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第1話 ゴーレムに押し倒され系配信

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 ----王都から住まいを田舎へと移住うつして、早一年。

「はいみなさん、おはうおっち! 錬金術師系配信者の、あるけみぃでーす!
 今日は、錬金術で作った拳銃ピストルで試し撃ちさせていただきまぁす!」

 うん、噛まずに言えて何より!
 やっぱ1年近くもこの挨拶をしていると、慣れるものだよね。

 
 私の名前は、【ススリア】。
 錬金術師系配信者『あるけみぃ』として、それなりにファンを獲得している16歳。
 
 私は、いわば転生者と呼ばれる人間で、この異世界シアース、そのとある村民の娘として生を受けた。
 転生した直後は、異世界だと分かってワクワクしたし、なんと前世と同じく配信文化があると知って、めちゃくちゃ嬉しかったなぁ~。

 そう、嬉しくて、頑張ったんだよなぁ……。

 錬金術----2つ以上のモノを1つに組み合わせるスーパー技術に魅了された私は、錬金術を超がんばった。
 まぁ、そのおかげもあって、王都でも指折りの学校を、まぁ、それなりの成績で卒業できたんだけど。

 その後、王都での目まぐるしい日々について行けなくなった私は、王都という都会から、イスウッドと呼ばれる東の辺境の村でスローライフをすることにしたのである。

 最初の頃は、のびのび暮らせて楽しいなぁと思っていたんだけど、やっぱ、地球の現代人の知識がある身としては、ゲームとかアニメとかなしで一日中ひなたぼっこをするというのは、かなりキツイものがあったのでございますよ。

 そんなわけで、今では現代知識を活かして、配信活動をやりながら、日々おもしろおかしく過ごしている。



※『おはうおっち!』『初見です。錬金術師さんですか?』『拳銃かおいおいアイツ死ぬぜ』『そんなことより胸映せ胸!!!』『錬金術は、おっぱいはヒトを幸せにするんだぜ』

「はい、皆さんの下種染みたコメントにも慣れて来た私が、いつもの相方をお呼びしましょう!
 では、カモン! 【ベータ】ちゃん!」

 ぺにょっという、場が盛り上がらない指パッチンを聞きつけ、私の相方----ゴーレムのベータちゃんが現れる。

「お呼びでしょうか、マスター」

 そういって現れたのは、人工的な緑色の髪を揺らすゴーレム、ベータちゃん。
 一時期、私が『やっぱ助手ゴーレムならカッコ美しい系だよね!!』という謎の信念のもとに作り上げた力作であり、ぼぼんっ・きゅっ・ぼんっという、なんとも男受けしそうなけしからん体をしている、私の自信作の1つである。
 王都に居た頃は主に助手として活動して貰っていた彼女も、今では配信の視聴者を喜ばせる私の相方である。

 ぺこりと頭を下げると共に、私渾身の造形美たる巨乳がたゆんっと揺れ、コメントが最高潮に盛り上がる。

※『うほぉ抜いたぁ!!』『これは神に愛された容姿』『←馬鹿、神が作ったんだから当然だろ常考』『まぁ、あるけみぃ氏は錬金術は配信者の中でもトップクラスですからなぁ。錬金術はww』

「うるさいぞ、おい」

 まぁ、事実だが……。

 実際、私に配信は向いていない。
 私に人を楽しませる話術や、人を惹きつける才覚はない。
 このチャンネルの視聴者の多くも、私ではなく、私が作ったこの美ボディの権化たるベータちゃん目当てのえろえろリスナーなのだから。

「マスター、今日の企画を伺っても?」
「おっと、そうだった! そうだった!」

 毎回、ベータちゃんには企画の事は知らせていない。
 企画というのは今日の配信でなにをするかという、ざっくりといえば打ち合わせのようなモノだが、このやりとりが良いというリスナーが多いので、今のスタイルが落ち着いている。
 まぁ、説明するのをいつも私が忘れているだけなのだが。

「今日はこの、拳銃の威力を試す企画だよ! この拳銃はね、私の自信作なのだ!」

 えっへんっと、ぺったんこな胸(私に胸はない。ないからこそ、ベータちゃんの胸を盛りに盛りまくったくらいだ)を張る。
 事実、この拳銃は自信作、なにせ現代日本の知識があっても流石にピストルの構造まで覚えてはいなかったからね。

 まぁ、仕組みは単純だ。
 筒の中に弾代わりの鉄の球体を入れ、引き金を引くと共に筒の中に仕込んである『高速で発射』する魔法術式によって球体が飛ばされるという仕組みだ。
 現代日本のガンマニアの人からしたら適当すぎるかもしれないが、『分からない部分は錬金術でカバーする』というのが私のスタイルなので。

「まずね、筒の中に球を入れ、筒の中には錬金術によってモノを高速射出する魔術的紋様を刻み込んでるのだよ。これにより、私が引き金を引けば、紋様が作動して----」

 得意げに、作ったアイテムの解説を早口でする私。
 それを聞き流しながら、「へぇマスターは凄いなぁ~」と言うのがいつものベータちゃんのスタイルな訳で----


「----ずるいっ」


 ----な訳、で?

「あれ?」

 今日のベータちゃんは、いつもとは違った。
 ぷくぅと、可愛らしく頬を膨らませ、

「----私だって、マスターの自信作だもん」

 分かりやすく、拳銃に嫉妬していた。


※『ふぁっ?!』『えっ、嘘でしょ!?』『このゴーレム、感情あったんか……』『頬膨らませるベータちゃんからしか取れない栄養があります』『←ちょっと待て。ゴーレムに自由意志が宿るってこれはリアルで表彰案件なのでは?』

「おっ、落ち着けよ。ベータちゃん。今日の主役はこの拳銃であってだね……」

 ----ずしっ。

「ひゃっ?!」
※『おいおい、これって……』『もしかしてもしかしなくても……』『エッチな奴ですな』『エッチい奴だ』『エッチ・オブ・エッチネス!!』

「マスター、私の胸触って良いんだよ? マスターなら、ね」

 私を押し倒し、そう誘惑するベータちゃんに、ファン達は喜びのコメントを送るのであった。
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