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第11話 将を欲すれば馬を射よ的な作戦配信
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「実は先日、ボスに未報告の事態が発生しました」
デルタちゃんは、そう言って刀6本強奪事件について語り始めた。
「制作者であるボスならば、私の弱点など既にご存じだと思いますが」
「ダンジョン、だろう?」
「指摘された事は、まさしく正解であります」
うちのデルタちゃんは、たとえ得物である刀を6本強奪されようとも、ここまで帰って来れるだけの才能を与えてある。
だがしかし、その才能は全て、配信技術と連結させることで、自分の身体の使い方を、最適な使い方を常に思考しているから。
逆に言えば、彼女は配信を一切参照できない空間だと、子供ですら勝てないひ弱なゴーレムになってしまう。
うちのデルタちゃんの強さは、『配信動画』ありきである。
そんな『配信動画』と連携できない空間が、この世界には存在する。
----その場所こそ、魔物達の巣窟にして、宝石や魔石などの貴金属の産出地たるダンジョンである。
魔王ユギーの権能によって生まれた場所がダンジョンであり、その内部はこの世ではない別の異界と繋がっている。
魔王の力により、そのダンジョンの内部は、宝石や魔石などの貴重品がダンジョン内にゴロゴロと出て来る代わりに、その貴重品に匹敵するくらい強力な魔物をぞくぞくと出てくる空間となっている。
当然、錬金術師として必要な素材もゴロゴロ出て来るそこを、私が、デルタちゃんに特攻させない理由が、ダンジョンが異世界、つまりは配信が届かない場所だからである。
配信が届かない、つまりデルタちゃんが最弱になってしまう場所なのである。
故に、ダンジョン内へは進行させず、ダンジョンが溢れて出て来る魔物を狩る事だけはオッケーを出しておいた。
「そんなダンジョンの話をするって事は、もしかして、この村にダンジョンがあったり?」
「まさしく、それが至極道理な正解なのです」
正解ねぇ、ってか……面倒くさっ?!
いや、会話設定とか性格設定した私が言うのもなんだけど、この喋り方、凄く面倒くさくない?!
なんですか、『至極道理な正解』って! 『正解』で良いじゃん!!
----今度、性格設定とか、喋り方を直しておこう。
「錬金エルフ殿はわたしの刀を勉強し、ダンジョン内でも配信可能となる魔術付与をしてくれるという事なのだそうです。ちなみにサンプルがこちらになります」
「ほぉ~、なるほどですね」
イスウッドの村の人に商品を売ってもらうように、課題を出して遠ざけたつもりだったが……まさか、デルタちゃん越しに、イスウッドの村に住む1人である、この私に商品を買わせるつもり?
ダンジョンにその能力を発揮できない、うちのデルタちゃんの力を発揮出来る、そんな刀を作って?
「……へぇ、面白いねぇ」
まさか、課題を出した私当人に商品を買わせようとする錬金術師がいるだなんてさぁ。
これぞまさしく、『将を射んとする者はまず馬を射よ』----私という将を得るために、デルタちゃんという馬から崩しにかかるというのは、悪くない発想だと思う。
サンプルとして出された刀も、構造こそまだ武器としては心もとない点はあるが、魔術付与はきちんと出来ている。
----『記憶保持』。
私でも難しい、精神作用の魔術付与を用いて、配信技術をそのまんまデルタちゃんに保持させようという考え方か。
この1本では弱いが、6本すべてに似たような魔術付与、あるいは魔術付与自体を強めれば、使えなくもない。
うん、普通に使えそうですね、これ。
なにより、課題を出した師匠に対して、商品を提示しようとするその気持ちが、何より面白い。
「久しぶりに、面白くなってきたね。そうは思わないかい、デルタちゃん?」
「ボスが愉快痛快なのは、笑顔だと分かります」
いやいや、本当に面白いですね。
趣味で錬金術をやっている私からしても、こんな事をして来ようとする錬金術師は初めて聞いた。
サンプルも良いし、これは弟子入りを検討しても良いかもしれない。
「それで、デルタちゃんとのコラボ、だっけ? このサンプルを使っての、ダンジョンでの試し切りという感じかな?」
「誠に、至極。我が製作者たるススリアのボスにとっては、この程度すぐさま分かる事でございましたか」
……やっぱ、話し方面倒くさいし、あとで直そう。
「しかし、それに関して、このデルタより進言があります」
「ほぉ、進言」
「はい、彼女の作る作品より、ボスが作る作品の方が良い出来になりそうなので、似たような武器の作成をお願いしたく存じ上げます」
「……だよねぇ~」
うん、目の付け所は悪くないんだよ。
イスウッドの村人で買ってくれる人がいないから、師匠に対して売り込むという姿勢は面白い。
たださ、その師匠は錬金術師なんだから、自分で作った方が速いって、作っちゃうでしょ?
「やっぱ、そうなるよなぁ~」
うん、という訳でサンプルは無料支給品として、このまま没収!
この魔術付与を参考に、デルタちゃんの新しい刀を作りたいと思います!
「ちょっと待っててね、デルタちゃん。ボスである私が今から、新しい刀を与えるから」
「……恐悦至極。感謝感激でございます」
タラタちゃんの方は……うん、まぁ、頑張って。
『面白いけど買ってはいないので弟子入りはなし』という判断だから、もう少し課題を続けさせる私なのであった。
デルタちゃんは、そう言って刀6本強奪事件について語り始めた。
「制作者であるボスならば、私の弱点など既にご存じだと思いますが」
「ダンジョン、だろう?」
「指摘された事は、まさしく正解であります」
うちのデルタちゃんは、たとえ得物である刀を6本強奪されようとも、ここまで帰って来れるだけの才能を与えてある。
だがしかし、その才能は全て、配信技術と連結させることで、自分の身体の使い方を、最適な使い方を常に思考しているから。
逆に言えば、彼女は配信を一切参照できない空間だと、子供ですら勝てないひ弱なゴーレムになってしまう。
うちのデルタちゃんの強さは、『配信動画』ありきである。
そんな『配信動画』と連携できない空間が、この世界には存在する。
----その場所こそ、魔物達の巣窟にして、宝石や魔石などの貴金属の産出地たるダンジョンである。
魔王ユギーの権能によって生まれた場所がダンジョンであり、その内部はこの世ではない別の異界と繋がっている。
魔王の力により、そのダンジョンの内部は、宝石や魔石などの貴重品がダンジョン内にゴロゴロと出て来る代わりに、その貴重品に匹敵するくらい強力な魔物をぞくぞくと出てくる空間となっている。
当然、錬金術師として必要な素材もゴロゴロ出て来るそこを、私が、デルタちゃんに特攻させない理由が、ダンジョンが異世界、つまりは配信が届かない場所だからである。
配信が届かない、つまりデルタちゃんが最弱になってしまう場所なのである。
故に、ダンジョン内へは進行させず、ダンジョンが溢れて出て来る魔物を狩る事だけはオッケーを出しておいた。
「そんなダンジョンの話をするって事は、もしかして、この村にダンジョンがあったり?」
「まさしく、それが至極道理な正解なのです」
正解ねぇ、ってか……面倒くさっ?!
いや、会話設定とか性格設定した私が言うのもなんだけど、この喋り方、凄く面倒くさくない?!
なんですか、『至極道理な正解』って! 『正解』で良いじゃん!!
----今度、性格設定とか、喋り方を直しておこう。
「錬金エルフ殿はわたしの刀を勉強し、ダンジョン内でも配信可能となる魔術付与をしてくれるという事なのだそうです。ちなみにサンプルがこちらになります」
「ほぉ~、なるほどですね」
イスウッドの村の人に商品を売ってもらうように、課題を出して遠ざけたつもりだったが……まさか、デルタちゃん越しに、イスウッドの村に住む1人である、この私に商品を買わせるつもり?
ダンジョンにその能力を発揮できない、うちのデルタちゃんの力を発揮出来る、そんな刀を作って?
「……へぇ、面白いねぇ」
まさか、課題を出した私当人に商品を買わせようとする錬金術師がいるだなんてさぁ。
これぞまさしく、『将を射んとする者はまず馬を射よ』----私という将を得るために、デルタちゃんという馬から崩しにかかるというのは、悪くない発想だと思う。
サンプルとして出された刀も、構造こそまだ武器としては心もとない点はあるが、魔術付与はきちんと出来ている。
----『記憶保持』。
私でも難しい、精神作用の魔術付与を用いて、配信技術をそのまんまデルタちゃんに保持させようという考え方か。
この1本では弱いが、6本すべてに似たような魔術付与、あるいは魔術付与自体を強めれば、使えなくもない。
うん、普通に使えそうですね、これ。
なにより、課題を出した師匠に対して、商品を提示しようとするその気持ちが、何より面白い。
「久しぶりに、面白くなってきたね。そうは思わないかい、デルタちゃん?」
「ボスが愉快痛快なのは、笑顔だと分かります」
いやいや、本当に面白いですね。
趣味で錬金術をやっている私からしても、こんな事をして来ようとする錬金術師は初めて聞いた。
サンプルも良いし、これは弟子入りを検討しても良いかもしれない。
「それで、デルタちゃんとのコラボ、だっけ? このサンプルを使っての、ダンジョンでの試し切りという感じかな?」
「誠に、至極。我が製作者たるススリアのボスにとっては、この程度すぐさま分かる事でございましたか」
……やっぱ、話し方面倒くさいし、あとで直そう。
「しかし、それに関して、このデルタより進言があります」
「ほぉ、進言」
「はい、彼女の作る作品より、ボスが作る作品の方が良い出来になりそうなので、似たような武器の作成をお願いしたく存じ上げます」
「……だよねぇ~」
うん、目の付け所は悪くないんだよ。
イスウッドの村人で買ってくれる人がいないから、師匠に対して売り込むという姿勢は面白い。
たださ、その師匠は錬金術師なんだから、自分で作った方が速いって、作っちゃうでしょ?
「やっぱ、そうなるよなぁ~」
うん、という訳でサンプルは無料支給品として、このまま没収!
この魔術付与を参考に、デルタちゃんの新しい刀を作りたいと思います!
「ちょっと待っててね、デルタちゃん。ボスである私が今から、新しい刀を与えるから」
「……恐悦至極。感謝感激でございます」
タラタちゃんの方は……うん、まぁ、頑張って。
『面白いけど買ってはいないので弟子入りはなし』という判断だから、もう少し課題を続けさせる私なのであった。
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