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第60話 まだ出来てない魔道具の発注、受け付けていないのだが配信
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----翌日。
なんか妙にツヤツヤした顔のスコティッシュさんが、私とタラタちゃんの前に現れた。
「いやぁ~、こちらにほぼ利点しかない、素晴らしい取引となりましたねぇ~」
スコティッシュは猫のような顔を、ニカーっと嬉しそうに頬を緩ませていた。
どうやら、めちゃくちゃ良い取引が出来たようで、なによりである。
「----という訳で、ススリアさん。今度、飲み物に炭酸を入れる魔道具の作成をお願い致します、ニャア」
これさえなければ、普通に聞けたのに……。
スコティッシュさんからは、炭酸を作り出す魔道具を120個、作成を依頼された。
ちなみに100個分は王都のゼニスキー組合長からの依頼であり、残りの20個分はスコティッシュさんからの発注である。
「ふふっ……ゼニスキーは話を私を通さずに交渉したのはひどかった、ニャア。しかしながら、彼女の商売を見る目は確かだ、ニャア」
スコティッシュさんもまた、炭酸の素晴らしさに感銘を受けた商売人の1人らしく、ゼニスキー組合長とは別に、20個納品をお願いしたいんだそうだ。
「でも、炭酸を作る魔道具だなんて、私、作ってないんだけど……」
そう、私は確かに、炭酸を入れたポーションを作って大会に提出した。
しかしそれは、単純に私の風属性魔術で、ポーションの中に炭酸を生み出しただけ。
炭酸を生み出す術は知っているけれども、まだそれを魔道具という形にはしてないのに、どうしてその魔道具をいきなり発注をお願いするんですか。
「でも、既にあなたの頭の中には、魔道具の作り方がイメージできてるのではないですか、ニャア?」
「うぐっ……」
どうして、それを……いや、相手は錬金術師ではない商人!
ここは「実は錬金術師には、錬金術師なりの出来ない理由がある」と言って誤魔化せば!
「師匠! 既に炭酸を作る過程、魔術が出来上がっているなら、魔道具を作るのは簡単であります! そんなに心配なさらずとも大丈夫でありますよ!」
「とまぁ、このように錬金術師さんからのお墨付きもありますし」
くそぅ、言い訳が潰されてしまった!
まぁ、ほんとのところを言えば、前世の機械工作と違い、錬金術は錬金術師の腕と確かなイメージがあればどんなモノでも瞬時に作れる。
私の錬金術の腕が足りてるかどうかは不明だが、イメージ上ではほぼ完成していると言って良い。
私は既に「飲料水の中に炭酸を入れる」というイメージを、魔術で作り出している。
既に方程式が出来ているのならば、あとはそれを魔道具として術式を埋め込めば良いだけ。
勿論、調整なんかには時間がかかるんだけど……。
「味にこだわるのはあくまでも、きちんと『炭酸』と言う文化が、皆さんの知識として根付いてからでも結構。そこから改良すれば良いだけですし」
「そうであります! 弟子である自分も、改良に協力しますであります!」
その調整に時間をかけて誤魔化すのも、無理そうだ。
このままだと、大会でやったように泡の中に味を入れるのなしで、炭酸を生み出すだけという初期段階でも納品されそうな勢いである。
あと、スコティッシュさんは「なるほど。弟子さんに改良して貰えれば……」みたいな目で、こっちを見ないで欲しい。
「----さぁ、細かい話はまた今度! ドラスト商会名物、ドラゴンタクシーで、イスウッドのご自宅までお送りします、ニャア!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
120個にもなる炭酸発生魔道具については、納期ははっきりと決まった訳ではないのだが、『3か月くらいまでには』とはスコティッシュさんの方から言われている。
……ちなみにこの納期は、タラタちゃんという錬金術師視点から決められた正式な期限である。
----魔術式が既にあり、それを魔道具にするのなら、だいたい1か月半くらいで形にはなる。
タラタちゃんのその見解は正しく、私はそれを飲まざるを得なかった。
……いや、伸ばす理由が思いつかなかったと言えるけど。
ドラゴンの背中に乗っての空の旅は、実に快適だけど、気分はあまり良くないなぁ……。
「しばらくは、炭酸発生魔道具の作成に、尽力しないといけないかも……」
「師匠、師匠! 弟子である私が、師匠をきちっとサポートしますね!」
はぁ……炭酸文化を生み出すのは、もう少しあとにした方が良かったか。
間違えてしまったかもしれない……だけど、私にはこれがある!
「そう! 君という卵を思えば、安くないねぇ~♪」
と、私はすりすりと、優勝賞品であるドラゴンの卵を撫でる。
そう、元よりこのドラゴンの卵を得るために頑張ったのだ。
こうなったら速攻で、炭酸発生魔道具とやらを完成させようじゃないか!
既に魔術は完成してるんだ! あとはやる気と、量をこなさなければならないだけ!
とっととやり遂げて、このドラゴンをどうにかする魔道具を作ってやるのだ!
「ふふふっ……!」
「おぉ、師匠が燃えていらっしゃる!」
ふふふっ! タラタちゃんめ、なんとでも言うが良い!
あとで君にも手伝ってもらうのだから!
こうしてイスウッドへと帰還した私は、その後既に作業開始。
僅か5日という驚異的なスピードで、調整もある程度可能とした炭酸発生魔道具を完成させる。
そして師匠権限で、残り119個の作成を、タラタちゃんにお願いするのであった。
見本もあるし、設計図だって渡しているのだから、頑張って作って欲しいモノである。
なんか妙にツヤツヤした顔のスコティッシュさんが、私とタラタちゃんの前に現れた。
「いやぁ~、こちらにほぼ利点しかない、素晴らしい取引となりましたねぇ~」
スコティッシュは猫のような顔を、ニカーっと嬉しそうに頬を緩ませていた。
どうやら、めちゃくちゃ良い取引が出来たようで、なによりである。
「----という訳で、ススリアさん。今度、飲み物に炭酸を入れる魔道具の作成をお願い致します、ニャア」
これさえなければ、普通に聞けたのに……。
スコティッシュさんからは、炭酸を作り出す魔道具を120個、作成を依頼された。
ちなみに100個分は王都のゼニスキー組合長からの依頼であり、残りの20個分はスコティッシュさんからの発注である。
「ふふっ……ゼニスキーは話を私を通さずに交渉したのはひどかった、ニャア。しかしながら、彼女の商売を見る目は確かだ、ニャア」
スコティッシュさんもまた、炭酸の素晴らしさに感銘を受けた商売人の1人らしく、ゼニスキー組合長とは別に、20個納品をお願いしたいんだそうだ。
「でも、炭酸を作る魔道具だなんて、私、作ってないんだけど……」
そう、私は確かに、炭酸を入れたポーションを作って大会に提出した。
しかしそれは、単純に私の風属性魔術で、ポーションの中に炭酸を生み出しただけ。
炭酸を生み出す術は知っているけれども、まだそれを魔道具という形にはしてないのに、どうしてその魔道具をいきなり発注をお願いするんですか。
「でも、既にあなたの頭の中には、魔道具の作り方がイメージできてるのではないですか、ニャア?」
「うぐっ……」
どうして、それを……いや、相手は錬金術師ではない商人!
ここは「実は錬金術師には、錬金術師なりの出来ない理由がある」と言って誤魔化せば!
「師匠! 既に炭酸を作る過程、魔術が出来上がっているなら、魔道具を作るのは簡単であります! そんなに心配なさらずとも大丈夫でありますよ!」
「とまぁ、このように錬金術師さんからのお墨付きもありますし」
くそぅ、言い訳が潰されてしまった!
まぁ、ほんとのところを言えば、前世の機械工作と違い、錬金術は錬金術師の腕と確かなイメージがあればどんなモノでも瞬時に作れる。
私の錬金術の腕が足りてるかどうかは不明だが、イメージ上ではほぼ完成していると言って良い。
私は既に「飲料水の中に炭酸を入れる」というイメージを、魔術で作り出している。
既に方程式が出来ているのならば、あとはそれを魔道具として術式を埋め込めば良いだけ。
勿論、調整なんかには時間がかかるんだけど……。
「味にこだわるのはあくまでも、きちんと『炭酸』と言う文化が、皆さんの知識として根付いてからでも結構。そこから改良すれば良いだけですし」
「そうであります! 弟子である自分も、改良に協力しますであります!」
その調整に時間をかけて誤魔化すのも、無理そうだ。
このままだと、大会でやったように泡の中に味を入れるのなしで、炭酸を生み出すだけという初期段階でも納品されそうな勢いである。
あと、スコティッシュさんは「なるほど。弟子さんに改良して貰えれば……」みたいな目で、こっちを見ないで欲しい。
「----さぁ、細かい話はまた今度! ドラスト商会名物、ドラゴンタクシーで、イスウッドのご自宅までお送りします、ニャア!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
120個にもなる炭酸発生魔道具については、納期ははっきりと決まった訳ではないのだが、『3か月くらいまでには』とはスコティッシュさんの方から言われている。
……ちなみにこの納期は、タラタちゃんという錬金術師視点から決められた正式な期限である。
----魔術式が既にあり、それを魔道具にするのなら、だいたい1か月半くらいで形にはなる。
タラタちゃんのその見解は正しく、私はそれを飲まざるを得なかった。
……いや、伸ばす理由が思いつかなかったと言えるけど。
ドラゴンの背中に乗っての空の旅は、実に快適だけど、気分はあまり良くないなぁ……。
「しばらくは、炭酸発生魔道具の作成に、尽力しないといけないかも……」
「師匠、師匠! 弟子である私が、師匠をきちっとサポートしますね!」
はぁ……炭酸文化を生み出すのは、もう少しあとにした方が良かったか。
間違えてしまったかもしれない……だけど、私にはこれがある!
「そう! 君という卵を思えば、安くないねぇ~♪」
と、私はすりすりと、優勝賞品であるドラゴンの卵を撫でる。
そう、元よりこのドラゴンの卵を得るために頑張ったのだ。
こうなったら速攻で、炭酸発生魔道具とやらを完成させようじゃないか!
既に魔術は完成してるんだ! あとはやる気と、量をこなさなければならないだけ!
とっととやり遂げて、このドラゴンをどうにかする魔道具を作ってやるのだ!
「ふふふっ……!」
「おぉ、師匠が燃えていらっしゃる!」
ふふふっ! タラタちゃんめ、なんとでも言うが良い!
あとで君にも手伝ってもらうのだから!
こうしてイスウッドへと帰還した私は、その後既に作業開始。
僅か5日という驚異的なスピードで、調整もある程度可能とした炭酸発生魔道具を完成させる。
そして師匠権限で、残り119個の作成を、タラタちゃんにお願いするのであった。
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