人間×ドラゴンのハーフの少年、地球侵略ドラゴン達と戦う-ハーフドラゴンのスバルくんっ!-

摂政

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VS Maf-Delta -黄金の最高幹部ー(2)

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「‐‐‐‐まぁ、とりあえずはこれくらいで良いか」

 僕達の前に現れて、リチャードと名乗った頭の良さそうな小学生キッズはと言うと、僕達の家に無断で入ってくるなり、背中のランドセルの中身を床へと無造作に落としていく。
 彼が落とした金属は、ちょっぴり黒っぽくて、それでいて規則性のある丸みを帯びた金属である。

「とりあえず、あなた達の情報。それに生体情報や出来る力などの情報は得ている。それによって、君達に必要なモノがなにかを理解している。安心して、しばらく待つと良い。
 そう、五分間くらい。五分くださいな」

 カタカタと、ノートパソコンを取り出したリチャードは、キーボードを叩いてなにかの計算をしている。
 彼がキーボードを叩くのと同じく、リンクしているかのように床の金属がクルクル動きながら、決められた場所へと、自動的に動いていく。傍目から見たら、手品かなにかにしか見えない。

「ふっ……」

 と、今まで黙って事態を見ていたユカリが、どんどんっと、わざと大きめの足音を立てて、パソコン越しではあるが彼の前に立つ。

「なんですか、あなたは。いきなりやってきたと思ったら、急に金属を床にバラまいて、パソコン片手に手品なんかを披露したりして。
 ----あれですか? 急に手品したくなる、大学とか飛び級のイキがった小学生ですか?」

 「どうなんですか? 答えてくださいよ」と、顔をちょっぴり怖めにして威嚇するユカリ。
 その膠着状態が進むこと、約10分。最初に言ってた5分間とやらはどこへ行ったのか。
 ようやく観念したのか、どっちでも良いと思ったのか、どちらかは分からないのだが、リチャードは顔を上げて、ユカリの方を向く。

「良いですか、僕は正直な意見を申し上げるとすれば、大学にも、ましてや高校にも飛び級していないし、さらに言えば薬を飲んで子供に戻ったりとか、転生して二週目だとかもない。僕は純粋に、ただただ頭が良い小学生だ。
 そんな小学生だからこそ言えるのだが、とにかく、黙って、仕事に、集中させてくれ。僕はこんな仕事は早く終わらせて、早く家に帰りたいんだ。だからさっさと、仕事させてくれ」

 それだけ言うと、リチャードは自分の作業に戻る。その様子を見て、「キーッ!」と、ユカリは地団太を踏んでいた。
 その一方で僕とフレアリオンは、スマホで、マイヨールと連絡を取っていた。この状況を、特にリチャード・ラフバラーなる小学生について説明してもらうためである。

『いや、私は知りませんね。その小学生は』

 しかしながら、マイヨールからの反応は思った通りにはいかなかった。

『私の所属する組織、【ワンダーフォース】から送る予定だったのは、あなたのお仲間であるドラゴン達を人間に見せる能力を持った"コスメ"を送るつもりはありましたが、それもまだ先の出来事です。
 それなのに、いきなり来ただなんて言うから、こちらの方が驚いているくらいですよ。小学生のメンバーとやらも、うちにそんな子はいませんし……』
「つまりは、そちらも覚えがない。そういう事なんだな、チキンスープ」
『……フレアリオンさん、怒りますよ? それが、あなたの狙いなんですか?』
「えっと、それよりも----」
『それより? 自分をチキンスープ扱いされていることに訂正を求めずに……いつ、自身の尊厳を守れると?
 どうなんですか、スバルくん?』

 電話越しにではあるが、こちらの胃が痛むような重低音を響かせるマイヨール。
 けれどもすぐさま機嫌を直したのかは分からないが、落ち着いた声で話す。

『そちらも問題があって、大変みたいですが、こちらも実は街に大量の龍怪人が現れまして』
「龍怪人? それって前のコウフジンみたいなリュウシント? それともまた別の?」
『多分、リュウシントの方ですね。というわけで、今、ワンダーフォースの方は、そのリュウシント達の対処で手一杯でして。それですので、また後で』

 そう言って、マイヨールに電話を切られてしまった。

「大量のリュウシント、か……。リュウシントならば、隣町と言えども放っておくべきではないだろう」

 フレアリオンはエクレルの肩にポンッと手を置くと、

「エクレル、すまないが隣町に救援として行ってやれ。リュウシントならば助けに行くべきだろう」
「え~、あたしとしてはスーちゃんと一緒に居たいのに~」
「……エクレル、リーダーとしての命令だ。行ってこい」

 フレアリオンの有無を言わせない命令に、しぶしぶ了承するという形ではあったが、エクレルは折れて「行ってくるねぇ~」と、玄関を開けて出て行った。
 エクレルが出て行ったのを確認して、フレアリオンはリチャードの前にあったパソコンを取り上げる。

「ちょっ! いきなり何をするんですか! 五分間待ってって、言いましたよね!」
「質問があるだけだ、簡単な」
「……私の事は、電話で、マイヨールさんから聞いたのでは?」
「あぁ、知らないとね」
「まさか……マイヨールさんはそういう風に……」

 リチャードは右手の指を自分の口の中へと運び、苛立ちを隠しきれていない。
 いや、苛立ちと言うよりも、動揺?

「……そうですか、ならばちゃんと言っておくべきでしょうね。私は、少なくともあなた方、ドラゴンの敵ではない。そして、こういうのもあなた方に提供しようと考えている」

 そう言いながら、僕に向かって差し出してきたのは、懐中時計のようなもの。表面が電子画面になっており、その画面上に3つの点が浮かび上がっていた。
 と言うか、某国民的漫画に出てくるドラゴンな球を見つけ出すのに使われていたレーダーと、非常に良く似ているような気がする。

「それはドラゴンレーダー、ボールは探し出せませんがドラゴンの身体から出るエネルギーを見つけ出すことが出来る。衛星の探査機能を使えば、気象予報だけではなく、そういうのも出来る。
 そして、その上で君達4人のドラゴンの固有エネルギーを判別して、そうでないのを除外。その上で、被害状況などを算出すると----」

 僕の手の上にあるレーダーの上部にあるスイッチを押すと----

----ジリリリリリリリッ!

「‐‐‐‐街で龍怪人が暴れると、アラームで教えてくれる。今のように、ね」
「なるほど……って、それじゃあ今すぐ行かないといけないじゃないですか!
 場所は!? と言うか、なんでこんな分かりにくい円状に? 普通に地図のように四角形じゃないんですか! 円状とか分かりにくくて仕方ないじゃないですか!」
「いや、これは某アクション漫画を尊敬リスペクトして……ちょっと待ってくれ。五分で答えを出す」

 と、懐中時計型のレーダーを見るリチャード。
 そして、頭上のボタンを押したり引いたりして、画面を確認して‐‐‐‐

「分かった、山の方だ。山の方で、誰かが暴れてる」



 山で木が一本、"消滅した"。
 倒れるのでも、斬られるのでもなく、ゲームで倒したモンスターが光となって消えていくように、大きな木が丸々一本、消滅したのである。

「よし、次はこっちにしましょうか。‐‐‐‐次の"対消滅銃"をここへ」

 マフデルタは空間に生み出した闇の穴へと手を入れると、その闇から一丁の黒と赤の二色のライフル銃を取り出していた。
 そして取り出したライフル銃を、さっき消した木とは別の木に向けていた。

「さて、あと何本の木々が犠牲になることやら」

 ライフル銃の銃口を木に向けたまま、引き金に指を引っかけて----

「そこまでだっ、マフデルタ!」

 ‐‐‐‐その銃口を、すぐさま自らに迫ってきた火焔に発射していた。
 火焔はと言うと、ライフル銃から発射された闇と混ざり合い、2つがぶつかって一瞬で、消えた。

「ようやく来ましたか、マヌスの龍よ。待ちくたびれてしまいましたよ」

 木々をかき分けて、4人がこちらに向かって攻めてくる。
 地龍と人間のハーフドラゴンのスバル・フォーデン、火龍のフレアリオン、そして風龍にして飛竜であるユカリ。

「それに雷龍のエクレ……あれ?」

 エクレル……が来るのかと思いきや、現れたのは、良く知らない小学生の男の子。
 ランドセルを背負った、小学生の男の子。想定とは全く違うメンバーである。

「‐‐‐‐まぁ、想定とは違うけれども、良いでしょう。
 さて全員、倒しましょうか。こちらもお母さんとして、娘に良いところを見せませんと」

 そう言いつつ、マフデルタは闇の穴から、さらに二丁、ライフル銃を取り出して、4人の方に銃口を向けていた。



 リチャードのドラゴンレーダーを一応信じることにした僕達は、反応があった山の方へと向かっていた。
 "山"と言えば、僕の父の家。あの実家の裏にある山しかないだろうと思って、様子見程度だったんだが----

----ビュンッ!

「また1本、木が消滅したな」
「どうやら何かが起きているのは確か、みたいですね。……当たっているだなんて、不本意ではありますが」

 僕達が山へと辿り着くと、木が、目の前で一本消滅したのだ。それも斬られて倒れるとかではなく、文字通り、目の前で大きな木が一瞬で消えたのである。
 明らかに、なにかが起きているのは事実だろう。

「ほら、やっぱり! 僕が5分で片付けた内容は、紛れもない事実だった! 見てくださいよ、この山の現状!
 明らかになにかが起きているのは事実でしょ!」
「分かったって、分かったから揺らさないでくれよ……」

 興奮した様子でリチャードが僕の身体を揺らしてくる。こういう、喜んでいる様子は歳相応って感じもするんだけれども、揺らされているこちらとしては、早めに、止めてほしい。
 なんかこうメチャクチャ揺らされて、吐きそうになってくるし。

「いえ、スバルくん。気を許すのはまだ早いと思います」

 しかし、未だにリチャードの事を信じていない様子のユカリは、疑いの眼差しを向けていた。

「木が切り倒されるとか、燃やされるのではなく、一瞬で消滅するという事態は、確かにおかしいです。しかしですが、まだリュウシントの仕業だと決まった訳じゃ……」
「いや、ユカリ。これはリチャード・ラフバラーの言った通り、リュウシントの仕業だろう」

 と、フレアリオンは草木の陰から一丁のライフル銃を、赤と黒の二色のライフル銃を手に取っていた。
 そして、その銃に銃弾がないのを確認すると、「これは良く知っているリュウシントの武器だ」と断言する。

「この独特な二色のライフル銃……それに木が消滅したという事実から考えると……これは、闇龍のリュウシント、マフデルタの力で間違いない」
「フレアリオンさん!? この得体しれない少年の肩を持つ気ですか!?」
「私はあくまでも、事実を確認している。それだけだ」
「くっ……! 確かにマフデルタっぽいですが……」

 認めたくないのかは分からないが、ユカリは最後には納得して、「そのレーダーは使えるみたいです……」と認めていた。

「でしょ! やはり僕は天才だ! それは認めるべきだろう!」
「それはドヤ顔で言うべきなのか、リチャード・ラフバラー。……しかし、マフデルタが起こしているのだとしたら、厄介だな」
「ここは私の出番ですね! スバルくん、そして……いけ好かないガキ野郎くんにも、説明しておきましょう」

 と、ユカリが自ら説明役を買って出る。

「敵であるドラバニア・ファミリー、あいつらは最高幹部と呼ばれる金のメダル持ちに気を付けなければなりません。彼ら彼女らの強さは桁違いなんです。
 私達は過去に3人ほど撃退に成功しましたが、それでも多くの犠牲を払った事は事実です。
 ‐‐‐‐そして、金メダル持ちのマフデルタ。彼女はこういうライフル銃を異空間から取り出して、当たったものを対消滅させる銃弾を放ちます。正直、あまり相手にすべきでないのは事実ですよ」

 「無策でいけば、死んでしまいますね」と、考え込むユカリ。
 
「しかし、弱点が……ないわけではない」

 掌に火焔を生み出しつつ、フレアリオンはそう宣言する。

「奴のライフル銃は一丁につき一発、そして火や火焔など広範囲なモノをぶつければ、意図的に消滅させられる。長い戦いの中で見つけ出した、対マフデルタ対策だ」
「なるほど、そういう類の敵か。しっかりと、5分で理解した」

 繰り返し使っている、"5分"という言葉を使って、リチャードは理解した。そう語る。

「だったら、策がある。任せたまえ。
 ‐‐‐‐この天才であるリチャード・ラフバラーの、5分で出来る、対マフデルタ対策を」
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