人間×ドラゴンのハーフの少年、地球侵略ドラゴン達と戦う-ハーフドラゴンのスバルくんっ!-

摂政

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I Can Not Survive If I Do Not Fight -蠱毒より生まれし龍-(1)

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「べっつに、オレッチはあんたらに何の恨みもないでフィーバー!」

 と、ステージ上で踊り狂いながら、手の甲の龍の顔から毒霧をまき散らす霧龍のアルルカン。
 既にアルルカンの固有能力、【音楽で聴いた人間を踊り続けさせる】という能力によって、人間であるマイヨールは奇声と共に踊っている。

「じゃあ、止まってくれませんかねっ! スバルくんを止めるためにもっ!」

 ユカリは毒霧を浴びないように、翼を出して空へと逃げていく。
 ……別にどうでも良かったのだが、この際だからとマイヨールに風でバリアをしてあげたが。

「(あんなんでも、正気に戻れば役に立つと思ったんですが、風で音の流れを遮断しても、踊り続けるまま。
 どうやら、一度音楽を聴くと、そのまま踊り続けるようですね)」

 マイヨールがあんな風の膜程度でなんとかなるようならば、既にここまで離れたのならばスバルも無事になっていると思っていたのだが……どうやら違うらしい。

「(‐‐‐‐だったら、スバルくんを戻すためにも、あのミラーボール龍は倒しますっ!)」

 気持ちを新たに、ユカリは暴風を吹かせ、未だに音楽が鳴り響いているアルルカン、そんな霧龍が出してくる毒霧を飛ばす。
 相手は霧を自由自在に操る霧龍ではあるが、こちらは風を自由に扱う風龍のユカリである。さらに自由自在に空を飛んでいることも合わせ、確実にユカリの方が有利であった。

「むぅ~、愛称面で考えても連れてくる龍を失敗したナイト……。明らかに間違えたでナイト……」

 相性面の問題もあったが、それ以上にやる気の問題もあった。
 戦うことにさほど興味がないみたいであり、スバルを元に戻すことを目指すユカリと比べれば、どうしても戦おうという気持ちに対して、差があるのは確かである。

「そんなに踊りが好きなら、音楽を止めて、1人で迷惑をかけずに踊ってくださいっ! 少なくとも、スバルくんを巻き込まないでっ!」

 せめて苦しまないようにと、ユカリは風を鋭い刃‐‐‐‐かまいたちにすると、彼女の身体を切り裂くように高速で発射する。
 高速で放たれた刃はアルルカンの身体に近付くと共にさらに速さを増し、そして‐‐‐‐彼女の頭を吹っ飛ばした。

「頭が吹っ飛んだァァァァァァ! フィィィィィィバッ、アアアアアア!」

 クルクルと、宙に吹っ飛んだ頭が嬉しそうに声を出す。と言うか、ずいぶんと元気そうだ。
 心なしか、さっきよりもアップテンポな音楽が大きく鳴り響いて聞こえるくらいである。

「‐‐‐‐はいっ! 死んでは、ナイト!」

 死ぬ……と言うよりかは、翼を出した身体は飛び、両腕は身体を離れて毒霧をさらに放出している。

「……戦いたいのか、戦いたくないのか。どっちなんですか、あなたは?」

「フィーバー! 戦いよりも踊りたいでナイト! けれども、シグマズルカ様の命令は絶対でナイト!」

 バラバラに分解していた自分の身体を空中で合体させると、そのまま両方の手の甲からさらに毒霧を追加する。

「一等級幹部であるシグマズルカ様は、三等級のオレッチなんかが逆らえる存在じゃナイト! 生まれたてであろうと、ドラバニア・ファミリーの絶対的な立場関係と力関係は理解してるでフィーバー!
 そんなお方から頼まれた命令は、絶対に遂行するでフィーバー! 楽しい超必殺技を見せてやるでフィーバー!」

 宙に飛ぶアルルカンは両手を身体から切り離すと、その両手を空中で融合させる。
 融合させると言っても、右手の逆側に左の手を合体させて、棒の両端に龍の顔がついているという形になっているのだが。

「‐‐‐‐さぁ、行くでフィーバー! オレッチの最大技、《フィーバー・ポイズンミスト》!」

 カチッと、両方の手の甲の龍の口が大きく開いて‐‐‐‐


「‐‐‐‐ライトニング・ヨーヨー!」


 その両方の手を叩き、光を纏ったヨーヨーが腕が取れた胴体に当たる。
 物凄い速さで、銃弾のように放たれたヨーヨーがぶつかると共に、先程までうるさく鳴っていたアップテンポな音楽が聞こえなくなった。

「やっぱり、そこでしたか……音楽の発生源は」

 手へと戻したマイヨールは、ヨーヨーについた、壊れたレコードの破片を持っていた。



「やっぱり無事でしたか」

 翼を出しつつ、地面へと降りたユカリ。そして、ヨーヨーを使うマイヨールに、踊り狂わずに平常心そのもののマイヨールに対してそう話しかける。

「……以前に"音楽で別世界に誘う"『第十アフタード』と戦って以来、音楽を意図的に聴かないという訓練もしてますから、これくらい、簡単ですよ。
 踊っていた方が、あのアルルカンの音楽がどこから流れているかを知るのが楽だから、操られていた振りをしてましたが、その必要もなくなりましたので」

「流石は、《チキンスープ》のマイヨール。人間ではないから、音楽を意図的に聴かないという離れ技も可能なんですね」

「……誰が、チキン、スープ、ですか」

 むっかぁー、と明らかに頬を膨らませ、ご機嫌斜めの様子のマイヨール。
 ヨーヨーをクルクルと回転させながら、マイヨールは、ミラーボールの龍であるアルルカンを見ていた。
 アルルカンは音楽が出なくなったからか、「ありゃりゃっ」と困惑しているようであった。

「びっくりするでナイト! アルルカンの音楽が止められるなんて……ありえぬフィーバー……。
 どっ、どうして、オレッチの音楽が鳴る場所が分かったでフィーバー……」

 レコードを壊されたことによって、アルルカンはかなりテンション下がり気味な口調で、じとぉーっとした目と共にマイヨールに聞いていた。

「妖怪の名前を聞いた時から、音楽がどこから流れたのかは予想ついてました。
 "首のつなぎ目"。首がないからこそ、そこが隠し場所だと思いましたよ」

 と、自分自身の首の付け根辺りを叩くマイヨール。

 実際、アルルカンのレコード、"人を踊らせる音楽"を奏でる音楽はそこから流れていた。
 首がないことで生まれる隙間から音楽を流し、人々を躍らせる音波を流しつつ、頭で覆いかぶせる事で見えないようにするという、

「‐‐‐‐生まれながらの完璧な隠し場所を、良く見破ったでナイト!」

 アルルカンはそう言って褒めたたえ、「だが、しかしっ!」と大きな声でいう。

「まだオレッチには霧を操る霧龍としての力があるでフィーバー! この力で、お前らを全員倒して、シグマズルカ様に‐‐‐‐」

 と、アルルカンが意気込んだその時である。
 楽しそうに、これからの戦いにワクワクという気持ちを表情と瞳から、隠しきれないばかりの量を出していたアルルカンの顔から、大量の汗が流れる。

「やっ、やめて欲しいでフィーバー……まっ、まだまだやれるでナイト……」

 急にミラーボールの頭から大量の汗を流し、焦っている様子のアルルカン。

「……? 1人で何を言ってるんですかね?」
「さぁ? 私には分かりかねます」

 ユカリとマイヨールは急に表情を変えたアルルカンにちょっとした戸惑いを露わにするが、その理由がすぐさま分かった。

「あ、あぁ……嫌でフィーバー! シグマズルカ様、オレッチはまだ踊りたいで……!」
【Take-Over! The Fate That The Important Treasure Is Taken.】

 アルルカンから無機質な音声が流れると共に、アルルカンの顔が急に冷たく、無機質な顔へと変わる。
 先ほどの意気消沈と言った様子ではなく、まるで"入っている人が変わった"と言わんばかりの変わりようであった。
 そして、どこからか現れた半分だけの骨の仮面がガシッと、アルルカンの顔に引っ付いた。




「‐‐‐‐えぇ、これからは、"私"に任せてください。
 しっかりと、"たいしょ"しておきますから」


 憑き物が落ちたとばかりに急に表情の変わったアルルカン。
 いきなり地面から現れた、骨で出来た剣を手に取ったアルルカンの口調は、まるでシグマズルカが乗り移ったかのようであった。



「う、うーん……」

 頭ががんがんと痛む中、僕‐‐‐‐スバル・フォーデンは、ゆっくりと瞼を開ける。
 何故か喉の奥が乾いて仕方がないのだが、それでも目の前に危機がせまっていることを感じて、目の前に土の壁を作る。

 ‐‐‐‐バシンッ!

 乾いた音と共に、土の壁が壊されて、代わりに僕の目の前に折れた骨がぽろろんっ、と落ちる。

「おっと、どうやらせんのうが解けたようですね。至極、ざんねんですよ」

 心底残念そうな口調のシグマズルカは、手にしている骨で作ったであろう剣を捨てると、パチンと指を鳴らす。
 鳴らすと共に、空から、大量の隕石が、こちらに向かって落ちてくる。

「あっ! スーちゃん、目が覚めたんだ! 良かったよ!」

 「ていやぁ!」と、雷を出して向かってくる隕石を、エクレルが一つずつ、雷によって撃ち落とす。

「僕は……いったい……くっ、喉が渇く」
「仕方ないよ、さっきまで奇声をあげてたので」
「奇声……?」

 何のことだがさっぱりだと言う僕ではあったが、すぐさま頭を切り替える。
 シグマズルカは僕の姿を見て、「ざんねんだよ、アルルカン」と悲しんでいた。

「あなたに与えておいた、音楽で下等かとう生物せいぶつである人間を操り、踊り狂わす能力が破れ、あなたという幸福じんかくが亡くなるかと思うと、ね」

 右手で顔を覆って、涙を見せないように覆ったシグマズルカは、泣いているような音を漏らす。




「‐‐‐‐あぁ、ほんとうに。ないてしまいそうだよ(棒)」

 けれども、彼女の口から出たのは、まったく悲しみも、感情すら感じない棒読み口調だった。



「さて、それじゃあ残念な事ではありますが、計画を第二段階に進めると致しましょう」

 シグマズルカは懐から別の、真っ白な光が模様として描かれた卵を取り出す。
 空から隕石を降らせつつ、卵を持ったまま、エクレルの方へと走って近寄ってくる。

「させないよっ!」

 エクレルは真龍形態、龍の爪にした形態へと変えると、がっしりと僕を片方の爪で掴んで、そのまま足に電気を纏わせる。
 電気は彼女の意志に沿い、シグマズルカによって不安定に改変された地面を物凄い勢いで、彼女から距離を取る。

 地面の上の辺りを電気によって距離を取りながら、僕は岩を飛ばして援護する。

「サンキュー! スーちゃん! このまま距離を取るよ!
 相手は星を飛ばす以外は、遠距離とかあまりないからね!」
「分かった! 任せてっ!」

 僕が岩を飛ばすのに対して、こちらに走ってくるシグマズルカは骨の剣によって岩を壊しながら、こちらに向かってくる。
 しかし、こちらが逃げている電気の速度に比べれば、多少人よりも足が速い程度のシグマズルカは追いつけず、徐々に距離が遠のいていく。

「~っ! やっぱり正式な龍は、強さがだんちがいですね。
 羨ましすぎて、憎さ百倍って感じですね! 《星降らし》!」

 さらに隕石を降らせるも、僕とエクレルには距離に余裕があった。
 僕は岩よりも威力が高めの重力を出そうとしていたし、エクレルは足の分を少し前にいるシグマズルカにぶつけようと考えていたくらいだ。

「‐‐‐‐けれども、金の一等級幹部には及ばない」

 シグマズルカが大きく目の前の虚空に対して左手を振りかぶると、何故か距離が離れているはずのエクレルが彼女の左手に"収まっていた"。
 僕を掴んでいたエクレルが急に向こうへ跳んで行ったため、僕はその場で地面へと落ちて転がる。

「スーちゃん!? 大丈夫っ!?
 ‐‐‐‐えっ?! なんで?! けっこー距離を取ってたのにっ?!」
「残念ながら、距離なんてものは、このシグマズルカにとっては意味いみなんです」

 エクレルは手から逃げ出そうとするも、その前にシグマズルカは光の卵をぐちゃりと潰した右手を、彼女の身体に突っ込んでいた。

「きゃああああああああああ!」
「エクレルぅーーーーーー!」

 エクレルはシグマズルカの手から落とされ、そのまま地面で大きな声をあげて、その場で苦しみだす。
 僕は重力を放って、エクレルを助け出そうとするも、シグマズルカが左手を振るうと、重力がかき消される。

「重力、か。半分だけとはいえ、流石は私よりかは龍としての成分が多いだけはある」
「どういう意味だっ!」

 僕の問いに、彼女は両手に龍の鱗を纏わせながら答える。

「私はこのナイトレス・ハーバーシティにて、この星を侵略するために生まれた、金の一等級リュウシント。
 栄えある母たるマフデルタ様は、私を生み出すために、この地球のとある、そう、古くから伝えられているある呪法によって、私を最強に生み出そうとした」
「呪法……? どうやって?」
「簡単な事さ、"I Can Not Survive If I Do Not Fight"‐‐‐‐"戦わなければ生き残れない"。
 古来より、多くの人を呪い殺してきた、蠱毒こどくという方法を用いたんですよ」
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