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第29話 お菓子がない世界で、泡立て器を作って行くぞ配信
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「さて、タラタちゃん。今日は邪魔せず、見といてね」
「はい、師匠!」
今日、私は、魔道具を作成する。
作成するのは、悪魔シグレウマルの聖水漬けを使った、泡立て器である。
そう、あの安価配信で約束した、例の魔道具である。
……色々とツッコミどころがありそうだけど、私ですら突っ込まないでいるから、スルーでお願いします。
なんで、悪魔を使って、泡立て器を作る羽目になったのか。
それと言うのも、配信中に、安価で悪魔をどうするかを決めたせいである。
最初は食べ物以外だったら何でも出来るからくらいのノリで、安価で決めてもらおうと思っていたのだが、蓋を開けて決まったのを見たら『モノを混ぜる調理器具』だもんね……。
どうしてこうなるのか、全く分からない……うん、もう安価で決めるという配信は二度としないと決めよう。
「ところで師匠! "あわだてき"とやらは、どのような武器なのでありますか?」
「武器じゃないんだよ、調理器具だよ。調理器具」
と、師匠の配信に対して『刀! 絶対に刀でお願いするであります!』とコメントを送っていたタラタちゃんに、そう返事を返しておく。
……やはり、師匠の技を見たいからと直談判するタラタちゃんを放っておいて、1人で泡立て器を作るべきだったかもしれん。
「配信の安価でも決まってたけど、『モノを混ぜるための調理器具』だよ」
「つまり……ヘラみたいなモノ、でありますか?」
あー、そういう反応がこの世界の主流なのね。
うん、そうだった、そうだった。
実はこの世界、お菓子といった概念はほとんどないのだ。
そもそも朝食と夕食の1日2食というのが主流であり、タラタちゃんの話によると1日1食で生活するエルフも少なくないらしい。
そんな世界なので、昼食を食べるご家庭も少なく、ましてやおやつを食べる間食なんて文化として存在しないのだ。
よって、お菓子がないので、逆説的にお菓子関連の調理器具はほとんどない。
粉をふるう『粉ふるい』、形を整える『型抜き』、そして今回作ろうとしている泡立てを行うための『泡立て器』などは、この世界にはまだ存在していないのである。
私は前世の知識があるので、『モノを混ぜる調理器具』と聞いて、とっさに『泡立て器』といってしまったが、この世界の人達にとっては知らないモノを言っていたのである。
この世界で何かを混ぜる調理器具といえば、パン作りなどで使われる『ヘラ』くらいなので、恐らく視聴者が安価でリクエストしてたのは本当はこっちなのだろう。
……いや、"悪魔を使って作ったヘラ"ってのも、なんだよ。
「甘いモノを作るために必要な道具、みたいなモノですよ」
「甘いモノ……それって、バナナとかイチゴみたいに?」
「それよりも、ずーっと甘いよ」
頭に疑問符を浮かべるタラタちゃんを尻目に、私は早速、泡立て器作りに取り掛かり始めた。
泡だて器に必要な重要要素は、たった1つ。
それは、形状。あの特徴的な、お茶をたてる茶筅のような形状にする事で、ヘラのように"硬さを均一にするために混ぜる"のではなく、"空気を含ませてしっかり混ぜる"というのに向く泡だて器が完成する。
とは言っても、これは結構、この世界では簡単に作れる。
思い描いた形に【錬成】するという、錬金術があるこの世界では、とりあえず形状さえしっかりしていれば、ものの数秒で泡立て器が完成する。
用意した金属が私の手の中で、あっという間に、あの特徴的な泡だて器の姿に早変わりした。
「(これで美味しいホイップが出来るぞ)」
ヘラでも出来なくはないが、やっぱり美味しいホイップクリームを作るには泡立て器の方が向いている。
まぁ、生クリームを作るには、色々と手間があるから、今回は作らないけど。
「……ふむふむ。特徴的な形状であります」
「まぁ、形状は特徴的だけど、用途はシンプルだよ。この特徴的な形状の先ではない、持ち手の方を手にして」
「こう、でありますか?」
そうそう、そんな感じ。そんな感じ。
でもって、事前に用意しておいた卵白入りのボウルを、タラタちゃんに渡す。
「その先端をボウルの中に入れて、クルクルとかき混ぜてみてごらん」
「えっと……こう、でありますか?」
そうそう、そんな感じで混ぜて見て。
「おぉっ!? なんだか泡が出てきたのであります!」
「ヘラだと、なかなか難しい、空気を入れて泡立てる作業に使う調理器具。それが泡だて器だ」
「理解しましたであります! ……ところで、これ、甘いのであります?」
「いいや、この段階だと甘くないよ」
甘くなるのは、これから先。
ちゃんと泡立てて白っぽくしてから、砂糖を入れて、よーくかき混ぜてからだからね。
でも、その白っぽくなるまで混ぜるのは、手動の泡立て器ではなかなかきつい。
「さぁ、タラタちゃん。いったん、その泡だて器を返して」
「どっ、どうぞ」
うん、ありがとう。
さて、ここからが腕の見せ所と言うか、今回のメインである。
「この、今は手動でクルクルと回すしか出来ない泡立て器を、悪魔シグレウマルの力で、自動で泡立てる魔道具に変えていきますよ!」
「はい、師匠!」
今日、私は、魔道具を作成する。
作成するのは、悪魔シグレウマルの聖水漬けを使った、泡立て器である。
そう、あの安価配信で約束した、例の魔道具である。
……色々とツッコミどころがありそうだけど、私ですら突っ込まないでいるから、スルーでお願いします。
なんで、悪魔を使って、泡立て器を作る羽目になったのか。
それと言うのも、配信中に、安価で悪魔をどうするかを決めたせいである。
最初は食べ物以外だったら何でも出来るからくらいのノリで、安価で決めてもらおうと思っていたのだが、蓋を開けて決まったのを見たら『モノを混ぜる調理器具』だもんね……。
どうしてこうなるのか、全く分からない……うん、もう安価で決めるという配信は二度としないと決めよう。
「ところで師匠! "あわだてき"とやらは、どのような武器なのでありますか?」
「武器じゃないんだよ、調理器具だよ。調理器具」
と、師匠の配信に対して『刀! 絶対に刀でお願いするであります!』とコメントを送っていたタラタちゃんに、そう返事を返しておく。
……やはり、師匠の技を見たいからと直談判するタラタちゃんを放っておいて、1人で泡立て器を作るべきだったかもしれん。
「配信の安価でも決まってたけど、『モノを混ぜるための調理器具』だよ」
「つまり……ヘラみたいなモノ、でありますか?」
あー、そういう反応がこの世界の主流なのね。
うん、そうだった、そうだった。
実はこの世界、お菓子といった概念はほとんどないのだ。
そもそも朝食と夕食の1日2食というのが主流であり、タラタちゃんの話によると1日1食で生活するエルフも少なくないらしい。
そんな世界なので、昼食を食べるご家庭も少なく、ましてやおやつを食べる間食なんて文化として存在しないのだ。
よって、お菓子がないので、逆説的にお菓子関連の調理器具はほとんどない。
粉をふるう『粉ふるい』、形を整える『型抜き』、そして今回作ろうとしている泡立てを行うための『泡立て器』などは、この世界にはまだ存在していないのである。
私は前世の知識があるので、『モノを混ぜる調理器具』と聞いて、とっさに『泡立て器』といってしまったが、この世界の人達にとっては知らないモノを言っていたのである。
この世界で何かを混ぜる調理器具といえば、パン作りなどで使われる『ヘラ』くらいなので、恐らく視聴者が安価でリクエストしてたのは本当はこっちなのだろう。
……いや、"悪魔を使って作ったヘラ"ってのも、なんだよ。
「甘いモノを作るために必要な道具、みたいなモノですよ」
「甘いモノ……それって、バナナとかイチゴみたいに?」
「それよりも、ずーっと甘いよ」
頭に疑問符を浮かべるタラタちゃんを尻目に、私は早速、泡立て器作りに取り掛かり始めた。
泡だて器に必要な重要要素は、たった1つ。
それは、形状。あの特徴的な、お茶をたてる茶筅のような形状にする事で、ヘラのように"硬さを均一にするために混ぜる"のではなく、"空気を含ませてしっかり混ぜる"というのに向く泡だて器が完成する。
とは言っても、これは結構、この世界では簡単に作れる。
思い描いた形に【錬成】するという、錬金術があるこの世界では、とりあえず形状さえしっかりしていれば、ものの数秒で泡立て器が完成する。
用意した金属が私の手の中で、あっという間に、あの特徴的な泡だて器の姿に早変わりした。
「(これで美味しいホイップが出来るぞ)」
ヘラでも出来なくはないが、やっぱり美味しいホイップクリームを作るには泡立て器の方が向いている。
まぁ、生クリームを作るには、色々と手間があるから、今回は作らないけど。
「……ふむふむ。特徴的な形状であります」
「まぁ、形状は特徴的だけど、用途はシンプルだよ。この特徴的な形状の先ではない、持ち手の方を手にして」
「こう、でありますか?」
そうそう、そんな感じ。そんな感じ。
でもって、事前に用意しておいた卵白入りのボウルを、タラタちゃんに渡す。
「その先端をボウルの中に入れて、クルクルとかき混ぜてみてごらん」
「えっと……こう、でありますか?」
そうそう、そんな感じで混ぜて見て。
「おぉっ!? なんだか泡が出てきたのであります!」
「ヘラだと、なかなか難しい、空気を入れて泡立てる作業に使う調理器具。それが泡だて器だ」
「理解しましたであります! ……ところで、これ、甘いのであります?」
「いいや、この段階だと甘くないよ」
甘くなるのは、これから先。
ちゃんと泡立てて白っぽくしてから、砂糖を入れて、よーくかき混ぜてからだからね。
でも、その白っぽくなるまで混ぜるのは、手動の泡立て器ではなかなかきつい。
「さぁ、タラタちゃん。いったん、その泡だて器を返して」
「どっ、どうぞ」
うん、ありがとう。
さて、ここからが腕の見せ所と言うか、今回のメインである。
「この、今は手動でクルクルと回すしか出来ない泡立て器を、悪魔シグレウマルの力で、自動で泡立てる魔道具に変えていきますよ!」
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