランシアさんを連れて行った商人さんの姿が完全に見えなくなってから、私はそう声を出す。
「ふふっ、やはり気付かれたようですね」
その声に対応するように、道の後ろから大きな瞳の獣人女性が現れる。
愛嬌のある童顔ともいうべき顔立ちに、温厚でほんわかした優しい雰囲気を放つ高身長女子。
和服を着た狸獣人である彼女は、「うふふ」と笑いながら、こちらに現れる。
「あの商人は、もう一度ポーカーフェイスを覚えさせないといけませんね。お客様に動揺する姿を見られ、さらには助けを求めるなど、教育が足りません。
----それは別として、この度は、うちのスコティッシュが緊急の要件のために対応できませんため、ワッチが上司として対応させていただきたく思います」
「こちらワッチの名前になります」と、にこやかな笑顔と共に名刺を差し出してくる。
【シュンカトウ共和国ドラスト商会 代表:シガラキ・マホウサマ】
「ドラスト商会代表?!」
「えぇ、ドラスト商会の代表をさせていただいております狸獣人の【シガラキ】と申します」
ぺこりと、頭を深々と下げるシガラキ代表。
名刺をベータちゃんに渡しながら、私はシガラキ代表を見ていた。
「(狸獣人か……)」
狸獣人は、獣人の中でも魔法に長けた獣人族。
基本的に獣人族は肉体、つまりは武術に秀でた者が多いのだが、狸獣人の場合は肉体はさほど強くはないが、その代わりに魔法に秀でており、さらには商売にも長けている者が多い。
いわゆる純粋なるインテリ系獣人族であり、商売繁盛の守り神として狸獣人を真似た置き物を店先に並べる者も多い。
狸獣人は、朗らかな童顔の持ち主が多い。
……なのだが、いま目の前で笑みを浮かべるシガラキ代表は、顔こそ朗らかな童顔なのだが----なんだかこう、闇を感じるんだよね。
なんていうか、目で笑っているのに、心の底では『さて、どう調理してやろうか』みたいな雰囲気が漂わせている。
値踏みされているというか、どうしようか悩んでいるというか。……まぁ、気のせい、かもしれないけど。
「すみません、ススリアさん。担当をしておりますスコティッシュは、うちのエースともいってもいい商人。彼女と同等の商人は漏れなく商売に奔走しております。彼女は優秀な商売人であり、彼女と同等の接客を出来る者は、シュンカトウ共和国一の商会である我がドラスト商会でも少ないのです」
「マスター、つまりこれは"スコティッシュさんが居ないため、代わりにシガラキ代表が対応する"というのを回りくどく言っているのだと理解して良いのでしょうか?」
「ちょっ?! 言い方、考えて! 言い方!」
というか、やっぱりあのスコティッシュさんってば優秀だったのね。
うちにドラゴンで盟主様が欲しい商品を買い付けに来た時点で、それなりの立場だとは思っていたけど……まさか、エースとは。
だからって、エースが来れないから、代表が来るとか普通あるか?
「それなので、ここは代表であるワッチ自らが対処させていただきたく思います」
にこりと、満面の笑みを浮かべるシガラキ代表。
しかしながら、その笑みは商人として正しいポーカーフェイス……笑顔のはずなのに、やはりその瞳の奥はどことなく裏を感じる邪悪さを醸し出していた。
「どうでしょうか、ススリアさん? スコティッシュとは別に、ワッチ個人と話をしたりなど? そう、文字通り、『腹を割って』と」
「アハハッ!」と大きく、それこそわざとらしく笑うシガラキ代表。
「えっ、えっと……」
「さぁさぁ、早速話して行こうではないでしょうか。ねぇ、錬金術師ススリアさん?」
パチンっと彼女が指を鳴らすと、白い煙と共に、馬車がいきなり出現する。
どうやら、魔法で、今の今まで隠していたらしい。
「ささっ、お先にどうぞ?」
「どっ、どうも……」
----こうして私とベータちゃんは、シガラキ代表と共に、ドラスト商会に向かう事になったのでした。
やっぱり、無料で高級旅館並のサービスを受けながら来た事は、間違いだったかもしれないと思いながら。
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