配信スローライフをしてたら、相方のゴーレムがアップをはじめたようです

摂政

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第2話 登録者爆上がりしたらどうする配信

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 ----いきなりベータちゃんに押し倒された後、私はすぐさま配信を終わらせた。

 あのままだと、なにかヤバい扉を開きそうだったからだ。
 女同士……いや、片方はゴーレムなのに……。



「うわぁ、めちゃくちゃ登録者が増えまくっている……」

 次の日の朝、配信用機材(まぁ、ぶっちゃけス〇ホですわ)に届く、大量の登録完了メールに、私は外の草原で寝ころびつつ、若干ひいていた。

 たった1日で、この1年の間に細々と稼いで来た私の配信の登録者数の、その4倍、いや5倍の人数が登録しているのである。
 恐怖を覚えるというか、皆さんそんなにあの流れが好きなんですねという軽い関心である。

 ----百合営業。

 あぁいう、女の子同士がイチャイチャするのを見せ、その様子を楽しむ人達にお届けするとか、そういう流れの事である。
 一応軽く調べてみたら、私の他に百合営業を売りにしている配信者さんは居ないらしい。

 というよりも、恐らくだが『百合』だとか、『ボーイズラブ』だとか、そういうオタッキーな知識はこの世界にはまだ存在していないみたいだ。
 なら何故、配信文化だけはあるのかと言われれば、広めた誰かさんがそう言う事を知らなかった人か、あるいは知っていた上で広めるほどの勇気はなかったのどちらかだろう。きっと。
 私だって、そうするよ。だって『百合』とか、『ボーイズラブ』を広められるほど、面の皮が厚くないというか、なんというか……。

「まぁ、今後も、百合営業ああいったのを売りにすれば、登録者数は増えるだろうけどなぁ……」

 恐らく、いま登録してくれた人の多くは、昨日の百合営業目当てだ。
 もし仮に、次の配信でまた淡々と錬金術で作ったアイテムの紹介動画を流していたら、登録を取り消して去って行く人ばかりだろう。
 でも、私はあくまでもこの田舎のような、のんびりゆったりとしたスローライフを楽しみたい訳であって、スローライフ的にはこの流れはどうも……。

「あぁ、考えても埒が明かない!」
「何が明かない、んでしょうか?」
「それは……って、ベータちゃん?!」

 ガバッと起き上がると、ぷるんっと揺れる彼女の巨乳が目の前にっ!?
 ってか、近っ?! ぶつかる所だぞ、この距離は!?

「マスター、質問にお答えください。何が明かないかを明確にしていただけますと、私も作業の手伝いが----」
「いや、大丈夫! 大丈夫だから!!」

 まさか、『今後、2人でイチャイチャラブラブプレイを主軸にやっていくか悩んでいた』なんて口が裂けても言えない私は、慌てて手を振って誤魔化す。

「そう、今日の配信! 今日の配信は、初見さんのために製作配信をやろうと思っているんだ!
 ほら、なんか登録者数が爆上がりしてるからね!」

 製作配信と言うのは、主に1つの作品を作り上げる工程を流すという、それだけの配信である。
 錬金術師系配信者は私の他にも色々といるのだが、中には他の錬金術師が作った作品を自分が作ったと嘘を吐いて炎上する配信者も少なくない。
 登録者数が爆上がりした私も、多くの初見視聴者さんは本当に錬金術師かどうか疑われている立場にある。

 だからここはいっそ、いきなり製作配信を見せ、私が本物の錬金術師である事をビシッと見せつけちゃおうという、そういう話なのである。

「……っ!!」

 ドヤァと思っていると、いきなりベータちゃんの、綺麗なガラスの瞳がうるうると揺れ動く。
 涙を流す機能は搭載していないのだが、これはアレだ……泣いている……えっ、泣いている?!

「どどど、どうしたの?! ベータちゃん!? なんで泣いてるの?! えっ、故障?!」
「違います、マスター。私、『嬉しい』が暴走してしまいまして」

 流れていない涙を拭くという、人間の真似を器用にしたベータちゃんは、ニコッと笑う。

「初めて、ですので」
「初めて?」

 どういう事かと思っていると、ベータちゃんは嬉しさを嚙みしめるように。

「えぇ、マスターに起動して頂いて、早3年と8か月。初めて、相談というのをされましたので思わず『泣く』が発動してしまいました」

 その言葉に、思わず「うっ……」と罪悪感を覚える私。
 ……いや、私ってそんなにしてなかったっけな? 

 配信の企画については……うん、多分だけど一度も話したことがないな。
 その前の王都では……えっと、あまりに多忙すぎて、何をしていたのかすら覚えていないのだが。

 とっ、とにかく、これからは頻繁マメに色々と相談をしよう。
 せめて、罪悪感を覚えないで良いくらいには。

「では、マスター。改めてお聞きします。次はどのような配信をされるのでしょうか?」
「それなんだけど、今回は村からのお願いの解決も兼ねようと思っていてね」

 私がいま暮らすイスウッドは、王国の東の辺境の地にある村。
 人よりも野生動物が多いこの村では、助け合いが基本姿勢であり、私の所にも週に何度か、手伝いを要求されることがある。
 今回はそれを解決するためのアイテムを錬金術で作成し、それを配信しようという企画である。

「今回作るのは、村の酒場の店長さんからのご依頼品!
 火を使わずにモノを炒め、温める夢のようなアイテム----魔導コンロだよ」
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