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The Oath I Protect ー守護の誓いー(中編)
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「くぅ! 【話に夢中になってる隙に攻撃してやっちゃおう】作戦が失敗しましたシャイン! こうなったら、次の作戦をするでシャイン!」
マイヨールの光を纏ったけん玉で攻撃した相手、それはドレス姿の変わったリュウシントであった。
どう見ても目に留まるくらい真っ赤なドレス姿。龍っぽいのは爬虫類っぽい腕とギリギリ入れて良いか迷う龍の兜くらいで、むしろドレスの裾についている舞踏会で見られる仮面のせいで、なんちゃって貴族っぽさが強い感じである。
「ふむ、スバルくん。あれは君のお友達の龍かい? 君のお友達であるフレアリオン、ユカリ、そしてエクレルという3人のデータ以外は居ないはずでは?」
「……違う。多分、僕達が退治している敵、だと思う」
「ようやく認めてくれて嬉しいよ、スバルくん。まぁ、出来ればあの敵さんが来る前が良かったけど」
ちっともそう思ってない癖に、マイヨールは一言、「嬉しい」と口にすると、あのドレス姿の怪人に向き合った。
ちなみに、けん玉は今後も武器として使うつもりなのかは分からないが、他に物を取り出したりはしない。
「そうだ、思いついたでシャイン! 次は【実は仲間がいるよ、後ろを見なさい】作戦とかどうかしらシャイン? 後ろにいると思わせて、前から攻撃すれば良いんじゃなぁ~い? 前からでは防がれるなら、後ろから襲えば良いんじゃな~ぁい?」
……訂正、自分で作戦を言って台無しにしているドレス姿のバカ怪人である。
そんなヨーヨーをキャッキャッと楽しそうに振り回すバ怪人、それと僕とマイヨールは向き合った。
「という訳で自己紹介させてもらうでシャイン! ワタックシはドラバニア・ファミリーの1人、光を司る魔性龍コウフジンというでシャイン! あと、後ろを見るでシャイン!」
キリッと、堂々とさっき全部自分でネタ晴らしして台無しにする作戦を用いるコウフジンではあったが、僕とマイヨールが全く乗らないのを見て、キーッと、あからさまに怒ったような声を出す。
……と言うか、あんな聞こえる声で喋っておくほうが悪い。あと、聞かなくても別にひっかかったりはしなかったとは思う。
「キーッ! どうやら【実は仲間がいるよ、後ろを見なさい】作戦は失敗のようでシャイン!
それだったら! 次のこの作戦はどうかしら?」
と、ドレス姿の怪人‐‐‐‐コウフジンは、パチンっと指を鳴らすと共に、彼女の後ろからぞろぞろと、そう、ぞろぞろと現れる。
コウフジンの後ろ。そこから現れたのは、彼女のドレス姿の仮面を被った、人間の子供達の姿であった。
「魔性龍コウフジンの、仮面舞踏会!
次は私の取り巻きが、お相手てするでシャイン!」
☆
コウフジンがドレスの中から光を纏ったヨーヨーを取り出すと、仮面を被った子供達もコウフジンと同じような光を纏ったヨーヨーを手にしていた。
「という訳で、【全員で攻撃すれば倒せるよ作戦】を開始でシャイン! 取り巻きの者共、ヨーヨーを放ちなさいっ!」
コウフジンの号令と共に、仮面を被った子供達もまた光のヨーヨーを放つ。
コウフジン、そして仮面を被った子供達。
それぞれが両手に1つずつ、つまり2つのヨーヨーを投げてきており、目の前に迫ってくるヨーヨーは、おおよそ30を超えている。
その全てをマイヨールは手に持つ、光るけん玉の球で捌いていく。
マイヨールは完璧に、球でヨーヨーを弾いているが、ヨーヨーは徐々に、徐々に、その速さが速くなっていく。
「どんどん速さが増している。どうも私と"よく似ている"力のようです。
あなたを見ていると、私に力を授けたドレス模様のUFOを思い出しますよ。あなたのドレスは、あのUFOの模様とそっくりです」
「UFOとそっくりだなんて、褒められている気がしないでシャイン! と言うより、いいかげんやられろ、でシャインよ!」
「‐‐‐‐しかし、甘いですね」
勝手に自己完結するという謎の反応を見せたマイヨールは、手のけん玉をカンカンっと、操り、
「‐‐‐‐秘技、暴徒鎮圧のふり剣!」
光を纏ったけん玉の球を前に大きく振り出すと、その球は一瞬にして見えなくなるくらい加速。
そしていつの間にか、けん先に球が戻っていた時には、彼らのヨーヨーはその場から急に地面へと自由落下。そして仮面を被った子供達も、ガタッと一斉に倒れる。
「えっ?! なっ、なにが起きたでシャイン?! 取り巻き達、さっさと起きるでシャインよ!」
「光を司る龍とか言っているのに、分かってないなんてお笑い草ですね」
光を纏ったけん玉で、もしかめ‐‐‐‐大皿と中皿を行ったり来たりを繰り返している。
そのスピードは段々、そう段々と速さを増していく。
「どこかの不思議な実を食べた男も言っていたじゃないですか、"速度は重さ"とね。
私はUFOの改造手術で身体の中に光が増していくんですが、その光を私は自由自在に操れる。このけん玉を光速、光の速さで伝わせて相手のヨーヨーの糸、そして仮面だけを破壊した。光の速さなら訳ないですよ」
「~~~ッ! 光で攻撃するだなんて、ワタックシに似た技をっ! おまけに、ワタックシの可愛い取り巻き達がっ!
もう許さないでシャインよ! ヨーヨーならまだ、子供達にばら撒くくらいにあるでシャイン!」
今度は別のヨーヨーを取り出したコウフジンはそのまま、こちらに向かってきて‐‐‐‐
「あっけないですね、光より倒れるのが早いとは」
その胸を、マイヨールのけん玉の球が貫いていた。
☆
「……呆気ない、これならナイトレス・ハーバーシティの敵の方が強かったですよ。
水を自由自在に操ることが出来る【水の使徒】、天候を自在に変える【魔法使い】、それに自分の分身を生み出す【収集家】の方がまだ‐‐‐‐」
「‐‐‐‐いや、まだだっ!」
マイヨールは勝ちを確認しているようなのだが、僕はそう宣言する。
----まだ、油断してはいけない。
何故なら、コウフジンは倒されていないからである。
「オーホホホッ! ワタックシはまだやられてないでシャイン!」
まったく苦になってないという形で、笑いながら、コウフジンは浮かんでいた。
「(やっぱり、倒れていなかったか)」
今までの怪人は倒された時、大きな爆発と共に、卵が落ちていた。
リュウシントを倒した際に出てくる龍の卵は、フレアリオン曰く、僕達が戦ってきた龍の素であり、僕達がそれを回収するのは倒したという安心を得るためで、悪龍のドラバニア・ファミリーが取り返さないのは、すぐに復活出来ないから、だとか。
理屈は全く理解していないが、とにかく、リュウシントは倒される際に卵を落とす。
その際に爆発の煙も発生させる。まるでテレビで見る特撮のヒーロー番組で怪人がやられる時のように。
「(だから、コウフジンの胸を貫いて、マイヨールが倒したと思った時も、僕は違うと思っていた。
何故なら、爆発の煙が発生していなかったから)
しかも倒されていないだけではなく、コウフジンは先程とは違う。
宙に浮かんでいるという事も含めて、身体も変化している。
脚や腕、それに身体もなく、ただドレスと頭の龍の兜だけが不気味に宙を浮かんでいた。
「これこそが、コウフジンの真の形態! コウフジン・エイリアンクラフトフォームでシャイン!」
ちなみに宇宙人の乗り物とはいわゆる、宇宙船なUFO、の事である。
その姿と名前に対して、自分の過去をほじくり返されるような雰囲気を感じたマイヨールは、先程までよりムッとした表情で、宙をドレスだけで舞うコウフジンを睨みつけていた。
「その嫌なアレを思い浮かべる姿……紐付きのおもちゃで戦い、その上、同じく光まで使うなんて。
ドレス姿な上にUFO的な要素までとか……あなたは、本当にムカつく相手ですね。昔を思い出します」
「それはこちらのセリフでシャイン! ワタックシは貴婦人のリュウシント、似た者が嫌なのはこちらも同じでシャインよ!」
コウフジンはゆらゆらと幽霊のように、あるいはUFOのように宙を舞いながら、龍の兜から大量の球を発射してくる。
いや、ただの球ではない。紐こそついてないが、コウフジンが兜から吐き出しているのは、ヨーヨーの、あの円盤の部分を発射してくる。
「ヨーヨーを操る手がないなら、円盤を発射すれば良いじゃなぁいでシャイン!」
そうこう言いながら、コウフジンが兜から大量の円盤を発射して攻撃してくる。
マイヨールはけん玉の球の部分に光を纏わせて、コウフジンの兜から放たれる円盤にぶつけて倒していく。
「本当に、最悪っ!」
マイヨールは文句を言いつつ、コウフジンの円盤をぶち壊す。
どんなにコウフジンが円盤を出そうとも、マイヨールはそれを全部対処していく。
「キィィィィィィッ! こうなったら、奥の手でシャイン!」
そう言うと共に、コウフジンの身体が途端に今まで以上に、激しく回転する。
「……奥の手?」
「どんな奥の手であろうと、私が対処します!」
僕はさらに警戒を解かずに待つが、マイヨールは余裕綽々と言った様子である。
「助けに来たのが、コウフジンをだぜ! 【足手龍アールスマグナ】が、リュウシントの私の名前だぜ!」
そんな中、コウフジンだけでも厄介なのに、だ。
‐‐‐‐さらに厄介そうな、珍客まで現れた。
☆
新たに現れたリュウシント、足手龍アールスマグナと名乗ったその怪人はと言うと、変な化け物であった。
頭に龍の骨を被った、青っぽい蛇のような下半身を持つリュウシント。背中からは翼の代わりに龍の手、そして腹からは左右合計合わせて6つの手が上下逆についている。ついでに龍の骨の下の顔も上下逆についている。
腕が逆なのも確かだが、顔も逆についているという、まさしく、適当に作ったような怪人である。
「さぁ、来いなら来る! 相手になるのが、これからはだ! 見せましょうと、足手龍の力を!」
「それなら、その力を有効活用させてもらうでシャイン!」
今現れたアールスマグナの上に、コウフジンがふわふわと飛んできて、ガシッと頭から掴んだ。
まるで捕食する肉食植物かのようにして、コウフジンはアールスマグナを飲み込んだ。
そう、アールスマグナという身体の上に、コウフジンが乗っかるような形である。
「完成でシャイン! これこそ、他人の身体を乗っとることが出来る、ワタックシの真骨頂! 魔性龍コウフジン・キャトルミューティレーションフォームでシャイン!」
「また、UFO関係用語を……!!」
ムッとしたマイヨールは、先程と同じように光を纏った球を、コウフジンめがけて放つ。
先程と同じく放たれたけん玉の球はコウフジンに向かい、当たると思った瞬間、
「‐‐‐‐《曲がれ》!」
コウフジンがただそう口にしただけ、それだけで光の速度のヨーヨーは相手の目の前で横へと急に曲がる。
「くっ……!」
「同じく光を操る者として、弱点は理解しているでシャイン!ただ一直線に伸びる光は、ちょっとした事で曲がってしまう。このアールスマグナはその力が強い!
ワタックシと同じ能力! 故に弱点も知れている! それが、お前の敗因でシャインよ!」
カッと、コウフジンの身体の下で操られているアールスマグナの上下逆の顔の口が開く。
そして口から出てくるのは大量の骨、骨、骨……! 大小、形の直線や歪さ、頭蓋骨やら背骨、それからろっ骨など様々な骨が、アールスマグナの口から溢れ出る。
「さぁ、下僕の骨龍アールスマグナ! 貴方の力で、ワタックシを勝利に導くシャイン!」
そうして、骨龍の口から山のように出る骨は、雪崩のように徐々にその大きさを増していき、マイヨールへと迫ってくる。
「(どうする? 球を戻したところで、この範囲をカバーできるほどの技は出来ない。
それか、もう1回、球で直接狙いに行く? いや、どういう理屈かはさっぱり分かりませんが、こちらの光は曲げられる)」
マイヨールの頭の中では、どうすれば良いかを、光の速さで考える。
今、後ろにはナイトレス・ハーバーシティのチームの仲間ではない、守るべき、民が居る。
どうすれば倒せるかをまず考え、それが無理なのでどう防ぐか。どうやらそれも無理そうなので、マイヨールは、最終的に1つの結論に達する。
「(‐‐‐‐守るっ!)」
マイヨールは、けん玉を捨てて、自分の身体を盾にするかのように大きく広げる。
後ろにいる、彼を守るように。
敵を倒すのは、敵を倒したいからではない。それが一番、民を守れるから。
敵の攻撃を防ぐのは、自らの力を見せつけたいからではない。それが一番、民を守れるから。
だから、そう、彼女は光の速さで考えていたため、咄嗟に、いつものようにやってしまったのだ。
後ろにいる、チーム以外のメンバー。すなわち、自分が守るべき者を守ろうと。
「‐‐‐‐《土のかまくら》っ!」
あまりの光の速さで脳をフル活用していたためなのか、何故失念していたのかは分からないうっかりなのか。
そこで、マイヨールは思い出す。
後ろに居たのは、無力な民ではない。
「僕も、戦うってことを、忘れないでくださいよ」
自分と同じ、力を持った民だという事を。
マイヨールの光を纏ったけん玉で攻撃した相手、それはドレス姿の変わったリュウシントであった。
どう見ても目に留まるくらい真っ赤なドレス姿。龍っぽいのは爬虫類っぽい腕とギリギリ入れて良いか迷う龍の兜くらいで、むしろドレスの裾についている舞踏会で見られる仮面のせいで、なんちゃって貴族っぽさが強い感じである。
「ふむ、スバルくん。あれは君のお友達の龍かい? 君のお友達であるフレアリオン、ユカリ、そしてエクレルという3人のデータ以外は居ないはずでは?」
「……違う。多分、僕達が退治している敵、だと思う」
「ようやく認めてくれて嬉しいよ、スバルくん。まぁ、出来ればあの敵さんが来る前が良かったけど」
ちっともそう思ってない癖に、マイヨールは一言、「嬉しい」と口にすると、あのドレス姿の怪人に向き合った。
ちなみに、けん玉は今後も武器として使うつもりなのかは分からないが、他に物を取り出したりはしない。
「そうだ、思いついたでシャイン! 次は【実は仲間がいるよ、後ろを見なさい】作戦とかどうかしらシャイン? 後ろにいると思わせて、前から攻撃すれば良いんじゃなぁ~い? 前からでは防がれるなら、後ろから襲えば良いんじゃな~ぁい?」
……訂正、自分で作戦を言って台無しにしているドレス姿のバカ怪人である。
そんなヨーヨーをキャッキャッと楽しそうに振り回すバ怪人、それと僕とマイヨールは向き合った。
「という訳で自己紹介させてもらうでシャイン! ワタックシはドラバニア・ファミリーの1人、光を司る魔性龍コウフジンというでシャイン! あと、後ろを見るでシャイン!」
キリッと、堂々とさっき全部自分でネタ晴らしして台無しにする作戦を用いるコウフジンではあったが、僕とマイヨールが全く乗らないのを見て、キーッと、あからさまに怒ったような声を出す。
……と言うか、あんな聞こえる声で喋っておくほうが悪い。あと、聞かなくても別にひっかかったりはしなかったとは思う。
「キーッ! どうやら【実は仲間がいるよ、後ろを見なさい】作戦は失敗のようでシャイン!
それだったら! 次のこの作戦はどうかしら?」
と、ドレス姿の怪人‐‐‐‐コウフジンは、パチンっと指を鳴らすと共に、彼女の後ろからぞろぞろと、そう、ぞろぞろと現れる。
コウフジンの後ろ。そこから現れたのは、彼女のドレス姿の仮面を被った、人間の子供達の姿であった。
「魔性龍コウフジンの、仮面舞踏会!
次は私の取り巻きが、お相手てするでシャイン!」
☆
コウフジンがドレスの中から光を纏ったヨーヨーを取り出すと、仮面を被った子供達もコウフジンと同じような光を纏ったヨーヨーを手にしていた。
「という訳で、【全員で攻撃すれば倒せるよ作戦】を開始でシャイン! 取り巻きの者共、ヨーヨーを放ちなさいっ!」
コウフジンの号令と共に、仮面を被った子供達もまた光のヨーヨーを放つ。
コウフジン、そして仮面を被った子供達。
それぞれが両手に1つずつ、つまり2つのヨーヨーを投げてきており、目の前に迫ってくるヨーヨーは、おおよそ30を超えている。
その全てをマイヨールは手に持つ、光るけん玉の球で捌いていく。
マイヨールは完璧に、球でヨーヨーを弾いているが、ヨーヨーは徐々に、徐々に、その速さが速くなっていく。
「どんどん速さが増している。どうも私と"よく似ている"力のようです。
あなたを見ていると、私に力を授けたドレス模様のUFOを思い出しますよ。あなたのドレスは、あのUFOの模様とそっくりです」
「UFOとそっくりだなんて、褒められている気がしないでシャイン! と言うより、いいかげんやられろ、でシャインよ!」
「‐‐‐‐しかし、甘いですね」
勝手に自己完結するという謎の反応を見せたマイヨールは、手のけん玉をカンカンっと、操り、
「‐‐‐‐秘技、暴徒鎮圧のふり剣!」
光を纏ったけん玉の球を前に大きく振り出すと、その球は一瞬にして見えなくなるくらい加速。
そしていつの間にか、けん先に球が戻っていた時には、彼らのヨーヨーはその場から急に地面へと自由落下。そして仮面を被った子供達も、ガタッと一斉に倒れる。
「えっ?! なっ、なにが起きたでシャイン?! 取り巻き達、さっさと起きるでシャインよ!」
「光を司る龍とか言っているのに、分かってないなんてお笑い草ですね」
光を纏ったけん玉で、もしかめ‐‐‐‐大皿と中皿を行ったり来たりを繰り返している。
そのスピードは段々、そう段々と速さを増していく。
「どこかの不思議な実を食べた男も言っていたじゃないですか、"速度は重さ"とね。
私はUFOの改造手術で身体の中に光が増していくんですが、その光を私は自由自在に操れる。このけん玉を光速、光の速さで伝わせて相手のヨーヨーの糸、そして仮面だけを破壊した。光の速さなら訳ないですよ」
「~~~ッ! 光で攻撃するだなんて、ワタックシに似た技をっ! おまけに、ワタックシの可愛い取り巻き達がっ!
もう許さないでシャインよ! ヨーヨーならまだ、子供達にばら撒くくらいにあるでシャイン!」
今度は別のヨーヨーを取り出したコウフジンはそのまま、こちらに向かってきて‐‐‐‐
「あっけないですね、光より倒れるのが早いとは」
その胸を、マイヨールのけん玉の球が貫いていた。
☆
「……呆気ない、これならナイトレス・ハーバーシティの敵の方が強かったですよ。
水を自由自在に操ることが出来る【水の使徒】、天候を自在に変える【魔法使い】、それに自分の分身を生み出す【収集家】の方がまだ‐‐‐‐」
「‐‐‐‐いや、まだだっ!」
マイヨールは勝ちを確認しているようなのだが、僕はそう宣言する。
----まだ、油断してはいけない。
何故なら、コウフジンは倒されていないからである。
「オーホホホッ! ワタックシはまだやられてないでシャイン!」
まったく苦になってないという形で、笑いながら、コウフジンは浮かんでいた。
「(やっぱり、倒れていなかったか)」
今までの怪人は倒された時、大きな爆発と共に、卵が落ちていた。
リュウシントを倒した際に出てくる龍の卵は、フレアリオン曰く、僕達が戦ってきた龍の素であり、僕達がそれを回収するのは倒したという安心を得るためで、悪龍のドラバニア・ファミリーが取り返さないのは、すぐに復活出来ないから、だとか。
理屈は全く理解していないが、とにかく、リュウシントは倒される際に卵を落とす。
その際に爆発の煙も発生させる。まるでテレビで見る特撮のヒーロー番組で怪人がやられる時のように。
「(だから、コウフジンの胸を貫いて、マイヨールが倒したと思った時も、僕は違うと思っていた。
何故なら、爆発の煙が発生していなかったから)
しかも倒されていないだけではなく、コウフジンは先程とは違う。
宙に浮かんでいるという事も含めて、身体も変化している。
脚や腕、それに身体もなく、ただドレスと頭の龍の兜だけが不気味に宙を浮かんでいた。
「これこそが、コウフジンの真の形態! コウフジン・エイリアンクラフトフォームでシャイン!」
ちなみに宇宙人の乗り物とはいわゆる、宇宙船なUFO、の事である。
その姿と名前に対して、自分の過去をほじくり返されるような雰囲気を感じたマイヨールは、先程までよりムッとした表情で、宙をドレスだけで舞うコウフジンを睨みつけていた。
「その嫌なアレを思い浮かべる姿……紐付きのおもちゃで戦い、その上、同じく光まで使うなんて。
ドレス姿な上にUFO的な要素までとか……あなたは、本当にムカつく相手ですね。昔を思い出します」
「それはこちらのセリフでシャイン! ワタックシは貴婦人のリュウシント、似た者が嫌なのはこちらも同じでシャインよ!」
コウフジンはゆらゆらと幽霊のように、あるいはUFOのように宙を舞いながら、龍の兜から大量の球を発射してくる。
いや、ただの球ではない。紐こそついてないが、コウフジンが兜から吐き出しているのは、ヨーヨーの、あの円盤の部分を発射してくる。
「ヨーヨーを操る手がないなら、円盤を発射すれば良いじゃなぁいでシャイン!」
そうこう言いながら、コウフジンが兜から大量の円盤を発射して攻撃してくる。
マイヨールはけん玉の球の部分に光を纏わせて、コウフジンの兜から放たれる円盤にぶつけて倒していく。
「本当に、最悪っ!」
マイヨールは文句を言いつつ、コウフジンの円盤をぶち壊す。
どんなにコウフジンが円盤を出そうとも、マイヨールはそれを全部対処していく。
「キィィィィィィッ! こうなったら、奥の手でシャイン!」
そう言うと共に、コウフジンの身体が途端に今まで以上に、激しく回転する。
「……奥の手?」
「どんな奥の手であろうと、私が対処します!」
僕はさらに警戒を解かずに待つが、マイヨールは余裕綽々と言った様子である。
「助けに来たのが、コウフジンをだぜ! 【足手龍アールスマグナ】が、リュウシントの私の名前だぜ!」
そんな中、コウフジンだけでも厄介なのに、だ。
‐‐‐‐さらに厄介そうな、珍客まで現れた。
☆
新たに現れたリュウシント、足手龍アールスマグナと名乗ったその怪人はと言うと、変な化け物であった。
頭に龍の骨を被った、青っぽい蛇のような下半身を持つリュウシント。背中からは翼の代わりに龍の手、そして腹からは左右合計合わせて6つの手が上下逆についている。ついでに龍の骨の下の顔も上下逆についている。
腕が逆なのも確かだが、顔も逆についているという、まさしく、適当に作ったような怪人である。
「さぁ、来いなら来る! 相手になるのが、これからはだ! 見せましょうと、足手龍の力を!」
「それなら、その力を有効活用させてもらうでシャイン!」
今現れたアールスマグナの上に、コウフジンがふわふわと飛んできて、ガシッと頭から掴んだ。
まるで捕食する肉食植物かのようにして、コウフジンはアールスマグナを飲み込んだ。
そう、アールスマグナという身体の上に、コウフジンが乗っかるような形である。
「完成でシャイン! これこそ、他人の身体を乗っとることが出来る、ワタックシの真骨頂! 魔性龍コウフジン・キャトルミューティレーションフォームでシャイン!」
「また、UFO関係用語を……!!」
ムッとしたマイヨールは、先程と同じように光を纏った球を、コウフジンめがけて放つ。
先程と同じく放たれたけん玉の球はコウフジンに向かい、当たると思った瞬間、
「‐‐‐‐《曲がれ》!」
コウフジンがただそう口にしただけ、それだけで光の速度のヨーヨーは相手の目の前で横へと急に曲がる。
「くっ……!」
「同じく光を操る者として、弱点は理解しているでシャイン!ただ一直線に伸びる光は、ちょっとした事で曲がってしまう。このアールスマグナはその力が強い!
ワタックシと同じ能力! 故に弱点も知れている! それが、お前の敗因でシャインよ!」
カッと、コウフジンの身体の下で操られているアールスマグナの上下逆の顔の口が開く。
そして口から出てくるのは大量の骨、骨、骨……! 大小、形の直線や歪さ、頭蓋骨やら背骨、それからろっ骨など様々な骨が、アールスマグナの口から溢れ出る。
「さぁ、下僕の骨龍アールスマグナ! 貴方の力で、ワタックシを勝利に導くシャイン!」
そうして、骨龍の口から山のように出る骨は、雪崩のように徐々にその大きさを増していき、マイヨールへと迫ってくる。
「(どうする? 球を戻したところで、この範囲をカバーできるほどの技は出来ない。
それか、もう1回、球で直接狙いに行く? いや、どういう理屈かはさっぱり分かりませんが、こちらの光は曲げられる)」
マイヨールの頭の中では、どうすれば良いかを、光の速さで考える。
今、後ろにはナイトレス・ハーバーシティのチームの仲間ではない、守るべき、民が居る。
どうすれば倒せるかをまず考え、それが無理なのでどう防ぐか。どうやらそれも無理そうなので、マイヨールは、最終的に1つの結論に達する。
「(‐‐‐‐守るっ!)」
マイヨールは、けん玉を捨てて、自分の身体を盾にするかのように大きく広げる。
後ろにいる、彼を守るように。
敵を倒すのは、敵を倒したいからではない。それが一番、民を守れるから。
敵の攻撃を防ぐのは、自らの力を見せつけたいからではない。それが一番、民を守れるから。
だから、そう、彼女は光の速さで考えていたため、咄嗟に、いつものようにやってしまったのだ。
後ろにいる、チーム以外のメンバー。すなわち、自分が守るべき者を守ろうと。
「‐‐‐‐《土のかまくら》っ!」
あまりの光の速さで脳をフル活用していたためなのか、何故失念していたのかは分からないうっかりなのか。
そこで、マイヨールは思い出す。
後ろに居たのは、無力な民ではない。
「僕も、戦うってことを、忘れないでくださいよ」
自分と同じ、力を持った民だという事を。
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