配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

文字の大きさ
上 下
29 / 165

第29話 お菓子がない世界で、泡立て器を作って行くぞ配信

しおりを挟む
「さて、タラタちゃん。今日は邪魔せず、見といてね」
「はい、師匠!」

 今日、私は、魔道具を作成する。
 作成するのは、悪魔シグレウマルの聖水漬けを使った、泡立て器である。
 そう、あの安価配信で約束した、例の魔道具である。

 ……色々とツッコミどころがありそうだけど、私ですら突っ込まないでいるから、スルーでお願いします。

 なんで、悪魔を使って、泡立て器を作る羽目になったのか。

 それと言うのも、配信中に、安価で悪魔をどうするかを決めたせいである。
 最初は食べ物以外だったら何でも出来るからくらいのノリで、安価で決めてもらおうと思っていたのだが、蓋を開けて決まったのを見たら『モノを混ぜる調理器具』だもんね……。
 どうしてこうなるのか、全く分からない……うん、もう安価で決めるという配信は二度としないと決めよう。

「ところで師匠! "あわだてき"とやらは、どのような武器なのでありますか?」
「武器じゃないんだよ、調理器具だよ。調理器具」

 と、師匠の配信に対して『刀! 絶対に刀でお願いするであります!』とコメントを送っていたタラタちゃんに、そう返事を返しておく。
 ……やはり、師匠の技を見たいからと直談判するタラタちゃんを放っておいて、1人で泡立て器を作るべきだったかもしれん。

「配信の安価でも決まってたけど、『モノを混ぜるための調理器具』だよ」
「つまり……ヘラみたいなモノ、でありますか?」

 あー、そういう反応がこの世界の主流なのね。
 うん、そうだった、そうだった。

 実はこの世界、お菓子といった概念はほとんどないのだ。
 そもそも朝食と夕食の1日2食というのが主流であり、タラタちゃんの話によると1日1食で生活するエルフも少なくないらしい。
 そんな世界なので、昼食を食べるご家庭も少なく、ましてやおやつを食べる間食なんて文化として存在しないのだ。

 よって、お菓子がないので、逆説的にお菓子関連の調理器具はほとんどない。
 粉をふるう『粉ふるいストレーナー』、形を整える『型抜き』、そして今回作ろうとしている泡立てを行うための『泡立て器ホイッパー』などは、この世界にはまだ存在していないのである。
 私は前世の知識があるので、『モノを混ぜる調理器具』と聞いて、とっさに『泡立て器』といってしまったが、この世界の人達にとっては知らないモノを言っていたのである。

 この世界で何かを混ぜる調理器具といえば、パン作りなどで使われる『ヘラ』くらいなので、恐らく視聴者が安価でリクエストしてたのは本当はこっちなのだろう。

 ……いや、"悪魔を使って作ったヘラ"ってのも、なんだよ。

「甘いモノを作るために必要な道具、みたいなモノですよ」
「甘いモノ……それって、バナナとかイチゴみたいに?」
「それよりも、ずーっと甘いよ」

 頭に疑問符を浮かべるタラタちゃんを尻目に、私は早速、泡立て器作りに取り掛かり始めた。



 泡だて器に必要な重要要素は、たった1つ。
 それは、形状。あの特徴的な、お茶をたてる茶筅ちゃせんのような形状にする事で、ヘラのように"硬さを均一にするために混ぜる"のではなく、"空気を含ませてしっかり混ぜる"というのに向く泡だて器が完成する。

 とは言っても、これは結構、この世界では簡単に作れる。
 思い描いた形に【錬成】するという、錬金術があるこの世界では、とりあえず形状さえしっかりしていれば、ものの数秒で泡立て器が完成する。
 用意した金属が私の手の中で、あっという間に、あの特徴的な泡だて器の姿に早変わりした。

「(これで美味しいホイップが出来るぞ)」

 ヘラでも出来なくはないが、やっぱり美味しいホイップクリームを作るには泡立て器の方が向いている。
 まぁ、生クリームを作るには、色々と手間があるから、今回は作らないけど。
 
「……ふむふむ。特徴的な形状であります」
「まぁ、形状は特徴的だけど、用途はシンプルだよ。この特徴的な形状の先ではない、持ち手の方を手にして」
「こう、でありますか?」

 そうそう、そんな感じ。そんな感じ。
 でもって、事前に用意しておいた卵白入りのボウルを、タラタちゃんに渡す。

「その先端をボウルの中に入れて、クルクルとかき混ぜてみてごらん」
「えっと……こう、でありますか?」

 そうそう、そんな感じで混ぜて見て。

「おぉっ!? なんだか泡が出てきたのであります!」
「ヘラだと、なかなか難しい、空気を入れて泡立てる作業に使う調理器具。それが泡だて器だ」
「理解しましたであります! ……ところで、これ、甘いのであります?」
「いいや、この段階だと甘くないよ」

 甘くなるのは、これから先。
 ちゃんと泡立てて白っぽくしてから、砂糖を入れて、よーくかき混ぜてからだからね。

 でも、その白っぽくなるまで混ぜるのは、手動の泡立て器ではなかなかきつい。

「さぁ、タラタちゃん。いったん、その泡だて器を返して」
「どっ、どうぞ」

 うん、ありがとう。

 さて、ここからが腕の見せ所と言うか、今回のメインである。

「この、今は手動でクルクルと回すしか出来ない泡立て器を、悪魔シグレウマルの力で、自動で泡立てる魔道具に変えていきますよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします

吉野屋
ファンタジー
 竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。  魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。  次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。 【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】  

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

【完結】小さなフェンリルを拾ったので、脱サラして配信者になります~強さも可愛さも無双するモフモフがバズりまくってます。目指せスローライフ!〜

むらくも航
ファンタジー
ブラック企業で働き、心身が疲労している『低目野やすひろ』。彼は苦痛の日々に、とにかく“癒し”を求めていた。 そんな時、やすひろは深夜の夜道で小犬のような魔物を見つける。これが求めていた癒しだと思った彼は、小犬を飼うことを決めたのだが、実は小犬の正体は伝説の魔物『フェンリル』だったらしい。 それをきっかけに、エリートの友達に誘われ配信者を始めるやすひろ。結果、強さでも無双、可愛さでも無双するフェンリルは瞬く間にバズっていき、やすひろはある決断をして……? のんびりほのぼのとした現代スローライフです。 他サイトにも掲載中。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...